第270話 赤の群集での騒動の元凶
桜花さんからお礼として癒の小結晶も貰ったことだし、今日の共闘イベント攻略に向けて動き出しますか。
「さてと今日はどうする? 昨日の夜と同じとこ行くか?」
「ケイ、その前にちょっと良いかな?」
「どした、サヤ?」
「少しだけ眩しいから、発光のLvを下げてもらってもいいかな?」
「え、これ眩しいのか?」
「うん、上から見下ろしてるとね」
「あ、それは私も気になったね」
「あー確かにそうなるのか。分かった、発動し直しとく」
そうか、俺の視点からだと間接的な灯りになるけど、クマのサヤや飛んでいるヨッシさんの目線だと直接光を見る事になるんだな。これは地味に盲点だったね。……ふむ、これは何か対策を考える必要があるのかもしれない。ま、今のところはLvを下げて発動しとけばいいか。
<『発光Lv4』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 49/49 → 49/53(上限値使用:1)
<行動値上限を使用して『発光Lv3』を発動します> 行動値 49/53 → 49/50(上限値使用:4)
自己強化やら操作属性付与やらは何の進化の軌跡を貰うか話している際に切れているので、上限値使用はこんなもんだな。うーむ、やっぱりあれは動きが変わり過ぎるので時間制限がややこしい。やっぱり戦闘中に上げるのが1番か。
「これでいいか?」
「うん、大丈夫かな。ありがとね」
「いやいや、良いって。それで、どの程度の眩しさ?」
「多分夜目を使ってるせいもあるんだろうけど、結構気になる感じかな」
「妨害になる程ではないけど、気が散るとかそんなところだね」
「なるほど、そんな感じか」
気が散る程度だったら妨害に行動値上限を4使用するのは微妙か。ただの光源として使うならLv3までで充分という事なのだろう。
さてと光源の調整も済んだ事だし、そろそろどこに行くかでも決めてーー
「見つけたぞ、ケイ」
「うおっ、ビックリした!? なんだ、ベスタか」
いきなり近くの地面のコケから何かが飛び出して来たからビックリした。いや、普通に走って速いんだから普通に走ってくれ、ベスタ。って、すぐそこが段差になってるからショートカットしただけっぽい? 急いでるなら自己強化とかを使えばいい気もするけど、どうしたんだろ?
「……ベスタ、何かあったのか?」
「あぁ、赤の群集の騒動の元凶のクマがこっちに乗り込んできて、オオカミとコケを出せと言ってるんだとよ。累積警告による1回目のアカウント凍結は最低基準で48時間だからな。……その次に同じ事をやれば永久凍結なんだがな」
「えーアカウント凍結がもう解けたのかよ……。っていうか元凶ってクマなんだ……?」
「なんだ、知らなかったのか?」
「具体的に種族は聞いてはなかったからな。そうか、クマなのか……」
「……同じクマとしては複雑な気分かな」
「まぁわざわざ知りたい情報でもないか」
具体的にどのタイミングで凍結されたのかも分からないけど、やってきてるって事は解除されたんだろうな。……地味に元凶の種族は知らなかったけどクマなのか。掲示板で見下して来たサボテンとか見た覚えもあるけど、あっちは便乗犯になるんだね。……便乗犯、何人いるんだろうか。
それにしてもクマだとサヤは微妙な心境だろう。自分と同じ種族が迷惑をかけているのは良い気分じゃないだろうし。
「という事はベスタさん! これからぶっ潰しに行くの!?」
「あぁ、そうなるな」
「これは完全に終わったかな……?」
「……あはは、懲りてればいいのにね」
「って事で、ご指名のコケの人、行くぞ」
「……ベスタだけでも良いんじゃね?」
「いい加減ウザいから、2連敗で無駄なプライドを粉々にしてやる」
「ベスタさん、容赦ないね!?」
