第172話 2枠目の作成
軽く掲示板を流し見してきたけど、中継の仕様があんな風になってたとは……。っていうか思いっきりベスタとルアーの対決が中継されてたんだな。音声はカットというのがありがたい仕様だった。戦闘を見られるくらいなら別に良いけど、音声を聞かれるのは流石にね……。
あとは整備クエストで『地形を弄るモノ』が手に入るっぽいな。ボカシて書いていたけど、あれは条件を知ってる人ならすぐ分かる。クエストで取得しやすく調整してるんだろうね。
そろそろ7時だし、1階に行きますか。さてと今日の晩飯は何だろうか? そしてリビングへと行けば既に晴香が待ち構えていた。というかキッチンの方を思いっきり覗き込んでる。あれ、ここまで晴香が反応するってことはなんか珍しい物か……?
「あ、兄貴! これ、凄いよ!」
「あ、圭ちゃんこれ見て!」
「ん? 母さんも晴香も揃ってテンション高いってどうしたんだ?」
「今日の晩御飯、オマール海老だって!」
「……え?」
オマール海老って、あのオマール海老……? 別名ロブスター……。このタイミングでなんてモノを入手してきた!? よりにもよってこの食後に作る予定のキャラなんですけど!?
あぁ、真っ赤に綺麗に鍋の中で茹で上がっていくオマール海老。今まで食べた事はないけど、多分美味いんだろうけど、なんか心境的に複雑なんですけど。せめて昨日、食いたかったぞ……。
「母さん、なんでオマール海老……?」
「お父さんが福引で当てました! ほら、昼間に壊れた洗濯機を新調しに買いに行ってたじゃない? それでお店で、一定額以上のお買い上げのお客様限定の福引をやっててね?」
「おう、圭吾。見事、2等を当ててやったぞ」
「……なるほどね」
こういう所で結構な強運を持っている父さんが親指を立てて誇らしげであった。うん、すごいし、普通に美味そうなんだけど、なんで今日、このタイミングで……。いや、ここは割り切ろう。ゲームはゲーム、リアルはリアルだ! このオマール海老に罪はない!
「まだかなー!?」
「はいはい、晴ちゃん、慌てないの。そろそろ茹で上がるからね」
その後、真っ赤に茹で上がったオマール海老は家族みんなで美味しく頂きました。うん、初めて食ったけど、美味いもんだね。ご馳走さまでした。
◇ ◇ ◇
食後の食器の片付けやら諸々を済ませてから再びゲームへとログインしていく。うーむ、美味かったけど、これからあれをプレイするとなると複雑な気分……。でももうキャラ作成は終わらせたし、あんまり気にし過ぎても仕方ないか。
そして再びいったんのいるログイン場面へとやってきた。胴体には『スクリーンショット機能について』とある。あ、とうとう使えるようになるのか?
「おかえり〜」
「いったん、スクリーンショットが使えるようになるのか?」
「ついさっき調整が終わったから、もう使えるようになったよ〜。ただし、ご使用に際しては注意点があります〜」
「……どんな事?」
「他のプレイヤーが映り込んでいるスクリーンショットは基本的に外部出力が不可能になってるから要注意ね〜! ゲーム内部で見る分には問題ないよ〜」
「あ、そういう内容か」
「本人の承認さえあれば可能にはなるけどね〜。承認依頼は僕に言ってくれれば該当プレイヤーに承認確認は出すから、それ次第になるかな〜」
「無断撮影では外部への持ち出しは禁止って事なんだな」
「そういう事〜。色んなトラブル防止の為にね〜。拒否されたけど景色としてどうしても外部出力したい場合はキャラの置き換え処理するからね〜」
「……キャラの置き換え?」
「幼生体の黒の暴走種仕様に外見が変更されて、プレイヤー名も出なくなります〜!」
「あ、そうなるのか」
このゲームじゃ基本的にリアルの顔とかとは無縁ではあるけど、まぁそれでも無断撮影での外部出力は厳しいか。あと見た目は進化の情報も関わってくるから、迂闊に掲示板とかに進化後の姿を公開されると不味い場合とかだと拒否すれば良いわけだ。他には問題あるプレイヤーへの個人的な晒し上げの防止とかそんな感じだろうな。
「そういやどうやってスクリーンショット撮るんだ?」
「スクリーンショットは基本的に思考操作だね〜! 『撮るぞ!』って念じる感じ〜。分かりにくかったら、オプションでスクリーンショット用の設定から視界中に撮影ボタンも表示されるからね〜」
「なるほどね」
基本的には通常のステータス画面の操作とかと同じか。そしてオプションで誤操作防止用のボタンも用意はされているって感じだな。ま、この辺は後で確認すれば良いや。
「よし、それじゃログインするよ」
「どっちのキャラ〜? 言ってた通りにロブスターかな〜?」
「……おう。ロブスターだな」
「じゃあ、これ2枠目の方のログインボーナスね〜」
「あ、そういやそうなるんだな」
ちらっとさっき食べたばかりのオマール海老が頭を横切ったけども、気にしない。気にしないったら気にしない! とにかくいったんから2枠目用のログインボーナスの『進化ポイントの実:灰の群集』も貰ったからロブスターの育成開始だ!
