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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第42章 3日目の夜

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1623/1633

第1623話 受け皿の共同体の結成


 レナさんは他の群集での様子を確認する為に、フレンドコールをしている真っ最中。俺らはそれが終わるのを待っているけども……さて、どっちになるのやら?


「よし、確認終わり!」

「レナさん、どうだった!?」

「満場一致で、『コンテスタント』の方に決まったよ! 各群集のサファリ同盟とは別組織だって、すぐに分かるようにしたかったみたいだね」

「あ、やっぱりそれは思うよね! 『灰の』だと『灰のサファリ同盟』を連想しちゃうし!」


 ほほう? アイルさん、そういう基準で『コンテスタント』の方を選んでたんだ。……正直、適当に選んでそうとか思ってたけど、なんかごめんなさい。


「レナ、満場一致という事は、もう結成は可能なんだな?」

「うん、問題ないよ! すぐに結成してきて、それから共同体名を載せた例のサイトを本公開にしてくるけど……それで問題ないよね?」

「あぁ、構わん。それで進めてくれ」

「了解! それじゃ、ギンさん、アイルさん、スケさん、PTを組んで、共同体『グレイ・コンテスタント』を結成しに行くよ!」

「分かりました!」

「おう、了解だ!」

「その御心のままに!」

「……よし、PTは結成完了っと! それじゃ、ちょっと行ってくるねー! 目的地、森林深部ね! 共同体の結成は群集拠点種で行うから、エンでやるよ!」

「レナさん! こういうのは? 『移動操作制御』!」

「およ? アイルさん、土の昇華を持ってるの?」

「ふふーん! 移動に便利って聞いたからね! さぁ、みんな乗って!」

「それじゃ、お任せしよっか」

「おう、邪魔するぜ!」

「……ほう? 岩が浮くとは、奇妙なものだね? ……なるほど、これは僕の知らない事が多くありそうだ」


 そうして、アイルさんの生成した岩に乗って、マサキの元へと移動していった。アイルさんのコケ、どういう風に育ってるのかよく分かってなかったけど、土の昇華持ちか。

 まぁ土の昇華が色んな面で便利なのは間違いないから、持っているのは納得。でも、操作系スキルってeスポーツの特訓になんか影響はあるもんなのか?

 あ、正確な距離感を掴むにはいいのか。超人系のゲームって、身体能力が現実とかけ離れてるから、ちょっとのジャンプでも凄い距離が跳べるからなー。目測を誤らないようにするには、操作系スキルは有用――


「とりあえず、これで一安心かな?」

「だなー。ベスタが抑えてくれたおかげで、レナさんも結構やりやすそうな感じだったしさ」

「あれくらいやらんと、スケが調子に乗り過ぎていたからな。……とはいえ、あれがモンエボに慣れて育ったら……俺でも抑え込めるか、分からんぞ?」

「ベスタでも!? え、そこまでヤバい……?」

「見慣れない『コケ渡り』に加えて、フェイントをいくつか織り交ぜてようやく捉えられるレベルだからな。反応速度が尋常じゃない。今はまだ進化階位が低くて、キャラが反応に追いついてないだけだ。ギンノケンがこの機会に入れておくべきだと言っていた理由は、よく分かる。あれは、敵に回すのは危険過ぎる」

「そこまでか!?」


 ベスタにそこまで言わせるスケって……うん、本気でヤバそう。いや、そこまで分析出来て、抑え込めるベスタもとんでもないけどさ!


「おそらく、スケは……暴走時の弥生に匹敵するか、それ以上だぞ。格ゲー出身なら、近接物理に育てる可能性もあるが……遠距離攻撃も用意はしてくるだろう。どこまで本腰を入れてモンエボで活動するかにもよるが……過剰な自信は折れるうちに折っておかないと、手が付けられなくなるからな」

「……なるほど」


 ベスタにしては珍しく、かなり乱暴な扱いをすると思ったら、そういう意図があったんだな。風雷コンビくらいだしね、灰の群集内でベスタに力技で制圧されるのってさ。……連携している風雷コンビ並みと考えると、尚更ヤバいな。


「はいはーい! あのレベルの人が流入って、結構ヤバくない?」

「リコリスの言う通り、懸念事項はそこだな。ギンノケンはあれが広告塔になると言っていたが……むしろ、あのレベルの強者が他の群集の『コンテスタント』に入ってくる可能性が出てきた」

「えっ!? あ、そっか! 知ったら、スルー出来ないもんね!?」

「そういう事だ。eスポーツ勢に知られていて、個性が強過ぎるが故に、隠し立ては出来ん。だがまぁ、あれに他所へ行かれるよりはマシだ」

「え、なんで? むしろ、他所に行ってくれた方が、同格の他の人が灰の群集のに入ってくる可能性も出てくるんじゃ?」

「……来ても、人格は分からないよ?」

「あれ以上に我が強いのがくれば……それはそれで、厄介な事になるぞ? それなら、身近にギンさんという抑止力になり得る人を置いておいた方が安全だって判断だろう?」

「正確だ、ラジアータ。レナもそこを察して、釘を刺してくれたからな。あの状態なら、聞く耳を持つだろうよ」

「そっか、そっか! 色々と策を巡らせてたんだね!」


 こうして説明されてみれば、確かに納得のいく内容ですなー。ベスタらしくない行動な気はしてたけど、そうしておかなければ後々で大変な事態になりかねなかったんだね。

 幼生体であの反応、冗談抜きで笑えないレベルだしなー。それだけならいいんだけど、人格面に非常に問題ありなのが……うん、やっぱりヤバい。

 あのスケを見た後だと、アイルさんのやっていた事が些細な事に思えてくるのが恐ろしいわ! よくもまぁ、ギンはアイルさんとあのレベルの変人を同じ扱いにしたもんだな!? ……いやまぁ、方向性としては似たようなもんなんだろうけどさ。


「たっだいまー! 共同体『グレイ・コンテスタント』の結成、終わらせてきたよー!」

「おー! レナさん、おかえりなのさー!」


 おっと、レナさん達が戻ってきたし、ベスタの思惑についての話はここまでにしとこうか。スケ本人に聞かれても厄介……厄介なのか? あそこまでの変人だと、どう反応するかが全く読めん!


