第569話 Lv7の水魔法
スキル強化の種を使って水魔法がLv7になったので、ここからは実際に使ってみていかないとな。その結果を確認してから、情報共有板へ書き込んでいこう。
「ケイ、どうだ?」
「無事に水魔法はLv7になったぞ!」
「それじゃLv7の魔法の検証をしていくか。的がいるなら、火の球を用意するぜ?」
「的は発動してみて性質を見てからでいいや。的が必要かどうかも分からないしさ」
「あー、それもそだな」
「ま、見てみるのが先決か」
「そういう事。それじゃ発動、いくぞー!」
「どんな魔法なんだろうな?」
「すっげぇ気になるんだよな」
思いっきりアルも紅焔さんも俺の方を見ているね。まぁまだ誰も内容を知らない魔法となれば、その反応も分かる。俺だって今思いっきり気になってるしね。だからこそ、それをこれから確認するまで!
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 64/71(上限値使用:2): 魔力値 185/206
ん……? 水魔法Lv7の名前ってアクアエンチャントなのか。っていうか、発動範囲の指定がないんだけど、これってどういう事……? 思いっきり視界内に付与対象が存在しませんとか出てるんだけど……。
「……ケイ?」
「どした、ケイさん?」
「……発動の指定が出来ないし、使い方がさっぱり分からん」
「「……はぁ!?」」
「……俺も今はそんな心境。これ、どうしよ……」
「あー、ケイ、ヘルプ見ろ、ヘルプ。取得したスキルなら簡単だけど使い方については出てる筈だ」
「あ、そうか。ヘルプがあった! ちょっと確認してくる!」
「おうよ」
「そういやケイさんはあんまりヘルプは見ないんだっけか……」
普段はヘルプをほとんど見る事はないけど、これは流石に意味不明過ぎるし、ここはアルの言うように素直にヘルプを確認していこう。手探りでやってみてもいいんだけど、せめて発動方法くらいは見てもいいよね……。
えーと、ヘルプの魔法の項目を……お、水魔法Lv7の項目があった。どれどれ……ふむふむ、あー、なるほどね。こりゃ風雷コンビが割に合わない判定を出しても仕方ないか……?
とりあえず使用方法の確認が先か。ふむふむ、味方に使う場合にはPTを組んでいる事が必須で、自分には使えないときたか。となると、まずはアルと紅焔さんとPTを組まないと駄目か。そういやPTを組まないままだったしね。
「よし、使用方法が分かった。アル、紅焔さん、とりあえずPT組んでもらっていいか?」
「……そういや今日はPTはまだ組んでなかったか」
「PTを組んでるのが発動条件か……? ケイさん、なんて名前の魔法なんだ?」
「『アクアエンチャント』だとさ。他のPTメンバーに対しては、水属性の追加効果を付与するんだと。ついでに自分への付与は不可だとさ」
「付与魔法!? あー、もしかして既に属性持ちだと意味がない感じか……?」
「全く意味がない訳じゃないとは思うけど、単純に自分で使うなら操作Lv7の方が良い可能性は高いと思う」
「あー、だから風雷コンビとしては割に合わない判定なのか」
「多分なー。あと、風雷コンビは具体的な検証をしてないとも思うぞ」
「……なるほど。ケイ、とりあえず実際に使ってみようぜ」
「ほいよっと。って事で、PT申請送っとく」
<ケイ様の率いるPTが結成されました>
<紅焔様がPTに加入しました>
とりあえず下準備として、アルとPTを組んでから紅焔さんにPT申請をしてPTの結成は完了。それじゃ味方への水魔法Lv7の使用を試してみようじゃないか。ヘルプには必要最低限の発動方法と仕様しか書いていなかったので、細かいとこは実際に使ってみないと分からないしね。
「とりあえず紅焔さんに試してみていい? その後にアルにも試したいけど」
「おう、良いぜ! 水の追加効果の付与ってのも気になるからな!」
「まずは火属性の紅焔さんへの付与の検証って事だな」
「ま、そういう事。んじゃいくぞー!」
「おう、こいや!」
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 57/71(上限値使用:2): 魔力値 164/206
よし、付与対象がアルの木とクジラ、紅焔さんの龍の3つが選択可能となった。てか、共生進化だと別々に付与する事になるんだな。とりあえず今回は紅焔さんを対象として、発動対象を指定してっと。
ん? 付与をする際には攻勢付与と守勢付与の2種類が選べるのか。……ふむ、使ってみないとなんとも言えないけど、とりあえず攻勢付与を紅焔さんにしてみよう。
「うお!? なんだ、水球が俺の周りに纏わりついてきた!?」
「なんか攻勢付与と守勢付与って2種類あったんだけど、とりあえず攻勢付与をしてみた。紅焔さん、何でもいいから攻撃スキルを使ってみてくれない?」
「なんかよく分からんが、攻撃スキルを使えば良いんだな? アルマースさん、適当になんか的をくれー!」
「おうよ。『アクアクリエイト』『水の操作』!」
「サンキュー! んじゃ、軽めのいくぜ。『爪撃』!」
そうして紅焔さんがアルが生み出した水球の的に向かって飛んでいき、すれ違い様に龍の鋭い爪で切り裂いていく。その直後に付与して浮いていた水球が爪の軌道をなぞる様に水刃へと変わり、追撃として切り裂いていった。
なるほど、これが攻勢付与による追加効果か。周囲を漂っている水球は2つに減ったから、水球1つにつき1回の追撃かな? もしかしてこれで付与される水球の個数は、水の操作の同時操作数に依存っぽい感じか?
