第216話 火を起こしたら
とりあえず火の操作の取得を目指す為に下準備を開始しないとね。まずは草原エリア中の何処でやるか決めていこう。魔法産の水でも大丈夫だろうけど、念の為に水の近くが良いかな?
「念の為に消火用の水も確保しときたいんだけど、水場ってある?」
「あぁ、それなら少し行った先に小さな水場がある。他に何か必要なものがあれば用意するぜ?」
「それじゃ乾燥して薪に使えそうなものとか集めてもらっていいか?」
折角の提案なので、頼りにさせてもらおう。その手の燃やすものも重要だしね。
「そんなもん、荒野エリアに行けばそこら中に転がってる。おい、何人かで採集してこい!」
「分かった! 足が早い方がいいよね?」
「よし、足に自信のあるやつ6人集まれ! 集めに行くぞ!」
「よっしゃ! 俺は行くぜ!」
「私も行くよ!」
そんな風に見物していた荒野の人達のうち、1PT分の人が一度荒野エリアに戻っていった。俺達は俺達で水場のあるという場所に移動していく。
割と近くだったようで、すぐにその場所へと辿り着いた。その小さな湖というか、なんだろう? 一応呼称するのなら湖なんだろうけど、ただ雨が溜まっただけの様に見える水場である。まぁ無いよりはマシな水かな。エリア的に川でもない限り、これ以上大規模な水場は期待薄なのかもしれないね。
焚き火を行う場所を決めて、これから準備を始めようというところでハーレさんがインベントリから何かを取り出してきた。
「あ、ケイさん! これ使う!?」
「ん? なんで、松ぼっくり……?」
目の前に出されたのは松ぼっくりである。……投擲用の弾の1つなんだろうけど、そんなものを今何に使うんだ? ……松ぼっくりになんか用途とかあったっけ……?
「お、ハーレさん、良いもの持ってるな。何個ある?」
「んーと、12個あるよ! 松の木の人との交換でもちろん乾燥済み! それで良いんだよね、ヨッシ!?」
「あ、意外とちゃんと覚えてたんだ」
「毎年、ヨッシと焼き芋を作ってたからね!」
「私が、ね? ハーレは食べてただけじゃない」
「えーと、どういう事?」
「私も気になるかな?」
いまいち話の流れが見えない。松ぼっくりと焼き芋にどんな因果関係があるんだ……? ハーレさんとヨッシさんの間で毎年あった事のようだし、アルも何か知ってるみたいだけどどういう事なんだろうか。
「なんだ、ケイとサヤは知らないのか。松ぼっくりって、着火剤の代わりとして使えるんだよ。これから火を起こすならこれは丁度いいもんだぜ」
「へぇ、そうなんだね?」
「ヨッシのお婆ちゃん家の庭でよくやってたんだよ!」
「そうそう。お婆ちゃんの家の裏手にある森から落ち葉や松ぼっくりを拾ってきて、お婆ちゃんの畑で採れた芋で焼き芋を作るのが恒例だったんだ」
「あ、秋になったら毎年持ち帰ってきてた焼き芋ってそれか!」
「そうそう、それ! あ、でももう今年からは食べれない……」
「ハーレ、そこはごめんね……」
そういや去年まで毎年秋になると焼き芋を貰って帰ってきてたもんな。あれってヨッシさんのお婆ちゃんの家からだったのか。まぁ俺が食うこともほぼ無かったけども……。
でも接点となるヨッシさんが引っ越したとなれば流石に入り浸って芋を焼いてもらうのは無理だよな。あー2人してしょんぼりしちゃってる。こういう時にリアルでの距離を感じてしまうんだろうね。……俺にはどうしようもない問題だから、せめてゲーム内だけでもパーッと楽しくやれるようにしないとな。
少ししんみりしている間に荒野エリアへ薪代わりのものを取りに行っていた人達が戻ってきていた。何も持ってないように見えるから、インベントリへ入れる事が出来るアイテムって事なんだろうな。
「おーい、お待たせ! 枯れ草持ってきたぜ!」
「枯れ木もな!」
「良くやった! その辺に固めて積み上げとけー!」
「おうよ!」
「あれ? 木とかあったかな?」
「あーそれか。見つけにくい位置ではあるんだが荒野には枯れ木の集まってる部分が何ヶ所かあってだな。まぁ特に使い道も思いつかなかったが、こういう役目があるとは思わなかったぜ」
そして1ヶ所に積み上げられていく大量の枯れ木や枯れ草である。よし、これだけあれば焚き火の準備としては充分だろう。……充分だよな? やったことないからよく分からん。事前に調べておけば良かったかもしれない。
「ケイ、焚き火ってした事ある?」
