第219話 情報のリーク
とりあえずログアウトしていったんの所へやってきた。胴体を見れば『共闘イベントに関する続報があります』となっていた。お、気になる内容だけどちょっと今はタイミングが悪いな。
「共闘イベントの続報があるよ〜」
「すっげぇ気になるけど、ちょっとリアル側で用事があるからログアウトを頼む」
「あらま、何かお急ぎかな〜?」
「おう。すぐにログインし直すからその時によろしく!」
「はいはい〜。分かったよ〜」
即座にログアウトの処理になり、ゲームを一旦中断だ。まぁリアル側でもゲーム絡みの話ではあるんだけどね。
◇ ◇ ◇
正直面倒くさいんだけど、後々に悪影響がありそうなので可能な範囲で手を打っておこう。何だかんだで俺の所属している灰の群集は他の群集より、情報的には活発みたいだし。ただ、赤の群集で今どんな風に問題が起きているかが重要になってくるんだな。
とりあえず携帯端末から慎也のIDを呼び出して、電話をかける。……うん、アルから連絡が行っていたのかすぐに電話に出たな。そういや慎也に電話するのは地味に初めてのような? まぁどうでもいい話か。
「おっす、慎也」
「アルマースさんから伝言は貰ったけど、何の用だよ。なんか水月にもサヤさんの方から連絡あったみたいだけどさ。今好き勝手にやってる連中の後始末の対応に忙しいんだけど」
「あー、もう色々と面倒だから単刀直入に行くぞ? 今、赤の群集の増援が動かないとかその荒れた連中が大量発生してる理由はなんだ?」
「……そんな事、灰の群集の圭吾が聞いてどうすんだよ?」
「状況次第では解決に繋がるかもしれない情報を提供しようかなと思ってな? ホントは明日話すつもりだったけど、そうも言ってられない状態っぽいし」
「マジか!? ……いったんには強制情報開示の警告も受けたし、自力で解決とも言ってもいられないか。……増援が動かない理由の方は簡単だぞ。単純に経路確立の為のマップ情報が足らないから、まだ転移出来るエリアが限られてる」
いったんからの強制情報の開示警告まで受けてんのかよ。……タイミングとしては明日にしてたら手遅れだったかもな。それにしてもマップ情報が足りないってどういう事だ? もうこっちはほぼ終わるぞ?
「その辺をもう少し詳しく」
「詳しくか……。あー転移地点の設置の為の経験値と進化ポイントはそれなりに貯まってるんだが、マップ情報の提供が滞っててさ。それで荒れた連中が増えてる理由の方は、ごちゃごちゃ盛大に騒いでる奴は少数なんだがそれに便乗して騒いでる奴らが多くてだな……」
「……面倒くさい事になってるな」
直接は知らないけど、極一部が悪影響を与えてるって事はBANクジラが思い浮かぶ。……それよりも厄介といえば厄介か。要は荒らし行為を行ってるプレイヤーがいて、そいつを中心に赤の群集の雰囲気が悪化して、調子に乗ったマナーの悪い奴が増殖中って感じか。……荒らしが荒らしを呼ぶ悪循環に陥ってそうだな。
「特に中心のプレイヤーが厄介なんだよ。ルアー並みに強くて、今のところ負け知らずってのが特にな。ついでにルアーをライバル視してるのに、当の本人が負けてもケロッとしてるのが相当気に入らないらしくて……」
「うっわ、面倒くさ!? そんな理由かよ!?」
え、何? そのプレイヤーってルアーをライバル視してるけど、ルアー本人が負けても悔しがってないのが気に入らないって理由で群集巻き込んで内部分裂を引き起こしてんの!? ……それに乗せられる周囲もどうなんだ? いや、その手の騒ぎには便乗する奴は出てくるか。
あー、なるほど。面倒な奴が騒いでるから一般的なプレイヤーは関わりたくなくてエリア間の移動の為の情報提供が止まってるって感じなのか。うん、気持ちは分からなくもない。
「それを迷惑に思ってる奴も多いんだけど、とにかく話が通じなくてな……。何か文句を言えば『自信満々だったのにボロ負けで、そのくせ平然として今は何も出来ていない奴らが何を言う』って返してくるだけで……。便乗してる連中もそんな感じだ」
「……なんとなく他のプレイヤーの気持ちが分かったよ。運営の方には?」
「一応運営には報告済み。何回か警告は送ってくれてるそうだけど、改善の気配なし」
「……累積警告での一時アカウント停止くらいはありそうだけど、即座には無理な範疇か?」
「そうみたいだ。明確な違反行為がないってのがまた厄介でな」
放っておいても運営の方でそれなりの対処がされそうではあるけど、良い状態でないのは確かだな。……BANクジラの前例もあるってのに、よくそんな騒ぎを起こしたもんだ。
それにしても何も出来てない奴ら……ね。ただ一度も負けてないだけで騒動を引き起こしてる奴が何を言ってるんだか……。だが、その言い方なら何か盛大な成果を出せばルアー達の側も反論の余地も出てくるのか?
