第396話 氷砲グマとの戦い
雪山にある洞窟に入って氷柱を集めたまでは良いけども、中々に厄介な敵が出現中である。そしてその厄介な敵である氷砲グマがまた雪玉を振りかぶって投げてきた。
あ、これってさっきまでとは違って大きな雪玉じゃなくて、小さな雪玉の散弾じゃねぇか!? 完全な視界潰しにはなってないけど、これは細かく分かれ過ぎてて地味に見辛いぞ。
「わっ!? 雪の散弾かな!?」
「アルさん、迎撃するよー! 『散弾投擲』!」
「広範囲となると……よし、これだ。『氷化』『リーフカッター』!」
「アル、ハーレさんナイス! サヤ、突っ込め!」
「うん、分かったかな!」
氷砲グマの散弾投擲を、アルの木にある巣からハーレさんが同じ散弾投擲で迎撃していく。それでも抜けた攻撃を葉っぱを氷化させ、その状態で発動したリーフカッターで切り刻んで防いでいた。
なるほど、リーフカッターってそういう使い方も出来るのか。樹木魔法って地味に変わった性質をしてるね。
そしてアルとハーレさんが迎撃している間に、多少の被弾やアルとハーレさんの攻撃が当たる事は無視して一気にサヤが突っ込んでいく。よし、もう少しでサヤの攻撃範囲だ。
あ、今度は氷砲グマがそこら辺の氷柱を掴んでへし折った!? へし折った氷柱を槍投げみたいに投げる気か!?
「ヨッシさん、ダメ元で良いから本体に麻痺毒か電気魔法で麻痺! サヤはもし麻痺が入ればそのまま連撃で、駄目なら一撃入れて退避! 氷柱は俺が何とかする!」
「分かったかな!」
「了解! 『並列制御』『ポイズンボム』『エレクトロプリズン』!」
よし、サヤもヨッシさんも即座に動き始めてくれた。ダメ元でとは言ったけど、全く弱点設定がされてないって事はないはず。それがどれなのかが問題なだけで、とりあえず有効そうな気のする麻痺から試していくだけだ。
アルとハーレさんが迎撃している間に少し行動値回復したし、俺は俺でやるべき事をやっていこう。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値4と魔力値12消費して『土魔法Lv4:アースボム』は並列発動の待機になります> 行動値 30/59(上限値使用:1): 魔力値 182/194
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値4消費して『火魔法Lv1:ファイアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 28/59(上限値使用:1): 魔力値 178/194
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
確かこの組み合わせで複合魔法になったはず。魔法砲撃は発動中だから、砲撃化して左のハサミに火魔法、右のハサミに土魔法の始点に指定。狙いは投擲体勢に入っている氷砲グマの持つ氷柱! 発射開始!
「おー!? 火炎放射だー!?」
ハーレさんがなんだか目を輝かせているような気もするけど、とりあえずそれは今はいいや。とりあえず左のハサミからは火炎放射のように火を噴き出していて、右のハサミからは土の弾を撃ち出していく。そしてそれを重なれば……。
<『複合魔法:ヒートボム』が発動しました>
よし、複合魔法化は成功して赤熱化した土の弾が氷柱に向かって飛んでいき、爆音を響かせながら氷柱を吹き飛ばしていく。そしてそれと同時にヨッシさんの電気の拘束魔法が炸裂して麻痺が入った!
麻痺毒のポイズンボムももう少しで着弾しそうだけど、ここは攻め時だ!
「サヤ!」
「一気に畳み掛けるよ! 『爪刃双閃舞・火』!」
そして元々の作戦通りではあるけど、そんな隙を逃すはずのないサヤの一撃毎に赤い銀光が強くなる連続攻撃が次々と決まっていく。でも、結構な勢いでHPは減っているけど削りきれそうにない? これは思った以上にHPや防御が高いのか。
お、ヨッシさんのポイズンボムも炸裂して、麻痺毒も入ったっぽい。でもこれは3割くらい残して削りきれないか。
「みんな、ありったけの攻撃を叩き込むぞ!」
「待ってかな!」
「……サヤ?」
え、ここで待ったがかかる理由ってなんだ? 仕留めきれなかったとはいえ、サヤ1人で7割近く一気に削ったんだから充分な戦果だ。それでも続ける理由……あ、もしかして……?
