第558話 スクショの演出 中
さて、まずはサンダークラウドで2組の雷雲の生成は完了。位置的に少し重なってしまって、重なった付近で雷雲の中で放電が発生してるな。うーん、この感じだと長時間の発動は微妙かもしれないね。
「うーん、重なって放電しているのは雰囲気があっていいけど、相殺されていくから急いだ方が良いねー。んー、桜花さんは桜吹雪を、アルマースさんは突撃を使ってもらっていい?」
「桜吹雪なら持ってるから、問題ねぇぜ。『桜吹雪』!」
「俺も突撃は問題ないが、今すぐにやっていいのか? かなり位置がズレるぞ?」
「あ、そだね。うん、アルマースさんはサンダーボルトの発動と同時で行こう!」
「ま、タイミングとしてはそんなもんだな」
ふむふむ、ここで桜花さんとアルに追加演出もありってことか。禍々しい桜とクジラの激突が始まる、その一瞬を演出する為にはかなり有効だろう。それに黒い桜の花びらってなんとなく格好良さがあるよね。
……っていうか、さっきのお試しのポイズンミストで地面に生えてる草や点々とある木々も枯れているんだよな。まぁすぐに回復するとは思うだろうけど、荒廃している様子という意味では良い演出になっている。
「それじゃそういう事で、サクサク行くよー! ポイズンミスト班、よろしくー!」
「ベスタさん、統率のハチはこの辺でいい?」
「あぁ、問題ない。やれ、ヨッシ、ダイク!」
「ベスタさんからの許可も出たし、いくぜヨッシさん! 『アクアクリエイト』!」
「うん! 『ポイズンクリエイト』! 急いで移動しないとね! 『高速飛翔』!」
今回は初めからど真ん中で待機していたベスタや、主役のアルと桜花さんを毒霧が包み込んでいく。あ、範囲的には雷雲には少し届いてない感じだね。ここで毒霧が雷雲に触れていたら、更に放電が激しくなるしこれで良かったのかも。
あ、ヨッシさんがダイクさんを抱えて、毒霧からすごい勢いで飛び出てきた。既に発動済みの風属性にした自己強化も含めて移動速度に全振りで飛んだみたいである。
「ベスタさん!」
「あぁ、分かっている。『ウィンドボム』『並列制御』『ウィンドボム』『風の操作』『並列制御』『ウィンドボム』『風の操作』『群体同化』『コケ渡り』!」
「ベスタさん、ナイスだよー! ヨッシさん!」
「うん、分かってる。『同族統率』解除!」
ベスタが毒霧を先に試した時のように上手く流していき、ウィンドボムの発動の為に標的代わりにしたヨッシさんの統率のハチも解除されていた。ベスタも即座にコケ渡りで邪魔にならないように退避しているので、毒霧の良い感じに雰囲気はちゃんと演出されたし、スクショの邪魔になるプレイヤーの姿はない。
ただ気になるのは、ベスタが上部に吹き飛ばした毒霧が雷雲に接触して放電が激しくなっていることだな。雰囲気的には良いんだけど、これは急がないと効果時間が微妙だぞ。
「さて大詰めだよー! サンダーボルト班、発動開始! アルマースさんも突撃ー! スクショ班は撮り逃さないようにね!」
「おうよ! 『突撃』!」
「はーい!」
「……うん、撮り逃すミスはしない!」
レナさんの号令に合わせて、桜花さんは舞い散らせている黒い桜の花びらに向け、アルが突撃を始めていく。こうなってくると、良い構図になるかはかなりタイミングが重要になってきたな。……突撃をするなら、もうちょっとアルの初期位置は後ろの方でも良かった気もする。
「では我らもいくぞ、疾風の! 『エレクトロクリエイト』!」
「合点だ、迅雷の! 『エレクトロクリエイト』!」
「風雷コンビに負けられねぇ! いくぜ、『エレクトロクリエイト』!」
