第266話 ボスの情報整理
とりあえずティラノが逃亡し、大量発生した雑魚敵を一掃し終えた。倒しきれば敵の行動パターンも変わるようで、明らかに邪魔をしてきた敵や飛ぶ敵の数も減っている。そういう状況になってきたので、このエリアに集まっている人達で交代しながら休憩という事になった。
今は俺達の休憩中である。まぁもう少しで11時だし、そのまま今日は終わりになりそうだ。……もう切り上げるつもりでいようかな。
「そういや、ケイ達はそろそろ今日は終わりか?」
「そうだな、もうちょっとしたら終わりにするよ」
「うー!? もっとやりたいけど仕方ないー!」
「まぁ今、没収されたら色々と台無しだもんね」
「それだけは絶対に避けるのさー!」
「ハーレ、頑張ってかな!」
このタイミングで寝坊して1週間もゲーム機が没収になると最悪だしな。共闘イベントは丸々不参加が確定してしまう。それだけは絶対に避けないと。
「さてと、俺はもう少しやっていくけど辛子さんはどうだ?」
「俺か? 俺ももうちょいやってくぜ」
「なら辛子さん一緒にやるか?」
「お、良いね。その提案、乗った!」
アルと辛子さんはどうやらこの後も続行のようである。木の生えたクジラにクワガタとは、意外といい組合せなんじゃないだろうか?
それにしても俺は辛子さんと一緒のPTにはなったものの、雑魚の一掃くらいしか出来なかったな。まさかティラノがアルの全力頭突き一発で逃げるとは思わなかったし……。あれは一定以下までHPを減らしたらとかが条件かな? 次やる時は大技ではなく地道にHPを削って確認しておこう。
「あれ、ケイってもう終わりにすんのか?」
「……そういう言い方をするって事は、まだやる気か、フラム?」
「まぁな! まだ2時間くらいはやるぜ!」
「おい、1時までやる気か!? あ、だからか」
「……あ、やばっ!? ケイ、それ以上は内緒ーー」
「ケイさん、フラムは遅刻等はしていないでしょうか? 私が誘った手前、学業に支障が出るような状態は避けたいのですが……」
あ、これは何となく状況が分かった。俺の家のルールと似たような雰囲気がする。……えーと、遅刻はしてないけど今日は相当ぎりぎりだった様な覚えがあるな。よし、ここは水月さんの味方でいこうか。
「遅刻はしてないけど、相当ぎりぎりだな」
「ちょっ!? 言うのかよ、ケイ!?」
「ケイさん、ありがとうございます。そうですか、ぎりぎりですか。……フラム、日付が変わるまでにしておきなさい」
「あーもう、分かったよ!? 思ったよりは寛大な処置をどうも!」
「それでよろしい。アーサーはケイさん達と合わせてログアウトですからね」
「水月、分かってるって!」
水月さんはちゃんと保護者をしているようである。こうしてみると、あのものすごくウザかった出会ったばかりのアーサーが嘘のようだな。
「よし、それじゃちょっと情報整理しておくか」
「そだね! それ次第で明日からの動き方も変わるもんね!」
「うん、私も賛成かな」
「あ、悪い! 俺と辛子さんはちょっと暴れてくるわ!」
「行くぜ、アルマース! みんなはまたな!」
「おう、またな!」
<アルマース様がPTから脱退しました>
<甘口辛子様がPTから脱退しました>
休憩に入った時にPTの連結は解除していたし、アルも辛子さんもPTを抜けて再び戦いに行った。こうなるとこのエリアにいても邪魔になるだけだろうし、森林深部に戻ろうか。
「一旦、森林深部に戻るか」
「え、戻っても良いのかな?」
「今日はこれ以上は戦わないし、良いんじゃない?」
「それほど時間はかからないしまた来れば良いだけさー!」
「そっか、そうだよね。また来ればいいだけかな」
帰る前に今後の連絡用として、フラム、アーサー、水月さんとフレンド登録をしておいた。まぁアーサーはもう大丈夫そうだしね。……フラムは今日の失敗を鑑みての処置である。それでやる事も終わったので、今日はまだ使っていない帰還の実を使って森林深部へ即座に帰ろう。
<『フレッシュ平原』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
戻ってきました、森林深部! ここは禍々しい瘴気に覆われている事もなく、清々しい気分である。ゲームの演出と分かっていても、あの禍々しい雰囲気は落ち着かないもんな。とりあえず新しい帰還の実を貰っておくか。
さてと新しい帰還の実も貰ったしエンの前だと混雑しているので、少し離れたところに移動してから情報の整理でもしていこうかな。必要そうな情報をまとめて、報告と他のエリアの情報の確認をしておこう。
