第733話 作戦会議
ちょっとトラブルはあったものの火属性の赤いキツネと物理っぽいアルマジロは無事に確保は出来ているし、ネス湖の湖畔に全員が合流出来た。それじゃ早速フィールドボス戦をやっていこうー!
お、サヤの竜に巻き付かれているキツネが暴れながら火の球を放ってるね。流石は火属性のキツネだな。でもまぁサヤのクマに当たってはいるんだけど、全然ダメージにはなってない。
そういやサヤの竜は地味に大型化してキツネを抑え込んでるんだな。まぁ通常時のサイズだとキツネの捕縛を竜だけでやるのは難しいのかもね。
「火属性のキツネと物理のアルマジロなら、火属性のキツネをメインにする方が良い?」
「元々ヨッシとそのつもりで相談して選んできたし、それでいいと思うかな。……さっきのアルマジロは予想外だったけど」
「……あはは、まぁアルマジロは泳げないと思ってたんだけどね?」
「さっきは見れなかったけど、アルマジロってそんなに泳げるのー!?」
「……結構普通に泳いでたよ。成長体だったから逃しはしなかったけど、未成体だったら逃げられてたかも」
「そんなになんだー!?」
「そこまで泳げるのなら、アルマジロがメインは無しだよな」
ヨッシさんの言うようにアルマジロが普通に水の中を泳げるのなら、フィールドボスのメインとして使うのは間違いなくアウトだな。それにしてもアルマジロが泳げるのは初めて知ったし、ちょっと見てみたかったかも……。
「なんだ、全員アルマジロが泳ぐのは知らなかったのか」
「……そういえばアルはヨッシが強制ログアウトになった時にアルマジロに逃げられるのは考慮してたけど、死ぬ事は考慮してなかったよね。元々知ってたのかな?」
「ま、そうなるな。てか、キツネも泳げるだろ?」
「そこはアルマジロに火属性の追加を狙ってたから、属性で選んだかな……」
「あー、なるほどな。ふむ……ケイはどう思う?」
「火魔法なら水の中じゃ役立たずだろうし、判断自体はそれで良いと思うけど……」
この場合のフィールドボスへの進化はアルマジロをメインにして、多分合成進化になって物理型のアルマジロに属性追加みたいな感じで良いはず。実際に進化させてみないと確定ではないけど属性はあるけど物理型ってところだろう。
アルマジロが泳げないという想定をしていたのなら、火属性が追加になれば優位性はあるもんな。俺の水の付与魔法もあるし、水の昇華も俺とアルの2人分だからね。……でもアルマジロが泳げると分かったから、それはやらない方がいい。
「アルマジロをメインは止めといた方が良いだろうな。火属性だからって水で即死する訳じゃないし……」
「やっぱりそうだよね。これは予定変更かな」
「……あはは、まだキツネに泳がれる方が良さそうだよね」
「その辺は臨機応変に対応していくのさー! という事で、キツネをメインに変更なのです!」
「おし、それでいくか」
ま、そうなるよねー。とりあえずこれでキツネをメインにしてフィールドボスにするのは確定だから、火魔法を主体にした魔法型のキツネという事になるね。後はアルマジロ要素がどう出るかだけど、これは実際にやってみないと分からないか。
でも水に弱いという状態を十全に俺らにとって有利な状況として活かしていくのであれば、湖畔……というか陸地で進化させるのは逆に損だな。よし、それなら……。
「みんなに少し提案があるんだけど、ちょっと良い?」
「……今回は何を思いついたんだ、ケイ?」
「ケイ、詳しく聞こうかな」
「今回はどんな内容?」
「悪巧みのケイさんだー!」
「おいこら、ハーレさん!? あー、とりあえず簡単に言えば、進化と同時に湖へ突き落とす」
「やっぱりエゲツないのさー!?」
「……先にハーレさんを沈めようか?」
「あぅ!? ……大人しくしておきます」
よし、とりあえず話が進まないからハーレさんはそれで宜しい。というか、フィールドボス戦でエゲツないとか言うのはやめよう。これ、普通にゲームのボスの攻略戦術だから!