「そこまで競争意識を持たなくてもいいと思うけどねー! 『エレクトロクリエイト』!」
そしてサソリの人の岩の操作を足場にして雷雲の上から風雷コンビのサンダーボルトと、ホタテの人を足場に……って、ホタテの人は大型化した自分自身を元に岩を広げて足場にしてるのか。そのホタテの人に乗ったキツネの人とラクダの人もサンダーボルトを放っていく。
おぉ!? 雷雲の上からサンダーボルトを落としたから、雷雲の中で盛大に放電が発生している。それと共に雷雲を通り抜けたサンダーボルトが幾重にも雷を落としていく。……こりゃすげぇ迫力だ。
そして落雷と雷雲が消え去るまで、みんなその光景を眺めていた。スクショ班は喋る手間すら勿体無いという感じで黙々とスクショを撮っていた感じだし、他の人達はただただ魅入っていた。
まぁ雷雲の上からサンダーボルトを発動した人達については、雷雲が邪魔で見れてなかったみたいだけどね……。
「さーて、スクショは撮れたからみんなでチェックしていくよー! 」
「はーい!」
「……うん!」
「という事で、桜花さん、投影をお願いしても良いー?」
「おう、いいぜ」
あ、なるほど。不動種の桜花さんとスクショ班が撮ったスクショを共有して、樹洞外投影で映し出すんだな。これならどんなスクショが撮れたかが、集まっているみんなにも一目瞭然になるので良いのかも。
「これ、よろしくー!」
「はい、桜花さん!」
「……よろしく」
「おうよ、確かに受け取ったぜ。……って、どれもすげぇな」
そして桜花さんの元に移動していったスクショ班のレナさんとハーレさんとクラゲの人が桜花さんにスクショを渡しているようだ。桜花さんの反応を見る限りでは、かなりいい感じに撮れてそうである。
「あ、そうだ。桜花さんとアルマースさんの纏瘴の効果が切れるまでは、他にも色々試していくからみんな魔力値の回復をよろしくー! 基本的には自然回復でいいけど、回復が間に合わなかったら回復アイテムも提供するから、必要な人は桜花さんに言ってねー!」
「おう! レナさんからは対価は受け取ってるから、遠慮はいらねぇぜ!」
「という事で、撮ったスクショのチェックをしながらしばらく休憩にします! 1回目の撮影、お疲れ様ー!」
という事で、一時休憩という事になった。アルと桜花さんの纏瘴の効果切れまでやるって事は、後50分くらい……時間で言うなら10時半のちょっと前くらいまでだな。そしてその後はメンバーを変えて、第2弾もやる予定か。
それにしても魔力値の回復が間に合わない可能性も見越して、既に手を打ってるとはね。不動種である桜花さんが目の前にいる訳だし、その辺はかなり適任だよなー。
とにかく一度休憩という事もあって、飛んでいたみんなは地面に降りていっている。さて、俺も降りていきますか。
「琥珀さん、下に降りるけど問題ない?」
「え、あ、そうですね。今の時点で飛んでいても仕方ないので降りましょうか。撮ったスクショも気になりますし……」
「ほいよっと。それじゃ降りていくよ」
「……えぇ」
どことなく降りていくのに名残惜しそうな琥珀さんだけど、よっぽどこの水のカーペットが気に入ってるっぽいね。ふむ、3rdで狙うとは言ってたけども、いつ頃解禁なんだろう?
ま、それは今考えても答えが出る内容ではないので、スクショの投影を見ていきたいとこだね。休憩自体は魔力値が減っているだけなので、特に疲れてはいないけど。
そしてとりあえずみんなが集まっている桜花さんの前に辿り着いた。あ、地味に竹の器を持っている人が結構いるので、お茶を飲んで寛ぎモードっぽい!?
