第644話 二人で特訓
ハーレさんと2人でスキルの強化をしていき、約40分ほど経過した。特訓に使うスキルの行動値の消費が違い過ぎてハーレさんの行動値の回復が割と多かったけど、まぁそれは流石に仕方ない。
さてと、晩飯を食べた後に合流するのにハイルング高原への切り替え地点まで移動する必要があるから、そろそろ終わりにするか。
「ハーレさん、次で最後な!」
「はーい! 『並列制御』『略:風の操作』『略:ウィンドボム』!」
<行動値を2消費して『連殴打Lv2』を発動します> 行動値 32/69(上限値使用:7)
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『連殴打Lv2』が『連殴打Lv3』になりました>
<ケイ2ndが規定の条件を満たしたため、スキル『強連打』を取得しました>
お、連殴打がLv3に上がったから派生で強連打も取得になったね。っと、その前に向かってきている風の球へハサミを叩きつけて……くっ、やっぱり力負けして吹き飛ばされた。でも、何度も吹き飛ばされてたから着地は慣れたし、Lv1の時よりは威力も相殺出来ている。
今は再発動しているけど、途中で魔力集中の時間切れになった時は全然相手にもならなかったんだから、かなりマシにはなった。Lv3にもなったからもっと対抗出来るようになっただろうしね。
「やったー! クラゲの風魔法がLv5になったよー!」
「お、ハーレさんも今ので風魔法が上がったか」
「ふっふっふ、これでウィンドウォールが使えるのです! って、ケイさんもー!?」
「おうよ。派生で1段階上の連撃スキルもゲットしたぞ」
「それは大成果なのさー!」
「だな」
ちょっとした空き時間で間に合わせ的に取得した連撃系のスキルだけど、合間を見つけて鍛えていこう。主力は魔法で行くつもりだけど、1対1ではある程度以上の実力の人が相手だとそれだけではどうしようもないのは体験したし、オールラウンダーを目指すならこの辺は対応しとかないと駄目だろう。
そしてハーレさんが使えるようになったウィンドウォールは受け流す性質を持つ防壁魔法だから、今ある水と土と氷の防壁とはまた違った使い方も出来る。……ただ、共生進化の簡略指示で呼び出す場合はハーレさんのリスの少なめの魔力値を消費する事になるから、多用は出来ない事だけは忘れないようにしておかないとね。
「よし、それじゃ大急ぎでハイルング高原の手前まで行くぞ」
「おー!」
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 32/69 → 32/63(上限値使用:13)
手早く飛行鎧を展開して、ハーレさんがロブスターの背中に乗ってきている。何も言わずに飛び乗ってきたけど、移動としてはこれが一番早いから別に良いか。さてと、高度を上げて森の上まで移動完了っと。
「特攻船ケイ、出発です!」
「おいこら、変な呼び名を勝手につけるな!?」
「そんな事を言ってたら時間が無くなるよー!?」
「あーもう、落ちるなよ、ハーレさん!」
「落ちないから大丈夫なのさー!」
あ、リスで上に乗っているだけかと思ったら、俺のロブスターのハサミの根本にクラゲの触手を巻き付けて固定してるし……。俺の方で岩で固めて落ちないようにしようかと思ったけど、その必要はなさそうだ。
「どうせならハーレさん、初速の加速でもやるか?」
「おー、やるー!」
「それじゃ防壁を作るから、ウィンドボムの爆風をそこにぶつける感じでよろしく!」
「了解です! 『並列制御』『略:ウィンドボム』『略:風の操作』!」
さてと風を受け止めて推進力に変える為にも、受ける側を用意しないとね。見やすいように水の防壁……いや、安定性を重視して土の防壁でいくか。
<行動値5と魔力値15消費して『土魔法Lv5:アースウォール』を発動します> 行動値 27/63(上限値使用:13): 魔力値 197/212
魔法砲撃は発動したままだから、ロブスターの尻尾から魔法砲撃にしたアースウォールを展開! これで指向性を変えたウィンドボムを受け止める!