「勧められて取ってて良かったみたい。続けていくよ! 『連閃・火』!」
「おー!? 応用連撃スキルの二連発だー!」
「おー、こりゃすげぇのな」
「サヤって近接はほんと強いよね」
「だなー。とにかくトドメまでやっちまえ、サヤ!」
爪刃双閃舞とはまた違った、一撃辺りがより鋭い赤い銀光が強くなっていく連閃による連撃が氷砲グマのHPを今にも消し飛ばそうとしていた。連撃系の応用スキルは2つ持っていればこうやって繋げる事も出来るんだね。
連撃での威力強化は引き継がれはしないみたいだけど、流石にそれが出来たら凶悪過ぎるか。とはいえ、当て続けるのが難しい連撃系だから簡単な事ではないよね。
「これでトドメかな!」
そしてその宣言と共にサヤは袈裟斬りに爪を振り下ろし、氷砲グマのHPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていった。地味に耐久力のある敵だったね。まぁほぼサヤの独壇場だった気もするけど。
<ケイが未成体・暴走種を討伐しました>
<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・暴走種を討伐しました>
<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
討伐報酬も無事に手に入った事だし、とりあえず戦闘は終了っと。それにしても投擲系の敵の面倒さと、耐久性を兼ね備えていたら地味に厄介なもんだね。まぁ逃げ回って投擲されるのも厄介そうではあるけども……。
「サヤ、お疲れー!」
「連撃って見事に決まれば、凄い威力だね」
「あはは、ヨッシの状態異常のお陰ではあるかな。あれで反撃はほぼ封じられてたし」
「そういえば麻痺毒も、麻痺も両方効いてたね。もしかして弱点だった……?」
「ま、そうじゃねぇの? 行動封じの方法がなけりゃ、結構キツイだろ」
「アルに同意。あれで状態異常も無効なら雑魚敵としては面倒過ぎるしな」
凍結は氷属性の段階で除外だったけど、火傷とか盲目とかの可能性は充分あったしね。とりあえず効果がありそうな気がした麻痺と麻痺毒にしたけど、大正解で良かったよ。
「それにしても結構強かったね」
「強かったっていうよりはタフだったかな?」
「だったねー! あ、サヤ! 連撃の様子はしっかりスクショ撮ってるからね!」
「あ、ハーレ、ありがとね」
「……ハーレさん、いつの間に?」
「ふっふっふ、サファリ系プレイヤーを甘く見てもらっては困るのです!」
そういやいつの間にか空中を漂ってるんだよな、ハーレさん。雪の散弾を迎撃してた時にはアルの木の巣にいたはずなのに、一体いつの間に……。うーん、クラゲの強化で移動が地味に早くなった?
ま、戦闘の状況を乱してた訳でもないし、移動が早いのは悪い事でもないから別に良いか。地味に妨害に向いてそうな位置にはいるもんな。
「さて、それじゃ洞窟を進んでいくか。左の道と真正面のどっちにいく?」
「真正面! さっきのクマが雪をどう調達してたのかが気になります!」
「あ、それは確かに気になるかな」
「……確かにそうだな。同じような敵の可能性も考えて、状況の確認はしておくべきか」
「アルさんに賛成。私も気になるしね」
「なら、真正面だな。何がいるか分からないから要警戒! ハーレさん、危機察知は頼むぞ!」
「了解です!」
満場一致で氷砲グマのいた真正面の道へと行く事が決定した。雪を生成するというよりは、どっかから持ってきていた感じだからね。その辺を確認しておきたいのは俺も同感だ。
「そういや折角の纏氷だし、移動操作制御の取得も兼ねてこれで行くか。『氷化』『根の操作』!」
「あ、再現に使われてた方の滑る移動のやつか」
「まぁな。とりあえず洞窟の中ならこれでもいいだろ」
ここはそれほど凸凹していないし、アルの木はその方がスケートみたいで動きやすいかもしれない。それにアルが自力での水のカーペットの使用には重要だからね。小まめに鍛えていくのが良いはず。
さてと洞窟の奥へと進む準備は出来た。冷凍蜜柑については気にはなるけど、とりあえず後回しで。後で取りに来れば大丈夫だと思う。凍らせながら持ち運べ……なくもないけど、手間がかかるし仕方ないかな。
そして真正面の道を進んでいけば、割とすぐに疑問は解決した。目の前には崩れてきたような雪の塊が見えている。そして上部を見上げてみれば一目瞭然であった。
「ここ、天井が落ちてんのか」
「雪が降ってるねー!?」
「というか、外は吹雪になってない……?」
「うん、間違いなく吹雪かな」
「洞窟内の探索にして正解だったっぽいな」
そこには洞窟の天井部分が大きく崩れているのか、外の様子が普通に見えるようになっていた。これ、方向的には俺がこの洞窟の入り口の前に転げ落ちてなかったら見つけてた場所かもしれないな。
さっきの氷砲グマはここにある雪を投擲用の弾に使ってたって事なんだろう。とりあえず洞窟内に雪があった理由はこれで解決っと。
それにしても、その穴から見える外の景色は完全に吹雪になっていた。うーん、山の天気は変わりやすいとは言うけども、あれだけ快晴だったのに吹雪になってるとはね。
「この雪って散弾投擲の弾になってたよね!?」
「あー、なってたな。ハーレさん、ちょっと採っていくか?」
「うん、採っていく!」
「ほいよっと。みんなもそれでいいか?」
「私は問題ないよ」
「俺も別に良いぜ」
「それじゃ私は集めるのを手伝おうかな」
「サヤ、ありがとね!」
特に異論もなさそうだし、少しの間ハーレさんの新たな弾の採集を待つのもいいか。雪玉の散弾は威力としては大した事はなかったけど、嫌がらせとしては地味に効果があったもんな。
ハーレさんとサヤが2人で雪玉を作りながら、インベントリに仕舞っていくのを見つつ少し休憩タイムである。あー、もうちょいで2回目の纏氷の時間切れでそろそろ10時か。今日はどこまでいけるかな?