まず気になるのは進化ポイントの取得量の多さだな。根本的に残滓が居ないから、黒の暴走種の発見と討伐、そして黒の瘴気強化種の討伐での進化ポイントが異常に多い。ティラノが元群集支援種って事は、再び黒の暴走種化したって事なのかもしれないね。
「……何か異常に進化ポイントの取得量が多いよな?」
「あ、それは私も思った! 何でだろね!?」
「あれじゃない? イベント終了後に報酬がどうこうってやつ」
「それっぽいよね!? あれって何が貰えるんだろ!?」
「うーん、進化の輝石とか採集アイテムの詰め合わせとかかな? 確か、マップ作成の時の報酬がそうだったよね」
「ありえそうだね!? 何が報酬になるか、楽しみだー!」
「あ、やっぱり何かありそうだよ。進化の項目の進化ポイントの表記がいつもと違うみたい」
「え、ヨッシさん、それマジか?」
「うん、マジ。ケイさんも自分で確認してみたら?」
「それもそうだな。見てみるか」
そりゃヨッシさんの言う通りだ。自分で確認出来る類の情報だから自分で見てしまうのが早いだろう。とりあえずコケの方を見てみようかな。どれどれ?
【進化】
増強進化ポイント 510P(共闘イベント開始後の加算:355P)
融合進化ポイント 510P(共闘イベント開始後の加算:349P)
生存進化ポイント 522P(共闘イベント開始後の加算:349P)
あ、やっぱり明らかに表記が違う。共闘イベントが開始してから加算が別計上されているって事は、絶対何かある。前の群集拠点種の強化に提供するみたいになるのか、他の何かに使うのか、もしかしたらイベント終了後の報酬と交換できたりするのかもしれないね。
さっきはスキル取得に使ったけど、イベントが終わるまで……いやせめて後半で報酬の内容が分かるまではこれ以上の進化ポイントの使用は控えた方が良いかもしれない。
一応ロブスターの方も見ておこうか。支配進化だからイベント後の加算は同じポイント数になってるとは思うけどね。
【進化】
増強進化ポイント 369P(共闘イベント開始後の加算:355P)
融合進化ポイント 394P(共闘イベント開始後の加算:349P)
生存進化ポイント 403P(共闘イベント開始後の加算:349P)
やっぱり同じだった。殴打重衝撃の取得はイベント開催前の進化ポイントで足りてたし、これ以上無駄に使わなければ気にする必要もないか。それにしても凄いポイント数である。
「これは間違いなく何かありそうかな?」
「だろうな。ついでに進化ポイントが足りない人へのボーナスにもなってそうだよな」
「そうかもね! 結構色んなスキルを取りまくってポイント不足で悩んでる人もいるって話は聞いたよ!」
「あ、私もその手の話は聞いたね。灰の群集は余り気味の人は多いけど、赤の群集は枯渇気味の人が多いとも言ってたっけ」
「へぇ、そうなんだ。青の群集については?」
「青の群集は枯渇はしてないけど、余裕があるとも言えないとかそういう人が多いってさ!」
「なるほど」
この辺は群集の差が出ているのか。……もしかして称号利用によるスキル入手って地味に重要だったりしたのか? うーむ、あれがなければ俺のスキル数も今よりずっと少なかったし、進化ポイントも使っただろうから重要だったのかもしれない。
それとは別に色々なスキルを使ってみたくなる気持ちも分かるしね。まぁ程々にしておかなければすぐに枯渇するんだろうな。……俺は余り過ぎてる気もするけど。
さて、次はイベントの進行状況を確認しておこうかな。どれくらい倒せているんだろうか。
【共闘イベント『瘴気との邂逅』】
ワールドクエスト《地の底にいるモノ》の進行状況
【赤の群集】
黒の暴走種、半覚醒の解放 102/500
黒の瘴気強化種の撃破 1267/5000
ボスの撃破 0/10
【青の群集】
黒の暴走種、半覚醒の解放 127/500
黒の瘴気強化種の撃破 1862/5000
ボスの撃破 0/10
【灰の群集】
黒の暴走種、半覚醒の解放 197/500
黒の瘴気強化種の撃破 2350/5000
ボスの撃破 0/10
ボス戦への参加回数:1
あ、思った以上に敵の討伐数が多かった。俺らは出遅れてた方みたいだし、灰の群集と青の群集の進度が良い感じだな。でも未成体も出現し始めたから、少し速度は落ちるかもしれない。それにしても進行状況にボスが追加って事はあのティラノは倒さないといけないんだな。
そしてボス戦への参加回数か。こういうカウントがあるって事は1回では倒し切れない仕様っぽいね。何度か戦って、最終的に倒せばいいって事なのだろう。
ボスの数は各群集に5エリアずつあって10体だから、1エリアに再び黒の暴走種になった群集支援種とそれを支配する敵の2体ずつってところかな?