「おし、いい感じ!」
「いやっほー!」
そうやってハーレさんのウィンドボムを推進力に変えて、森林深部へと向けて飛んでいく。うん、今回のは速度が出過ぎない程度に加速出来ている。俺のロブスターのサイズならこのくらいが扱いやすくて、無理がない応用範囲だね。
さてと、それじゃ待ち合わせ場所の予定であるハイルング高原への切り替え地点……言い方を変えれば氷狼が出る辺りまで移動だな。ま、よっぽどの事がない限りはこの速度なら間に合うだろう。
「そういやハーレさん、魔力値の消費はどんなもん?」
「んー、やっぱりリスの魔力値が多くないから厳しめではあるよー! でも、普段の戦闘中なら魔力集中とか自己強化とか、あと小石の生成くらいにしか魔力値は使わないから割と大丈夫なのさー!」
「あー、そうか。物理攻撃がメインだから、俺みたいに魔力値は使わないんだな」
「そうなのさー! あくまで魔法は補助で使うのです!」
「ま、その辺は育て方の違いだな」
「そうなるねー!」
物理攻撃がメインとなるハーレさんとしては、魔力値の最大値が少ないという事はそれほど問題がある訳でもないんだな。
今後に関係してくるとしたら昇華魔法の威力だけど、これについてはさっきみたいな簡略指示からではなく、共生指示からの呼び出しで発動すれば良いだけか。
共生指示なら……この場合ならハーレさんのクラゲ側の消費した魔力値が再使用時間に加算されるってアルが言ってたから、それなら特に負担にならずに使えるはず。……まぁその辺は昇華まで行ってから考えよ。
<『ミズキの森林』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
そんな会話をしている間に森林深部まで戻ってきた。結構前に雨は上がっていたけども、森林深部も完全に晴れているね。ま、森の木々の隙間から少し見える地面の様子では、結構地面が濡れてるというか泥濘んでるっぽいけど。
とりあえずどこかに寄る予定もないからこのまま氷狼が出る辺りまで飛んで行って、晩飯を食う為にログアウトだな。
「ケイさん、ケイさん!」
「ん? どした?」
「元々試したかった内容ってどんなのー!?」
「あー、あれか」
ハーレさんが魔法の特訓をしたいという希望に合わせて、今回は断念したやつだな。んー、教えても良いけど、折角ならみんながいる時にやってみたくなってるんだよねー。
「それについてはみんなが揃ってからな」
「えー!? 教えてくれないんだー!?」
「まぁ実際に上手くいくか分からないし、先に種明かししたら面白みもなくなるからな。見てのお楽しみって事で」
「うー! でも私の希望を優先してもらったから、我慢しておきます!」
「そりゃどうも」
「みんな揃ったら見せてねー!」
「おうよ。ま、失敗する可能性もあるけどな」
「それはその時さー!」
「ま、そりゃそうだ」
おっと、そうしている内に氷狼のいる少し拓けた場所が見えてきた。お、どうやら氷狼戦をしてるっぽいね。……ふむ、4人PTとそれを見守るような集団がいるから、ボス戦に挑戦しているPTとそれを見守っている周回PTか。
何だかんだで結構進んできてはいるけど、周回PTも普通にいるんだな。あ、よく見たら周回PTっぽい人の共同体名が灰のサファリ同盟になってる。……なるほど、進化の軌跡の調達部門ってとこか。
「うわっと!?」
「『根の操作』! 大丈夫!?」
「助かった! 『微毒生成』『同族統率』! 行け!」
「支援する! 『ファイアボール』!」
「負けるもんか! 『魔力集中』『双爪撃』!」
お、今ボス戦をしているのは、ハチの人と、チューリップの人と、トカゲの人と、ネコの人か。全員が火を纏っているので、纏火を使用して戦っているっぽいね。
ふむ、苦戦というほどでもないけど、楽勝という感じでもないか。こうして以前に戦ったボスと戦っている人を見てみると、俺らも随分と強くなったものだなー。
「お、そこだ! いけ!」
「いやー、一生懸命なのを見てるのも良いもんだな」
「こら、見てるのは良いけど口出しは禁止だよ」
「そうだぞー! 邪魔はしないようにって言われてるだろー」
「あー、そういやそうだった……」
どうやら周回PTは周回PTで、あまり邪魔にならないように気を遣うようにはしているようである。ま、集中力を乱してたら邪魔でしかないし、そういう配慮も必要だよね。
さてもうあんまり時間もないし、とりあえず邪魔にならない様に少し外れた所に降りていこう。……よし、この辺に降りてっと。
「おし、この辺なら問題ないだろ」
「そだねー! それにしてもラックから聞いてたけど、周回部門が出来てるんだねー!」
「お、そうだと思ったけどやっぱりか。あれ、新規挑戦者はどうしてんの?」
「えっと、他の初期エリアの人とかで空いてる人に来てもらったり、依頼として募集してるんだって! 報酬は主に加工品アイテムだそうです!」
「あー、なるほど」
俺らも他の初期エリアでのボスとか倒してないやつの方が多いし、そういう人を回復アイテムとかと交換で依頼を出しているのか。単純にまだ倒すのが厳しい人とか、普段はPTを組まないソロの人とかならそういう依頼を利用して報酬を貰いつつ突破するのもありだろうね。
「……そういやボスで思い出したけど、森林深部の東側の湿地は行ってないままだよなー」
「はっ!? そういやそうだったね!?」
