第659話 作戦会議
目の前には雪に覆われた森が広がっているけども、ジェイさんからその森の特徴を聞いてからどうするか考え中である。
「さてと、どういうルートで進んでいく? てか、ジェイさんと斬雨さんはどうする?」
「私と斬雨は皆さんに合わせますので、気にしなくて構いませんよ」
「おう、俺らの事はそれで良いぜ!」
「ほいよっと。それじゃさっきの分だけ2人は思いっきり使い潰すとして――」
「おいこら! 気にしなくて良いとは言ったが、使い潰すってなんだ!?」
「……地味に先程の事を根に持ってますね、ケイさん」
「あはは、冗談、冗談!」
「……冗談に聞こえねぇ……」
「……まぁ、一応冗談として流しておきましょうか」
冗談だと言ったのに、全然信じて貰えないんですけどー!? いや、まぁ使い潰すのは完全に冗談だけど、戦力として動いてもらう事は考慮に入れてるからねー。そういう意味では全くの冗談ではないから、その辺を勘付かれたかな?
少なくとも明確に変化のあるジェイさんの赤くなっているカニの戦法を少しでも見ておきたいし、斬雨さんのスキルの強化具合も確認したいもんな。この2人……特にジェイさんがそう簡単に手の内を見せてくれるとは思わないけど……。
「とりあえずケイの目論見は置いといて、中央部を迂回するか、そのまま突っ切るかを決めていこうぜ」
「置いておかれた!?」
「話が進まないから、ケイの目論見はスルーかな」
「はーい!」
「それもそだね。ジェイさん、中央部の敵のLvは20くらいでいいんだよね?」
「えぇ、大体その辺りですね。……そういえば皆さんの今のLvはどのくらいでしょうか?」
「あ、そういやPTの連結をしてなかったっけか。ほい、ジェイさん」
「あぁ、ありがとうございます、アルマースさん」
<ジェイ様のPTと連結しました>
くっ、みんなに思いっきりスルーされた!? ……その辺は自分で勝手にやるから問題ないし、話が進まないというのも間違いではないか。見てろ、ドサクサに紛れてジェイさんのカニがどの程度のスキルが使えるのかを分析してやる!
それはそれとして、大真面目に通っていくルートを決めないとなー。とりあえずジェイさん達のPTと連結は出来たから……あー、ジェイさんがLv19で、斬雨さんがLv24か。あれ、このLvなら中央部の突破の方が無理もないし、経験値的にお得なのでは……?
「おや、皆さんも私と同Lvでしたか」
「みたいだなー。って事で俺はLv的に中央部の突破に1票!」
「ケイと同じで、私もそれに1票かな?」
「同じく中央突破に1票です!」
「まぁ、この選択肢ならそうなるよね。私も中央に1票で」
「って、ほぼ決定じゃねぇか。まぁ俺もそれに1票だが、ジェイさん、中央を飛んでいった場合、余裕はあるか?」
「……どうでしょうね? 皆さんの普段の戦闘を知っている訳でもないので何とも言い難いとこですが、敵の数は一気に増えますよ」
ふむ、確かにジェイさんが俺らの手札を全て知っている訳でもないし、逆に俺らもジェイさんと斬雨さんの手札を全て知っている訳ではないもんな。
初めて行くエリアで、どの程度の数の敵が出てくるか分からないとなれば慎重に行くべきか……? いや、逆に強行突破にしてジェイさんに手札を切らせるという手もあるな。敵が氷属性なら……うん、探るのにも丁度いいか。
「……やってみないと分からないってとこだが、ケイ、どうする?」
「……よし、空中から中央部の強行突破で行こう! 経験値を稼ぐつもりで行って、思ったより危なそうなら地上を進むのに変更する感じで!」
「おし、その方向性だな」
「了解です!」
「うん、それで良いかな!」
「あはは、まぁ確かに経験値は欲しいもんね」
とりあえずみんなの同意も得られたから、まずは一番危険っぽいルートを進んでみて駄目そうだったらルートを変える感じで! もしそれで危なくなったら、昇華魔法で一気に殲滅すれば逃げるくらいは問題なく出来るはず。
今回は昇華魔法の使えるジェイさんと、Lv24の斬雨さんがいるんだから、少しくらいは危険のある手段を使っても何とかなるだろ。2組の2人で発動する昇華魔法も使えるし、斬雨さんの高威力の攻撃にも期待したいとこだ。
「……何か嫌な予感がするのですが」
「ジェイもか? 俺もだぞ」
「少し気を引き締めて行きましょうか、斬雨」
「……そうだな」
ふっふっふ、ジェイさんも斬雨さんも手抜きが出来ない状況にしてあげようではないか! ……まぁ下手すりゃ俺達も危なくなる可能性も否定は出来ないけど、そうなったらそうなった時! あ、一応そうなった場合の話もしておくべきか?