「よし、大体分かる範囲は確認したから情報交換しにいくか」
「はい、ケイさん! 情報共有板ですか、それとも共闘戦略板ですか!?」
「……この場合だと、共闘戦略板の全体がいいだろうな」
「了解です! サヤとヨッシはどうする!?」
「書き込むかは分からないけど、見るだけ見ておこうかな?」
「私もサヤと同じにしようっと」
「了解です! それじゃみんなで見に行くぞー!」
サヤとヨッシさんは見るだけだけど、一緒に見に行くことになった。アルは個別に情報収集はしているみたいだし、既に戦いの続きに行ったので居ないのは仕方ないか。PTを組んでいるからといって、いつも必ず行動を共にしなければいけない訳じゃないしね。
さてと、共闘戦略板の『全体』のところはどんな風になってるのやら。
●ジェイ : どうやら各地の調査クエストの受注を行う群集支援種が再び黒の暴走種になっているようですね。
ダイク : みたいだな。ついでにある程度弱らせると逃亡か。
◯ルアー : まだ俺は確認出来ていないんだが、どの程度弱らせればいい?
ダイク : 大体3割ってとこだな。そこを過ぎれば、雑魚敵が大量増殖して妨害行動に移る。
●斬雨 : ありゃ高火力か、一斉攻撃で3割まで一気に削った方がいいぜ? そうでないと苦労する羽目になる。
◯ルアー : どういう事だ?
●ジェイ : ……行動パターンを探る為に少しずつ削ってみたんですよ。ですがその場合ですと周囲の瘴気強化種を倒し始め、瘴気を吸収する事でHP回復を始めましてね。
紅焔 : それなら俺も確認したぜ。地道に削るならボスを引きつける役目と、それ以外の雑魚敵を殲滅させる役割を分けた方がいいな。
へぇ、今回のボスの行動パターンはそういう風になってるのか。一気に初手で3割削って途中経過をすっ飛ばしたのは不味かったかな? っていうか、ここは各群集のまとめ役や主力が集まってる感じなのか。
●ジャック : ところで赤の群集。共闘の方は支障はないか?
◯ルアー : とりあえずはな。ちょーっと育成度合いが低いのは大目に見てくれると助かる。
●ジャック : そういえば成長体が多かったな。何か理由でもあるのか?
◯ガスト : あー、まだ様子見して参戦してない奴が多いんだよ。今日ので多少は払拭出来たとは思うから、明日辺りからは参戦しだすとは思うぜ。
ケイ : もしかして今日の1戦ってそれが狙いか!?
◯ガスト : お、張本人登場。悪いな、ああでもして活動意欲を高めさせないと白けてるやつが多かったもんで。その内、なんか礼はするからよ?
ベスタ : おい、ケイ? 赤の群集で何をやってきた?
ケイ : え、そこのガストさんと1戦やってきた。途中で降参されたから、不完全燃焼!
ハーレ : 実況もやってきたよー!
◯ルアー : ……実況は驚いたが、あれで活動意欲が増した奴もいるようだからな。感謝している。
●斬雨 : おいおい、何だ、その楽しそう事は!? 今度は俺も混ぜろよ!
●ジェイ : すみません。いい加減脱線し過ぎなので、話を戻しても良いですか?
