第708話 タッグ戦の打ち合わせ 前編
まずいか焼きさんから2つの進化記憶の結晶のあった場所と黒の統率種についての情報を聞く事が出来た。えっと、これでいか焼きさんから聞いておくべき情報はもう終わりかな? 他に何か確認しておくべき内容は……特に思い当たらないね。
「さて、これで大体必要な事は話したと思うんだけど、他に何かあるかい?」
「多分、もうないとは思うけど……みんな、何かあったりする?」
えーと、誰も特に何も言う気配がないので、これはもう用件は終わったって事でいいっぽいな。それなら、今回ここまで来たのも大体の用事が済んだ――
「全く関係ない話にはなるんですが、興味本位で1つだけよろしいですか?」
「……全く関係ない話なら、答えるかどうかは内容によるね」
「いえ、それほど身構えるような内容ではないですよ。ただ、今の段階で無所属はどの程度の規模なのかと思いましてね?」
「……あー、そういう内容かい。そうだね、おいらが把握してる範囲では100人前後ってところだね」
「なるほど、100人前後ですか」
ふむふむ、いか焼きさんが把握している範囲の無所属の人数が100人くらいかー。……ちょっと多いのか、少ないのかの判断が難しいとこだね。
えーと、比較対象を考えてみるなら灰のサファリ同盟の規模は……多分全体で考えたら100人どころじゃなさそうだよね。……常に全員がいる訳じゃないだろうけど、森林深部の本部に行った時にはいつも結構な人数はいたし、本部に所属で100人くらいはいそう? そう考えてみると無所属100人は結構多い?
「あ、そうそう。居場所を無くして無所属になってウィルに関与してるのが大半だけど、完全に単独行動で未知数のが何人かはいるようだよ」
「……え、無所属でソロ?」
「うん、そう。1人だけ遭遇した事はあるけど、プレイヤースキルはやばいね。レナさんとかに匹敵するんじゃない?」
「……マジで?」
「こんなとこで嘘は言わないさ」
「だよなぁ……」
同じ群集にいてもちょいちょい実力者が隠れてるっぽいのに、無所属でもレナさんに匹敵するレベルの人がいるのかー。……そういう人がもしPKでもやりだしたら恐ろしいものがあるけど、まぁそういう情報は今のところは無いから大丈夫そう?
「無所属にも実力者がいるってのは面白ぇじゃねぇか! なぁ、ジェイ!」
「……そうですね。無所属になった理由にもよりますが、場合によっては交渉して青の群集に……」
「……おーい、ジェイさん? 無所属の強い人を勧誘しようとか考えてる?」
「えぇ、考えていますよ、ケイさん」
「って、あっさり認めたー!?」
「実際接触してみないとどうなるかは分かりませんけど……精々警戒しておいてくださいね」
「ちょ!? そうやって言って警戒させるのが狙いか!?」
「えぇ、その通りですよ」
くっ、ジェイさんめ、堂々と認めた理由は無所属から戦力になる人を引き入れる事が出来ても出来なくても、その行為そのものを警戒させる事が目的か! ……事実がどうであれ、その可能性を示唆されれば無視は出来なくなるもんな。あー、変に聞くんじゃなかったー!
「まぁその辺はおいらには関係ないからどっちでも良いんだけどさ」
「それでいか焼きさんは青の群集に入る気はありませんか?」
「えー、このタイミングでおいらを勧誘するのかい? ……抜け目ないね、ジェイさん」
「いえいえ、いか焼きさんの実力は大したものですし、私としても大歓迎ではありますよ?」
「……まぁ元赤の群集のおいらとしては、それは悪い話でもないんだけどね。流石に即答はしかねるよ」
「では少なからず検討していただけるという可能性はあるんですね?」
「まぁ場合によってはだけど……あー、うん。これ以上はまた今度って事で。『空中浮遊』『魔法砲撃』『ウィンドクリエイト』!」
ん? 何か慌てるようにいか焼きさんがタコ足の先から盛大に風を生成して、東に向かって飛び去っていった。……何がどうした?
