第212話 水流での攻撃
水流の操作を使っての移動はまだそう長く使えないので、何度か途中で再発動し直しながら荒野エリアを進んできた。時々操作が乱れまくってアルが座礁したのは無かった事にしておこう。とりあえず水流の操作はLv2に上がったぜ! Lv1だと上がりやすくていいね。
基本的にはアル自身が浮かんでいるので水流の操作は推進力の補助に過ぎないけど、水があると空中浮遊だけよりは進みやすいというのがアルの感想であった。
そうやって進みながらマップの端に近付いていけば、徐々に荒れ果てた土地にも水気が増えていき草花もどんどん増えていく。森林と比べれば少なすぎるけども、徐々に木々の数も増えてきていた。草原エリアにどんどん近付いているという事なのだろう。
そしてしばらく経った頃に土ガメの所へと辿り着く。……プレイヤーの誰もいない中、荒野の端でポツンと放置されている土気色の巨大なカメがいる。体長2メートルくらいか? 高さも1メートルはありそうだし、ゴツい顎してるな。……まぁもっとデカいクジラの上から見下ろしてるんだけどね。
「ここって周回PTはいないんだな?」
「ぶっちゃけ、荒野のプレイヤーには纏土とかいらないもんでな?」
「そりゃそうだ……」
このエリア全体の地面がほぼ乾いた土とか石なんだから、そりゃ纏土は必要ないよな。当たり前といえば当たり前だけど、やっぱりボスによって人気、不人気は明確に出てくるみたいだね。
「ちなみに今は雑魚になってるけど、無駄に硬いからな? 不人気の理由はそこにもあるぜ」
「こいつ、硬いのか。まぁLv差あるから大丈夫だろうけど」
「流石に今のLvでも硬すぎて倒しにくいなら困るかな?」
「まぁ初期の頃だけの話だな。流石に成長体の後半や未成体とかで苦戦する事はねぇよ」
流石に今は硬すぎて攻略に手間取るような事はないようである。それでも無駄に硬い上に、報酬は要らない物となれば移動目的以外ではそりゃ倒したくないよな。うん、気持ちはよく分かる。あ、ちょっと試したい事があるからやらせて貰おうかな?
「ちょっと実験してもいいか?」
「良いけど、ケイは次は何する気かな?」
「……ケイ、色々と実験するもの溜め込んでるだろ?」
「まぁな。Lv上げに、熟練度稼ぎに、スキルの使用方法にやる事は大量だぞ」
「私とハーレは草原まで行かないとここから出れないし、任せるよ」
「ケイさん! 任せたー!」
「おう、任せとけ!」
ヨッシさんとハーレさんは荒野エリアでの戦闘は諦めて、移動中もアルの背中の上でずっと2人でスキルの熟練度上げをしていた。途中で間違ってアルの海水魔法を壊してしまって慌ててたりもした。まぁそれなりに成果もあったようなので、草原エリアに行けば見る機会もあるだろう。多分……。
「んじゃ一旦、行動値と魔力値の回復させとくわ」
「おうよ」
移動で水流の操作を使いっぱなしだったので、行動値も結構減っている。一度切って、全快させておかないとね。……よし、解除完了。一応、コケの乾燥対策用に移動操作制御の登録もし直しておこう。
『移動操作制御Ⅰ』
登録内容:『水魔法Lv1』・『水の操作Lv6』
使用上限値:2
登録はこれで良しっと。これで常時コケの表面を水で覆っておけば乾燥対策になる。後は行動値と魔力値の全快を待てば大丈夫。
しばらく待てば行動値も魔力値も全快したので、アルの背中から飛び降りて地面に着地! 荒野プレイヤーの見物人が囲むように見ているけど、何か見られるのも慣れてきた。これより土ガメの討伐を開始する!
