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第1628話 原野の集会所


<『群雄の密林』から『名も無き未開の原野』に移動しました>


 さて、転移してきました、原野エリア! 今日は昼の日だし、洞窟のある谷の上に出たから……って、凄いな、これ!?


「おぉ!? 谷が、無いのです!?」

「谷の上部、あのドームを構成してた3属性で塞いでる感じかな!」

「あはは、こういう使い方も出来るんだ?」


 サヤ達が反応した通り、前来た時とはまるで違う光景が広がっている。山岳エリアだと川の部分が塞ぎ切れない通り道になっていたけども……谷という地形なら、こうも形を変えるのか!?


「もはや、これはドームじゃなくて、谷を閉じる蓋だな」

「あー、確かにそんな感じだよなー」


 アルの表現した通り、これは完全に蓋だな! この光景は、どう見てもドームとは言えないし!


「ケイさん! こっちだ、こっち!」

「ん? 紅焔さんの声が……あ、端の部分から顔だけ出してるのか!」

「外でいると目立つから、早くこっちに入ってこいってよ!」

「ほいよっと! アル、移動よろしく!」

「おうよ!」


 さーて、紅焔さんが顔を出してる部分は一時的に水を消してるみたいだから、そこから入っていきますか! これ、中の状態はどうなってるんだろうね?



 ◇ ◇ ◇



 手早く氷と土の蓋の隙間を通り、本来なら谷に当たる部分へと突入! 俺らが入れば、すぐに水が再生成されて、塞がれていったね。

 俺らを呼びに来たのは紅焔さんだけで、他のメンバーは既に谷の下にいるっぽい。まぁライルさんの松の木が見えてるから分かりやすいね。


 てか、ジェイさんと斬雨さんが飛翔連隊と一緒にいるのは……想定外でもなんでもないか。あとは、3属性の蓋を生成してる人達が等間隔で並んでる様子が見えますなー。それにしても……。


「ここ、思ったほど暗くはないんだな?」

「水と氷部分から、光量は十分確保出来てるみたいだしな。多少、薄暗くなってる程度か」

「わっはっは! 派手な真似をするよな、青の群集はよ!」

「まぁ確かになー」


 ドーム状の形態でもビックリしたのに、こんな形状にも対応するとはね。まぁ構成している要素が操作系スキルなんだから、自由度は高くて当然か。


「んー、でもこれって『侵食』の効果には弱くない?」

「……黒の異形種を食い止めるには、厳しいかも?」

「乱入勢が従えているのは『魑魅魍魎』だったか。それには無力かもな」


 あー、まぁスキルとしての『侵食』は、生成したものを蝕んでいくからなー。絶大な生成量を誇るLv10の操作系スキルであっても、この規模で展開してしまうと追加生成での補強は間に合わないかも……。

 ちっ! 黒の異形種達の最大の脅威は、数以上にあの『侵食』の効果か! 味方側で使ってもらう時は頼りになるけど、敵側で使われるのを考えると相当厄介だな!?


「おかえり、紅焔」

「おう、戻ったぜ、ソラ! ケイさん達を連れてきたぜ!」

「ようやく来ましたね、ケイさん。まさか、この場に転移登録をしているとは思いませんでしたよ」

「あー、ジェイさんは来てたのか。まぁそこの洞窟を探る時に、安全策として登録してたからなー」

「……なるほど。確かに、どういう場所か分からない時なら、死亡時の安全策は取っておきますか」

「そうそう、そういう事!」


 結果的には、ここの黒の異形種……骨の竜とは平和的に話せたから、特に意味がなかったんだけどね。でもまぁ、今こうして役立っているんだから、登録しといてよかったもんだよ! まぁそれはともかく……。


