第609話 スクショの下準備 下
さてと、それじゃキノコ軍団とタケノコ軍団のスクショ撮影の最終準備入っていこうじゃないか。他のみんなはそれぞれの役目をやっているので、俺とベスタとラックさんで崖の一部を斬り崩していこう。
「ケイ、ラック、お前らは空中で崩れる崖の岩の対処をしろ。並列制御を使えば、同時に巨大な岩でも4つまでは操作は出来るな?」
「……そういう言い方をするって事は、最低でも4分割はするんだな?」
「あはは、大規模になりそうだねー」
「まぁその予定だ。ラック、念の為に聞くが空中での移動手段はあるか?」
「それなら移動操作制御に岩の操作を組み込んでるから大丈夫。ケイさんは……うん、聞くまでもないね」
「まー、既に飛んでるしね」
水のカーペットに乗ったままなんだから、飛行については問題はない。さて、盛大にベスタが崖を斬り崩すつもりのようだし、その辺の調整をしないとね。……放置してそのまま下に落下させても良いんだろうけど、衝撃を与え過ぎて崖自体が盛大に崩れたら困るしさ。
「よし、ケイとラックは崖の正面で少し距離を取って待機。俺が一気に崖を斬り崩す」
「ほいよっと」
「うん、分かったよ。『移動操作制御』!」
「それでは始めるぞ。『飛翔疾走』『魔力集中』『アクアクリエイト』『操作属性付与』『並列制御』『断刀・水』『重硬爪撃・水』!」
「わぁ! 大技でかなり大掛かりな事をするんだね」
「みたいだな。とりあえずラックさん、俺らも移動しよう」
「あ、うん。そうだね」
そしてベスタは崖上で2つの応用スキルを左右の爪でチャージを開始していた。青色を帯びた銀光が徐々に強くなっていく。どうやら水の追撃効果……この場合だと水刃を使うつもりみたいだね。
それと同時に俺とラックさんはそれぞれの飛行手段で崖と向かい合う位置へと飛んでいく。ラックさんの飛行手段って岩の操作を移動操作制御に登録したものみたいだけど、普通に岩の上に乗っているだけなのか。
「ん? ケイさん、私の事を見てどうかした?」
「あー、いや普通に岩に乗ってるだけなんだなーって思ってさ」
「あはは、そりゃそうだよ。私はそんなに戦闘はしないからケイさんみたいに高機動は必要ないからね」
「……なるほど、そういうもんか。ってあれ? 俺の岩での飛行方法ってラックさんに見せたっけ?」
「それならエンのとこで戦闘のダイジェストの見たよー! あれ、凄いねー?」
「お、それはどうも。そっか、あそこに映し出されてたんだな」
ふむふむ、なんだかんだであのダイジェスト映像はそれなりに役には立つのかもしれない。……たまに空き時間が出来た時にはあれを眺めているのも良いかもね。
さて、真正面に崖が見える位置に4メートルほど距離を取った状態で空中で待機。後はベスタのチャージが終わるのを待つとしよう。
お、少し待てばベスタのチャージが終わったみたいだね。さて、何となく予想は出来ているけど、どういうふうに斬り崩すのかな? 微妙に手数は足りてない気もするんだよなー。
「……よし、準備完了だ。ケイ、合図をしたらアクアウォールを崖に向けて適当なとこに展開しろ」
「……へ? ……あっ、そういう事か。了解だ、ベスタ!」
「え、どういう事? ……あ、そっか。再使用時間は待たないつもりなんだね」
「それでは行くぞ!」
そうしてまずベスタは崖の上から地面に向けて爪で一閃を繰り出していく。おぉ、今いる場所からは見えないけど、結構な切断音が聞こえてきた。そこからベスタは俺らの前である崖側面へと空中を駆けてきて、眩い青い銀光を放つの右の爪を振り抜き、鋭い水刃で崖へと真横に斬り込みをいれていく。
「ケイ、やれ! 『並列制御』『連閃・水』『爪刃双閃舞・水』」
「ほいよっと。魔法砲撃にするから、使いやすい位置で展開してくれ!」
「あぁ、それで構わん!」
合図があったので、頼まれた通りにアクアウォールを撃っていこう。アクアボールとかでも良いんだろうけど、回数調整が自由にしやすいアクアウォールの方が良いだろうしね。
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 71/71 → 70/70(上限値使用:3)
<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』を発動します> 行動値 65/70(上限値使用:3): 魔力値 191/206
さて、頼まれたようにベスタの近くへとアクアウォールになる水弾を発射! これでベスタは連撃数を稼いで、威力を高めた上で斬り崩すのだろう。
「よし、それでいい!」
「ラックさん、俺らも準備しとくぞ」
「そだね!」
そうして連撃数を稼いで青い銀光を強めたベスタが、新たに水平方向に1つの斬り込みを、垂直方向に等間隔を空けて3つの斬り込みを入れていった。これで4つのブロックに斬り分けられた状態になったんだろう。まぁ完全に奥まで斬れているかは目視は出来ないけど、その辺は岩の操作で強引にやればいい。
そのまま切断状態を確認するようにベスタが斬った崖の上に行くと、斬った部分がバランスを保て……いや、ベスタがバランスを崩したな!? どうやらちゃんと斬れていたっぽいね!