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 45/45 → 43/43(上限値使用:2)
<行動値を3消費して『識別Lv3』を発動します> 行動値 40/43(上限値使用:2)
『土ガメ』Lv3
種族:黒の暴走種の残滓
進化階位:成長体
属性:土
特性:堅牢
とりあえずコケの乾燥対策を実行してから識別してみたけど、初期エリアのボスだし大したことはないな。硬いとは言ってもそこまで苦戦する事はないだろう。
「さぁ、ケイ選手は今度はどんな新たな手段を見せてくれるのでしょうか! 見物ですね、解説のアルマースさん?」
「お、実況か。良いぜ、ハーレさん。さて、今回は自ら立候補となりましたケイ選手。応用スキルである水流の操作をどのように使うのかが重要でしょうね」
「また実況かー!?」
「ケイ、頑張って!」
しまった。迂闊に単独で戦えばこの可能性があったんだった!? しかも今回はアルまで一緒なんだから余計にそうなるよな。サヤの応援はどう考えても土ガメとの戦いへの応援でないのは分かる。
「ハーレ、ちゃんとケイさんに確認ー!」
「あ、確認するの忘れてたー! ケイさん、実況やってもいいー!?」
「実況の第一声を発してから聞くことか!?」
根本的に聞く順番がおかしいよな。ヨッシさんも実況そのものを止める気はないんだね。いや、確認するように言ってもらえただけでも充分か。これで俺が拒否すれば……。
「……おい、これって例のあれだよな?」
「森林深部での不動種の木に対する実践演習だったっけ? 参考になったとは聞いたけど」
「纏属進化と操作属性付与の複数属性の応用と、不動種への効果的な攻撃だっけ?」
「よく考えてたらさ、使えて当然の組み合わせだったんだよね」
「俺、普通に纏火と操作属性付与で火の追加効果を付与してたのに、同時に使える事に気付いて無かったし」
「その思い込み、結構あったらしいぞ」
「あ、そうなんだ。それにしても荒野エリアで見れるとはね」
「強い人の実戦って直接見る機会ってあんまりないもんな」
「強過ぎる人じゃ音声なしの中継だと何やってるか意味不明だし……」
「そういう意味じゃ解説ってありがたいよな」
拒否出来るような雰囲気じゃないな、これ。荒野の人達はどことなく期待しているような感じだし、地味に解説付きなのが需要があるみたいだ。というか、夕方のあれも既に情報として広まってるのか。
これはもうハーレさんに事前に確認を取ることだけは徹底させて、大人数の同じ群集の見物人がいる時は許可した方が後々の強化にも繋がるかもしれないか。……仕方ない。
「ハーレさん! 次からは事前にちゃんと言えよ!」
「はーい!」
「次に突発的にやれば、あれを覚悟しとけよ?」
「っ!? はいっ!」
「あーケイ? これは迂闊に乗らなかった方が良かったか?」
「……とりあえず今回は許可しとく」
「……なんか葛藤がありそうだが、良いならいいけどよ」
ハーレさんはこれで次の無断はゲーム取り上げという事を理解したはず。アルは夕方のソラさんとの実況があったのを知らないから仕方ないとしておこう。ハーレさんに対しては切り札はあるけど、アルに対しては切り札はないしな。まぁ嫌がればアルは止めてくれそうだけど……。
それじゃやっていきますか。どうせ実況が無くても大人数に注目されている事実は変わらないしな!
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 39/43(上限値使用:2): 魔力値 83/86
「おぉーっと!? ケイ選手はまずは大量の水を生成したぞー!? これはどう見ますか、解説のアルマースさん?」
「……そうですね。私の知る限りではまだ水流の操作を実戦利用はしていませんので、おそらくはその実験ではないでしょうか?」
「なるほど! 水流の操作の攻撃力を測るための戦闘という事ですね! どのような結果になるのかが今から楽しみです!」
アルの解説が大当たり! 改めて客観的にこの状況を見るのであれば、初見で何も分からない状態でアルみたいな解説があれば確かに分かりやすいのか? わざわざ俺が説明しながら戦闘とかやってられないしな。……後からの質問攻めは勘弁願いたいとこだし。
<行動値20を消費して『水流の操作Lv2』を発動します> 行動値 19/43(上限値使用:2)
とりあえず土ガメの頭上に大量生成して落下中の水を支配下におく。どうも水流の操作の間は水を動かし続ける必要があるようなので、巨大な水球の中でとりあえず流れを作っておく。うん、Lv2に上がって少し操作が楽になった。でもやっぱりまだぎこちないから、最低でもLv3にはしないと駄目だな。
さて、土ガメも俺を睨みつけていつ攻撃を仕掛けてきてもおかしくないのでこっちから攻撃に移るとしようか!