「……自業自得じゃないかな」
「だろうね……」
まぁベスタの気持ちも分からないでもない。もういい加減ウザいというのには同感だし、共闘イベントにも支障が出るのは間違いない。ここらで本格的に叩き潰しておくほうが色々と安心か。
それにしてもアカウントの一時凍結って48時間なのか。そしてその後に再犯があればBANになると。え、1発でBANになったクジラってどんだけ……。まぁそっちはもう終わった話だからいいや。問題は今のクマか。
「全力でぶっ潰して良いんだな?」
「むしろ手抜きしたら許さん。全力で叩き潰せ」
「了解っと。で、場所はどうするんだ? 流石に初期エリアはマズいよな?」
「今、灰のサファリ同盟の方でミズキの森林へと誘導してもらっている。灰の群集の占拠エリアなら相手の居場所が分かるし、赤の群集ならランダムリスポーン以外の復活方法は無いから他のエリアへは逃がしはしない。……いい加減罰を受けてもらおうか」
「徹底的に潰す気って事か。……2連敗で済むか?」
「……場合によってはそれ以上負けるかもしれん。逃がさない為に色んなやつに包囲網を頼んでいるからな」
「よし、乗った! 中継は?」
「赤の群集は巻き込む可能性があるから遠慮してもらっているが、灰の群集の連中が準備中だ。戦闘に入り次第、赤の群集からも観戦しに来れるように手回し中だ。ノリノリだったぜ、今の赤の群集の連中はよ」
既に色々と準備中のようである。そして赤の群集もよっぽど鬱憤が溜まっているのだろう。着実に叩き潰す計画が立てられているようだ。……もしかして復活してきたら再度暴れる可能性も予期していたのかもしれない。
「おー!? それじゃ私達はそっちで見てて良い!?」
「これは私達は邪魔になりそうだし、そうしようかな?」
「逃げた場合の足止めに回ってくれてもいいが、そこは好きにしてくれればいいぞ」
「それじゃ私達は見物にさせてもらうよ」
「あぁ、それで構わない。あんまり褒められた行為でもないからな」
「それじゃ、ケイさん、ベスタさん頑張ってね!」
ま、向こうから俺らを出せと乗り込んで来たからとはいえ完全に過剰に返り討ちにするつもりだしね。しかも逃げ切れないような状況に追い込んでという計画である。……まぁ確かに褒められた内容ではないけど、いい加減終わらせておかないと邪魔でしかないからご要望通りに出向いてやろうじゃないか。
そしてベスタとPTを組んだ後に、エンからミズキの森林へと転移していく事になった。……地味にルアーとガストさんがPTに入っているけど、これはどうしてだろう?
「なぁ、ベスタ? なんでルアーとガストさんがPTにいるんだ?」
「それは後で俺らがその馬鹿の回収に行くからだ」
「おい、ガスト!? まぁ、そういう事になるな。面倒かけて済まない」
「ケイさん、遠慮なくぶっ飛ばしてくれて構わんからな」
なるほど、ルアーとガストさんはぶっ倒して心をへし折った後の回収役か。そういう事なら了解だ。それにしても今更暴れても心象は悪くなるだけだろうに、なんで俺とベスタに因縁つけてくるのやら? うーん、荒らしの行動理由なんてのは考えるだけ無駄……?
「ケイ、行くぞ」
「おうよ!」
<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ミズキの森林』に移動しました>
そしてミズキの森林へとやってきた。……パッと見では人気がないように思えるけど、マップからプレイヤーの位置情報を確認してみれば、灰色の印がエリア全域のあらゆる所にあった。……これが逃がさないための人員か。流石に埋め尽くすのは無理だけど、すぐに隣へ駆けつける事が出来るくらいの距離は保っているね。
そして赤い印が1つ、こちらへと近付いてくる。少しすれば目視出来る範囲にクマの姿が浮かび上がってきた。