よし、ヨッシさんから効果なしの味だけのお茶を貰って、俺も寛ぎモードにしようかな。
「ふー、なんだか思った以上に大掛かりな事になったな。ま、楽しんでるから良いけどよ」
「アルは主役だったもんな。とりあえずお疲れさん」
「おうよ。割と外から見てたケイとしてはどうだったよ?」
「あー、確実に迫力はあるな。ちゃんと不気味な雰囲気はしっかりと出てたぞ」
「私も同感かな! 見た角度による違いは気になるけど」
「私もそれは気になります! 斜め上からはバッチリ撮ったよー!」
「あはは、それは楽しみだね。あ、みんな、お茶は飲む?」
みんなの居た位置はバラバラだったので、同じ感想とはならないよな。とりあえずヨッシさんがお茶を勧めてくれたので、みんな好きな味を選んでのんびりと寛ぎモードへ移行していく。
「先程のでも迫力はありましたが、最後に予定している電気の瘴気魔法での演出がどうなるか気になりますね」
「あぁ、我もそれは思っている。なぁ、疾風の」
「だな。俺らの出番でもある訳だし、気合は入るぜ。なぁ、迅雷の」
「あ、そういう事になりますよね。風雷コンビとしては先程の光景はどうでしたか?」
「雷雲の上にいたのだから、見えぬよ。なぁ、疾風の」
「そういうこったな。なぁ、迅雷の」
「あ、そういえばそうなりますよね。これは失礼しました」
あー、そっか。風雷コンビを筆頭にサンダーボルト班については雷雲の上にいたんだから撮影の具体的な状況は見えてなかったのか。……配置的に仕方ないとはいえ、ちょっと外れの配置だったのかもしれないね。
「さて、とりあえずブレてるのを除けばこんなもんか……。おーい、スクショの投影を始めるぞ!」
「桜花さん、待ってましたー!」
元気のいいハーレさんの声に続くように、スクショの撮影に参加した人も、見物していただけの人も期待の眼差しで桜花さんの方へと向き直っていく。さー、どんなスクショが撮れたのかが楽しみだね。
「まずはレナさんのから行くか。『樹洞外投影』!」
その桜花さんの言葉と共に、中継時のようにスクショが大きく映し出されていく。レナさんの撮影位置はアルの背後側からだったので、先の方に黒い桜の花びらを舞わす桜花さんに向かって突撃していく禍々しいアルのクジラの後ろ姿が写っている。おー、落雷や雷雲の中での放電が良い感じに背景になっているね。
ふむふむ、これは世界の破滅の元凶で余裕あり気な強敵な桜に挑む、危険な力に身を委ねたクジラみたいな印象を受けるね。これはアルの方を纏浄にして……いや、纏浄だとちょっと全体的な雰囲気が思いっきり変わりそうだし、それをするなら落雷ではなく雲の切れ目から光が差し込んでくるみたいな演出が良さそうだ。
「これも充分迫力があるけど、クジラじゃなくて小動物にして、纏浄で挑みかかる感じが良さそうじゃないかな?」
「お、サヤもそんな印象か。これ、桜花さんの悪役の強敵感が凄いしな」
「えぇ、そうですね。ですが、これでも充分通用するかと思います」
「あはは、みんな厳しいねー! うん、それは第2弾の方で検討してみよっか」
「え、でもレナさん、その場合は木の方はどうすんの? 桜花さんの纏瘴の時間とか、場所取りの問題もあるだろ!」
「ふっふっふ、ダイク、そこは木にこだわらなくてもいいんだよ?」
「そうともさー! サヤの竜に立ち向かう大根のダイクさんでもいいのです!」
「え、私かな!?」
「俺もかよ!?」
あー、確かに木にこだわる理由はないもんな。それこそ大型化したサヤの竜が纏瘴をして、雷纏いも併用すれば禍々しい電気を帯びた竜という演出も可能だしね。それに立ち向かう纏浄の大根というのもそれはそれでインパクトはありそうだ。