「それで、今のここはどんな感じ? ジェイさんがいるって事は、指揮をしてるのはジェイさん? 人手が足りてないって聞いたけど……」

「えぇ、この場の総指揮は私が引き受けていますよ」

「ジェイの奴、『今度は青の群集の番だ!』って、張り切っててよ?」

「斬雨! 余計な事は言わなくていいですから!」

「ま、そういう事だから、共闘は頼んだぜ!」

「ともかく、よく来てくれましたね、ケイさん。……ベスタさんは来ていないのですか? レナさんは、例の共同体の件で来れないのは分かりますが……」

「あー、ベスタなら別行動中でなー」

「……乱入勢に、何か動きがありましたか?」


 ベスタがいないってだけで、そこをすぐに気にするか。まぁそりゃそうだよなー。元々はベスタもこっちに来る予定にしてたのが、来てなければ不自然に思うよね。


「乱入勢に動きがあったんじゃなくて、探りに行ったんだよ、ベスタ」

「探りに……ですか? それはオオカミ組とモンスターズ・サバイバルの共同作戦で失敗したと聞いていますが……」

「……死亡前提の、突入だ。俺ら、『縁の下の力持ち』のメンバーと共にな」

「っ!? 随分と、無茶な事を考えますね!?」

「へぇ? 『縁の下の力持ち』って言えば、灰の群集のソロの互助会だろ? それが、そういう動き方をするってのは珍しいんじゃねぇか?」

「……俺だけが、最前線に混ざっているのがお気に召さないようでな? まぁPTは組まず、ソロの状態での一斉侵攻だ。俺らみたいなところじゃねぇと、成立はしにくいぜ?」

「なるほど、そういう事か! 十六夜さんだけに活躍はさせたくねぇってか!」

「……無茶苦茶ではありますけど、確かに死亡前提なら有効な手段ではありますね。それ、私達は手を出さない方がよろしいですか?」

「ベスタからは、人を送ろうとしたら止めてくれって頼まれてるからなー。手を出すのはやめといてくれ」

「まぁ当然の反応ですか。共闘中の味方を気遣う余裕はないでしょうし、自身だけに集中出来るようにソロプレイヤーに縛ったんでしょうしね」


 ふー、あっさりと手を出さない事を受け入れてくれて助かったー。まぁジェイさんがここで総指揮をしてるなら、ベスタの意図はすんなりと受け取ってくれるか。


「それで、十六夜さんがこの場にいるという事は……発見した情報を、伝達する為ですか?」

「……あぁ、そうなる。ベスタさんも連結PTにはいるから、そっちから情報が入る可能性はあるが……現地での情報共有は困難だろうからな」

「まぁそれはそうでしょうね。何か重要な情報が出てくれば、報告をお願いします。……私達も聞いて、問題ないのですよね?」

「そこは了承を得てるから問題なし! 共闘中なんだしなー!」

「まぁそうなりますよね」


 さて、ジェイさんに必要な事を伝え終えて……って、そういやこれを確認しないとダメか。青の群集だけに伝えればいい訳じゃないんだしさ。


「ジェイさん、赤の群集は誰が来てる? ウィルさんはeスポーツ勢の受け皿の共同体へ出向してるって聞いたから……流石にここには来てないよな?」

「赤の群集からは、ルアーさんが来てますよ」

「あ、ルアーが来てるのか!」


 リバイバルのリーダーなんだし、人選としては当然の流れではあるよな! 見知った相手なら、色々と話もしやすい!


「ともかく、細かい話は洞窟の中へ移動して話しましょうか。ここは、定期的にアルマジロが復活するので、あまり留まっていたくないですしね」

「あー、まぁそれは確かに……」


 あの岩に擬態してるアルマジロ集団は、殺意が高いもんなー。でも、今は出現してないみたいだし、復活する度に倒してはいるのかも?


「ふふーん! まずは、ここの洞窟の中の構造を調べないとだね! 前来た時は、そこまでは確認出来てないし!」

「……フィールドボスと戦うんだし、下準備は大事!」

「確かにな。ジェイさん、その辺の案内は頼めるんだよな?」

「えぇ、当然ですよ、ラジアータさん。その上で、いくらか皆さんから意見も聞きたいですしね」

「ほう? フィールドボスの種族に関してか?」

「……まだ、判明してない?」

「その辺の話題を含めて、色々ですね」

「ともかく、今は中に入ろうぜ! なぁ、ジェイ!」

「という事なので、移動をお願いしますね」

「ほいよっと!」


 さて、2度目のこの洞窟への突入だな! エメラルド……いや、今は『ラルド』だったか。ラルドの率いる『百鬼夜行』の集会所と違って、ここは俺らに友好的なはず。どういう違いが出てるか、まずはそこを確認していくか!



 ◇ ◇ ◇



<『名も無き未開の原野』から『黒の異形種の集会所』に移動しました>


 さて、洞窟の中へ入ったけども……しっかりとエリア名は変わってるな。でも、ここの黒の異形種達の集団名はまだ決まってないっぽいね。


「ジェイさん、安定化の変質進化の進行具合は?」

「この集会所のまとめ役を担っている、骨の竜だった個体のみ、終えている状況ですね。他はまだ進めていません」

「……数、足りてないのか?」

「夕飯時というのもあって、少し集まりが悪くてですね。今、こちらへ運んできてもらっている最中です」

「……それなら……預かって……きた。……はい……これ」

「風音さんが持ってきたのですか?」

「……桜花が……色んなとこから……受け取ってたよ?」

「なるほど、桜花さんの仕業でしたか。変な偽装情報が出回っているので、安全なルートで送るとは言っていましたが……確かに、これ以上ない安全なルートですね」


 桜花さん、何気に青の群集からの荷物を預かってたんかい!? てっきり、灰の群集だけで掻き集めたものだとばっかり思ってたんだけど……あー、安全性を追求して、あえて伏せていた可能性はありそうかも?