「そんで、言い返す為の実績作りで俺も2nd作ってアーサーや水月やルアーのPTとかとマップを埋めたりはしてるんだが、正解ルートの法則がまだ見つけられてなくてさ……。海エリアは発見したらしいけど、今の他のエリアと一緒にやりたくないって事でボイコットされてるし……」
「……海エリアは団結力があるんだっけ。BANクジラの件も考えたらそうもなるか」
確かにBANクジラの直接の被害に合ったという団結力のある赤の群集の海エリアからしたら、この状況の他のエリアと一緒にプレイしたくはないと思うのも仕方ないだろう。
「正解ルートの判別方法を俺達の方で見つけるか、中心の奴が誰かにボロ負けして無敗じゃなくなれば状況は変わるとは思うんだけどな。便乗して騒いでる連中って中心の奴の威を借りてるだけだし……」
「……よし、それならなんとかなるかも」
「本当か!?」
そういう話なら手段は2つ。1つは俺が考えていた常闇の洞窟の正解ルート判別に関する情報の提供。もう1つはルアーを倒した俺かベスタがその無敗の中心人物をボロ負けにしてやる事。……結構育ってきたとはいえ、まだ成長体だから後者は最終手段。流石にベスタも巻き込む可能性があるから、ここで確約は出来ない。
それにしても赤の群集で騒動起こしてるのは考えなしの脳筋かよ。……そういや慎也も脳筋ばっかって言ってたな。うん、どいつもこいつも面倒くさい。
群集外交流板も赤の群集への批判で荒れて、いったんからの強制情報開示の警告も受けたのなら放っておいてもその原因である騒動の中心の連中は自然と立場は無くなるだろうけど、その後バラバラになるのは厄介だし、ここはルアーにまとめ役を頑張ってもらおう。
「正解ルートの見つけ方を教えてやる。灰の群集はもうほぼ終了間際だし、状況的に青の群集も正解ルートの見つけ方は知ってるような感じだしな」
「……思った以上に他の群集に遅れを取りまくってるのか。そりゃ強制情報開示の警告もされるわ……」
青の群集の総力戦の提案があった以上、青の群集の初期エリアは全て繋がったと考えて良いだろうしね。いったんからの強制情報開示の警告も赤の群集だけ遅れているという事を示してるんだろうしね。
「こっちとしてはほぼ無意味になった情報だから問題ないしな。情報の出処が灰の群集からだって気付かれないようにうまくやれよ?」
「助かる。その辺は俺らの方でやらなきゃいけない事だしな」
「いくつかあるからよく聞けよ? まずはーー」
そして慎也に正解ルートの見つけ方、つまりコケの配置距離、擬態の未成体の配置、そして海水地帯での流れによる見分け方を伝えていく。海エリアでは発見済みらしいから不要かもしれないけども、念の為にね。
「ははは……。正解ルートの判別方法ってコケの配置距離と擬態の未成体の配置かよ。隅々まで念入りに細かいとこまで調べたのが逆効果じゃねぇか……。よし、それならフレンドに圭吾以外のコケの人がいるから何とかなるかもしれん」
「一応聞くけど、騒動を起こしてる連中がそれを発見してる可能性は?」
「まずないな。発見してたら自慢げに公表してるだろうし、情報共有板で見つからないし行き止まりばっかりだって荒れてる奴が多いからな……」
まぁ聞いた限りじゃ、騒動起こしてる側が見つけてたらその成果で自慢して、更に状況を悪化させに来るよな。逆に言えばそういう奴らだからこそ、盛大な成果を出せば黙らせる事も出来そうだ。無駄にプライドだけは高そうだしね。……なんで味方内でしょうもない情報戦をやってるんだか。
「そっちでも荒れてんのかよ。だけど、それなら好都合か」
「……だな。競争クエストで負けてそれ以降目立った実績が無いからこうなってる訳で、この強制情報開示の警告が出てる状況でその打開策を公開したら、本心はどうあれ表立っての批判は出来ないだろうしな」
「上手くいけば良いけどな。まぁ俺の出来る事はここまでだから、後は頑張れよ」
「おう! 圭吾、情報サンキューな!」
さてとこれで上手くいけば良いんだけど、実際はどうなるかはやってみて結果が出ないと分からないな。……これでも駄目ならベスタと一緒に赤の群集に殴り込んで、その騒動の中心人物とやらの伸びに伸びた鼻をへし折ってやるか、運営からの処罰を待つしかない。
まぁやれる範囲の事はやったし、後はなるようになれだ。ルアーや水月さん、まだ会った事もないルアー側の味方の頑張りに期待だな。
灰の群集からの情報提供があったって知られれば悪化する可能性もありそうだけど、まぁそうなった時はそうなった時に考えよう。
いざとなればこれから行われる青の群集と灰の群集の総力戦の自慢でもしてやれば盛大に悔しがるだろうし、そうすれば自分達がどれだけ楽しむ要素を台無しにしているかが分かるだろうよ。
それじゃ電話も切って、再度ログインして青の群集との総力戦に参加しに行こう! 気の滅入る赤の群集の事は、もう今日は考えないって事で!