「見た事はあるけど、自分でやった事はない。アルとヨッシさんは知識ありそうだし、準備ってこんなもんで良いのか?」
「それなら焚き火はした事あるし、私が指示出ししようか? ……流石にレンズで火を起こした事はないけど」
「お、それならヨッシさんに任せる」
「了解。それじゃハーレ、松ぼっくりを固めて置いてその周りに枯れ草を敷き詰めて置いてくれる?」
「はーい!」
「サヤは荒野の斬撃系のスキル持ってる人達と一緒に枯れ木を焚き火に放り込みやすい大きさくらいに切っていってくれる?」
「分かったよ。斬撃系のスキル持ってる人、いるかな?」
「あ、私あるよ!」
「俺もだ!」
「おっしゃ! 薪割りだな!」
そうしてハーレさんとヨッシさんで松ぼっくりや枯れ草で火種を起こす場所の準備を始めて、サヤと一部の荒野の人が薪割りを始めた。……サヤはクマだからなんとなく分かるけど、ネズミの人やサボテンの人が薪割りをしているのは不思議な光景ではある。まぁ問題なさそうだけど。……で、俺は何をしてればいいんだろう?
「ヨッシさん、俺は?」
「俺も何すりゃいい?」
「あー、そうだね。アルさんは飛び火しない様に周辺の草刈りをお願いしようかな」
「よし、任された! 『リーフカッター』!」
「ケイさんは火付け役だし、出番は後だね。薪割りしててくれてもいいけど」
「待ってるのもあれだから、薪割りするか」
ただ待つだけというのも落ち着かないので、サヤ達に混じって薪割りをしていく。ロブスターのハサミで適度な長さに叩き斬ったり、挟んだ状態で地面に叩きつけたりして縦に割ったりして薪を量産していく。
そんな風に分担しながら作業をしていれば、大量の薪と火を起こす準備が出来ていた。焚き火の管理をしばらくしていれば火の操作が手に入るそうなので、薪は大量にあっても問題ないだろう。
ここには結構な人数が集まっているけど、大々的に集めている訳でもない。サクッと火の操作を取ってしまおうか。赤いカーソルも青いカーソルも見当たらないから、他の群集は多分いないな。
「うん、これで準備は良いね。ケイさん、始めていいよ」
「おうよ!」
ヨッシさんの許可が下りたので、水のレンズを作っていこう。
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 42/43(上限値使用:2): 魔力値 83/86
<行動値を3消費して『水の操作Lv6』を発動します> 行動値 39/43(上限値使用:2)
最大量で生成すると流石に水が多すぎる気がするので、ちょっと控えめに直径1メートルくらいの水球を上空に生成する。まぁこれでも今までよりかなり水量多いんだけどね。
さてとレンズで火を起こすのは、虫めがねで出来るって聞いたことあるし、虫めがねのレンズをイメージしてやってみよう。確か虫めがねって凸レンズだったよな? まずは水球を平べったくしてから少しずつ調整していくか。
「……巨大レンズでの火の起こし方とかよく知らないんだけど、大きい分には問題ないのかな?」
「さぁな? 具体的な内容までは俺もよく知らん」
「試せばいいだけさー! 現実と違って、多少の無茶したって大丈夫だしね!」
まぁハーレさんの言うとおり、ゲームだからこそ出来る無茶って事もあるだろう。よしよし、徐々にレンズっぽい形になってきた。……これはLv6以上の水の操作が必須だな。Lv5までの精度だとここまで細かなサイズ調整は出来なかったと思うし、明らかに今までの水の操作とは精度の格が違う。
そうしているうちに段々とレンズのようになっていき、直径2メートル近くの巨大レンズになっていく。思った以上に大きくなったけど、まぁいいか。大きくて困る事もないだろ。
「……ん?」
「うわ!? なんかこっちに火が付いた!?」
「ぎゃー!? 折角作った薪の山が燃えてるー!?」
「ケイ、レンズの焦点がズレてるぞ!」
「こんなにすぐに火が起きるのかよ!?」
ヤバッ!? レンズの生成の微調整に集中してたから光の収束先を全然見てなかった。どうも少しズレた位置に置いてあった薪に焦点が合ってそこから発火したらしい。すぐに目的の場所へと向きを調整してみるけども、その途中にあった枯れ草の山にも火が付いてしまう。
レンズの角度をズラせばズラすほど、その途中の物にも火が着いていき、どんどん状況が悪化していく。これ、多少の焦点がズレても太陽光を収束し過ぎて発火しやすくなってないか!?
