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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第13章 あちこちを探索しよう:雪山編

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第399話 氷結洞を抜けて


 次は青の群集のキツネの人が来た洞窟の奥に行って、反対側に出てから山頂付近まで進んでいく事になった。3つ目の氷の小結晶の効果が切れたので、再発動してから出発である。戻る時間の事を考えればそれほど時間に余裕はないな……。


「ねぇねぇ、みんな!」

「どうしたの、ハーレ?」

「時間もそんなにないし、カキ氷を作るだけ作っちゃおうよ! 加工出来るなら多分インベントリに入れられるよね!?」

「それは確かにそうだけど……」


 確かにそれは時間効率を考えるとありか。でもヨッシさんはアルの方を見ながら躊躇っている様子である。ふむ、ハーレさんの案もありだけど、流石に立ち止まって加工という訳にもいかないもんな。

 やるとしたらアルの樹洞の中で移動しながらになるか。その場合は移動は思いっきりアル任せにはなってしまう。でも明日の夜は3群集合同の湖調査に参加する予定だし、かといって夕方ではログイン出来ないアルが除け者になるんだよね……。


「あー、俺の事なら気にしなくていいぞ。移動に関しては俺に任せとけ!」

「……アル、良いのか?」

「流石に全くの未知の場所なら別だが、通り抜けて来た人がいるならここまでとそう変わらんだろ。って事でヨッシさん、カキ氷の調理は任せるぞ」

「アルさんが良いなら、引き受けるよ。ケイさん、サヤ、手伝って!」

「ほいよ」

「分かったかな」


 まぁ移動がアル任せというのはいつもの事といえばいつもの事か。それにここから先には行った事はないとはいえ、通り抜けてきた人がいるならこの洞窟には最深部というような場所も無さそうである。

 アル自身が良いって言ってるし、ここはカキ氷の加工に専念しようじゃないか。とは言っても、手伝ってって何をすればいいんだろ?


「私は巣から外と中の両方を見てるねー!」

「ハーレさん、別に中で見ててもいいぞ?」

「それは駄目ー! 私が言い出した事だし、アルさんだけに任せる事はしないのさー!」

「そうか、ならハーレさんに索敵は任せるぞ」

「もちろん、そのつもりです!」


 とりあえずこれで役割分担は終わりだな。アルが移動役、ハーレさんが周囲の警戒役、俺とサヤが手伝いに入って、ヨッシさんをメインにカキ氷を作っていくって事である。


「んじゃ行くぞ。『樹洞展開』『樹洞投影』『上限発動指示:登録2』!」

「ケイ、灯りお願いね」

「ほいよ」


<行動値を3消費して『増殖Lv3』を発動します>  行動値 56/59(上限値使用:1)

<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します>  行動値 56/59 → 56/56(上限値使用:4)


 魔法砲撃が発動したままだけど、支障もないからそのままでいいや。それにしてもここの洞窟は光源や夜目とかがなしでも明るいもんだね。氷が光を反射しているっぽいけど、これって太陽光だけか……? うーん、何か違う光源がありそうな気もするけどそれは今はいいか。

 とにかく今は時間の余裕がある訳じゃない。サクサク進めていこう! 俺を含め、みんながアルの樹洞に入っていって準備完了である。ハーレさんは即座に巣の方に登っていったしね。


「全員乗ったな? それじゃ出発するぞ」

「「「「おー!」」」」


 とりあえず反対側の出口に向けて、移動開始である。さてとこの移動中にカキ氷を作っていかないとね。

 

「それで俺とサヤは何をすればいい?」

「えっと、ケイさんは氷柱を持っててもらっていい? サヤは竹の器で削った氷を受け止めてね?」

「なるほどね。ハーレさん、氷柱をくれ!」

「はーい! 持って行ったほうがいい!?」

「いや、そこから下に落としてくれていい。受け取るから」

「了解です! えいや!」

「って、わざわざ勢いをつけなくていい!」


 氷柱は一番ハーレさんが数を持ってるから貰おうと思ったけど、普通に自分のインベントリの中のを使えばよかったか。落としてくれればそのまま纏氷の付与スキルの氷の操作で手元まで持ってくる気だったのに、わざわざ投げなくても……。まぁスキルは使ってないみたいだからそんなに勢いはないけどさ。