「あー、進化と同時に突き落とすのは良いんだが、それはどこで……って、あれか。ケイの岩の操作で足場を作るのか」
「もしくはヨッシさんの氷塊の操作だな。別にアルのクジラの背中の上でも良いぞ」
「……それは流石に止めてくれ。フィールドボスを自分の背中の上で誕生させるとか、何の冗談だ」
「だよねー。まぁそっちは普通に冗談だって」
「……他に手段があるんだから、そりゃそうだな」
そりゃそうですとも。それ以外の手段がないなら話は別だけど、他に手段があるならわざわざ変な危険性のある手段を選びはしない。ましてや火に弱いアルの木が目の前にいる状態になるんだから、無用にそんなリスクは負う理由がないもんな。
「……ケイさん、ごめん。まだ氷塊の操作はLv2だから、それをやるならケイさんに任していい?」
「あ、そっか。ヨッシさんのはまだLv2なんだ」
ヨッシさんは多少はLvが低い段階でも氷塊の操作は扱えるようにはなってたけど、まだ氷塊の操作が安定して使えるLv3になっていないのなら仕方ないか。そういう事なら俺がやっていくのが適任だな。
「よし、それじゃ俺が湖の上に岩で足場を作るから、その上でフィールドボスの誕生をやっていくぞ!」
「おうよ! んで、誕生させてからはどうすんだ?」
「俺が岩を解除したら、アルは水流の操作で湖の中へ押し流してくれ」
「あー、完全に水中戦へ持ち込む気だな」
「そういう事。サヤ、アルの水流に乗りながら連強衝打はいけるか?」
「うん、それは大丈夫かな。ただ、今は竜の大型化を簡略指示で発動してるから……」
「それだと行動値の最大値が半減中か。……アル、キツネの捕獲を交代してもらえるか?」
「成長体なら火属性でも大丈夫だろうし、そこは代わった方が良さそうだな」
「アル、ついでにヨッシさんの捕獲してるアルマジロもいける?」
「あー、多分どっちも大丈夫だと思うぜ」
「おし、それじゃその方向で! サヤとヨッシさんはアルと捕獲を交代な」
「了解! アルさん、任せたよ」
「分かったかな! アル、お願いね」
「おう、任せとけ。『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」
そうして一度サヤがキツネを、ヨッシさんがアルマジロを解放し、即座にアルがキツネの胴体とアルマジロの胴体に根を巻き付けて捕獲し直していく。
さっきからちょいちょい火の球を吐いているキツネだけど、まぁ成長体だから火が弱点のアルの木でも問題なく捕獲は出来たな。アルマジロも丸まっているけど、丸まったのは根が巻き付いた後だったから問題なし!
「はい! 私は何をすれば良いですか!」
「ハーレさんは爆散投擲の準備をしながら、後から潜ってきてくれ。ヨッシさんは瘴気石を食べさせるのを任せていい?」
「あ、うん、それは問題ないよ」
「それじゃ+8の瘴気石と+10の瘴気石を渡しとく」
「はい、確かに預かりました」
これで俺が持ってた+8と+10の瘴気石をヨッシさんに渡せた。岩の足場は飛行鎧の移動操作制御ではなく普通に発動するつもりだから、他の誰かにやってもらった方が確実だもんな。
フィールドボスの誕生の際に移動操作制御で作った足場だとどういう影響があるか分からないし、今回のはLv19のフィールドボスになるからLv差はあまりない。倒しきれなくて後々で変に強くなるフィールドボスも見てきたから慎重にいかないとね。
「識別は湖の中へと沈めた後で俺がやるとして……それじゃ各自そういう感じでやってくぞー!」
「「「「おー!」」」」
そうして軽い手順を決めてから全員でアルのクジラの背の上に乗って、まずは湖のど真ん中へと移動である。ふっふっふ、折角の湖という地形だし、それを存分に活かしていこうじゃないか!
