第258話 共闘に向けて
少し不完全燃焼ながらも戦闘が終わったので、とりあえず集合である。ハーレさんは実況でかなり満足したみたいだね。赤の群集の人にも好評だったみたいなので、やっぱり実況の需要自体はあるらしい。
「ケイ、お疲れ様かな」
「うーん、暴れたりない……」
「結構暴れてたよね、ケイさん?」
「私は実況楽しかったけど、閃光は無しだよ! 見えないのは実況としてNG!」
「そう言われてもな? 実際あの時はあれが一番効果的だった訳で……」
「まぁそれは分かるんだがな。……よし、後で閃光を使う時の合図か合言葉でも決めとくか」
「あ、それいいねー! 賛成です!」
「……確かに必要かもね」
「うん、私もそう思うかな」
「……それなら灰の群集に戻ってから考えるか」
合図を決める事には異論はないけど、流石にここで決める訳にはいかないよな。まぁとりあえず、思ったほど手札を出さずに済んだから良かったかな。相手の手の内を全然見れないまま終わったのはあれだけど……。
もうちょい手応えがあるかと思ってたんだけどな。情報共有が滞って、個人のみで集めた情報で鍛えたらこんなもんなのか? いや、でもあのキノコの回避は見事だったかもしれない。
「……ルアーを倒したっていうのも納得できた」
「っていうか、あのコケの人に負けたって恥でもなんでもなくね?」
「……聞くのと実際に見るのではここまで違うとはなー」
「あのバカ共に今の戦闘を見せてやりたい」
「あー、中継してたから見てたやつで身悶えしまくってる奴がいるらしいよ」
「そりゃいい気味だ」
少し赤の群集のギャラリーの会話を聞いてみればどうやら中継もされていたようで、ルアーが負けたのも仕方ないという話になっているようである。そういや俺とベスタに負けたのが事の発端だっけ。俺のはともかく、ベスタとの戦いは中継入ってたみたいだけど見てなかったのかな?
「今の赤の群集と灰の群集の力量差はよーく分かった。どう考えても勝てないぞ、ルアー」
「……言われなくても痛感してるところだ」
そして何やら打ち拉がれているガストさんとルアーである。……ちょっとやり過ぎた? でも、他にも強い人もいるんだけどな。
灰の群集で俺はそれなりに強いとは思ってるけど、表に出てきているだけでも俺より強い人はいる。味方だから戦うことはないけど、正直勝てる気はしないんだよね。……表に出てきてない人でも強い人もいそうだし。
「あー、確実に俺より強いのが1人いるぞ?」
「……マジか」
「ルアーは既に戦ってるけど、ベスタな?」
「ベスタの方が強いのか!?」
「ルアー、そのベスタってもう1人の負けた相手じゃなかったか?」
「……あぁ、そうなるな」
「つくづくバカじゃねぇの、騒いでた連中……」
まぁ、井の中の蛙、大海を知らずってとこか。それこそ、俺かベスタで叩き潰しに来てた方が早かったのかもね。……うん、いつかベスタの言ってた平等に負けにするのが冗談抜きで正解だったのかもしれない。
さてととりあえず戦ってみたいって事で始まった戦闘も終わった事だし、本題に行きたいとこだけど、少し気になっている事があるのでそこだけ聞いておこう。これくらいなら聞いてもバチは当たらないだろうしね。
「戦闘中に確かめるつもりだった事を聞いてもいい?」
「あー、俺が降参しちまったからな。いいぜ、大体知ってそうな気もするし答えようか」
「それじゃ遠慮なく。ズバリ、ガストさんは支配進化だよな?」
「……やっぱり知ってたか。っていうか、ケイさん自身が支配進化だろ?」
「まぁな。途中から気付いてた?」
「……コケ固有っぽいのとロブスター固有っぽいのをそのまま使ってるからそうだと思ったぜ。俺はキノコが本体で、タカが2ndになるな」
「なるほどね」
やっぱりキノコのダメージを避けまくっていたのは本体だからという事だろう。うん、見事な回避っぷりだったよ。
「とりあえずこれで侮る奴も減るだろうよ」
「済まないな、ケイ。こっちの都合に巻き込んで……」
「まぁ、これくらいは別にいいさ。で、共闘イベントの話し合いは出来そうか?」
「……それが本題だったな。場所を移そうか」
「あ、こっちは自由行動で動いてるから人数絞り気味で頼めるか?」
流石に灰の群集の代表として来ているなら別だけど、あくまで灰の群集の方針としては自由参加の自由行動である。勝手に代表面をする訳にはいかないからね。赤の群集からの要望の伝達役くらいはするけども。