「それじゃ2枠目も楽しんでいってね〜」
「んじゃ行ってくる!」
「一応はチュートリアルもあるけど、コケほどは癖もないからその辺はご自由に〜」
「分かった!」
一応、2枠目の方にも種族用のチュートリアルはあるんだな。……コケの移動方法みたいに必須でもなさそうだし、飛ばしても問題はないかな? いや、でも一応はやっておくべきか。
◇ ◇ ◇
チュートリアルをどうするか考えているうちに、ゲーム内へと移動していた。周囲はまばらに海藻の生えた岩場の海エリアである。遂に2枠目の作成に辿り着いた! 大きなハサミが2つ見えるし、開閉させるように動かす事も可能。脚の数も多いけど、思考操作で大体思ったように動かせそうだ。流石にまだ操作がぎこちないけど、それは慣れていけばいい。
ハサミの色を見た感じでは黒みを帯びた赤、もしくは褐色って感じかな。茹でた後のように真っ赤ではないね。
<チュートリアルクエスト、種族『ロブスター』を受領しました> ー 開始する・チュートリアルを飛ばす ー
うん、やっぱりやらなくていいや。飛ばすを選択して、スキルとかステータスを確認していこう。まずはステータスから確認。
【ステータス】
名前:ケイ2nd
種族:ロブスター
所属:灰の群集
レベル 1
進化階位:幼生体
HP 500/500
行動値 10/10
攻撃 4
防御 4
俊敏 3
知識 1
器用 1
お、ちゃんと名前がケイ2ndになってるな。種族はロブスターで、ステータスは当たり前だけど相当低い。攻撃と防御が高めで、俊敏も良い感じ。知識と器用は微妙か。物理向けって感じのステータスだ。そして何より違うのはちゃんとHPがある事だな。こっちの方が当たり前の仕様だけども! そういや幼生体には属性も特性もないんだっけ。さて、次はスキルを見ていこう。
【スキル】
《固有スキル》
『脱皮Lv1』『威嚇Lv1』『獲物察知Lv1』
《通常スキル》
『はさむLv1』『殴打Lv1』『体当たりLv1』
《特殊スキル》
『変異率上昇』
特殊スキルは変異率上昇だけか。海エリアのキャラに海中適応の特性やスキルってないんだな。……元々の生息地なんだから無くて当たり前といえば当たり前か。さて、1つずつ内容を確認していくか。とりあえず固有スキルから見ていこう。
『脱皮Lv1』
傷付いた外皮を新たなものへと換える。一定時間、防御力が大幅に下がる代わりにHPを50%回復。Lv上昇により防御力の下がる時間が減少。
お、脱皮は特殊条件付きの回復スキルか。HPは回復しても脱皮したては脆くなりますよって事なんだろう。……回復量が結構な量だから状況次第では有用だけど、中々癖のある回復手段だな。あー、HPがあるから今後は回復用のアイテムも必要になってくるか。うーん、コケってなかなか凄い仕様だったんだな。さて次々行こう!
『威嚇Lv1』
巨大なハサミで敵を威嚇し、自身よりLvの低い敵との戦闘確率を下げる。Lv上昇により効果増大。
威嚇って確かサヤも持ってたっけ。未だに使ったところは見たことないけど……。これは効果的に今は微妙かな。戦わずに移動したい時には便利かもしれないけど、今はむしろ積極的に戦いに行くべき時!
『獲物察知Lv1』
一定時間の間、敵を察知する事ができる。ただし、特殊な効果を持つ敵は見つけられない。Lv上昇により効果範囲の拡大と効果時間の延長。
これはハーレさんの危機察知の能動的なバージョンか? こっちから積極的に探す際には便利そうだ。特殊な効果を持つ敵は見つけられないっていうのは隠密とか擬態の特性持ちの事かな? あれには看破が必要なのかも。
通常スキルは、名前のままの攻撃スキルだったな。うん、ただ単純に名前の通りの効果だった。ハサミではさむと、ハサミで殴りつける殴打と、尻尾で勢いをつけて跳ねての体当たりか。どれをメインで育てようかな? はさむを鍛えれば切断系のスキルに派生しそうだし、そっちを目指していくか。コケの方には全くない系統の攻撃手段だし。
あ、忘れないうちにこっちのログインボーナスも使用しておこう。ちゃんと枠毎に用意されてるんだから、毎日どっちでもログインして使うようにしておかないとね。
<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
これでログインボーナスは問題なし。やっぱりログインボーナス化した今の方が便利だね。そうでなければこれから何が毎日取得分なのかを探るところから始めないといけないところだし。
少しだけどポイントも手に入ったし、識別も取っておこうかな。あれはひたすら使いまくった方が良さそうだしね。ということで、ポイント取得一覧も確認して……流石にまだそれ程選択肢は多くないか。よし、識別はいけるな。生存進化ポイント3で識別ゲット!
とりあえずこれで2枠目の方の大雑把な確認は終了。細かなところはプレイしながら確認するとして、みんなと合流する為に移動開始しますか。その前に現在地の確認と、みんなの位置確認だな。フレンド一覧は1枠目と共通なのは助かる。
えっと、俺の現在地は群集拠点種の少し西側か。サヤは群集拠点種から俺より少し遠めの東の方で、アルは既に群集拠点種のすぐ側。ハーレさんは俺より更に西側で、ヨッシさんが北側の結構遠めの位置だな。群集拠点種に近い順でアル、俺、サヤ、ハーレさん、ヨッシさんって事で、結構位置がバラけたね。
とりあえず一番近いアルのとこまで行くか。待ち合わせ場所にしてた群集拠点種の場所だし。それじゃ、新キャラでの本格プレイの開始だ!