そんな感じで少し湖を移動して、適度に周りに何もない場所へとやってきた。ふー、アルが根の操作を発動中だから空中には浮けず、普通に湖面を泳いできたよ。まぁそれでも何も問題はないけどね。
まぁ湖の中はどうかは分からないけど……他のプレイヤーの迷惑にならない様に念の為に獲物察知で確認はしておこうかな。
「ケイ、この辺で良いか?」
「良いと思うけど、ちょっと他のプレイヤーが居ないか探ってみるから待ってくれ」
「あー、それもそうだな」
「ケイさんが巻き込む事を心配しているのです!?」
「普段からわざと巻き込もうとしてる訳じゃないからな!?」
結果的に巻き込んでしまう事はあっても、狙って巻き込むつもりはないんだぞ。だから巻き込む事が想定出来る時にはチェックをする気はあるんだからな。って事で、まずはチェックをやっていこうっと。
<行動値を4消費して『獲物察知Lv4』を発動します> 行動値 73/77(上限値使用:1)
うわっ、予想以上に大量の矢印が出てきた!? えーと、赤も青も灰も黒も緑も全部の色のカーソルが見えてるね。
でも今いる場所の真下やその周囲には黒と緑のカーソルだけだから、プレイヤーはいなさそうだ。……まぁ擬態とかを使われてたら獲物察知じゃ分からないけど、そこまでは流石にどうしようもないってことで。位置が分からないようにしている人まで対処しろって方が無茶だしね。
「よし、とりあえず問題ないから、予定通りやってくぞー! サヤ、行動値は?」
「全快ではないけど、9割は回復してるから問題はないかな!」
「……それくらいなら全快まで待つけど?」
「どっちにしても途中で回復は挟むだろうから、大丈夫かな!」
「……サヤがそう言うならそれでもいいか。ヨッシさん、その時の時間稼ぎは任せてもいい?」
「……あはは、まぁ今回は私の属性はどれも微妙っぽいもんね。有効そうなのは物理毒を直接刺して行くやつくらいだし、それで時間稼ぎはしていくよ」
「私も今回はフォローに回ります! 水中では投擲も少し微妙なのさー!」
「よし、それじゃ行動値の回復の時の時間稼ぎは2人に任せた!」
「任されました!」
「任せておいて!」
今回の水中を主戦場とする関係上、どうしてもヨッシさんの電気での麻痺や毒魔法は使いにくいし、敵が火属性になるから氷属性も相性が悪い。でも行動値の回復の為に役割分担をするのも重要だし、ハーレさんも一緒に時間稼ぎに回るなら心配はいらないね。
投擲は水中だと勢いが落ちるというのはあるけど、ヨッシさんとハーレさんの2人で連携すればその辺は補えるしな。電気はともかく毒は操作さえしてしまえば多分大丈夫だろうし、ある程度の牽制があれば少し勢いの落ちる投擲も普通に使えるはず。
「それじゃフィールドボス戦、やってくぞー!」
「「「「おー!」」」」
という事で、早速やっていこう。まずは誕生させる為の足場を作るところからだな。これがないと今回のは始まらないしね。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 72/77(上限値使用:1): 魔力値 213/216
<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します> 行動値 53/77(上限値使用:1)
ふっふっふ、岩の操作はちょっと前にLv4に上がったからこれを使っていこうじゃないか! Lv3からLv4では目立って大きな変化がある訳じゃないけど、操作精度自体は上がるんだよね。
操作系スキルそのものは威力は低めだけど、それでもLvが上がった事で威力は多少上がってるはず。ま、今回は完全に足場だけだから、その辺は全く意味ないけど……よし、無事に適度な広さの足場の生成は完了。
「アル、キツネとアルマジロを岩の上に置いてくれ。解放するのはまだだぞ」
「分かってるっての。ほらよっと」
さて、これでアルの根に捕まったままのキツネとアルマジロを所定の位置に置くのは完了だな。それじゃフィールドボスの誕生を――
「はい、サヤとハーレはこれ飲んでおいてね」
「あ、ヨッシ、ありがとうかな!」
「ぷはー! そういえばヨッシとアルさんは癒水草茶は飲まなくていいのー?」
「アルマジロを探した時の効果がまだ残ってるんだよね。効果時間切れになりそうになったら、少し飲む時間をもらうかもしれないけど……」
「ま、急を要するのはヨッシさんだけだから大丈夫だろ。俺の場合は多少は保つからな」
「ほいよっと。ま、効果時間が短くなったら早めに報告をよろしく!」
「了解!」
「おうよ!」
ふー、俺自身はコケに水属性があって同調共有のおかげで淡水の適応には問題はないから失念しかけてたけど、他のみんなはそうもいかないもんな。とはいえ、淡水で急激に弱体化するのはヨッシさんのハチくらいだし、気をつけていれば大丈夫だろう。
「それじゃ私は準備をしていくかな! 『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』!」
「私もなのさー! 『魔力集中』『略:ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『アースクリエイト』『爆散投擲・風』!」
おっと、サヤとハーレさんが既に臨戦態勢に入ったね。俺はまぁ今回は水魔法か水流の操作を駆使していく方向性で、魔力集中はとりあえず無しでもいいな。……必要になれば使うけど。
「ヨッシさん、瘴気石を頼む!」
「了解! えっと、キツネがメインだからこっちに+10で、アルマジロには+8だね」
そんな風にアルに捕獲され俺の生成した岩の上にいるキツネとアルマジロの目の前に、ヨッシさんが瘴気石を並べていった。後はアルがどちらも解放すれば瘴気石を食らってフィールドボスへの進化が始まるだろう。
さて、このキツネはどんな姿になってくるのかが気になるところだね。ま、どんな姿になったとしても、全力で倒すまで! Lv19のフィールドボスなら経験値も美味いはず!