「あー!? 戻ってきたらすぐに逃げたね、いか焼きー!?」
「お、戻ってきたのか、レナさん」
「うん、アルさん、ただいまー。ごめんね、酔っ払ってた上に寝落ちしちゃって……」
「あー、まぁそりゃ別に構わないが……酔いは大丈夫か?」
「うん、冷水をぶっ被ってきたから大丈夫!」
「……それはそれで大丈夫なのか?」
「ちゃんと乾かしては来てるからねー!」
なんというか今日のレナさんはいつもと様子が違ってて地味に調子が狂うなぁ……。まぁなんだか申し訳なさそうにしてるレナさんという珍しい状態が見れたような気もするけど。
それにしても酔っ払ってたのもあったから寝落ちしたまま戻ってこないかと思ってたけど、割とすんなり戻ってきたもんだね。まぁあの寝落ちした際のアラーム、凄いうるさいから大体は目は覚めるけど。
「さてさて、酔いも眠気も醒めた事だし……そういえばどこまで話は進んだの?」
「いか焼きさんから黒の統率種についての詳細と、2つの進化記憶の結晶の場所を聞いたとこまでだな」
「あ、大体話は済んでたんだねー。ケイさん、後で詳細お願いー!」
「ほいよっと。……今のうちにまとめに情報を上げとくか」
「……その前に赤のサファリ同盟の方がどうなってるかを確認しませんか? 話し合いが出来るなら、今のうちにやっておきたいのですけども」
「あ、それもそだね。えっと、弥生とシュウさんは……」
「レナ、呼んだ?」
うおっ、上から弥生さんが飛び降りてきた!? あ、それに続いてシュウさんが小石に乗って降りてきたから、どうやら小石を足場にして空を移動してきたみたいだね。
「およ? まだ呼んでないのに、どしたの弥生?」
「あはは、まぁさっきちょっとねー?」
「……あ、もしかしていか焼きから?」
「どうだろねー? それで、レナは不貞腐れて酔っ払って寝落ちしてたって?」
「……ぐぬぬ、否定は出来ないけど今度会った時は覚えてろー、いか焼きー!」
なんというか盛大にレナさんの自業自得なような気もするけど、それは言わない方が良い気がするね。てか、弥生さんもいか焼きさんの事を知ってるって事はリアル側での共通の知り合い? うん、その可能性は高そうな気がする。ま、必要以上には詮索はしないけどさ。
「さてと、レナをからかうのはこれくらいにしておいて、タッグ戦の打ち合わせをやっていこう。いいよね、ジェイさん、ケイさん? あ、2人を代表として扱うけど問題ないよね?」
「元々、中継の権利に関しては私が出したものですし、それは私で問題ありませんよ」
ふむふむ、既に弥生さんには話が通っているようである。まぁ元々フラムの提案のもので、赤のサファリ同盟の弥生さんとシュウさんが対決をしていたのなら間違いなくフラムは中継に関わってるだろうしな。いか焼きさんから情報が渡っていたなら、すぐに状況を把握してここに来たんだろう。
まぁそれは納得の理由ではあるから別に良いとして、灰の群集の代表って俺でいいのか? レナさんもいるし、他のみんなでも良いとは思うんだけど……。
「えーと、代表って俺でいいのか?」
「ケイさんにお任せさー!」
「同じくかな!」
「ケイさん、よろしくね」
「だな。ケイが話してる間に、まとめの方は俺がやっとくわ」
「あ、アル、それは頼んだ!」
「おう、任せとけ」
とりあえずまとめに報告を上げるのも必要な事ではあるし、そこをアルがやってくれるのであれば任せておこう。まぁ進化記憶の結晶は手元にあるし、黒の統率種についても急ぐ類の情報ではないけど、忘れない内に処理しておく方が確実だしね。
「レナさんは俺が代表でいいのか?」
「あはは、今回のわたしは失態が多かったしね。元々異議もないし、わたしは灰の群集のみんなからの意見をまとめておく……けど、途中で少し落ちちゃってたから大丈夫かなー?」
「……まぁ強制ログアウトは誰でもあり得るしなー」
「……そだね。理由さえ伏せとけば大丈夫だよねー! それじゃそういう感じで!」
「ほいよっと」
元々レナさんがその辺の情報を群集内交流板や灰のサファリ同盟経由で話してくれるという事になってたし、酔っ払って寝落ちしてたという点さえ伏せておけば大丈夫だろ。……まぁ言っても問題はなさそうな気もするけど、それは単純にレナさんが言いたくないだけだろうね。
「それじゃまとまったみたいだし、タッグ戦の話し合いを――」
「はい! その前に弥生さんとシュウさんに質問があります!」
「……わたしとシュウさんに?」
「なんとなく想像はつくけど、どんな質問だい?」
あ、俺もハーレさんが聞きたい事はなんとなく分かった。聞くタイミングを逃してそのままタッグ戦の話になりそうになってたけど、俺もその内容は気になるところだね。
「弥生さんとシュウさんの勝負はどっちが勝ったんですか!?」
「それは弥生の勝ちだったよ。……懐に入られると、僕はどうしてもね」
「あ、弥生が勝ったんだ?」
