第455話 フィールドボスの検証
強化した瘴気石を食べたトカゲとコイを覆う瘴気の膜が徐々に薄れて、その影が薄っすらと見えてくる。まだ全貌は分からないけど、シルエットを見る限りではそれほど大きくはなさそう?
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『砂漠の強者を生み出すモノ』を取得しました>
<スキル『土属性強化Ⅰ』を取得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『砂漠の強者を生み出すモノ』を取得しました>
<スキル『土属性強化Ⅰ』を取得しました>
おっと、なにやら称号とスキルが手に入った。この感じだと他のエリアでのフィールドボスを手動で誕生させれば、別の属性も手に入りそうだね。一応効果を見てみるか。
『土属性強化Ⅰ』
土属性を持つスキルの効果を少し増強させる。
ふむふむ、かなり簡潔な説明だけど、これは土属性が絡めば攻撃も防御も強化されるってところか。土の昇華も手に入ったし、強化幅は分からないけどこれは地味にありがたいかも。土属性を持つスキルって事は、操作属性付与で土属性を付与したスキルも対象かな?
「やったー! 土属性の強化は嬉しいよー!」
「私もこれは使えそうかな!」
「俺もだな!」
「まぁケイとサヤとハーレさんは土属性は使うからな。俺としては微妙だが……」
「あはは、私も微妙だね」
「まぁ、アルとヨッシさんはそうなるよな」
どの程度の効果があるか分からないけども、ハーレさんの魔法産の小石や、サヤの土属性の操作付与や、俺の土魔法には恩恵があるはず。まさかフィールドボスを再出現させた段階でこんなスキルと称号が得られるとはね。これは嬉しい誤算だな。
「ライルとカステラには丁度良かったんじゃないか?」
「僕らの中で土属性を使うのはライルと僕だもんね」
「そうそう。木を持ってきてて良かったんじゃない?」
「……まぁそうですね。まだ強化が全然足りてませんが、これは嬉しいですね」
「……お前ら、気持ちは分かるが気を緩め過ぎだ。来るぞ!」
おっと、確かに油断し過ぎだな。さっきの称号が出たって事は、フィールドボスの再出現に成功したと見て間違いないだろう。
徐々に薄れた瘴気が完全に霧散し、進化した姿を表していく。その見た目はサヤの竜と同じくらいの小振りな東洋系の竜ではあるが、サヤの竜とは大きく違う特徴があった。へぇ、そうきたか。
「双頭の竜だー!? 合成進化からの変異進化ー!?」
「おっしゃ、双頭竜が来たぜ! 俺が抑えておくから、識別は頼んだぜ!」
「おう、紅焔さん任せた!」
「紅焔、色々と確認するから間違ってもすぐには仕留めるな!」
「わかってるってか、1人じゃ無理だろこれ! まぁいいや。『魔法砲撃』『ファイアボム』!」
進化を終えたばかりの双頭の竜に向かって、紅焔さんが口から火の弾を吐き出し、火を撒き散らす爆発を起こしていた。結構な威力だった気もするけど、これはどうだろう?
「……紅焔、これは面倒だね」
「水の防壁で防がれたか。属性の相性が悪いな……」
紅焔さんの先制攻撃は双頭竜が発動した水の防壁で見事に防がれている。ふむ、これは早く識別をした方が良さそうだな。それにしてもこの双頭の竜、青い頭と茶色い頭で別々の色になってるんだな。胴体は青と茶色の斑模様になってるのか。
そしてフィールドボスの証であるカーソルの部分に黒い王冠マークがついている。ふむ、とりあえずLv12に進化させれば、進化直後にフィールドボスとして確定するんだな。これは何体か試してみて、フィールドボスになるLvを確定させる必要もありそうだ。
「まずは情報を集めるぞ! ケイ、識別を任せる! 『自己強化』!」
「ほいよ!」
「紅焔達を筆頭に遠距離攻撃持ちは牽制をしろ! 俺が近接で撹乱もするが、俺の事は気にしなくていい! 『ウィンドクリエイト』!」
「ベスタに当てられる気はしねぇしな! 了解だ!」
「確かにベスタさんにフレンドリーファイアを当てられる気はしないね」
「了解です! ヨッシ、頑張るよー!」
「うん、頑張ろう!」
「アルマース、ライルは脱水の状態異常の傾向が出てきた奴に水をぶっかけろ! 近接攻撃メインのやつもまだ攻撃は待機だ! 『操作属性付与』!」
「おうよ、任せとけ!」
「水の操作は持っていませんが、インベントリから水を取り出すだけなら問題ないですね。了解しました」
「分かったかな!」
「辛子さんはどっちで動くの? 僕は近接だから待機だけど……」
「あれだけ遠距離がいれば問題ないだろ。俺は交代で動けるように行動値を温存しとくぜ」
縦横無尽に双頭の竜の周りを駆け回りつつ風属性を付与して強化していくベスタの指示にみんな従って、それぞれに動き出していく。基本的に俺達のPTはアルの上で、紅焔さん達もライルさんの木を中心に固まって、挟撃のような形になったね。
そしてその周囲を取り囲むように集まってきている他のPTの人達が距離を取りつつ見物していた。これは検証での戦闘だから、情報を収集するまでは総攻撃とはいかないからね。……それにしても、持ったままのイナゴが邪魔だ。これ、どうしようか……?