「あー、分析も良いけどとりあえず次行くぞー」
「ほいよー!」
他のみんなも内容までは正確に聞き取れなかったけども、色々と感想を言い合っていた。でもいつまでもそうしていたら続きにならないので、桜花さんが流れを断ち切って次へと進めてくれている。
えーと、次はクラゲの人が桜花さんの背後の方から撮ったやつだ。こっちは……なんだろう。瘴気に汚染された桜の木が、荒れ狂っているクジラから何かを庇うような雰囲気になっているね。
あー、庇っているように見えるのは桜花さんの背後から撮っているからだね。このスクショを撮ったクラゲの人を庇うような構図になってるんだ。それにアルの突撃によって、より襲いかかってくる印象が強いね。
「アルが完全に悪役だな」
「……自分で言うのもなんだが、まさしくそうだな」
「あはは、でもかなり迫力はあるかな?」
「これはこれで良いと思うのさー!」
「それにしても向きが違うだけで随分と印象が変わるね?」
「そうでしょう! これがサファリ系プレイヤーの醍醐味というもので! ……いえ少しテンションが上がり過ぎました。今のは見なかったことに……」
「そのくらい良いではないか、琥珀さん。なぁ、疾風の」
「おう、そうだぜ、琥珀さん。なぁ、迅雷の」
「……その辺は個人差があるから、それ以上はやめておけ、風雷コンビ」
「「……ベスタの旦那がそう言うなら……」」
「……ベスタさん、ありがとうございます」
「別にいい。気にするな」
ちょっとテンションが上がり過ぎて恥ずかしくなって縮こまってしまった琥珀さんと、そこに励ますつもりっぽい様子の風雷コンビであった。……うん、ちょっとそれは逆効果な気がする。ベスタも止めているしね。
テンションが上がり過ぎてもルストさんみたいに気にしない人なら問題ないんだろうけど、琥珀さんはあんまりそういう様子を出したくないだろうね。
「んじゃ次は、上からのを行くぜ」
少し声が収まってきたところを見計らって、桜花さんが次のスクショへと切り替えていく。こういう時の空気の読み方は絶妙だね、桜花さん。
さてと最後は空中からハーレさんが撮ったやつだな。これは角度的に落雷は背景ではなく、直接の驚異みたいな感じになっているね。
そして瘴気を纏い突撃していくアルと、それを迎撃していく為に展開された黒い桜の花びらが一騎打ちの様子に見えている。これは世界の破滅を目前にした状態で、ライバル同士が最後の決着をつける為に戦い始めた瞬間って印象があるね。
「これが一番対等な一騎打ちっぽいな」
「確かにそんな感じか」
「どれも味があって、雰囲気が違っていい感じかな?」
「そだね。うん、思ってたよりかなりいい感じだよ、ハーレ」
「やったー! 褒められたー!」
サヤやヨッシさんの言うように、ハーレさんの撮ったこのスクショもかなりいい感じである。同じ光景であっても撮る方向が違うだけでこうも印象が変わるとはね。大人数で大掛かりな撮影をしてみるのもありなんだな。
これなら全てを団体部門に出しても評価は分かれそうな気もする。それにサファリ系プレイヤーの人達が気合を入れてた理由もなんとなく分かってきた。これは確かにやり甲斐があるね。
「さーて、それじゃ次はそれぞれの角度に合わせて微調整していこうかー! それで纏瘴の時間切れが近付いたら、その微調整の位置で最高の1枚になるようにしていくよー!」
そしてレナさんのその宣言に、みんなが頷いていた。とことんこだわって撮っていきたいって事なんだろうし、本命は最後の電気の瘴気魔法なんだろうね。
ここまで参加している事だし、全力で楽しんでいきますか。ま、俺はそれほど沢山する事はないけども、それでも演出の為の昇華魔法の発動も重要だよね。