<行動値を4消費して『氷の操作Lv2』を発動します>  行動値 52/56(上限値使用:4)


 ささっと手早く投げられた氷柱を氷の操作の支配下において、手元まで移動させてくる。そして氷柱の両端を左右のハサミで固定しておく。ハサミだけでやるとちょっと力を入れ過ぎて砕いてしまいそうなので、氷の操作との併用でしっかり固定しておこう。


「あ、思った以上に氷柱の位置が安定してるね。そっか、そういう合わせ技もありなんだ」

「ま、単なる思いつきだけどな。それに氷の操作ならヨッシさんの方が固定は安定するんじゃないか?」

「あはは、固定するだけなら多分ね。そこから同時に削るとなるとちょっと自信はないよ」


 ヨッシさんは意外と何でも高水準でやってる気がするから、そんな事もないと思うけどね。まぁ今回のカキ氷作りはヨッシさんが指示出しなので、言われたままにやっていこうかな。


「ハーレ、私には竹を貰えないかな? 出来れば節の間隔が広いやつで!」

「サヤは直接渡した方がいいー!?」

「ううん、そのまま器に加工するから投げて欲しいかな」

「了解です! えいや!」

「……ここかな!」

「おー! お見事!」


 ハーレさんが軽く投げた1メートルくらいの竹を、節の部分をきちんと残して切断していた。……まぁ爪の本数の関係で地味に無意味な輪切り部分もあるけどそれはご愛嬌という事で。まだ節が両端に残ってる部分もあるので、そこはもう一回加工かな。

 節と節の間が長いのを選んでいたから、それほど無駄にはなってないしね。これなら充分器として使えるね。あ、でも縦に割るんだったような気も……?


「……サヤ、輪切りじゃなくて縦に割るんじゃなかったっけ?」

「うん、分かってるかな。そっちは私向けじゃないから、ケイかヨッシにお願いするね」

「あー、なるほどね。それなら俺かヨッシさんの方が適任だよな」

「それじゃ私が刃で切り込みを入れるから、ケイさんが叩きつけてくれる?」

「ほいよ。切れ味を俺の殴打で補強だな」

「うん、お願いね。えっと、アルさん以外の分は割った方がいいかな?」

「ほいよ。んじゃ2つを割れば良いか」

「そだね。それじゃ準備するね。『大型化』『斬針』!」

 

 普段は俺くらいの大きさになるヨッシさんだけど、今回はそれよりも更に大きくなっている。ヨッシさんの斬撃は切れ味は良くないから、俺の打撃で威力を補うという事である。縦に置いた竹の上にヨッシさんのハチの刃物化した針が置かれた。あとはここを目掛けて殴りつければ良いだけだ。


「行くぞ!」

「うん!」


 流石にスキルの必要性は感じなかったので、スキル無しでヨッシさんの針を殴りつけていく。するとパカーンと良い音を立てて、竹が真っ二つに割れた。続けてもう一個も同じように割って、用意完了だ。

 その間にサヤが加工したコップみたいになっている竹の器はアル用のものである。


「それじゃ準備は出来たね。あ、でも竹は洗った方がいいのかな?」

「大丈夫じゃね? 流石にそんなとこに有害なものを設定してるとも思えないしさ」

「うーん、まぁそれもそうなんだけど、気分的な問題で……」


 普段から料理をしているヨッシさん的には、ゲームの中とはいえ衛生面は気になるところではあるらしい。ま、杞憂だとは思うけどヨッシさんの気持ちは分からなくはないかな。


「しゃーない。サヤ、作った器を固めて並べてくれー!」

「うん、分かったかな」

「……ケイさん、何するの?」

「こうするんだよ!」


<インベントリから『川の水』を取り出します>


 インベントリから少しだけ持ってる水を竹の器の上に撒いていく。よしよし、これで竹の器の中には天然産の水が満たされた。まぁほんとなら水の操作で洗浄したいけど、とりあえず今はこれでいいだろ。