「おーい、ケイさん! イナゴが邪魔なら預かるぞ」
「お、カインさんか! 助かる!」
「良いって事よ!」
見物のPTの方からカインさんが近付いてきてそう提案してくれたので、手早くイナゴを渡しておいた。とりあえずこれで戦闘には邪魔になるイナゴは手元からいなくなった。さてと識別をしていこうか。
<行動値を4消費して『識別Lv4』を発動します> 行動値 57/61(上限値使用:1)
『双頭強魔劣竜』Lv12
種族:黒の瘴気強化種(豪傑双頭劣竜種)
進化階位:未成体・黒の瘴気強化種
属性:水、土
特性:豪傑、飛行、双頭、魔力強化、魔法耐性
げっ、これは完全に魔法型のボスだし、地味に特性が多い。……これは魔法じゃなくて、物理攻撃を主体にしたほうが良いかもしれないね。とりあえず報告しようっと。
「名前は『双頭強魔劣竜』でLv12だ! 属性は水と土、特性は数が多くて豪傑、飛行、双頭、魔力強化、魔法耐性の5つ! 完全に魔法特化の構成!」
「特性が多いな。……よし、魔法は牽制のみでいい。物理攻撃を主体で削って、大雑把にでも何をしてくるか確認していくぞ! 『爪刃乱舞』!」
「牽制のみってのも物足りないけど、仕方ねぇか! 『ファイアクリエイト』!」
高速移動しながら攻撃を繰り広げていくベスタと、その邪魔にならない方向に飛んで回り込んだ紅焔さんが火を吐き出していく。でも、ベスタの攻撃は空中に飛び上がることで回避され、紅焔さんの攻撃もまだ展開されたままの水の防壁で防がれていた。
Lvの割に意外と強いぞ、この双頭の竜!? くそっ、飛べるって地味にズルいよな。よく飛んでる俺が言うのもなんだけど!
「……ちっ、面倒な。アルマース、双頭竜の上部にドーム状の水のカーペットを展開しろ! ケイ、さっさと土の昇華を取得して、こいつを地面に引き摺り下ろせ!」
「了解だ! 『アクアクリエイト』『水の操作』!」
「ぶっつけ本番!? まぁいつもの事だけど!」
覚えたてのスキルを実戦にいきなり投入するのはいつもの事ではあるもんな。さてと砂の操作ではなく土の昇華で引き摺り下ろせか。他の指示と合わせて考えれば大体の狙いは分かったし、まずは土の昇華を手に入れないとね。
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します> 行動値 54/61(上限値使用:1)
これで目の前に広がる大量の砂を支配下に指定してっと……。うん、やっぱりLv6になると操作出来る量が全然違う。とりあえず支配下においた砂を少し持ち上げていって……。
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『砂に昇華させたモノ』を取得しました>
<スキル『砂の操作』を取得しました>
<スキル『生成量増加Ⅰ・土』を取得しました>
よし、砂の操作をこれで手に入れた! とはいえ、これだけじゃまだ覚えたてだから砂の操作の精度は悪過ぎる。使うのはこっちじゃないけど、この砂も勿体無いから双頭の竜にぶつけておこう。
あ、土の防壁を展開して防がれた。うーん、自分が使うのは良いけど、こうやって防がれるのは地味に嫌だな。それにしても土の操作じゃ砂は大雑把な塊としてしか操れないんだな。まぁ砂の操作が別にあるんだから、そうもなるか。
「ベスタ、準備完了だ! いつでも行けるぞ!」
「よし、ハーレ、カステラはチャージの準備だ! 他のやつもタイミングをズラしながら攻撃していくから備えておけ!」
「了解です! 早速試すよー! 『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『アースクリエイト』『爆散投擲・土』!」
「それじゃ僕もそうしようか。『魔力集中』『硬化』『アースクリエイト』『操作属性付与』『砲弾重突撃・土』!」
土属性を付与したハーレさんとカステラさんがそれぞれに茶色を帯びた銀光を放ち始めると同時に土の防壁を解除した双頭の竜が、2つの口からハーレさんに土の弾を、カステラさんに水の弾を吐き出していく。
ちっ、これは防御しないとまずいか! 特にハーレさんの方はアルも一緒に巻き込まれるぞ!?