「……ケイさん、これって俺の持ってる火属性での威力の減衰は発生してないんじゃねぇか?」
「まー、俺の魔法だしな。多分、威力の判定は俺のステータスだと思う」
「……なるほど、そういう意味でも風雷コンビには割が合わないのか」
「え、アル、どういう事?」
「いや、単純な話だ。自分には付与出来ない仕様で、風雷コンビのどっちかが電気魔法Lv7で、どっちかが電気の操作Lv7ってなると、電気の操作Lv7にした方に戦力が偏るだろ? そりゃ風雷コンビで喧嘩にもなる」
「あー、言われてみれば確かに……」
「……そうか、同じくらいの力量でかつ、スキルの構成まで似ているからこそ、その差が出来た事で喧嘩になったのか……」
「……内容が分かってしまえば、風雷コンビの気持ちは分からなくもないな」
「「……だなぁ」」
風雷コンビがお互いにもう1個スキル強化の種を手に入れて、同じ構成に戻ればバランスは戻るんだろうけど……。あ、だから風雷コンビはレナさんのとこにスクショの撮影の参加に来たのかもしれないね。まぁただの推測だけど……。
「これ、応用スキルでやるとどうなるんだ?」
「……どうなんだろ? 紅焔さん、凝縮破壊Ⅰは持ってるって言ってたよな?」
「お、そりゃ良いな。紅焔さん、試してみようぜ」
「……それもそうだな。よし、やってみるか! 『重硬爪撃』!」
「的はしっかりした物の方が良いな。『アクアウォール』!」
試しに発動してみれば、赤みを帯びて徐々に強くなる銀光を放ちつつチャージを開始する紅焔さんの爪へと1つの水球が近付いていき、爪を覆うように水で作られた爪が形成されていた。こう見ると、紅焔さんの龍が持つ爪とは別に、銀光こそ放ってはいないけど新たな水製の爪が作られている感じだね。
「チャージ完了だ。いくぜ、アルマースさん!」
「おうよ!」
そしてアルの生成した水の防壁に向けて紅焔さんの本来の爪がまず切り裂いていき、追撃として水製の爪も切り裂いていった。おー、こりゃ良い感じじゃないか。
「アル、威力としてはどんなもん?」
「今のは紅焔さんが魔力集中も発動してないし、Lv1での発動だったってのを考慮した上で、付与での追撃の方が威力は上だな」
「え、マジか!?」
「流石はLv7の魔法の効果って訳か。……ケイさん、守勢付与ってのも見てみたいんだがやってもらってもいいか?」
「あ、そりゃもちろん!」
魔力集中や連撃の応用スキルでどうなるかとか、魔法の発動には追撃効果が発生するかとか、試してみたい事は他にもあるけど、守勢付与の方も確認はしておきたいもんな。攻勢付与でこれだけの追撃効果があるのなら、守勢付与の効果にも期待出来そうだしね。名前的に防御用って感じだしさ。
さてと、それじゃ守勢付与の方も試していこうじゃないか。ふっふっふ、一時は使い方が全く分からずにどうしたものかと思ったけど、これは情報共有板に良い報告が上げられそうだね。
「それじゃ守勢付与の方もやっていくぞー!」
「おうよ!」
「さて、どうなるか……」
<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 54/71(上限値使用:2): 魔力値 159/206
あ、ちょっとの間に少し行動値と魔力値が回復してたみたいだね。ふむふむ、アクアエンチャントで水球を付与するとすぐに俺の制御からは離れるんだな。付与した状態では他のスキルが使えないという状況にはならないみたいなので、これはありがたい仕様だね。
さて、それじゃ紅焔さんに守勢付与を……って、あれ? 紅焔さんを付与対象に指定出来ないな? でも、アルの木とクジラは普通に対象に出来るね。あ、これってもしかすると、攻勢付与か守勢付与のどっちかしか一度には付与出来ない仕様か。……まぁ両方が同時に付与出来るのはマズイんだろうね。
「紅焔さん、悪い! 攻勢付与と守勢付与の同時付与は無理っぽい!」
「あー、その辺は制限があんのかー。ま、仕方ねぇな」
「って事で、アルのクジラに守勢付与をしてみるから、攻勢付与と守勢付与で打ち合ってみてくれ」
「おう、了解だ」