「はっ! 逃げずによくやって来たな!」
「いきなり乗り込んできてよく言うぜ。一応聞くが、何の用だ?」
「決まってんだろ! たまたまルアーを倒して調子に乗ってるてめぇらをぶっ倒すんだよ! 昨日はガストとかいう知らない奴相手にたまたま勝ったそうだが調子に乗ってんじゃねぇ!」
はぁ、こいつは何なんだろう。自分が最強だとでも勘違いしている馬鹿なのか。……それにしても、ガストさんも相当強いと思うけどそれすら理解できていないのか。あ、ベスタがいい加減キレそうだ。ま、俺も同じだけど。
ルアーやガストさんの力量も正しく把握も出来ず、挙げ句に勝った側の俺らを調子に乗ってると来たか。コイツ何様だ? いや、そんなのはもうどうでもいい。もうこいつは問答無用で殲滅決定だ。
「はっ! どうせ大した事はないからこそ、こんな自分達に有利な場所で戦おうってんだろ。2人同時に相手してやるからかかってこいよ」
あー、もう会話する気にすらならない。話の通じない奴ってのはこれだから嫌だ。思い込みだけで好き勝手に暴れ回るし、自身の過ちを認めようともしない。1対1で叩き潰すつもりだったけど、ここまで舐められると相当腹が立つな。
「……そうか、俺らの全力を希望か。おい、ケイ」
「おう、分かってる」
ここはあえて挑発に乗ってやろう。そして盛大に後悔すればいい。ルアーの力量もガストさんの力量も正しく理解出来ない奴に負ける気なんて欠片もないからな。全力で叩き潰してやる。
<行動値1と魔力値4消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 49/50(上限値使用:4): 魔力値 110/114
<行動値を4消費して『土の操作Lv3』を発動します> 行動値 45/50(上限値使用:4)
「ベスタ、これでコケのあれってのはどうだ?」
「面白い事を考えるな、ケイ。『増殖』『群体同化』」
「はっ、そんな小石が何だってんだ! 『魔力集中』『強爪撃』!」
ベスタの前に小石を3つ並べて、そこにベスタがコケを増殖させてコケ付き小石にしていく。これの凶悪さなんてものは欠片も想像していないらしい。そこから個別に小石を操作して、クマの周りを不規則に動かしていく。さて、俺とベスタでの連携技といこうか。
クマの爪が俺やベスタに当たる事など全くなかった。狙い自体は悪くはないけど、これならガストさんの風魔法の精度の方が遥かに上だぞ。
「『魔力集中』『コケ渡り』『強爪撃』!」
「はぁ!? 何だ、その技!?」
「『コケ渡り』『強爪撃』『コケ渡り』『爪刃乱舞』!」
「ぐっ! がっ! ぐはっ!?」
おー、結構乱雑にかなりの速度で小石を動かしているけど、ベスタは難なくその速度に合わせてコケ渡りを繰り返し連撃を加えていく。この辺の技術は流石だね。
それにしてもこいつ、思った以上に弱いな。サヤなら一方的に受けるんじゃなくてカウンターの1つでも仕掛けてくるぞ。……いくらなんでも弱過ぎる気もする。この実力で赤の群集を機能不全になるまで引っ掻き回した? 実力が全てじゃないだろうけど、この程度でそこまでの事が出来るか……?
「ベスタ、攻撃役交代」
「ま、仕方ない。このままでも仕留めきれそうだが、まだまだ叩き潰すには足りねぇよな」
「な、何を! くそったれどもが調子に乗ってんじゃねぇ! 『爪連撃』!」
「『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『爪連撃・風』」
「そりゃこっちのセリフだっての!」
爪による連撃もベスタがあっさりと迎撃するどころか、追撃の風の刃で更にダメージを与えていく。もうHP半分切ったのかよ。あまりにも早すぎる。……ほんとにこいつが元凶なのか?