「そういや、そういう話か。フラム達とは個人的に交流があるって話だったな。そこに俺とガストの2人くらいは構わないか?」
「それくらいなら良いぞ」
今回はエリアの西側から入ってきたからフラムの場所へは南東方向か……? とりあえずマップで確認してみるか。えっと、現在地が西側で南東の端に近い所から川に沿ってマップが埋まっているから、そのマップが埋まってる先の場所になる。
ここからなら川を超える必要もあるけど、問題ないな。そのまま斜めに突っ切るか。
「よし、出発だ!」
「おいおい、ケイさん! そっちは方向が違うぞ!? ここから普通に東だぞ」
「はい!? え、あいつってここから南東の方じゃないの?」
「それは移動する前だ。フラムならちょっと前にここからそのまま東に行った川沿いへ移動して……もしかして聞いてないのか!? 知っててこっちから来たんだと思ってたぞ」
「……聞いてないな。へぇ、この近くか。あの野郎……おい、アーサー! 先に戻ってフラムに覚悟しとけって伝えとけ!」
「分かった、コケのアニキ! 『自己強化』!」
そしてアーサーは全速力で駆け出していった。場所を移しているなんて話は聞いていない。よし、会ったら1発なにかを食らわせてやろう。ルアーの様子からすると結果的には近かったみたいだけど、そんなのは結果論でしかない。
共闘するかもしれないってリアルで言ってたんだから、場所を変えたなら報告くらいしてこいよ! フレンド……ってあいつとはフレンド登録してなかったっけ。仕方ない、この後でぶん殴ってから登録しておこう。
「……ケイがちょっと怖いかな」
「サヤ!? 水月さんからは聞いてなかった!?」
「……聞いてなかったかな。まさか変わってるとは思ってなかったからね」
「赤の群集は色々あったみたいだから、忘れてたんじゃない?」
「あ、それはありそうかな?」
「……ケイ、やるなら1発までだぞ。間違っても仕留めるなよ?」
「おう、分かってる」
「アル、そこは止めようかな!?」
「サヤ、それは諦めた方がいい……。あれは止まらん」
お、アル分かってんじゃん。リアル知り合いだからこそ、容赦無しだ。下手すりゃ二度手間になるとこだったんだからな。わざわざ気を遣って、こっちは情報リークしたってのにそれがこれかー? なに、仕留めはしないさ。仕留めはね?
「あー、とりあえず道案内はした方が良いか?」
「おう、ルアー、頼んだ! アル!」
「ちょっと待ったー! 乗るのが先さー!」
「あ、それもそうかな」
「いつも忘れるもんね」
「……そういやそうだった。よし、全員乗ったな。アル!」
「おうよ! 『上限発動指示:登録1』!」
いつも浮かせてから飛び乗っていたけども、ハーレさんが気付いてくれたおかげで浮かす前にアルのクジラの背中の上に登れたよ。いつも忘れそうになるから気を付けないとね。
さて全員乗った事だし、移動のためにアルを浮かせよう。既に昇華の事を知ってるのなら、無理に隠す必要もないだろうしね。どうでもいいけど、アルの空中浮遊は登録1なんだな。敵には分かりにくくていいけど、味方に伝わり辛いのが少し難点だよな。
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 51/51 → 51/53
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 51/53 → 51/51(上限値使用:2)
少し前に魔力集中が切れて、いつの間にか行動値も全快していたよ。でも移動操作制御は一旦解除してからでないと水量が足りないので、解除してから再発動の必要があった。さてと、いつもの様にアルの下に巨大な水のカーペットを生成してアルを浮かしていく。ん? なんかどよめきが走ってるね。
「……クジラがまた浮いた」
「俺らがしょうもない内輪揉めしてる間にこれだけ進展があったのか……」
「そりゃ海エリアの奴らにそっぽ向かれるわ……」
他にも愕然としたような様子の赤の群集の面々である。……ちょっとこういう効果は狙ってはいたけど、効果あり過ぎたかな? まぁいいや。これから立て直してから頑張ってくれ、赤の群集! 共闘はよっぽど下手な事をしない限りはやるつもりだしさ!
