第614話 操作のツバメ
基本方針は決まったので、続けて指示出しをしていこう。今はアルが防御に専念してくれているけど、いつまでも任せっぱなしって訳にもいかないしね。
それにチラホラとツバメが風の操作をしているようで、妙な挙動の風の弾が飛んできているから、その対応もしていかないと……。
「ハーレさんは散弾投擲や連投擲で魔法の迎撃! 威力は低くていいから、迎撃に専念で!」
「了解です! 『魔力集中』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『連投擲・風』!」
「アル、防御はもういい。攻撃の迎撃はハーレさんに任せて、根の操作でツバメの動きを制限! 俺も土魔法の連射をやる!」
「よしきた! 『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」
「ヨッシさんは合図をしたら拘束をよろしく。属性は氷で!」
「了解」!
よし、アルの水の防壁で凌いでいる間に指示出しは済んだ。ここからは俺のアースバレットの連射とアルの根の操作でツバメの動きを制限しつつ、攻撃の対処はハーレさんに任せていく。
そこからヨッシさんに拘束してもらって、その後に一気にベスタとサヤの水の攻勢付与による追撃付きの強力な一撃を確実に当てる!
「おらよ!」
「ふっふっふ、邪魔をするのさー! 『散弾投擲・風』!」
さて、アルが根の操作でツバメを翻弄してるし、ツバメの反撃の魔法が操作されるの見越してハーレさんが散弾投擲で面制圧を行っている。サヤとベスタのチャージはもう少しかかりそうだから、そこまでの時間は稼いで拘束するのみ!
<行動値10と魔力値90消費して『半自動制御Lv1:登録枠1』を発動します> 行動値 32/72(上限値使用:1): 魔力値 71/206 再使用時間 90秒
並列制御でコケとロブスターの半自動制御の同時発動でアースバレットの連射をしようかとも思ったけど、魔力値が足らないので片方になるのは仕方ないか。
とはいっても、これでもアースバレットの45連発の連射だし、アルの大量の操作している根と合わせれば動きを制限するには充分だろう。
さて、アルの根を避けたところを狙って、まずは魔法砲撃にしたアースバレットの3連射からだな! そこから通常発動とも組み合わせて、翻弄しながら動きを制限してやるぞ!
「おー! ケイさんの小石の連射だー! 『アースクリエイト』『散弾投擲』!」
「ハーレさん、ナイス迎撃! アル、そっちに行ったぞ!」
「おらよ! ちっ、素早い!」
俺のアースバレットの連射をツバメが強風の操作らしき横殴りの風で吹き飛ばしてきたけど、その風にあえて巻き込むように生成した砂を投げ込んだハーレさんがツバメの動きを鈍らせていた。
そこからアルが複数の根を叩きつけるようにしてツバメに攻撃を仕掛けていくか、ヒラリと躱されてしまっている。
でも、その回避行動で動きが単調になったぞ。……下からはアルの根が待ち構えているし、パッと見た感じでは脅威の少ない方向に回避しようとしている気配がある。よし、これなら上へと方向を誘導するか。
「アル、上へと誘導する! ヨッシさんは上空で拘束の待機。拘束魔法じゃなくて手動操作で氷漬けはいけるか?」
「うん、それは問題ないよ」
「んじゃ、それで! アル、根は届くか?」
「クジラを飛ばしながら行けば問題ねぇよ!」
「よし、それじゃサヤとベスタのチャージが終わるまで時間を稼ぐぞ」
「おう!」
さて、魔法砲撃による連射と通常発動の同時射出を混ぜつつ、アルのクジラの背から伸びている木の根がツバメを上空へと追い詰めていく。
ふむふむ、ちょいちょい当たってはいるし、激的に硬いという事もないな。でも、回避性能がかなり高めだな、このツバメ。
「『狙撃』! こっちはこれなのさー! 『散弾投擲』!」
ツバメも回避をしつつ風魔法を撃ってきてはいるけども、ハーレさんが上手く迎撃してくれているね。ベスタの忠告通り、操作で挙動が変わる前を狙って狙撃をして、先に操作をされてしまえば散弾投擲で対応している。
おかげで俺らもツバメを追い詰めてるし、ヨッシさんが上空へと先に飛んでいくのが邪魔される事もなかった。さて、俺のアースバレットも後1回分だし、そろそろサヤとベスタの――
「チャージ完了かな!」
「俺も準備完了だ」
「よし、ナイスタイミング! ヨッシさん、俺の土魔法を回避した瞬間を狙ってくれ!」
「了解!」
残り1回分のアースバレットは魔法砲撃での連射ではなく、通常発動での同時射出でいこう。狙いはツバメの回避方向が真上になるように、下から別々に斜め方向に角度をつけて違う3ヵ所からの同時射出だ。
……よし、今! お、狙った上方向にツバメが回避したね。そしてこっちも狙い通りに上空で待機をしていたヨッシさんのほぼ目の前だな。
あ、追い詰められたツバメがヨッシさんに向けて風の弾を3発ほど撃ち出した。しかもいきなり挙動が変ってことは操作されたウィンドボールか、これ!