ベスタ : とりあえず、現状ではボスの出現とその初期の行動パターンが判明だな。あえて聞くが、支配進化に関する情報は各群集で持ってるか?
●ジェイ : 分かっているボスの情報からすると、そこに触れない訳にはいきませんか。青の群集では把握しています。
◯ルアー : 赤の群集も一応把握は出来ている。
ベスタ : ……何故知っているかの経緯は気になるところだが、そこは聞かずにおこうか。分かっているのであれば問題ない。おそらく2体目のボスは支配種に近い感じのものだろう。
◯ガスト : だろうな。だが、本体はよく分からねぇぜ?
●斬雨 : 支配進化ってあれだろ、本体でない方をぶっ倒せば大幅に弱体化すんだろ? だったらとりあえず半覚醒をぶっ倒せば良いんじゃねぇか?
ケイ : あ、だから逃げたのか。ボスが逃げた理由が分かった。
ハーレ : え、どういう事!?
ケイ : 支配進化って支配してるのを倒されると大幅に弱体化するからな。劣勢を感じれば、それを防ぐ為に逃げるって事だろ。でも、半覚醒が抗ってくれればなんとかなるか……?
●ジェイ : 可能性はありそうな話ですね。……ですが、半覚醒に抗わせる手段が問題ですね。
ベスタ : まだクリアに必要な要素が揃ってない可能性もある。その辺に注意して確認だな。あと各群集でまとめ機能でこの内容まとめておいてくれ。
●ジャック : おう、分かったぜ。共闘は各自の判断でって事も含めてまとめておく。
◯ルアー : こちらも了解だ。しかし、まぁ思ってたよりもまともな共闘になりそうで助かった。
ベスタ : こういうのもあれだとは思うが、1番の不安要素は赤の群集だからな? 事情は聞いているから、鼻が伸び切ってる奴が居れば俺を呼べ。叩き潰してやる。
●ジャック : おー怖!? ま、それくらいで丁度いいだろうがな。
◯ルアー : 済まない、助かるよ。
あ、今度何かがあれば冗談抜きでベスタが直々に叩き潰しに行くのか。それならもう大丈夫だな。所詮便乗犯は口だけの小物っぽいし、ベスタが負けるところは想像がつかないからね。元凶はよく分からないけど。
さて、一段落ついたみたいだし、俺の遭遇した情報もほぼ既知の物のようだったから報告の必要はなさそうだ。進化ポイントについては少し遡ったところで俺らと同じような会話をしてたみたいだしね。
「よし、今日はこれで終了だな」
「壮観なメンバーだったね!」
「そうだったね。思った以上に共闘は上手く行ってる感じかな?」
「赤の群集の人に成長体が多かった理由も分かったしね。未成体の人達が動き出せば効率も良くなるだろうね」
「だな。それにしても、赤の群集個人主義が多かったって事なんだな」
「そんな感じだよね!」
今表に出てきてない人は強いし戦闘意欲もあるけど、協調性が少し欠けるって感じなのだろう。もしくは面倒事が極端に嫌いといった感じか。まぁ強い事と人をまとめる資質は必ずしも両立するもんじゃないしね。そこら辺が理由なんだろうな。
さてと、今日はこの辺でお終いだな。明日も共闘イベントを頑張っていこう!
◇ ◇ ◇
そしてログアウトしてやってきました、いつものログイン場面。いったんの胴体を見てみれば『梅雨のせいで、洗濯物が乾かない!?』って知るか! 今日は変な内容の日かよ!
「いったん、何かお知らせあるか?」
「今日は特にないよ〜。あ、時間あればスクリーンショットの承諾をお願いします〜」
「ほいよ」
いったんから一覧を受け取って眺めていけば、今日は件数自体はそれほどなかった。お、例の月夜のロブスターがあったので、これは貰っておこうっと。あとはいつも通りでいいや。
「これは貰うのと、後はいつも通りでよろしく」
「はいはい〜。いつも通りだね〜」
スクショの処理も終わったので、今日はこれで終わりだな。……地味にホタルのスクショも欲しいので明日にでも貰っておこうかな。
さてと完全にログアウトして、風呂入って色々片付けてから寝るか。共闘イベントは明日ログインするまでにもそれなりに進展はあるだろうし、細かい事は明日だな。