「ジェイさん、斬雨さん、もし万が一にも全滅した場合の話なんだけど……」
「それは一応決めておくべきではありますね。……その場合は既に登録済みの転移地点から再開していただいて構いませんよ。そこから先は私達とは別行動という事にはなりますが……」
「あー、今ここで転移の種の登録のし直しも出来るけど?」
「いえ、それは大丈夫です。……私達の方が今日はもうここには転移して来れませんので」
「……なるほど、ここには転移して来てたのか。え、でもランダムリスポーンでもいいんじゃ?」
「それはそれで合流が面倒ではありますからね。まぁ先に進む事を最優先していただければ構いませんよ」
まぁ一番の目的はジェイさん達と一緒に行く事ではなく、俺らが青の群集の森林エリアへと行く事だしね。そういう意味ではジェイさん達とバラバラになるランダムリスポーンではなく、すぐに合流して先に進める手段の方が良いのか。俺らだけならすぐに合流出来るし。
「それじゃもし死んだ場合はそういう事で! ま、死ぬ気はないけど」
「もちろんなのさー!」
「最悪、アルの木だけは死守かな?」
「アルの木さえ無事なら、とりあえず共生進化は解除になっても1stの方はどうにかなるもんね」
「って事だ。どっちも纏めて復活出来るケイは万が一の時は殿な?」
「……あ、そうなるのか。よし、その時は任せとけ」
まぁ俺のコケとロブスターの場合はまとめてリスポーンになるし、離れ離れにはならないから適任ではあるよね。……いかん、青の群集ジェイさん達と離れたら合流がややこしくなるから念の為に考えているだけだけど、このままだと全滅が現実になりそうな気がする!?
「……どうしたのかな、ケイ?」
「あー、いや、何でもないから大丈夫。とにかく出発ー!」
「そうなのかな? それなら良いけど……」
「倒される前に倒すまでさー!」
「ま、そうなるよね。ジェイさん、斬雨さん、改めてよろしくね」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いします。……先程の件もありますし、手抜きは無しで行きましょうか」
「ま、手抜きをしてリスポーンってのも嫌だからな! やるからには全力だぜ!」
「おし、それじゃ全員俺に乗ってくれ。小型化解除!」
そうしてアルがクジラを元の大きさに戻していき、その背中の上にみんなが乗っていく。ちょっと話が脱線してた気はするけど、これでようやくこの先の森に進めるね。
さて、この先の森はあくまでも通過地点でしかない。でも、どの程度危険なのかは行ってみないと分からないのでそこは慎重にしないと。……あ、それならこうするか。
「念の為に守勢付与をかけていくけど、いる人ー?」
「それでしたら私の方でもかけていきましょうか」
「お、ジェイさんも付与魔法は習得済み?」
「えぇ、土魔法で取っていますね」
ほうほう、その辺も探ろうかと思っていたんだけど、ジェイさんめ、あっさりと手の内を出してくるとは……! いやまぁ、この場合は助かるからいいんだけどさ。
「それじゃ手分けをして守勢付与をかけとく?」
「……その方が良いでしょうね」
「よし、それじゃそんな感じで! 俺はジェイさんにかけてもらって、ジェイさんには俺がかけるとして……水の守勢付与が欲しい人ー?」
「お、それならケイさん、俺は水を頼むぜ! ジェイ以外の付与魔法ってのも使ってみたいからな」
「ケイ、俺も水で頼む。いざって時にはアクアウォールを付与魔法で強化したのを使いたい」
「えーと、斬雨さんとアルが水だな」
ふむふむ、違う属性を使ってみたい斬雨さんと、純粋に魔法で防御をする際に強化したいアルか。まぁ順当なとこではあるね。
「他のみんなはジェイさんの土の守勢付与でいい?」
「うん、それが良いかな」
「理由は斬雨さんと同じなのさー!」
「ちょっと気になるところではあるもんね」
「なるほどね。って事で、ジェイさん任せていいか?」
「えぇ、もちろんですよ。……では早速かけていきましょうか。『アースエンチャント』『アースエンチャント』『アースエンチャント』『アースエンチャント』!」
誰にかけるのかが決まると、ジェイさんがすぐに付与魔法をかけてくれた。おー、サヤもヨッシさんもハーレさんも、それぞれに3つの土の球が周囲を漂い始めたね。
俺にも守勢付与をかけてくれた……って、この状況だと俺は土魔法を持ってるから、付与魔法で強化した状態で発動が出来るのか。……ふむ、機会があれば使っておきたいな。
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 67/75(上限値使用:1): 魔力値 191/212
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 60/75(上限値使用:1): 魔力値 170/212
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 53/75(上限値使用:1): 魔力値 149/212
よし、これでアルの木と、ジェイさんのコケと、斬雨さんのタチウオに水の守勢付与をかけ終えた。ちゃんとそれぞれに水球が3つ漂っているから、これで問題なし!