「ラックさんは下2つのブロックを任せた! 上2つは俺がやる!」
「あ、うん。お願い、ケイさん! 『並列制御』『岩の操作』『岩の操作』!」
今まさに崩れてきている斬り分けられた崖をそのまま下に落下しないように岩の操作が必須だし、もう不要になったアクアウォールを解除。
えーと、斬られて出来た1つのブロックが大きさ的に3メートル四方ってとこか。ま、なんとかなるよな。……これで岩の操作の対象外とかはやめてくれよ?
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』は並列発動の待機になります> 行動値 46/70(上限値使用:3)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を38消費して『岩の操作Lv3』は並列発動の待機になります> 行動値 8/70(上限値使用:3)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
よし、問題なく指定出来た。ふー、とりあえず操作した2つの崖を斬り分けた岩のブロックはその辺に積んでおこう。……それにしても追撃の水刃で斬っていたけど、斬れ味が凄まじいね。
「よいしょっと。これだけ綺麗に斬れてるなら、斬られた崖の方の微調整はいらないかな?」
「ケイ、ちょっと来い!」
「……そうでもないっぽいぞ、ラックさん」
「あはは、そうみたいだねー」
斬り崩した崖の部分に降り立ったベスタが何やら呼んでいるもんな。……さて、どういう問題があったのやら。とりあえず急いでそこまで飛んでいこう。
あー、見てみて納得。水刃を使った事で地面が濡れてしまっているのか。……この程度ならすぐに乾くとは思うし、問題になる範囲ではない気もする。
「ケイ、念の為に光の操作で濡れたのを蒸発はさせられるか?」
「それは出来ると思うけど、行動値が厳しいぞ……?」
この後に炎の操作も使うんだから、せめてその分だけの行動値の回復はさせないとまずいんだよな。少し回復させないと次の段階に進めなくなってしまう。
「それなら心配はいらん。どっちにしろ、俺も炎の操作の使用には少し回復が必要だ。それに2人で炎の操作を使おうと思えば天然産の火を使う必要があるから、ケイの光の操作は着火用でもある」
「あ、そういえばそうか。魔法産は生成した本人しか操作出来ないんだったっけ」
他人の魔法で生成したものを操作出来ると色々問題があるから、そういう制限があるんだった。そういう意味では薪に着火させるのと、余計な水分を蒸発させるのが両方可能な光の操作は一石二鳥ではあるんだな。
「そういう事なら了解っと」
「それなら私は上から薪を持ってくるよ。私はぎりぎり行動値は足りるからね」
「ラックさん、任せた!」
「うん、任された!」
「さて、俺は下の薪をインベントリに入れて持ってくるか」
「あ、それもあったな。よろしく、ベスタ!」
「ケイは行動値が回復次第、光の操作を頼むぞ」
「ほいよっと」
という事で、少しの間だけど別行動である。出来るだけ行動値を早めに回復させたいけど、どこかに敵がいないかな? いたら養分吸収で行動値の回復を早めるんだけど……流石に獲物察知で行動値を使うのは駄目だろうね。
うーん、行動値を使わずに敵を見つけて養分吸収を発動する手段か。……そんなに都合のいい手段は存在しないよな……。ここは大人しく回復に専念しようっと。
そうしてしばらくすると、ベスタが何かを咥えて戻ってきた。……これはなんか青いタケノコだな。あ、黒いカーソルで発見報酬が出ないから残滓か瘴気強化種? でも、なんでこんなの?