◇ ◇ ◇
そしてログインして再びいったんのところへやってきた。さて10時までは少し時間はあるから、ゆっくりはしてられないけど共闘イベントの続報を聞いておこう。
「おかえり〜。用事は済んだかな〜?」
「おうよ。共闘イベントの続報ってのは長い?」
「プロモーションビデオ第2弾になってるけど、長くはないよ〜」
「お、それじゃ再生してもらって良いか?」
「良いとも〜。それじゃ再生するよ〜」
そのいったんの宣言と共にログイン場面の様子が変わる。真っ白な空間に浮かび上がる……これはグレイか……? 似たような精神生命体が他にも2人いる。あれ、これはどういう状況?
『異常事態の把握はしているな?』
『けっ、バラバラに動いてるとはいえこっちでも調査はしてんだ。それくらいは把握してらぁ!』
『愚問ですね。瘴気の件、どうやら赤も灰もご承知のようで』
『把握しているのならいい。赤と青はどう動く?』
『ちっ、これに関しちゃ縄張り争いしてる場合じゃねぇんだよな……。原因を突き止めるまでは共闘か?』
『不本意ではありますが、ここは赤に同意ですね。この自然豊かな未開の惑星に瘴気があるという事そのものが異常です。……あれは自然に発生するものではないし、勝手に変動するものでもない』
ここに集まっているのはそれぞれの群集の長か。そしてその長同士での話し合いの場面という事なんだろう。……なんだか、このゲームの重要な世界観に関わる話になりそうだな。
『瘴気はかつて我らが故郷を、肉体を捨てるきっかけになった物だ。……場合によっては奴らの痕跡があるかもしれん』
『……あの連中か。確かに変動がある以上は何かがいるはずだ。放置は出来ねぇな』
『えぇ、忌まわしいあの連中に関わる可能性があるとなれば尚更ですね』
『では、今回の件については赤、青、灰の共同作戦という事でいいか?』
『……あぁ、良いぜ』
『こちらも問題ありません』
『ならばそれで決定だ。それぞれの群集に通達した後に共同調査を開始する』
あ、ここで終わりか。瘴気が故郷や肉体を捨てるきっかけになってたのか。そういや前のPVでは瘴気に触れた普通の生物はすぐに死滅してたっけ。そして忌まわしいあの連中とか奴らとか、なんか凄い気になる台詞もあったよな。……まぁ流石にPVでその正体は明かされないか。
根本的に赤の群集、青の群集、灰の群集の3つで勢力争いをしてはいるけど、瘴気絡みでは共通の敵という事なのかもしれない。
オフライン版はこの辺のストーリーって特に無かったけど、オンライン版はイベントに絡めて背景的なストーリーをやるんだろうね。やっぱりこれはワールドクエストっぽい感じがする。
「ここまでだよ〜」
「おう。で、開催日って具体的にいつ?」
「それは赤の群集次第かな〜。ちょーっとトラブル発生中でね〜?」
「あーなるほど……」
共闘イベントの開始条件が競争クエストの終了と群集拠点種の強化の群集クエストの終了だったしな。赤の群集が今の状態だと終わらないのか……。あ、だから強制情報開示の警告があるんだ。停滞したらそもそもイベントが進められないからこその処置なのか。
そう考えるとほんと下らない理由でしょーもない事をしてるんだな、赤の群集で騒いでる連中……。これって他のプレイヤーにも開示されてる情報だろうから、さっき手を打たずに放置しておいても騒いでる連中って自動的に群集関係なく周囲から冷たい目で見られる事になるんじゃ……。よし、気にしないでおこう!
「そんじゃログイン頼む。コケでな!」
「はい、コケでログインだね〜。楽しんできてください〜」
「おうよ!」
とりあえずは成り行きに任せるしかないだろう。面倒くさい赤の群集の事より、青の群集との総力戦を頑張るぞ!