「サヤ、それで軽く洗ってくれ!」

「あ、そういう事だね!」

「おーい、ケイ! 樹洞の中を水浸しは遠慮してくれ……」

「え、これって水分吸収でどうにかなったりしないのか?」


 てっきり樹洞の中の過剰な水分とかも吸い取れそうな気がしてたけど、無理なのか……? それならちょっと軽率だったかもしれない……。


「……そういや試した事がねぇな。やってみるか。『水分吸収』!」


 そう言ってアルが水分吸収を発動したら、ぶち撒けていた余分な水分は吸収されてすぐに乾いていた。なんだ、試してなかっただけで問題ないじゃないか。


「意外とやってみるもんだな。水分量は少ないが、普通に使えるじゃねぇか」

「よし、それなら結果オーライって事で!」

「ま、別にそれで問題ないか」


 こういう事は試してみてこそだからね。この仕様だと水をインベントリに持っている人が樹洞の中で待機していれば、アルみたいな樹洞展開を持ってる移動種の回復アイテムを保持できるって事だしね。

 これは何だかんだで地味に良い手段を見つけた気もする。多分不動種でも同じような事は出来そうだしね。


「はっ! アルさん、ストップ! 敵発見だよ!」

「お、マジか。……どこにいる?」

「ちょっと遠いから分かりにくいかも! でも残滓のウサギだから、貫通狙撃でサクッと仕留めるね!」

「あー、だからストップなのか」


 どうやらハーレさんが結構離れた位置の敵を見つけたみたいで、敵に気付かれない内に一気に仕留めるつもりのようである。

 確かに単発系の応用スキルになる貫通狙撃なら遠距離からの攻撃に向いてるのかもね。名前的にも今までの狙撃の強化版っぽいし。


「折角なら一撃で仕留めたいよね! 『魔力集中』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『アースクリエイト』『貫通狙撃・風』!」


 纏氷で青白いリスになっているハーレさんの腕に風が纏わりついていき、その手に魔法産の小石が生成された。そしてハーレさんの小石を持つ手が緑色を帯びた銀光を発し始めて、チャージが開始されると同時に徐々に光が強くなっていく。

 今のハーレさんはアルの巣の上にいるし、巣のボーナスや色々と強化を乗せているのでこれは相当な威力になってるんじゃないか?


「あ、ラッキーだよ! 残滓のウサギがもう一体現れて、射線が重なったー! いっくぞー!」


 樹洞投影越しではウサギがどこにいるのか分からないけど、ハーレさんには見えているようである。これはアルが視覚延長Ⅰを持っていないからかな?

 そしてチャージを終えて凄まじい速さで投げ放たれた魔法産の小石はウサギ二体を無事に仕留めたようである。しっかりと二体分の経験値が入ってきたしね。……それにしても氷砲グマ以外はそれ程強い敵はいなさそうである。


「とりあえずハーレさん、お疲れさん」

「えっへん! 遠距離からの最大攻撃力はケイさんを上回った気がするよ!」

「あー、確かに今のは強力だったな。遠距離の高火力は期待してるぞ、ハーレさん!」

「うん、頑張るよー!」


 俺のはどちらかというと広範囲向けの攻撃の方が多いしね。さっきの距離で攻撃が出来ない事もないだろうけど、そこまでの距離を気付かれずに攻撃するのは相当難しいだろう。同じ遠距離攻撃に分類されるとしても、ハーレさんと俺とでは結構性質が違うもんな。

 流石に昇華魔法の方が確実に威力は上だけど、あれの魔力値の消費量はとんでもないので応用スキルの再使用時間と比較しても仕方ない。


「ケイさん、そろそろ始めたいんだけど良い?」

「あ、そうだな。役割分担してる意味がなくなるもんな」

「ヨッシ、こんなもんでいいかな?」

「うん、そんな感じ」


 俺が持っている氷柱の下にサヤが水洗いをした竹の器の1つを置いた状態で待機をしていた。位置のズレがあれば調整出来るように、爪で動かせるようにしている。


「アルさん、進行再開だよー!」

「おうよ!」


 アルとハーレさんは無事に移動を再開したようだし、俺らは俺らでやる事をやっていかないとね。さてカキ氷は果たして上手く作れるのかな?