……いい加減、力量の差を認めろよ。今のベスタの迎撃もそれなりに難易度高いと思うぞ。……それが分からないからこんな事になっているんだろうけどさ。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を20消費して『光の操作Lv2』は並列発動の待機になります> 行動値 25/50(上限値使用:4)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を4消費して『閃光Lv2』は並列発動の待機になります> 行動値 21/50(上限値使用:4)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
そして並列制御からの収束レーザー攻撃をクマに撃ち込む。Lv2にもなったし、制御自体にも慣れてきたけどまだ完全に狙ったとこには当たらないか。それでも腕を貫いてHPの1割を削ったので結構な高威力だな。
「な、何をしやがった!? 今のはなんだ!?」
「教える訳ないだろうが! ケイ、全体を覆うようにドーム状の水の足場を作れ」
「おうよ!」
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 20/50(上限値使用:4): 魔力値 107/114
<行動値を3消費して『水の操作Lv6』を発動します> 行動値 17/50(上限値使用:4)
ベスタの要望通りにクマと俺とベスタを覆うようにドーム状に水を生成する。足場という指定から反発力は高めにしておいた。……具体的に何に使うのかまだ分からないけど、ベスタにとっては重要なものなのだろう。
「はぁ!? 何だこりゃ!?」
「それすら知らないで喧嘩売ってんじゃねぇよ! 『爪刃双閃舞・風』」
そしてベスタの爪が緑色を帯びた銀光が少し帯び始めたところで、駆け出していく。爪での攻撃が当たる度に爪の銀光の強さが増していき、ベスタは周囲に作った水の足場を利用し立体的に縦横無尽に連撃を加えていく。攻撃に使う側の爪に銀光が移り渡りながらである。
これって連撃系の応用スキルか。連撃だとベスタみたいな四足歩行だと使いにくそうな気はするけど、上手く使うもんだな。着地する脚の爪ではない方に銀光を移しながら連撃を繋げているのか。……一度失敗したのか銀光を纏った爪で着地した時には地面が盛大に抉れていたし。
そうか、その為の水の足場か。水の足場を使う事で跳び上がる方向と次の攻撃への角度の自由度を上げて、攻撃の成功率を上げているんだな。そうして攻撃が当たる度に銀光の輝きが増していく。……まぁ縦横無尽に跳び回るってのはもう曲芸の域な気もするけど。
そして10連撃にも及んだベスタの攻撃が終わった頃には、もうクマは満身創痍であった。もう残りHPも僅かである。よくもまぁ、この体たらくであれだけの大口が叩けたもんだな。ろくな反撃すら出来ていない。
なんだろう、戦えば戦うほどに妙な違和感が増えていく。なんというか、どことなくわざとらしさが紛れているというか、嘘っぽいというか……。
「く、くそ! こんなはずが! 俺が負けるはずがねぇ! そうだ、てめぇらが2人がかりだからこそだ! 待ってろ、1対1でぶっ潰してやるからな!」
うわー、この状況でもボロ負けが自分から挑発してきた2人がかりのせいって、面倒くさ……。って、逃げ始めてるし……。いくらなんでも見苦しいにも程がある。わざわざ挑発しないといられない性分なのか? なんかわざとらしいんだよな、挑発というか言動が……。
「……ケイ、盛大に仕留めろ」
「……分かった」
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 16/50(上限値使用:4): 魔力値 104/114
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 14/50(上限値使用:4): 魔力値 101/114
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
<『昇華魔法:ウォーターフォール』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/114
はぁ、こんな馬鹿が赤の群集を乱しまくってたのかと思うとため息が出るね。とりあえず1戦目はこれで殲滅する。1人で発動したから2人で発動するよりは規模はそれ程でもないけど、威力自体は充分あるからね。
「んな!? そんな俺が、負けるはずがーー」
そしてクマは滝に呑まれて、押し潰されてHPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていった。……うん、ちょっとあれだけの騒動を起こしたやつにしてはあまりにもあっけなさ過ぎた。まぁベスタは強いってのは確実にあるけど、それでもなぁ……?
「ケイ、追撃に行くぞ」
「……仕方ないね。次は1人ずつで仕留めるか」
「……そうだな。色々と違和感はあるが、放置は出来ん」
「あ、ベスタもやっぱり違和感はある?」
「……弱いだけにしては、悪あがきがなさ過ぎる。だが、ただの大馬鹿の可能性も否定できん。予定通りに仕留めに行くぞ」
「了解っと。ところで、PK判定って大丈夫なのか?」
「占拠エリアに関しては占拠している群集側にはPK判定は出ねぇよ。そもそも向こうから挑んできたんだ、PKカウントになる同意なしの戦闘には該当しねぇ」
「あ、確認済みなんだな」
っていうか、占拠エリアってPK判定にはならないんだ。まぁ占拠しているエリアだからって事なんだろう。入ってきた時点で問答無用で倒されても仕方ない訳か。……迂闊に他の群集の占拠エリアには入らないようにしようっと。
それにしても、ベスタもあまりの手応えの無さが気になっているらしい。とはいえ、それだけじゃ何も分からないし放置もしておけない。その辺をはっきりさせる為にも追撃に移ろうか!