「これで準備完了! それじゃ出発!」
「「「「おー!」」」」
「おうよ!」
「では、参りましょうか」
そうして戦闘準備……というよりは防御準備を整えて、雪に覆われた森へと進んでいく。空飛ぶクジラのアルに乗った状態だと、どの程度の敵が出てくるものか気になるところだね。
<『ニーヴェア雪山』から『氷樹の森』に移動しました>
さっきいた場所からエリアの切り替えまで少し距離はあったけど、氷樹の森へと移動は出来た。さっきまで眺めてはいたけども、松とか杉とかの針葉樹が主な木の種類っぽい。全体的に木が高いな。
木々の間は森林深部よりも広めで、森林エリアくらいか。全面的に雪が積もっているから、地上を移動するならするでちょっと工夫をしないと動きにくそうではあるね。
「おー!?」
「ハーレ、どうしたのかな?」
「サヤ、あれ! あっちー! みんなもー!」
「……入って早々にそこまで驚くような敵って出てきましたか?」
「いや、そんなのに覚えはねぇが……」
うん? ハーレさんが妙に反応をしているけども、ジェイさん達はそれが不自然なように感じているっぽいね。とりあえず、ハーレさんが指差している方向を向いてみるけど、これと言った感じの変わったものは見当たらない。
「ハーレさん、何を見つけたんだ?」
「右方向の杉の上の方に、白いリスっぽいのがいるのです!」
「え、ハーレ、それってどこにいるの……?」
「……どれだ?」
「分かんねぇんだけど!? 分かるか、ジェイ?」
「……いえ、私にも分かりませんね」
うーむ、右方向の杉と言われても何本もあるし、白いリスともなると雪に紛れているのかさっぱり分からない……。みんなも気付かないって事は擬態持ちの可能性もあるし、この辺はハーレさんの観察力が流石と言うべきか。
「あ、もしかしてあれかな?」
「おー! サヤは見つけてくれたー!」
「あはは、これは確かに分かりにくいかな? 多分、擬態で姿を隠してるんじゃない?」
「それなら看破をするまでさー! ケイさん、やってもいいー!?」
「あー、まぁ擬態した個体なら経験値も良いかもしれないし、良いぞー!」
「やったー! それじゃ『看破』!」
お、ハーレさんが看破をしたら、杉の木の結構上の方が揺れたね。あー、なるほど、確かに青白いリスっぽいのが見えて、全身から白光を放ち始め――
<ケイが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
<ケイ2ndが成熟体・暴走種を発見しました>
<成熟体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント8、融合進化ポイント8、生存進化ポイント8獲得しました>
……え? ちょっと待てぇー!? え、今のリスっぽいのって成熟体!? やばい、今のハーレさんの看破で成熟体相手にスキルを使ったから、これって襲われるやつじゃん!
くっ、やっぱり必要以上に全滅する可能性を考えていたら、それが現実になるのか……。あー、せめて少しくらいは探索させて欲しかったな。……無駄かもしれないけど、可能な限り逃げてみるか。