「雑魚の成長体だが、偶然見つけた。養分吸収で行動値の回復速度を上げとけ」
「お、そりゃ助かる! でももう瀕死なのはなんで?」
「……これでも最低限まで加減はしたんだぞ」
「……なるほど、ベスタの攻撃の威力が高過ぎただけか。ところでコケの養分吸収ってベスタにも使えたりする?」
「あー、使えはするが普通の植物系の仕様に変わってHPを吸収するだけだな」
「あ、そうなんだ」
ふーん、てっきりコケの養分吸収の仕様のままで行動値の回復速度の上昇かと思ったけど、そうではなかったのか。流石にそれが出来ると融合種が強くなり過ぎる……って、それじゃベスタは回復スキル持ちになるのか!? うわー、それはそれで凶悪だなぁ……。
「……とりあえず、このタケノコが死ぬ前にさっさと養分吸収をしてしまえ」
「あ、そりゃそうだ」
折角ベスタが確保してきてくれたタケノコを無駄にしたら勿体無いもんな。サクッと養分吸収をしてしまおう。
<行動値を1消費して『養分吸収Lv1』を発動します> 行動値 19/70(上限値使用:3)
ベスタが咥えているタケノコをロブスターの背中にあるコケに触れさせてくれたので、そこから養分吸収でHPを吸い取って行動値の回復速度を上昇させていく。ふっふっふ、まだLvが低いとはいえ多少の効果はあるからね!
「薪を持ってきたよー!」
「おかえり、ラックさん。上の状況はどう?」
「上はほぼ準備完了だから、私達待ちになってるね」
「ふむふむ」
生成した岩に薪を乗せて戻ってきたラックさんによると、ほぼ準備は完了か。俺らは行動値の関係でもう少しかかりはするけど、戦闘中という訳でもないからそこまで極端に時間はかからない。それに回復速度を上げる手段も確保出来たしね。
「ところでその青いタケノコは何?」
「ベスタが捕まえてきてくれた、俺の行動値の回復の為の生贄」
「生贄って……あ、そういえばコケの養分吸収は仕様が違うんだったっけ。そっか、そっか。それなら確かに生贄だね」
この状況においてはこのタケノコは間違いなく生贄だよなー。さて、ラックさんも薪を持ってきてくれたし、辛うじて光の操作を使う行動値はある。
薪を燃やしていくのに多少の時間はかかるはずだから、その間に炎の操作を使う為の行動値を回復させるとして、今は光の操作で濡れている水の蒸発と薪への着火をやっていこうじゃないか。
「ぎりぎりだけど光の操作は使えるからそっちからやっていくけど、いい?」
「あぁ、構わんぞ」
「それが終わったら薪をそこに置いていくね」
「ほいよっと。それじゃ光の操作をやっていくぞー!」
今日は昼間の日だし、快晴だから光の操作を使うにはかなりの好条件だよな。さて、それじゃ水の蒸発と着火をやっていきますか!
<行動値を19消費して『光の操作Lv3』を発動します> 行動値 0/70(上限値使用:3)
太陽光を発火しない程度に収束させて、斬り取られた崖の一部を表面を炙っていく。うーん、ちょっと収束が不足気味か? もうちょっと収束させて……よし、目に見えて表面の湿っているのが乾いているね。
「ケイ、乾いた部分に俺が薪を置いていくからそこに火を着けていってくれ」
「ほいよっと!」
「ラックはある程度、火が燃え上がった段階で薪を一気に追加しろ。そこからは俺の火の操作で一気に燃え広がらせる」
「うん、分かったよ」
「ケイは光の操作でやるべき事が終わり次第、行動値の回復に専念だ。それが終わり次第、炎の操作で一気にやるぞ」
「おうよ!」
「そこまで行ったら、私はスクショの撮影しに上に行くからね。炎の操作の微調整については、ハーレ経由でいい?」
「それで問題なし!」
「あぁ、問題ない。『火の操作』!」
「うん、それじゃそれで決定だね」
そうやってスクショの撮影の準備も大詰めになってきた。俺が光の操作で乾かした場所にベスタが薪を置いてそれに火を着け、火の操作で操って他の薪へも火を着けていく。
まぁ昇華になっていない火の操作では支配下に置ける範囲が限られるので、操作されていない火がどんどん増えてきているけど、そこは薪を追加投入する事で対応していた。
そうやって作業をしていけばそう時間もかからずに予定していた工程も終わり、俺の炎の操作の発動に必要なだけの行動値も回復した。ふー、ようやく準備完了だな。
「準備は出来たから、私は上に戻るね。そこからの手順はさっき言った通りにお願いね」
「おうよ!」
「あぁ、任せておけ」
「よろしくね、ケイさん、ベスタさん!」
そうしてラックさんは崖上へと移動していった。さー、最後の大詰めだ。轟々と燃え盛っている目の前の広範囲の焚き火を俺とベスタの炎の操作を使って、キノコ軍団とタケノコ軍団の対決シーンの背景を演出すれば今回のスクショの撮影でやるべき事は終わりだね。