そんな事を考えていたらヨッシさんが近付いてきた。何か気になる事でもあったのかな?
「ケイさん、ちょっといい?」
「ん? ヨッシさん、どうした?」
「この崩れたのが元々のデザインなのか、後から変化したものかにもよるんだけどね。さっきの戦闘では何ともなかったけど、爆発系の魔法は避けた方が良いんじゃない?」
「……あ、確かに」
確かに元々なのか後からなったのかの違いにもよるけど、この洞窟内で爆発させまくればここみたいに崩落する可能性もあるのか。
それに崩落は無くても氷柱を盛大に崩してしまう可能性もある。採集に必要な分は良いとは思うけど、過剰に破壊し過ぎたら迷惑がかかるかもしれないから少し自重しておくか。
「……あれ? 今、そこを何かが通らなかったかな?」
「え、サヤ、どっちだ?」
「この道の奥の方かな。……視界の端に掠めただけだから、見間違いの可能性もあるけど……」
崩落の可能性を考えている間に何かが通ったのをサヤが目撃したのか。サヤが指差す方向はこれから向かう予定の奥の通路である。
ふむ、誰か先客がいるという可能性は充分ある。そして他の敵という可能性も……。まぁこれは実際に確認しない事には何とも言えないか。
「……行く予定の道だけど、予定通りに進む?」
「ケイ、別に引き返す理由もないだろ。他のプレイヤーなら別に問題ないし、敵なら倒せば良いだけだ」
「ま、そりゃそうだ」
「それじゃ予定通りに奥に進もうー!」
「あれ、ハーレ? 雪玉はもう良いの?」
「それなりに確保出来たから充分です! サヤも手伝いありがとね!」
「あはは、どういたしましてかな」
とりあえず雪はある程度の量は確保出来たみたいだし、サヤが見たらしい何かも気になるから、そろそろ出発していこう。一体何がいたのか、かなり気になるところだね。
「ところでハーレは何を食べてるの?」
「雪だよー! 触ってると冷たくないのに、食べると冷たいんだよ! ヨッシも食べるー!?」
「……この見た目的に寒そうな場所で食べる気は起きないよ」
「まぁ雪だけじゃ美味しくないしね! 私も雪だけで食べるのはもういいや!」
「オフライン版の時にも思ったけど、触って冷たくない雪っていうのも不思議な感じかな」
「だからといって完全にここの体感気温を再現されても正直困るけどな……」
「……確かに。ここ、確実に氷点下は行ってるだろうし……」
流石にゲームで遊ぶ為なのに氷点下の気温は実感したくはない。それが再現されていたら、雪山エリアとか絶対に行きたくないし……。ゲームだからこそ、環境の気温を無視出来るってのは良いところだよね。まぁゲーム的な地形や気候によるデメリットは避けられないけど。
そしてとりあえず雪を食べてるハーレさんはスルーの方向でいこうかな。まぁ正直やるとは思っていたから、やっぱりという感想でしかない。
ともかくここでやる事は終わったみたいだし、次に行ってみよー!
「それじゃ奥に進んでいくぞ!」
「「「「おー!」」」」
さてとサヤの視界の端に捉えた影が一体何者なのかを確認しに行こうじゃないか。そしてこの洞窟がどこに繋がっているのかもだね!




