第347話 常闇の洞窟を出る為に
イベントの演出も終わり、佳境に入った事も実感出来てみんなのテンションが上がってきている。ま、次のボス戦が最後という事になればその気持ちは充分理解できる。
それにしてもイベントの進行は早めだとなっていたけど、思った以上に早いみたいだね。トラブルが無かった訳じゃないけど、結構連携も出来ていたからその辺の成果かな。
「よーし、共闘イベントは大詰めみたいだよ! 常闇の洞窟での作業は終了みたいだから、これにて解散! そこからは各群集の方針でボス討伐を頑張っていこうー!」
「おし! ボス戦、頑張るぜ!」
「まずは初期エリアまで戻らないとね!」
「海エリアに戻る人は海流の操作で流していくよー!」
「お、助かる!」
「俺はリスポーンで戻るから、誰か倒してくれー!」
「よしきた。任せとけ」
「こっちもお願い!」
「おーい、通路でログアウトすりゃいいだけだぞ?」
「え、でもそれじゃボスの目の前に戻らない?」
「あ、そういやそうか。それだと意外と危険……?」
「そんなのは突破すればいいだけだ! どっちみち死ぬなら関係ねぇ!」
「俺らは歩いて戻るか。急いで行っても混雑しそうだし」
「そだな。ちょっと早いが、先に昼飯食ってくるってのもありか」
「そうだな。そうすっか」
弥生さんが全体に向けて号令をかければ、各自がそれぞれの方法で戻る方法を考えていた。通路でログアウトするとヒノノコの目の前に出る事にはなるんだよな。まぁ死ぬならそれはそれでありではあるけど、どうしようかな。
そんな事を考えていれば、ジェイさん達が近くにやってきていた。あ、そういや海の人達とは帰る方向が違うんだよな。
「皆さん、今回の共闘はこの辺りまでのようですね」
「色々とあったが、まぁ楽しかったぜ。次に会う時は敵か味方か分からねぇが、次もまた楽しみにしておく」
「おいおい、イベント自体はまだ終わってねぇのにジェイも斬雨も気が早いだろ。ボスだって居るんだから、途中までは一緒だろ」
「三日月、ケイさん達は一緒ではありませんよ。入り口が同じ場所であれば同じボスの場所に行く必要もありますが、私達は海から、ケイさん達は森林深部からでしょうしね」
「あ、そういえばそうなるのか……」
入り口が違ったからこそ、こうして3つの群集が集まる事が出来た訳でもあるけどね。少なくとも群集拠点種が正常化するまでは初期エリア間の転移は復活しそうにないし、違うボスに挑む人とはここでお別れか。まぁ、今後会うことがなくなるという訳じゃないし、また会う機会もあるだろう。
「今度会った時も楽しくやろうな、ジェイさん、斬雨さん、三日月さん!」
「おう! 鍛えて楽しみにしてるぜ、ケイさん!」
「次はギャフンと言わせてあげますからね。覚悟しておいて下さい、ケイさん」
「あー、それはどうだろ?」
「くっ、余裕そうですね!? 行きますよ、斬雨、三日月!」
妙にジェイさんに対抗心を向けられている気はするんだけど、別にジェイさんを打ち負かす為に動いてる訳じゃないんだけどな……。うん、ジェイさんは凄い発想をしてくるとこはあるから、分析して応用方法は探るけど徹底的に競う気はない。まぁ、ジェイさんのモチベーションになってるならそれはそれで良いのかもしれないけどね。
そしてジェイさん達はシアンさん達と一緒に海の方へ戻っていく予定を立てにいった。さてと俺らは俺らで森林深部に戻って、臨時拠点のミズキの森林まで行く事を考えないとね。
改めて考えてみるとミズキの森林って臨時拠点になってたけど、俺達は殆ど居なかった気もするね。そういやあそこにいる水砲ザリガニってどうなってるんだろ……? あれ、そういえば水砲ザリガニの攻撃って……ふむ、これは後で確認しておこうかな。とりあえず今は戻る事を先に考えよう。
「みんな、どういう手段で戻る?」
「……俺は共生進化が解除されると面倒な事になるから、極力死なずに戻る方向性でいきたいとこだな」
「共生進化の解除が面倒って事は……アルのクジラって、どこにリスポーン位置があるのかな?」
「海の中だな。というか、ケイ以外の2ndはみんなそうじゃねぇか?」
「陸地に再設置してなかったー!?」
「……そもそも海の種族って陸で設定できるのかな? あ、そういえばヨッシのウニは進化の時に草原に設置してなかった?」