「ハーレ、アルさん、危ない! 『アイスウォール』!」
「仕方ないね。『ウィンドウォール』!」
「ヨッシ、ありがとー!」
「危ないねー。これって、チャージし始めたら狙ってくる感じ?」
「これは面倒な行動パターンですね」
ふー、ヨッシさんとソラさんがそれぞれに魔法で防御してくれたので、とりあえず被害は無し。着弾と同時に爆発していたので、Lv4の魔法か。一発でどちらの防御魔法も破壊されていたし、魔法特化だから魔法の威力はかなり高いみたいだな。
それにしても完全な魔法特化型の敵って初めてな気もするけど、物理攻撃潰しの行動パターンってのもあるんだな。……よし、これは今後の為にも覚えておこう。
「ケイ、アルマース、やれ! 『並列制御』『ウィンドボム』『風の操作』『爪刃乱舞』!」
「ほいよ! アル、ミスるなよ」
「そういうケイこそ、しくじるなよ!」
「んな事はしない!」
「そっくりそのまま返すぜ!」
ははっ! アルだって、水のカーペットを実戦利用は初めてな筈なんだけどな。まぁアルの操作なら問題はないな! ベスタが爆発で勢いをつけ、連撃で牽制している今こそ新たな手札の出番だね。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 53/61(上限値使用:1): 魔力値 195/198
<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』を発動します> 行動値 44/61(上限値使用:1)
土の昇華によって生成が可能になった岩を生成し、双頭の竜に向けて操作していく。前にジェイさんがやっていた岩の追加生成を使って、岩で固めて引き摺り下ろしてやろうじゃないか! ふっふっふ、迎撃で水弾を撃ちまくってくるけど、そんなものは当たらない!
「ちょ!? ケイさん、岩を回避させるのいいけど、流れ弾ー!?」
「そっちの対応は紅焔さんに任せた!」
「しゃーねぇなー! 『並列制御』『ファイアボール』『ファイアボール』!」
「手伝うぜ、紅焔さん! 『並列制御』『ウィンドボール』『ウィンドボール』!」
「お、サンキュー、辛子さん!」
岩を迎撃されないように水弾を回避させていたら、思いっきり地上にいるみんなに流れ弾となって襲いかかっていた。まぁ紅焔さんと辛子さんがそっちの対応に回ってくれたので良しとしよう。
あ、分が悪いと判断したのか上空へ距離を取ろうとし始めた。でも残念。そっちにはアルの水がある。
「おっと、逃さねぇぞ?」
「アル、ナイス! よっしゃ、捕まえたぞ!」
よし、捕獲成功。攻撃が通るだけの穴を数か所開けた状態で固めるように岩を追加生成していく。おー、これって捕獲性能は拘束魔法より自由度が高いんじゃないか? まぁ手動でやる必要があるけども。
とにかく捕獲は成功したので、そのまま地面へと引き摺り下ろしていく。ふっふっふ、暴れてはいるけど逃げられそうな感じではないね。魔力集中か自己強化でもないと破壊は出来ないんじゃないか?
あ、土の爆発魔法を撃ち込み始めた……。わっ!? 少しヒビが入って頭部のとこの岩は破壊されたー!? 追加生成で補修……あ、やっぱり頭部や首周りの岩は盛大に破壊されるね。……流石にそこは固めさせてはくれないのか。
そうして俺が双頭の竜を引き摺り下ろしている間に、アルがベスタの要望通りにドーム状の水壁を完成させていた。
「ベスタ、これで良いか!?」
「あぁ、これでいい。ハーレ、カステラ、ぶっ放せ!」
「了解です!」
「これでもくらえ!」
ベスタの指示を受けチャージが終わっていたハーレさんが四散する小石を投げ放ち、カステラさんが凄い勢いで銀光を纏ったまま突撃していった。2人の攻撃はそれぞれに別の頭に直撃し、一気に7割ほどまでHPを削り取っていく。おー、これは思った以上に物理攻撃には弱そうか?
「思った以上に削れるな……? まぁいい。『移動操作制御』『並列制御』『重硬爪斬』『爪刃双閃舞』!」
そこに追撃としてベスタがアルの作ったドーム状の水壁を足場にして、双頭の竜の2つの頭部を交互に銀光が強くなる連撃を右側の前脚のみで当てていく。そして、その間に左側の前脚ではチャージが進んでいた。
それにしてもベスタが小石を生成しているし、アルの水のドームも同時に足場にして縦横無尽に攻撃しすぎだね。自己強化に風属性を付与しているから、移動速度が上がってとんでもない事になってるね。