「ヨッシの邪魔はさせないのさー! 『連速投擲』!」
「ハーレ、ありがと! 『並列制御』『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
おー、ツバメの撃ち出したウィンドボールを銀光を放つハーレさんの連速投擲が破壊していき、そのまま連続してツバメ本体にも投擲が当たっていく。
……うん、投擲がかなり良い感じに当たってHPは6割くらい消し飛んでるね。そしてヨッシさんの氷漬けも成功している。あーうん、かなり上手く行ったんだけど……。
「……これ以上の攻撃ってあんまり必要なさそうじゃね?」
「……あはは、そうっぽいけど無駄撃ちは勘弁かな?」
「確実にオーバーキルではあるな。元々捉えにくい相手ではあるから、完全に無駄という訳ではないが……」
「……ベスタが捉えにくいって言うなら、結構面倒な相手ではあるんだな。だから、ケイのオーバーキル気味の指示もそのままだったのか」
「……外れるのを前提に複数の高威力の一撃を用意する判断自体は間違ってはいないし、PTでの戦闘では常套手段でもあるからな。どっちかというと、ケイとアルマースの行動誘導が異常な水準だっただけだぞ」
「ベスタがそれを言うのか!?」
「それはアルに同意だぞ! ……ベスタ、確実に1人であのツバメを仕留めれるよな?」
「あぁ、それくらいは楽勝だな。だが、それをやってはPTでいる意味がないし、初見の敵相手なら尚更だ」
あー、やっぱりベスタだけでもこのツバメは仕留められるんだ。まぁLv差もあるんだろうけど、空中を駆ける手段を持っている今のベスタなら、あの素早い挙動にもあっさり対応出来るだろうね。
「参考までに少し質問を良いかな?」
「内容にもよるが、どんな内容だ?」
「えっと、大体の予想はついてるんだけど、このツバメってHPや防御は低いのかな?」
「あぁ、それについてはその通りだ。だからPTで操作の特性持ちを相手にする時は、まず確実に攻撃を当てる状況を整える必要がある」
「おー! ケイさんの狙い自体は良かったんだね! オーバーキルな状況になっただけで!」
「……まぁオーバーキルとは言ったが、判断は間違ってはいない。で、ケイはまだ他にも予定はしてたんだろう?」
おっと、まだ他にも色々とやるつもりだったんだけど、その辺は気付かれてたか。……まぁほぼ無意味になりそうだけど、言っといても特に問題はないな。
「えーと、ヨッシさんの氷の操作で加速しつつ地面に叩きつけて、同時にアクアインパクトを叩き込んだ後に、サヤとベスタに任せるつもりだったぞ。それでまだ無理だったら、俺とアルとでウォーターフォールの予定だった。ま、目立つから昇華魔法は最終手段だったけど」
「……どう考えても更にオーバーキルじゃないかな、それ?」
「……間違いなく、そうだろうな」
えー、種類が違うとはいえ逃げ足の早いカニに逃げられた事があるから、ツバメの移動速度も考慮して万が一にも避けられた時の事を考えて、予備の策を用意してただけなんだけど……。ベスタから見てもこのツバメは攻撃が当てにくいみたいだしさ。
まぁ予定のものが見事に全部決まればオーバーキルなのは否定はしないけどさ。でももう捕獲出来てるし、省けるものは省いてもいいかな。
「ま、完全にオーバーキルだし俺の魔法は無しでいいから、さっさと仕留めよう。ヨッシさん、そのまま地面に叩きつけるつもりで氷の操作をしてもらえる?」
「それは良いけど、氷漬けのままならあまり意味ないんじゃ? ……あ、もしかして叩きつける直前で解除すればいい?」
「おう、大正解! そんで、サヤとベスタは氷漬けから解除されたツバメを仕留めてくれ」
「……地面に叩きつけた後だと、もう死んでそうな気がするかな?」
「……同感だな。よし、サヤは地面に降りて斬り上げるように発動しろ。俺はそれに合わせて斬り下ろす。オーバーキルだが、無駄打ちよりは気分的には良いだろう」
「うん、分かったかな」
「ヨッシは解除のタイミングを地面への直撃より少し早めに行え」
「了解!」
「ケイ、勝手に指示は出したがそれで構わないか?」
「おう、それは問題ないぞ! ぶっちゃけ、やり過ぎたしな!」
「……だろうな」
流石にちょっとボス戦でもない雑魚戦に対しては過剰戦力を注ぎ込み過ぎた自覚はあるし、それをベスタは出来るだけ無駄にしないように配慮してくれたんだから文句を言うつもりなんか欠片もない。……いやー、やり過ぎも程々にしとかないとね。