「あ、そういえばそうだったね。……あんまり気にしてなかったけどウニって多少は陸地でも耐えれるし、そのおかげ?」
「あー、陸地で単体ではすぐ死ぬような種族じゃ無けりゃ、リスポーン位置の設定は問題ないって話だぞ。俺はいけるか微妙なとこだが、適応しているハーレさんのクラゲと、そもそも海から外れたサヤならいけるんじゃねぇか?」
「あ、確かに竜なら出来るかな?」
「おー、そうなんだー!」
なるほど、共生進化で種族が海と陸に分かれてる場合はそういう仕組みになってたのか。支配進化はその辺の仕様が違うからあんまり意識してなかったよ。アルのクジラは……哺乳類だから一応いけそうな気もするけど、やってみないと分からないのが何とも言えないとこだな。
その辺を気を付けなければ共生進化が解除になればバラバラのエリアで復活して、転移も出来ずに再び共生進化が出来ずに面倒な事になりそう。普段の時なら帰還の実さえ持ってればどうにかなるけど、今の状態だと……。
「あ、そういう事か」
「ケイ、何がだ?」
「期間限定版の『仲間の呼び声』の用途だよ。逸れたフレンドだけじゃなく、それも用途になってるんじゃないか?」
「あー!? そういえばそんなのあるって紅焔さんが言ってたもんね!」
「そういえば、あれは自分の別キャラにも使えるんだったな」
ふむふむ、何だかんだで分断された場合の手段はしっかりと用意されているんだな。あれ、そういや仲間の呼び声って共生進化時に使うとどうなるんだ? 実際に使った事がないからその辺の効果はさっぱりだ。……まぁ課金アイテムだから多分いったんのところで説明を聞けば教えてくれるはずだろうけど。
「はい、ケイさん!」
「どした、ハーレさん?」
「共生進化してる時に仲間の呼び声を使うとどうなりますか!?」
「知らん!」
「あぅ!? 即答だった!?」
俺自身知らないんだから、それ以外答えようがないんだもんよ。俺らのPTでは呼び出す側で使った事があるのがヨッシさんで、使われた側はハーレさんのみだからなー。
用途が用途だし、頻繁に使うような物でもない課金アイテムだもんな。でも情報ポイントで手に入る期間限定版を使ってみるというのもありか? うーん、でも情報ポイントが勿体無い。本当に必要性に迫られない限りは使うのは極力なしだね。
「それについては『一緒に呼ばれる』だよ。確かそうだったよね、ルスト?」
「えぇ、1度使った事がありますのでそれは間違いありませんよ」
「おー! 弥生さん、ルストさん教えてくれてありがとねー!」
「いえいえ、これくらいはねー?」
そしていつの間にか近寄ってきていた弥生さんとルストさんが効果を教えてくれた。ほうほう、これは地味にありがたい情報だね。
「さてと、わたしはお昼ご飯の材料を買い出しに行ってきて、お昼作るけどルストはどうする?」
「おや、今日は私が買い出しに駆り出される訳じゃないのですね?」
「ル・ス・ト? わたしがいつもパシリにしてるみたいな言い方はどうなのかなー? 休日はいつもわたしが行ってるよねー? そもそも居候の条件で手伝う事になってたよねー?」
「そうでしたね!? 謝りますので、弥生さん勘弁してください!?」
大型化していく弥生さんに対して、謝り倒していくルストさんであった。……うん、リアルでの関係では圧倒的にルストさんの方が弥生さんより立場が下のようである。
っていうか、もう当たり前のようにリアル側の会話してるんだね。……まぁ盛大にルストさんが喋っちゃってたもんな。
「ともかく、ルストはどうするの? わたしとしてはリスポーンで戻れるようにしといてもらえると助かるんだけど?」
「あぁ、そういう事ですか。それでは私はケイさん達と同行してミズキの森林まで戻っておきますね」
「うん、それならそういう事でよろしく。あ、でも距離もあるから行ける範囲でいいからね」
「はい、分かりました。皆さん、そういう事なので帰りも同行してもよろしいですか?」
「ま、問題はないな」
「もちろんさー!」
「改めてよろしくね、ルストさん」
「それじゃ、いつものみんなとルストさんで入り口まで移動かな?」
「そういう事になるな」
今回の臨時メンバーは昨日に引き続きルストさんで決定だね。ま、目的地も一緒だし未成体の移動速度なら昼までには脱出は出来るかな? まだ11時は来てないけどもうすぐだし後1時間では……うーん、ちょっと厳しい……?