「巨大な水球の中を渦巻く水流が変化を見せていくー!? そして、水球の下部から猛烈な勢いで土ガメの甲羅に向けて水流が放たれたー!」
「……これは土ガメも堪らない様ですね。大量の水に押し潰され、身動きが取れないようです」
「土ガメのHPが凄い勢いで減っていくが、それでもこの甲羅はこの水流には耐えるのかー!?」
滝みたいに水流を叩きつけてみたけど、意外と硬い甲羅だな。まぁHPも減ってるし、身動きも出来ていないから倒すのは楽勝だろうけど、ちょっと気に入らないな。……よし、水流を細くして威力を上げてみるか。操作の持続時間も無視して速度も最大まで行ってみよう。
お、思いっきり勢いが増した。っていうか、この攻撃って見覚えがある気がするんだけど……。
「おおっと!? ここでケイ選手の水流に変化が!?」
「……これは高圧水流ですね。そして土ガメの甲羅が削られているという事はとんでもない威力です。……これは水砲ザリガニの使っていた技に似ていますね」
「そういえばそうだったー!? ケイ選手、かつての強敵の技を自分のものへと変えたのかー!」
そうそう、水砲ザリガニがこんな感じの攻撃をしてきてたもんな。あの時は水魔法かと思ってたけど、あれって水魔法じゃなくて水流の操作だったんだ。
よし、土ガメの甲羅にも穴が空いて一気にHPも無くなったしこれで終わりかな。
<ケイはLv上限の為、過剰経験値は『群集拠点種:キズナ』に譲渡されます>
<ケイ2ndがLv11に上がりました。各種ステータスが上昇します>
<Lvアップにより、増強進化ポイント1、融合進化ポイント1、生存進化ポイント1獲得しました>
<『進化の軌跡・土の欠片』を2個獲得しました>
「土ガメは何も出来ずに敗れ去ったー! 勝者、ケイ選手!」
「圧勝でしたね。ですが初めから高圧水流でいけば瞬殺も可能だったのではないでしょうか?」
「アル、うるさいぞ! 途中で思いついたんだから仕方ないだろ!」
「以上がケイ選手の勝利コメントとなります」
「実況はクラゲことハーレと!」
「解説のクジラ&木のアルマースにてお送りしました」
よし、実況は終わった。ついでに上がる寸前だったLvも上がったぜ! なんか荒野の人達から歓声沸いてるし、みんなやっぱり楽しんでたっぽいな。……他人がやってるのを見る分には楽しいのかもね。
そこにシンさんが近付いてきた。なんか満足そうな感じである。
「いやーいきなり実況が始まった時は何事かと思ったけど、あれが応用スキルの本来の使い方って感じなんだな。移動にも応用が出来るってのも実演してもらったし、参考になったぜ。ありがとよ」
「あーどういたしまして?」
「応用スキルの操作系スキルって取得の為のポイントが多いからな。実物を見る機会ってのは貴重なんだよ。……ところで、ケイさんってまだ成長体だよな? どうやって水流の操作を取得したんだ?」
「あ、やっば、停電のせいで情報流すのすっかり忘れてた!?」
「そういえばそうだった!?」
「停電って事は何かトラブルがあったんだな。だから情報が流れてないのか、もしくは俺たちは見落としてたかのどっちかか」
これは相当重要な情報である。サヤとヨッシさんがログアウトした後の空き時間に情報共有板に書き込むつもりだったのに、停電があったせいで完全に失念していた。……あの時に周辺にいた人には伝えたし、紅焔さんとかにも話したから広まってる可能性もあるけど、シンさんの発言的に微妙な感じか?
とりあえず土ガメの討伐は終わったから、少し中断しても問題なさそうなタイミングだしね。情報共有板の様子がちょっと気になるので、そっちの確認をしてこよう。
「ちょっと休憩兼ねて、情報共有板に行ってきてもいいか?」
「……そうだな。俺も気になるから見に行ってみるか」
「私も見に行くー!」
今日の9時からは森林エリアでの競争クエストで青の群集と仕切り直しらしいし、もしかしたらそっちに集中していて情報がうまく回っていないだけかもしれないしね。
【ステータス】
名前:ケイ2nd
種族:殴りロブスター
所属:灰の群集
レベル 10 → 11
進化階位:成長体・殴打種
属性:なし
特性:打撃、堅牢
HP 2750/2750 → 2750/2900
魔力値 19/19 → 19/20
行動値 30/30 → 30/31
攻撃 49 → 53
防御 47 → 51
俊敏 36 → 39
知識 22 → 24
器用 22 → 24
魔力 12 → 13