「それじゃ行くよ! えい!」
そのヨッシさんの掛け声と共に氷漬けのツバメが地面に向けて急降下していき、地面まで1メートルというところで氷が解除されていく。ツバメは凍結の状態異常にはなっていて動きも鈍く、空中を駆けるベスタと地上に降りたサヤが上下からの挟撃体勢へなっていた。
「ここかな!」
「良いタイミングだ、サヤ」
そしてサヤとベスタの眩い銀光を放つ2つの爪の1撃が決まり、ツバメのHPが全て無くなってポリゴンとなって砕け散っていった。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
お、瘴気強化種の討伐報酬ゲット。共闘イベントが終わって瘴気強化種の数は減っているって話だったと思うけど、全くいないって訳でもないんだな。
「わっ!? 追撃の水刃かな!?」
「ちっ! こっちの発動は少しタイムラグがあるか」
「……何か、すまん」
あー、アクアエンチャントでの攻勢付与による追撃効果も発生したけど、既に少しの時間差でツバメが死んでいたので、サヤとベスタへお互いに向けて発動してしまったようである。2人とも流石の反応速度で回避をしていたけど、何か悪い事をしてしまった気分……。
「ケイ、びっくりはしたけど大丈夫だからね。雑魚敵相手にはちょっと強力過ぎるけど、これから行くドラゴン戦には役立ちそうかな!」
「……俺も直接付与されて使ったのは初めてだが、この威力は申し分ないな。ケイ、まだ2発分は残っているが、岩山へ辿り着くまで切らさずに付与をしてもらえるか?」
「あーうん、それなら問題ないし、やっとくよ」
そっか、ベスタ自身は魔法を使ってはいるものの、俺ほど上がっている訳じゃないんだもんな。付与魔法自体は今日の午前中に情報としては知ったけど、自分が付与されて使うのはさっきのが初めてだったのか。
付与がある状態の攻撃に慣れるという意味では、さっきの完全な無駄撃ちみたいな追撃の水刃も決して無駄ではなかったんだね。よし、まだ道中でも戦闘はあるだろうし、俺は俺で付与魔法を使っていきますか!
まぁまだサヤもベスタも周囲を漂う2つの水球は残っているから、それが切れたらかけ直しだな。
「あ、ケイ。それなら俺にも付与を頼んでいいか?」
「え、アルもか? それは別に良いけど、攻勢付与と守勢付与のどっちを付与すればいい?」
「守勢付与を頼むわ。自動防御の性能を実戦の中で試しておきたいからな」
「あ、なるほどね。それは了解っと」
アルの意図は分かったし、実際にこれは試しておきたいとこではあるもんな。付与魔法には色々な使い方があるから、その辺をちゃんと把握して使うべき時にちゃんと使えるようにしておきたいね。
「はい! そういう事なら、私は攻勢付与が欲しいです!」
「ハーレさんもか。ま、それもやっといた方が良いのかもなー。……ふむ、折角だしヨッシさんはどうする?」
「あ、そだね。それなら守勢付与をかけてもらいたいけど……ケイさん、水の風除けをしてたら行動値も魔力値も回復しないけど、その辺はどうするの?」
「あ……」
言われるまで失念してたけど、ここに来るまでの間にしていた水の風除けを発動している最中だと確かに行動値や魔力値は回復しない……。全員にアクアエンチャントをかけるとなると結構な消費量だし、消耗した状態で回復しない状況にするのは危険か。となれば、ここで取る手段は1つのみ!
「よし、水の風除けはアル自身に任せた!」
「……ま、それが無難ではあるか。ただ、その場合は俺は移動以外はほぼ何も出来なくなると思ってくれ」
「戦闘は私達に任せてくださいなー!」
「いつもの事ではあるけど、役割分担かな!」
「さっきの感じなら、ここの敵は大丈夫そうだしね」
「……それもそうだな」
よし、それじゃこれで役割分担については問題はないね。ふー、アルも水の昇華を取っていてくれたから、こういう役割分担も出来るようになったもんだな。同じスキルがPTとして重複していたとしても、役目を分けたい時には出番もちゃんとあるのが実感出来たよ。
「さて、それじゃみんなに付与をしていきますか」
「おう、頼む」
「ケイさん、よろしくお願いします!」
「よろしくね、ケイさん」
「おうよ!」
さてと、移動を再開する前にみんなに付与魔法かけていこうじゃないか。まだまだ覚えて間もない付与魔法だけど、ちょっとずつでも使い慣れていかないとね。