「よし、きた!」
「んじゃ、アル、いくぞー!」
「おうよ!」
ちょっと仕様の都合で予定を変更してアルのクジラに水球の守勢付与を行なっていく。……守勢付与でも生成された水球は3つで、アルのクジラの周囲を浮かんで漂っている。
「んじゃ行くぜ、アルマースさん! 『魔力集中』『爪刃乱舞』!」
「……守勢付与って、どう使えばいいんだ……?」
「あー、予想だけど自動迎撃……?」
「って事は、何もせずにいれば良いんだな」
「みたいだなっと!」
アルのクジラに向けて飛んでいきながら、両手の爪を振るっていく紅焔さんには先程よりは少し小さくなった水製の爪が両手にあり、連撃を加えていく。ふむふむ、複数の攻撃部位を使う場合は1撃辺りの追撃の威力は少し下がるんだね。
そしてその紅焔さんの攻撃を凌ぐように、アルのクジラの周りを漂っていた水球が叩き落とすような動きで自動で防御を行っていく。ふむ、やっぱり自動防御というのは正解だったか。
あー、でも紅焔さんが魔力集中を発動しているのと元々の爪の連撃分もあるから、全てを自動防御で防ぎ切るのは無理だったようだね。まぁ、どっちの付与も俺の魔法だし、威力や防御力については同等にはなるもんな。
「よし、とりあえず味方への付与の概要は大体分かった」
「これはPTで使う分には普通に便利っぽいな」
「俺もアルマースさんに同意。……ただ風雷コンビで片方だけが取るには向いてなかったのもよく分かった」
「うん、これは風雷コンビにとっては相性が悪かっただけだな」
Lv7の魔法だから全く役立たずって事はないとは思っていたけども、その予感は間違ってはいなかったね。俺らのPTなら、サヤ、アル、ハーレさんが物理攻撃を使う時に付与する形で使用すればいい。もしくは近接戦闘時に守勢付与で防御面の強化もありだろう。
あ、通常時にアルへの奇襲対策として守勢付与をしておくというのもありだね。まぁ流石にLv7ともなれば行動値や魔力値の消費も多くなっているのでその辺は要注意だけど……。
あー、こうなってくると水の操作もLv7にして同時操作数を4個に増やしたくもなってきた。……よし、次にスキル強化の種を手に入れた時は水の操作をLv7にするのに使うか。後は土魔法もLv7を目指せるように、土魔法Lv6に上げておきたいね。
まぁ今日は今までほとんど上げて来ていなかったスキルを鍛えたいとこではあるし、その辺は慎重に考えながらやっていこう。すぐに全部が上げられる訳じゃないから、焦らず順番に鍛えていかないとね。
「よし、それじゃケイさん、アルマースさん、まだ検証は不充分かもしれないけど途中経過の報告をしに行こうぜ」
「それもそうだな。ケイ、それでいいか?」
「おう、良いぞ。まだ他にも全然違う使い方はあるけど、それは後でいいだろ」
「……え、まだ他にあんの?」
「これがあるんだよ、紅焔さん! ま、その辺は報告と一緒に情報共有板で説明するからさ」
「あー、それで聞けるなら、まぁそれでいいか」
「だな。ケイ、どうせ今の状況だと試せないとか、そんな理由だろ?」
「アル、大当たり! ま、その辺は情報共有板で説明するからさ。……絶対、みんな検証情報を待ってるだろうしね」
「そりゃ違いねぇ!」
「……それもそうだな。それなら情報共有板で聞かせてもらおうか」
「ほいよっと」
さて、間違いなくみんながLv7の魔法の情報を待っているだろうからね。味方への攻勢付与と守勢付与の情報でもかなり有用な情報ではある。ヘルプで見たもう1つの使い方も、上手く使えばかなり便利な可能性は高い。
情報待ちで条件自体は満たしているけど実行はしていないって人もいたから、これらの情報を上げれば取ってみるという人もいるはず。そうなれば色々と検証も進むだろう。
さてと現在時刻は9時50分くらいだから、情報共有板で報告を上げたら俺とアルはサヤとヨッシさんと合流だし、紅焔さんの方も待ち合わせ時間である。サクッと報告を上げてから、今日の行動方針を決めていこうじゃないか!
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