第566話 新たなお知らせ
掲示板を軽く眺め終わったので、ゲームの続きをやっていこう。現在時刻は9時の少し前なので、サヤとヨッシさんとの合流までは1時間ちょっとはあるか。アルについてはログインの次第ではあるけど、それはログインしてから考えようっと。
という事で、ゲームを起動していつものようにいったんのいるログイン場面へとやってきた。さて、今回の胴体部分の内容は『模擬戦機能について、実装テストのお知らせがあります。詳細は公式サイトか、いったんまで』となっている。
お、前にアンケートがあった模擬戦機能についての続報か! あー、でもそんなに日数は経ってないからあくまでテストであって、本格実装ではないんだね。とりあえずいったんから詳細を聞いておくか。
「いったん、模擬戦機能についてのお知らせを教えてくれ」
「はいはい〜。前にアンケートを取った時の結果と、実際にどういう形になるか、どっちから聞きたい〜?」
「……どっちから聞いても、もう片方の大体の内容は分かる気もするんだけど……」
「まぁそうなんだけど、どっちも説明はしないといけないからね〜」
「そりゃそうか。それじゃアンケートの結果からよろしく」
「はいはい〜。まずはアンケートの結果からね〜」
運営としてはアンケートという形を取った以上はその結果を発表する必要もあるだろうし、テスト段階とはいえ実装内容の説明も必須ではあるもんな。
「アンケートの結果は、一対一の決闘型、大人数でのバトルロイヤル型、PT同士のチーム戦型、速度を競うレース型、プレイヤースキルを競う競技型の5つから選んでもらうものだったけど、一対一の決闘型に決まりました〜。バトルロイヤル型とチーム戦型とは結構競り合ってたよ〜」
「お、決闘型になったんだ」
確か俺は決闘型に投票したはずだから、要望通りのものになった訳か。ハーレさんはレース型を希望してたっけ? 流石に初手からレース型の実装は難しかったようだね。……開発についてはよく分からないけど、難易度としては決闘型が一番楽だったとかもありそうな気がする。
「そして模擬戦に関するイベントについては、トーナメント方式の勝ち抜き戦でのイベント、期間を区切っての勝利数による報酬型のイベント、公式でのイベント化はしないの3つだったけど、公式でのイベント化はしない事になりました〜」
「お、そうなんだ」
「うん、圧倒的大差で決まったよ〜。ただ、公式ではないけど違った形でイベント案は計画しているね〜」
「……ん? それってどういう事?」
「それについては、どういう形での実装になるかの方で説明するね〜」
「あ、なるほど。そっちの告知内容なのか」
「そういう事になるね〜。そして要望として多かった観戦機能は、プレイヤーの不動種の中継機能を利用する事で可能になる予定だよ〜。この辺の微調整も兼ねて、テストをしていくからね〜」
「ほいよっと」
なるほど、どういう形で一対一の決闘になるかはまだ分からないけども、観戦機能とかの調整とかも含めて色々調整していく訳か。これは俄然興味が湧いてきたね。
「これでアンケートの結果は終わりだね〜。次は模擬戦の仕様と、テストの内容について説明していくよ〜」
「ほいよ。どんな風になってるんだ?」
「模擬戦については基本的に同じ群集同士でやるのが前提で、群集拠点種の樹洞の中で行う事になるね〜。同じ進化階位でのランダムマッチングと、相手を指定して両者の同意の上での決闘の2種類となっております〜」
「へぇ、ランダムマッチングとかあるんだ。てか、群集拠点種の樹洞の中でやるのか」
「うん、そうだよ〜。各群集拠点種が生み出した戦闘訓練用のエリアで、同時に20組までが模擬戦を行えるようになっています〜」
「設定的には戦闘訓練用なのか」
同時に20組という事は40人までは一気に参加出来るし、群集拠点種も5ヶ所にいるから実質200人までが同時に出来る訳か。公式のイベント化はしないという事だし、開始早々はまだしも通常時なら劇的に混雑するって事はなさそうだね。