「……今更ではあるけど、色々行く予定が片付いたら行ってみる?」
「賛成です!」
ま、とりあえず今日は色々と予定はしているからまた今度にはなるけど、流石に1回くらいは見に行っておいても良いよな。……結局俺らは受けないまま完了した整備クエストで作られた足場ってのも見てみたいとこではあるしね。
「その辺については雪山までの移動中にでも相談していくか」
「それが良いと思います! それじゃ晩御飯だー!」
「ほいよっと。そういや今日のメニューって聞いてる?」
「特には聞いてないです! 今日はなんだろなー?」
「……まぁログアウトすればすぐに分かるか」
「そだねー! あ、それでログアウトしたらサヤとヨッシにこの辺で待ち合わせって伝えたら良いんだよね!?」
「そうなるなー。あ、ハーレさん的には森林深部側とハイルング高原側のどっちがいい?」
これについてはすぐに移動が可能な距離だからどっちでも良いと言えばどっちでも良いんだけど、もし希望があるのならそれに合わせ方が良いよな。
「うーん、晴れてたらハイルング高原が良いけど、雨だったら森林深部が良いです!」
「……そう来たか。それなら俺が一番最後になるだろうし、天気に合わせて好きな方で待っててくれ」
「はーい! ログインしたのを確認したら、共同体のチャットで連絡するねー!」
「ほいよっと」
とりあえず天気に左右されるという事にはなったけど、これで待ち合わせ場所は決定である。……夕方は雷雨になってるエリアに居たから、夜は晴れてるといいなー。
まぁそればっかりはログインしてみるまで分からないので、気にし過ぎても仕方ない。上風の丘では雷雨の時には雷属性の敵も出てきたし、雨なら雨で特有の敵とかも出てきそうだから悪い事ばかりじゃなさそうだしね。
「それじゃ一旦ログアウトって事で!」
「お腹空いたのさー!」
そうして晩飯を食べる為に、一度ログアウトである。さーて、メニューは不明という事だけど、今日の晩飯はなんだろう?
◇ ◇ ◇
そしていつものログイン場面へとやってきた。今回のいったんの胴体には『腹減った……。買い出しの連中、携帯端末を忘れていったけど支払いどうする気だよ……』となっている。
いやいや、そんなの知らないって! いや、確かに支払い手段を持たず、その上連絡手段まで忘れていったという事だから、割と大変な状況だとは思うけど、プレイヤーにそれを伝えてどうしろと!? ……うん、変な内容が時々あるのは今更だし、気にしないでおこう。
「いったん、何か新しいお知らせってある?」
「えっと、今は特にはないかな〜」
「ほいよっと。それじゃスクショの方は?」
「今は特には来てないよ〜」
「あ、そうなんだ」
ふむ、フェルスさん達からでもスクショの承諾が来ているかと思ったけど、特にそういう事も無かったか。まぁこの辺はタイミングの問題かもしれないし、フェルスさん達は外部出力をしないだけかもしれないからなー。
ハーレさんがサファリ系プレイヤーだったりして、地味にサファリ系プレイヤーとの接点が多いからスクショの承諾が来る事も多いけど、そういう人達ばかりでもないもんね。
「あ、そういやいったん、少し質問いい?」
「はいはい〜。内容によっては答えられない事もあるけど、どうぞ〜」
「あの新しく手引きが出来たじゃん? あれって攻略が停滞した場合の強制開示の内容なんだよな?」
「うん、そうなるね〜」
「そこで質問なんだけど、あの強制開示って無所属にはどういう対応になるんだ?」
俺自身は無所属になる気はないから気にする必要もない内容ではあるんだけど、ふと気になったのでちょっと確認しておきたい。停滞があった場合には情報の強制開示があると告知されているから、聞けば答えてくれる範囲だとは思うんだけど……。
「無所属だと強制情報開示はどうなるかって質問だね〜。無所属については、そもそも群集由来の『情報共有板』『群集内交流板』『群集外交流板』『まとめ機能』の全てが無いから、群集所属と同じような情報交換は出来ない仕様だからね〜。そういう理由から無所属に対しては強制開示はありません〜」
「……なるほどね」
やっぱり基本的にはどこかの群集に所属するのが基本のゲームデザインになってるんだな。そういう仕様だから、無所属に関しては色んな事を自力でするしかない訳か。
だからこそ、群集の外部戦力としての役割を担える可能性があるのかもね。……昨日、青の群集と白の無所属で取引の持ちかけみたいなのもあったし、その辺は警戒しておくべきか。
「いったん、サンキュー! 参考になった」
「どういたしまして〜。この情報は特に伏せている情報じゃないしヘルプにも載ってるから、普通に話してくれて問題ないからね〜」
「ほいよっと」
てか、ヘルプに載ってるんかい! いや、ヘルプを見てない俺が悪いんだけどね。基本的に群集に所属していて無所属になる気が無い人には意味がない話ではあるけど、一応聞いておいて正解だな。
……ふむ、無所属は前にネス湖までレナさんを乗せてきた空飛ぶタコの人とかもいるし、ウィルさん達以外の無所属の人とちょっと接触してみたいな。……ま、その辺についても晩飯食った後にみんなと相談してみるか。
「さてと、晩飯食ってくるからログアウトをよろしく!」
「はいはい〜。ご飯休憩だね〜」
そうしていったんに見送られながらログアウトをしていった。さて、今日の晩飯はなんだろね?