まぁそこまで焦る必要もないか。あのヒノノコが弱体化したとはいえ即座に倒されるほど甘いとも思えないしね。何より、演出的にエンは倒せない可能性は非常に高そうだ。瘴気の流出は止まったとはいえ、既に溢れた瘴気のことも確認しないといけないしね。
「さーて、今日は何を作ろうかなー?」
「弥生さんは料理する人なんだ?」
「うん、趣味だからね。旦那にも好評だから、休日は特に頑張るよ」
「弥生さんの料理は美味しいのですよ?」
「ヨッシの料理だって美味しいんだよ!?」
「ハーレ、なんでそこで張り合うの!?」
「へぇ、ヨッシさんも料理するんだね。色々と話してみたい気はするけど、時間が時間だからまた今度ね!」
「あ、私も話してみたいです」
「うん、それじゃ今度時間を取って話そうか。調理に関しては制限の多すぎるこのゲーム内で何が出来るかって話もしてみたいしね」
「それは確かに……」
「それじゃわたしは一旦ログアウトするから、ルスト任せたよー!」
「はい、任されました」
そうして弥生さんはログアウトしていった。まぁ昼からはまたログインしてくるのかな。そういやルストさんの兄が弥生さんの旦那さんって話だったよな。3人で時間が合えば一緒にやっているって言いかけてた様な気もするし、その人も赤のサファリ同盟の人だったりするのだろうか?
少し聞いてみたい気もするけど、リアル側の情報でもあるからな。うっかり口を滑らせたルストさんから、更にリアル情報を聞き出そうというのは流石にマナー違反だな。これについては自重しておこう。
「さて、それじゃ入り口まで移動していくか」
「「「「「おー!」」」」」
この場に集まっている他の人達もそれぞれの仲間と共に、行動を開始していく。とりあえず海水のところまでは俺の水流の操作で移動していくか。
「アル、水流で手っ取り早く移動する?」
「いや、今回は俺に自力で移動させてくれ」
「何か移動関係で鍛えておきたい感じか?」
「まぁ、そんなとこだ。ルストさんの動きを見てたら少し思うところもあってな」
「おー! アルさんの特訓だー!」
どうやらアルはアルで鍛えておきたいとこもあったらしい。さっきまではあんまり移動できる状態でもなかったから、大々的に移動が必要な時に鍛えておきたいっぽいね。
まぁ、俺の水流でやると俺の熟練度にはなるけどアルのスキルの熟練度が微妙になるしね。特に木の方は育つ余地が無くなるもんな。よし、そういう事なら移動はアルに任せようか。
「おぉ、アルマースさん、そうなのですか! それでは根脚移動での移動のコツをお教えしましょうか?」
「良いのか、ルストさん?」
「えぇ、構いませんよ。それに根の昇華まで行っているのであれば、これはおそらく簡単なはずです」
「なに、そうなのか?」
「基本は根の操作のコツと同じですからね。……ですが、そのままですと流石にクジラが少し邪魔ですか」
「あー、それなら共生進化を解除した方がいいか?」
「えぇ、その方がよろしいかと。おそらく慣れれば問題はありませんが、最初のコツだけは単独の方が良いでしょう」
「……よし、少し解除してくるから待っててくれ」
「はい、お待ちしております」
そしてアルは一度クジラとの共生進化を解除する為にログアウトしていった。こうやって状況に合わせて解除できるのが共生進化の利点だね。デメリットは共生進化相手のスキルの発動可能数が少ない事だけど、まぁその辺は仕方ないのかな。何でも全て出来たら複数の別の進化がある意味も無くなるしね。
「アルが特訓するのなら、少しの間はここで待機かな?」
「そだね! でもアルさんがコツを掴んだら、移動開始さー!」
「ルストさん、時間は掛かりそう?」
「アルマースさん次第ではありますが、それほど掛からないとは思いますね。最終的にはクジラと並行してかなりの移動速度になると思いますよ」
「お、それは期待大だな」
どうやら相当なアルの強化になりそうだ。まぁ確かにルストさんのこれまでの移動速度をアルが再現できれば確実に移動は早くなりそうだもんな。
そうやって話している内にアルが戻ってきた。久々の木のみでの登場である。ま、木を鍛えるんだから当然な事だけどね。久々に見たけど、ログイン直後は普通に地面に植わってるんだよな。地面は岩場なのにこの辺はゲーム的な不思議仕様か。
「待たせたな。ルストさん、早速いいか?」
「えぇ、それでは開始しましょうか」
そうしてアルの移動速度強化の為の特訓が始まった。さて、どういう風になるのかわからないけど、これで強化になればかなり有り難いね。
そういえばルストさんの瞬発的なあの移動は俺の体当たりに近かったっけ。ふむ、これは俺にとっても興味深い事になるかもしれないね。