「それで対戦の申し込み時に観戦を許可するかどうかが設定出来るから、もし見られたくなければそこで不許可の設定にしてね〜。それと音声の有無も設定出来るから、その辺も気をつけてくださいな〜」
「ほほう、そういう設定が出来るんだ? それって中継する場合はどういう形になるんだ?」
「それについては不動種の人へ対戦が決定した時点で通知が行くようになってるから、それを選べば中継が始まるようになってるね〜」
「そういう仕様か。で、公式イベントとは違ったイベントってのは?」
「それは共同体でトーナメント戦が主催出来るようにしているんだよ〜。ただ2段階に分けてテストをするから、これは後半でのテスト内容だね〜。前半はシンプルに模擬戦の機能テストだよ〜」
「へぇ、そうなんだ」
2段階に分けてのテストの理由はまず単純に模擬戦機能のみをテストして、それで問題がなければその共同体での主催の2段階目のテストをするって事か。ま、いきなり一気に突っ込んでも問題があった時に困るから、2段階に分けてやるんだろうね。
「共同体主催のイベントってのは気になるけど、大体の内容はわかった。で、いつからテスト開始?」
「えーとね、今日の12時から30分間の臨時メンテを行ってテスト実装をする予定だよ〜。運用テストの開始は13時からだね〜」
「あ、意外とすぐなんだな? 日曜なのにそんな臨時メンテがあるとは思ってなかったぞ」
「決闘型だと思ったより簡単に作れたみたいだね〜。次の定期メンテの木曜日までに1段階目のテストを終わらせたいから、こういうスケジュールになりました〜」
「……って事は、2段階目のテストは木曜日のメンテ明けから?」
「うん、そうなるよ〜」
ふむふむ、次の定期メンテナンスに次の段階のテストを始めたいから今日の昼から開始なんだね。別に明日の月曜からでも良さそうな気もするけど、その辺はプレイヤーが多い日曜日に合わせたかったというところかな。
「ところで、そのテストって参加するとなんかメリットがあったりする?」
「一応参加賞で『転移の実×1』を配布する予定ではあるよ〜。不具合報告をしてくれた人には、追加で『転移の実×5』をプレゼント!」
「お、それは意外とありだな」
すぐに使うとも限らないけど、課金アイテムがタダで貰えるのなら良いかもね。そういう事ならみんなが揃った時にちょっと参加してみるのもありか。みんなとも1回、全力で戦ってみたいって気持ちもあるしね。
「ところでそれって負けると何かデメリットとかある?」
「特にないよ〜。勝っても負けても経験値の増減はないし、死亡回数のカウントも無いし、スキルをどれだけ使っても熟練度も入らないからね〜。もちろん進化も発生はしないよ〜」
「……なるほどね」
この模擬戦機能で死亡回数のカウントが出来るとかになれば、特定の死亡要因での適応進化の発生がしやすくなるもんな。流石にその辺の仕様は甘くはないようである。
「共同体での主催の詳細な仕様については、もう教えてもらえるのか?」
「ごめん、それはテストの様子を見て微調整の予定だからはっきりとは言えないんだ〜。そこについては追加の告知をお待ちください〜」
「あー、そういう理由なら仕方ないか。とりあえずお知らせってそんなもん?」
「そうなるね〜。それじゃスクショの承諾お願いします〜」
「ほいよっと」
いつものようにスクショの一覧を受け取って眺めていく。ふむ、昨日の夜と同じでメイキングを撮ったスクショが大半だな。ま、特に良い感じのも無いし、いつも通りの処理でいいか。
「いったん、いつも通りの処理でよろしく」
「はいはい、そう処理しておくね〜。あ、それと今日のログインボーナスね〜」
「サンキュー! それじゃコケでログインで」
「今日も楽しんで行ってね〜!」
「おうよ!」
そうしていったんに見送られながら、ゲームの中へと移動していく。さてと、ちょっと説明を聞いていたからちょうど9時だな。……さて、1時間ほど何をしようかな?