「そうだよ、レナ! 調子が悪くなったIHのコンロは、ガスコンロに変える事に決定だよ! いやー、今はガスコンロの方が珍しいけど、火力は欲しいからね」
「え、ガスコンロにするんですか!?」
「お、ヨッシさんも気になる?」
「はい! お婆ちゃんの家がガスコンロでお婆ちゃんに料理を習って使い慣れてたけど、今の家じゃIHで炒め物とかがちょっとやりにくくて……」
「あ、ヨッシさんはそうなんだね。うんうん、気持ちは分かるよ!」
何だかヨッシさんと弥生さんの間で料理談義が始まってしまった。……どういう買い替えの内容の勝負かと思ってたら、IHコンロかガスコンロで意見が割れてたのか。
そういや俺の家は母さんのこだわりでガスコンロになってるけど、そう違うもんなのか? IHは使った事が無いからよく分からん。
「……なんだか弥生は話に夢中だから、今回は僕が変わろうかい?」
「そうしていただけると助かります」
「俺もそれで了解っと。……ところで、シュウさんがガスコンロに反対してた理由ってあったりする?」
「あぁ、それはまだ単純に無償修理が可能な期間でね? その状態で無理に出費を増やさなくても良いと思ったのと、弥生が欲しがったからと言って無条件で何でも受け入れるのもそれはそれで違うからね」
「……要するに、無条件で受け入れるのではなくあえて対立して、シュウさんが折れたようにする為にわざと勝負にしたという訳ですか」
「まぁ端的に言えばそうなるね。……弥生には内緒だよ?」
「シュウさん、それってPT会話は大丈夫?」
「対戦後にPTを組まないまま来たから、そこは問題ないよ」
「……なるほど」
弥生さんとレナさんとヨッシさんで妙に話が盛り上がってるし、地味にハーレさんも混ざりに行ってる状態になってるから今の会話は聞こえていないはずだろう。
なんというか、弥生さんとシュウさんの夫婦間でも色々とあるもんなんだね。まぁ家族だからといって、何でも好き勝手に決めずにちゃんと話し合うっていうのも大事なんだろうな。
「さて、それじゃ改めて話し合いを始めていこうか」
「だなー。まずシュウさんに確認しておきたいんだけど、元々のタッグ戦の提案ってフラムからのもので、赤のサファリ同盟としての見解はどうなってるんだ?」
「それは僕らもフラム君から提案を受けて面白いとは思っているから、赤のサファリ同盟の総意と取ってくれて構わないよ。赤の群集の方でも面白がってる人は多いから、概ね問題はないかな」
「では、赤の群集としてはタッグ戦については有りという認識でよろしいんですね?」
「うん、そういう認識で問題ないよ。ただ、まだ誰が戦うかというのを決定は出来ない段階だね」
ふむふむ、赤のサファリ同盟だけでなく赤の群集として、今回のタッグ戦自体はありという判断のようである。誰が戦うかは決まってないようだけど、それについては俺らも同じなので問題はない。……というか、灰の群集の方ではまだタッグ戦の話自体がまだどう認識されてるかが分からないんだけど。
「赤の群集はそういう感じだけど、青の群集と灰の群集はどうだい?」
「おう! まだ本決まりって程じゃねぇが、青の群集の連中も乗り気みたいだぜ!」
「おや、静かだと思っていたら斬雨が確認をしてくれていたのですか」
「自発的に情報収集をしてたのに、その扱いは酷くねぇ!?」
「……冗談ですよ、斬雨。それで反対意見とかはありましたか?」
「あー、あるっちゃあるが、誰が戦うんだって揉めてる感じだな。後は中継が出来ないって点で不満が出てるぜ」
「……そうですか。今回の中継の権利がないのは私の独断によるものですし、何か穴埋めを考えるとしますよ」
「おう、それじゃそう書き込んどくぜ!」
「えぇ、お願いします」
今回のタッグ戦自体には文句はないけど、青の群集は中継が出来ないという制約に不満が出てるのか。でもそこは俺らが拒否しても構わないという条件付きだからこそのものだしな。
俺らが青の群集の中継を拒否しないという選択をする事も出来るけど、これは流石に俺の独断で決められる話ではないね。
「青の群集はもう少し様子を見る必要はありそうだけど、基本的には大丈夫そうだね」
「……最悪、納得出来る人のみでやりますので問題はありませんよ」
「プレイヤー間で勝手にやるイベントだし、気に入らねぇって奴にまで合わせてやる必要もねぇからな」
「まぁ、確かにそりゃそうか」
そもそもが俺とアーサー……というか、赤の群集と灰の群集の間で同意を得て中継をしていた所にジェイさん達が実況で混ざって来たことが発端になっている件だもんな。……なんだかんだであの時の俺の岩の槍はジェイさんが再現をして使ってるみたいだしね!
まぁ青の群集で納得する人達がいるのなら、その人達だけを対象にするのでも問題は何もない。中継の許可は現時点ではしない予定だけど、直接見に来る人までは拒む気はないしね。