「それじゃ始めるね。確か前に包丁で削るカキ氷ってのを見た事があるから、これで出来るとは思うんだけど……」


 ヨッシさんは先程竹を割った時のまま、大型化していてウニが頭の上でハチの針が刃状になっている状態だ。そして刃状にしている針で俺の支えている氷柱の表面を削り始めていった。お、これは結構上手く行きそうな感じだ。ってか包丁でカキ氷って作れるんだな。

 薄く氷柱の表面を削った氷が下に置いた竹の器の中に落ちていっている。ちょっと位置がズレていたけど、そこはサヤが位置調整をしていた。


「うん、ちょっと切れ味が悪くて難しいけど、出来なくはないね」

「もうちょい切れ味が欲しいとこか?」

「まぁそうだね。でもこれでも何とか出来るから大丈夫だよ」


 切れ味があまり良くない為か綺麗に薄く切れなくて、削った氷はバラバラに崩れていた。でもちゃんとカキ氷っぽい雰囲気になっている。これはなんだかんだで成功じゃないか?

 とにかくそんな様子で竹の器、1個分のカキ氷が完成した。おー、思った以上にカキ氷そのものだ。まだシロップ代わりの果汁とかはかけてないけどさ。


「あ、アイテム名が変わったね。『カキ氷・無味』だってさ」

「おー! 完成したんだねー!」

「無味って事はシロップ代わりに何かかけたらまた変化すんのか?」

「アルさんの読み通りだと思うよ。このままの状態だとアイテムとしての効果はないしね」

「へぇ? って事は、かけるものによって効果が変わるのか?」

「多分そうだと思うよ」

「これは実際に食べるのが楽しみかな!」

「そだねー! かけるのは何がいいかなー!?」


 確かにそういう仕様なら、かなり楽しみになってきた。これは手間がかかる分だけ回復アイテムとしての効果が期待出来そうだね。まぁ戦闘中には食べれる気はしないけど、連戦が続きそうな時に手早く回復する手段としてはありかもしれない。


「それは後のお楽しみって事で、とりあえず人数分を作ろうぜ」

「うん、そうしようか」

「ハーレさん、追加の氷柱をくれ!」

「はーい!」


 そうやってみんなで手分けをしながら人数分のカキ氷を作っていくのであった。ハーレさんの食欲から始まったカキ氷作りだけど、これは中々良い成果になりそうだね。

 それに無味のカキ氷まで加工してしまえば、その段階でインベントリに収納出来るようである。これは用途に合わせてシロップ代わりの果汁を用意するのが良いかもしれない。



 そうして人数分のカキ氷が完成した頃に、樹洞投影の様子を見てみれば大きな変化が訪れていた。さっきまでは氷の洞窟の様子だけだったけれど、洞窟の出入り口が見えてきている。


「お、出口に到着か」

「丁度いい時間配分だったかな?」

「カキ氷も人数分は完成したしねー!」

「それじゃ、山頂付近までみんなで目指していこうね」

「だな。近けりゃいいんだが、それは行ってみないとなんとも言えないか」

「それは行ってのお楽しみって事で! それじゃ雪山の登山をしていくぞ!」

「「「「おー!」」」」


 ま、登山とは言ったものの浮いているだけだから何か違う気もするけどね。とはいえ、目的地まではあと少しである。

 外から見た氷結草の群生地を見たら、後は下山するだけだ。まぁ降りる時に関してはそれなりに時間短縮の手段は考えてある。だから今は登っていくのを目指すだけだ!


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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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― 新着の感想 ―
[一言] 雪山でかき氷製造は触っても冷たくないからこそ出来る作業だよね(゜ー゜)(。_。)ウンウン
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