◇ ◇ ◇
そして昨日ログアウトした草原エリアへとログインしてきた……って、大雨なんですけど!? くっ、時々天候が悪いのは仕方ないけど、ログイン直後にこれは微妙な心境になる……。まぁロブスターもコケも雨は全然平気だから問題ないけどね。
「ぐぬぬ、雨では我らは戦いにくいではないか。なぁ、疾風の」
「こりゃ晴れてるエリアに移動すっか。なぁ、迅雷の」
「あ、風雷コンビ」
「おぉ、ケイではないか!」
「お、マジだ。昨日は世話になったな!」
「おう、昨日はありがとな、風雷コンビ!」
なんか隣に風雷コンビがいたけど、まぁ草原エリアは風雷コンビのホームなんだし居ても不思議ではないか。てか、電気属性がメインだと今みたいに大雨が降ってると戦いにくいんだね。
「おや、風雷コンビがいるかと思っていたら、ケイさんではないですか?」
「あ、琥珀さんか」
そこに雨に濡れながらクジャクの琥珀さんが飛んできた。うーん、こうやって改めて見てみるとクジャク特有の巨大な羽を広げていない状態だと、尾羽が長めの黄色いキジにしか見えないな。
「我らは今のここでは戦いにくい。失礼するぞ、ケイ」
「またな、ケイ!」
「おう、風雷コンビもまたな!」
慌ただしい感じで風雷コンビは群集拠点種のユカリの元へと駆けていった。なんというかこうやって遭遇しても、風雷コンビとはそれ程じっくり話す機会もないな。まぁどうしても話さなければいけない内容がある訳でもないから別にいいんだけどさ。
「風雷コンビは相変わらずですね。まぁ常にいがみ合っていた初期に比べると随分とマシにはなりましたが……」
「あー、そういやマップ作成の群集クエストの報酬の雷の進化の輝石を取り合ってたっけ」
「えぇ、そうですね。あの時は色々と画策して、あの2人を出し抜いたものですよ」
「……そういや、他の人が掻っ攫っていったんだっけ? 琥珀さんってその辺に関わってたのか?」
「少しではありますけどね」
ふむ、風雷コンビを草原エリアの人達で出し抜いていた事もあったけど、琥珀さんはそこに関わってたんだな。……って、あれ? あの時ってトリの人が最終的に雷の進化の輝石を掻っ攫っていった気もするけど、もしかするとあれって琥珀さんか……?
「ケイさんは独り言が癖なのですか……?」
「はっ!? ……思いっきり声に出てた?」
「えぇ、思いっきり」
「……やっぱり中々癖が抜けないか」
「まぁ無くて七癖とは言いますからね」
「……フォロー、ありがとう」
「いえ、お気になさらずに」
なんだかこの変な独り言の癖について、初めてすごく真っ当にフォローしてもらった気がする。……本当にこの癖は何とかしたいものだね。
「それでですが私はその時の人ではありませんよ?」
「あ、そうなんだ。鳥というのはただの偶然だったんだな」
「あの人はキジではなく、カラスですからね」
「……それを知ってるって事は、張本人と知り合いなんだ?」
「まぁフレンドですからね」
「あー、なるほどね」
フレンドだったならそりゃ知ってても何の不思議でもないな。てか、あの時の風雷コンビが争っている間に出し抜いて雷の進化の輝石を手に入れたトリの人はカラスだったのか。……雷属性のカラスだったりするのかな?
「それでは私はちょっと待ち合わせをしていますので、この辺で失礼しますね」
「あ、なんか足止めしたみたいですまん」
「いえいえ、構いませんよ。また会う機会があれば、よろしくお願いしますね」
「こっちこそよろしく、琥珀さん」
そうして琥珀さんは風雷コンビの向ったユカリとは反対方向……今の位置的には東方向がユカリなので、西へと向かって飛んでいった。大雨を物ともせずに力強く飛んでいくもんだね。
さてと、いつまでも大雨の中で草原エリアにいても仕方ないから、移動していくか。うーん、この場合だと水のカーペットと飛行鎧のどっちが良いかな?
よし、ちょっと水のカーペットの足場としての不安定さに違和感が出てきているから、感覚を戻すつもりで水のカーペットで行くか。っと、その前にログインボーナスを貰っておかないとね。
<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
これで今日の分のログインボーナスの確保は完了だ。さて、それじゃさっさと森林深部へ戻るとするか。それからアルのログイン状態を確認して、もうログインしていたら合流しよう。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 73/73 → 71/71(上限値使用:2)
よし、水のカーペットの展開は完了……って、表面に雨水が溜まって行ってるがな!? あ、でも雨ならダメージ判定にはならないんだ。
ふむ、それじゃラグビーボールみたいな形にしてその中にいるようにしていこうか。雨に濡れたところで全然問題はないけど、気分的な問題である。
まずは森林深部のエンの元へ転移する為に、ユカリのとこまで移動である。さー、今日も1日頑張るぞー! まぁハーレさんが今日もいないから、スキルの特訓メインになるだろうけどね。