あまりにも赤の群集に問題があれば青の群集と協力して、赤の群集を蚊帳の外にしてぶっ倒すまでだけど。陸路を使う必要があるとはいえ赤の群集に拘る必要もないからね。
「ルアーと灰の群集御一行、そろそろ出発しようぜ」
「……そうだな。いつまでもここで油を売ってても仕方ないか。とりあえずついてきてくれ」
「了解です!」
「水月さんと会うのは、前に負けて以来かな。……時間があればリベンジしようかな?」
「そういやサヤは負け越してたんだったね? まぁ時間があったらになるだろうけど」
「サヤ! リベンジ戦するなら実況ーー」
「私は断固としてお断りかな!」
「あぅ、言い切る前に断られた……」
とりあえずガストさんの言葉から出発する事に決定した。そういやしばらく水月さんには会ってなかったな。水月さんだけでなく、赤の群集の知り合い全員とだけど。
サヤは水月さんとのリベンジ戦をしたいみたいだけど時間あるかな? まぁサヤは実況されると調子が狂うみたいだし、ハーレさんは今回は諦めようね。
そして、ルアーとガストさんの先導で川沿いの大きな杉の木の植わっている場所に辿り着いた。全員が飛んでいるので、移動速度は速いものである。
位置的には灰の群集から少し遠くはなってるけど、川沿いになっているから森に入る必要がなく移動はこっちの方が楽かもしれない。……水の確保もすぐに出来そうだし、不動種としては良さそうな位置である。
「おーい、コケのアニキ! こっち、こっち!」
「皆さん、すみません! 色々とバタバタしていたもので、場所を移していた事をすっかり伝え忘れていまして……」
その場には元気良く呼びかけてくるアーサーと、申し訳なさそうに頭を下げている水月さんがいた。水月さんは特に何かと共生進化させてる様子はないか。
「おう、ケイ! よく来たな!」
「……変な口調は止めたのか、フラム?」
「いやー、本当ならあれで通すつもりだったんだけど、流石にそうも言ってられなくてな?」
「いいじゃん、フラム兄。あれ、変だったし」
「そういう事を言うか、アーサー! お前だって、騒動を起こしてた連中を見て身悶えしまくってたじゃねぇか!」
「うっ!? フラム兄のアホー!」
「……フラム、流石にそれは大人げないと思いますよ? それに、その前に言う事があるのでは?」
「それもそうだな。ケイ、とりあえず色々と助かった!」
ふむふむ、まぁ色々あったという事は何となく分かった。まぁアーサーからすれば、自分がやってた事を見せつけられているようで色々と厳しい事もあったのだろう。水月さんは謝ってくれたので、良いとして……。
まぁフラムの手助けした事への感謝は受け取っておこうかな。で、他に何か言うことはないんだろうか?
「いやー、でもさっきのは中継させてもらってたけど強くなってんだな、ケイ」
「……他に言うことは?」
「え……? あ、移転していた事か。いやー、すまんすまん。てっきり水月が伝えてたもんだと思ってな!」
ほう、水月さんに責任転嫁か? まぁ色々あって大変だったのは理解しよう。俺だって忘れる事は結構あるさ。ま、それとは別問題で気分的な問題としてね?
<行動値上限を2使用と魔力値4消費して『魔力集中Lv2』を発動します> 行動値 51/51 → 49/49(上限値使用:4): 魔力値 108/112 :効果時間 12分
<行動値1と魔力値4消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 48/49(上限値使用:4): 魔力値 104/112
<行動値上限を1使用と魔力値2消費して『操作属性付与Lv1』を発動します> 行動値 48/49 → 48/48(上限値使用:5): 魔力値 102/112
「何でスキル発動してんの? え、ちょっとキレてる……?」
「一発で許してやるから、大人しく食らっとけ!」
<行動値を1消費して『鋏強打Lv1・土』を発動します> 行動値 47/48(上限値使用:5)
<熟練度が規定値に到達したため、スキル『鋏強打Lv1』が『鋏強打Lv2』になりました>
お、Lvが上がったな。それにしても、今の攻撃でも殆どHP削れてない。流石に樹木系だと耐久力が違うか。うーむ、不動種は打撃より斬撃の方が効果的? それより海水か火の方がいいか?
ま、思いっきりぶっ叩いて少しスッキリした。さっきの戦闘は不完全燃焼だったからなー。
「うぉ、びっくりした!? ……すまん、言いそびれてた俺が悪かった」
「今のでチャラな。……それにしても無駄に硬いな、不動種は」
「不動種ってそういう特徴だしな。あ、ルアー、ガスト、案内ありがとな」
「……それは別に問題ないが、え、今ので良いのか?」
「確かリアル知り合いだって話だったよな。……まぁ当人達が良いならそれで良いか」
ま、この辺はリアルでのやりとりがあってこそだしな。流石にゲーム内だけの付き合いの相手にはする気はない。さて、余計なやりとりも終わったから共闘イベントの話し合いと行こうかね!
「それじゃ共闘についての話し合いを始めます!」
あ、俺が言おうとした事をハーレさんに取られてしまった。……まぁいいや、先に進まないからここはスルーで行こう。必須かどうかは微妙だけど、それなりに必要だった戦闘もあった事だし時間が意外と経ってるからな。
サクサクと話を進めて、黒の暴走種の半覚醒の解放と、黒の瘴気強化種の討伐に向かいたいところである。共闘するにしても最低限で、どっちがどっちのエリアに出向くかは決めないといけないしね。その辺を含めて、話し合いの開始である。