 そりゃまぁ、ここへ転移していく予定の俺らに託すのが、確かに安全ですよねー! 俺らが乱入勢へ横流しする可能性とか、まずあり得ないし!


「……確かに、受け取りました。風音さん、ありがとうございます」

「……お礼なら……桜花に……言って?」

「そちらも当然ですが、実際に運んで下さったのは風音さんですからね。風音さんにもお礼を言って当然ですよ」

「……そうなの?」

「えぇ、そうですとも。これだけあれば、ここの黒の異形種の全てを安定化させる事は出来るでしょう」

「……それなら……よかった」


 知らないところで、数が足りない状況が解消になったみたいだけど……うん、まぁこれは良い結果だね。桜花さんがあちこちの人にフレンドコールで連絡を取ってた中に、今回の運送の件も混ざってたんだろうなー。

 eスポーツ勢が集まってきてる中で、受け渡しまでしてたのにはびっくりだけどさ! あー、もしかしてコイコクさん達が中継役を担ってたのかも? 連絡、取ってた訳だしさ。


「そういやジェイさん、青の群集で名を騙る奴が出てきてたとか聞いたけど……その辺、実際はどうなんだ?」

「その情報そのものが、デマですよ。こっそりと出所の追跡調査を行いましたが、実際に騙されて渡したという方はいませんでしたからね」

「ちゃっかり、裏は取ってるんかい!」

「当たり前でしょう? まぁ無駄に労力を割かされる結果になりましたけどね……」

「あ、そっちが狙いかー!」

「思惑通りに動かされたのは、非常に不愉快ですけどね! ……まぁスミが言うには、乱入勢にeスポーツで指揮役を担う者が流入してる可能性があるそうですし、それを実感しましたよ」

「あー、その辺の見解も一緒なのか」


 てか、青の群集のeスポーツ絡みの情報源ってスミになるんだな。本当、中学の頃とは全然違うんだね。これだけ変わってれば、スミがあいつだったと気付かない訳だよ。


「そういう言葉が出てくるという事は、灰の群集でも同じ見解になっているんですね?」

「まぁなー。指揮役が、格下の進化階位って可能性も考える必要があるって認識にはなってるぞ」

「その可能性は、確かに無視出来ませんね。ですが、身近にモンエボに詳しい人がいるはずです。それが誰か分かれば……」

「そこから、指揮役を絞り込む事は可能?」

「……多少の期待も含まれていますけどね。そういう意味では、ベスタさん達の動きに期待ですか」

「まぁそうなるよなー」


 指揮を取っているプレイヤー名が分かれば、本格的にぶつかる時に分断を狙う事も出来るようになる。まぁそう簡単に、その情報を掴ませてくれる相手とも限らないけど……。


「まぁその辺の情報は、後にしましょう。まずは、ケイさん達には再会してもらいたいですしね」

「へ?」

『おぉ! 来たか、我らが恩人よ!』

「ちょ!? えっ!?」

「ケイ!?」


 待て待て待て!? なんか金属で身体が出来てる竜が迫ってきて、持ち上げられたんだけど!? これ、もしかして――


『あの時、そなたらと対話を選んで正解だったようだ! 我の名は【モンド】! 再び、相見えるのを待っていた!』

「『モンド』……か! よろしく頼む!」

『あぁ、こちらこそだ! 今回は共に戦おうぞ!』


 ははっ! 首元にダイヤモンドらしきものが埋まってるし、『モンド』という名前はそこから取ってきてるな! それにしても、随分と好意的な反応なもんだね!


「危機察知に反応がなかったの、攻撃じゃなかったからなんだ!?」

「安定化した事で、正確に私達の見分けが付くようになったのかな?」

「随分と、好意的な感じだもんね」

「なるほど、友好的になっていれば、こういう対応に変わるのか」


 ラルドとの初対面の時は、追い出されてたもんな。それに対して、この元骨の竜のモンドとはちゃんと対話が成立していた。だからこそ、この対応の違いか!


「モンド、これで満足しましたか?」

『あぁ、もちろんだ。そなたらにも、感謝しよう!』

「どういたしまして……と言っておきましょうか。さて、この地の者達の安定化に必要な量が揃いましたので、そちらを進めてもよろしいでしょうか?」

『あぁ、皆にもこの安定化を施してやってくれ。それが済めば、この地の主達との対峙の準備をせねばならないしな!』


 既に、色々と話自体は終わってるっぽい……あ、普通にアルのクジラの背の上に戻してくれたね。さーて、それじゃ、ここでやるべき事を進めていきますか!

 


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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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