「ぎゃー!? なんでこんなタイミングで強風が吹くの!?」
「あ、火のついた枯れ草が刈ってない草原の方に向かって飛んで……」
「うわー!? ある程度は延焼の可能性は考えてたけど、いきなり延焼してんじゃねぇか!?」
「ケイさん、レンズは中止! 思った以上に火力が強過ぎるよ!」
「お、おう!」
あちこちに飛び火して、草原が火事へとなっていく。……これは火を起こす事そのものは成功だけど、それ以外の部分は失敗過ぎるわ! えぇい、即座に水の操作を破棄して、レンズは消滅させる!
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『草原を荒らすモノ』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『火を扱うモノ』を取得しました>
<スキル『火の操作』を取得しました>
<『火の操作』『魔力制御Ⅰ』により、『火魔法』を取得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『炎を扱うモノ』を取得しました>
<スキル『炎の操作』を取得しました>
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『光を扱うモノ』を取得しました>
<スキル『光の操作』を取得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『草原を荒らすモノ』を取得しました>
<増強進化ポイントを3獲得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『火を扱うモノ』を取得しました>
<スキル『火の操作』を取得しました>
<『火の操作』『魔力制御Ⅰ』により、『火魔法』を取得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『炎を扱うモノ』を取得しました>
<スキル『炎の操作』を取得しました>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『光を扱うモノ』を取得しました>
<スキル『光の操作』を取得しました>
なんか予定していた手段と違う形で火の操作が手に入った上に、炎の操作と光の操作まで手に入ったんだけどどういう事? え、もしかして結構な量の太陽光を集めたのが光の操作の取得条件で、火災規模が炎の操作の取得条件……?
「ケイ、ボサっとしてないで消火しろ! 1番消火に向いてるのはケイだろ!?」
「あ、アル。すまん!」
確かにここはアルの言う通りだな。万が一の為に消火用の水がある場所を選んだんだ。……ほんとに使う事になるとも思ってなかったけども……。とにかくさっさと消火してしまおう!
<行動値を3消費して『水の操作Lv6』を発動します> 行動値 36/43(上限値使用:2)
近くの水場の水を全て支配下において、火事になっている場所にどんどんぶつけて消火していく。魔法産でも消火は可能ではあるけど、自然産には自然産で対応した方が効果が高いのはなんとなく傾向として見えてきている。まぁ自然産がなければ、魔法産でも効果がない訳じゃないので代用するけども。
しばらく消火活動を頑張れば、大半の火を消し止められた。……元々計画していた場所の火だけは残しておいた。
「うはー!? 焦ったー!?」
「でも、あれってコケの人のダメージ判定だったっぽいね」
「みたいだな? 俺らにはダメージ無かったし」
「……折角ならあれで色々焼けば良かった……?」
「いやいや、流石にそれはねぇよ」
「あ、予定通りの場所には火が残ってるね」
「よし、薪も良い具合に炭になってるし、少し薪を補充したら元々の予定通りにやるか!」
「「「「「「「「おー!」」」」」」」
結構な大事になってた気もするんだけど、荒野の人達はまるで気にしていなかった。なんというか逞しいな、荒野の人達は!?
「……で、ケイ? 今回は火の操作以外は何を取得した?」
「え?」
「ケイが呆けている時って予想外の取得があった時かな?」
「そうだよね! ケイさん、何を取得したの!?」
「みんな慣れてきたもんね」
流石にみんなにはバレバレのようである。まぁ、今回は気付かれても仕方ないよなー。隠す気もないし、別に良いけど。
「今回は『光を扱うモノ』で光の操作と『炎を扱うモノ』で炎の操作だな」
「……まだ成長体なのに、一気に応用スキルが2つか」
「先取りし過ぎじゃないかな?」
「私も応用スキル欲しいなー!?」
「今更って気もするけどね」
うん、大体予想通りの反応をありがとう! 俺自身もちょっと取得しすぎな気はしてるけど、取得出来ちゃったもんは仕方ないよね?