「さてと、わたしは例のサイトの公開をしてくるから、ベスタさん、メンバー募集はもう告知しちゃって!」

「あぁ、任せておけ。まとめの方は、もう下書きで用意してあるからな」

「へ? え、もうこれから募集をかけるのか!?」


 結成したてなのに、早くない!? あ、違う。募集をかける為に、共同体の結成をしてたのか。順番が逆なんだ、これ!


「その通りだ。この共同体『グレイ・コンテスタント』は、行き場が分かっていないeスポーツ勢に対する受け皿だからな。結成メンバーだけは、群集の方から融通の効く相手にしておきたかっただけだ。まぁ、中々に癖のあるメンバーが揃ってしまったが……」

「ふっ、それは僕への褒め言葉として受け取っておこう」

「……いや、どう考えても今の流れは褒めてねぇぞ?」

「何!? そうなのかい、ギン!?」

「どっちかというと嫌味だな。……その中に、俺が入ってない事を祈りたいが」

「うわー!? 私は、間違いなく『癖のあるメンバー』 の方に入ってるよね!?」


 相変わらず変な反応をするスケと、盛大に悶絶してるアイルさんですなー。ギンも大概、無茶な奴だと思ってたけど……他の2人に比べたら、もう普通だよなー! うん、普通! ……比較対象がおかしいだけな気もするけど!


「ベスタさん、その募集ってどこでやんの?」

「それならここだ、紅焔。桜の不動種の並木の外れの広間だから、場所としては分かりやすくていい」

「ここかよ!? 俺ら、もしかして整理係?」

「いや、そこを紅焔達にやらせる気はない。灰のサファリ同盟から支援が来るから、そっちに任せておけばいい。だが……」

「……その『だが』って、なんだ!?」

「変に暴れるような奴が出れば、実力行使でも構わん。その為の、このメンバーだ」

「っ! なるほど、そういう事か! 俺ら『飛翔連隊』や『グリーズ・リベルテ』、それに移籍組の実力者3人『曼珠沙華』に、ソロの互助会『縁の下の力持ち』の十六夜さん、そこにリーダーのベスタさんも加われば、相当な抑止力って事か!」

「……桜花を……忘れないで!」

「おっ、悪い、悪い! そうだったな、風音さん! 不動種の中でも、結構な発言力と伝手を持つ桜花さんも、下手に敵に回せない相手だよな!」

「……うん……それで……いい!」


 俺らがここに集まってた意味って、そこで出てくるんだ!? まぁ今のイベントでの実績は間違いなくトップクラスだし、ゲームをしてるだけって見下してくる層もいるらしいから、そういう相手への牽制も兼ねてるんだろうね。


「……ベスタさん、荒事になりそうだったら、僕は離れててもいいかい?」

「あぁ、構わんぞ、ソラ。その場合は、桜花の樹洞の中へ避難しろ。近場にいる無関係な者達は、そちらへ誘導する手筈だ。その流れを作ってもらえれば助かる」

「……まぁ直接戦わず、その程度でいいなら、手伝うよ」

「悪いな、事後承諾で。中々、伝えるタイミングがなくてな?」

「いつも紅焔がしている事だから、気にしてはいないさ」


 そういう役割の話、俺も聞いてないんですけど!? あー、その辺の話が出来なかったのって、俺がスミと会ってて遅れたのとか、アイルさんの件でゴタゴタしてたせいだったりする? ……多分、その辺が原因だよなー。


「おっしゃ! 荒事だろうがなんだろうが、引き受けてやるぜ! 来いや、eスポーツ勢!」

「えーと、ギンさん? これって、何事も起きない方がいいんだよね?」

「そりゃ当然、その方がいいだろうが……アイルさんも知ってるだろ? eスポーツをしてるからって、普通にゲームを楽しんでやってる奴を見下す層がいるのはよ?」

「それは知ってるよ。うちの部でも、そういう人は入部テストで弾いたくらいだし!」

「弾いて、あれなのかよ!? 俺への敵意、半端なかったんだけど!?」

「うっ!?」

「……本当にテストで弾いて、あれか? ありゃ、俺から見ても、今挙げた見下すタイプの敵意だと思ったがな? アイルさん、少し色眼鏡が入ってねぇか?」

「うぅっ!?」


 とてもそうとは思えない反応だったよなー!? うちの高校のeスポーツ部の連中! まぁあいつらが仮にモンエボに来たとしても、『グレイ・コンテスタント』には加入禁止ではあるけどさ。


「それは……その……私が変な認識をしてたかもしれないから、改めてお姉……顧問の先生と一緒に聞き取り調査をしておきます! 必要があれば、その後に改善の反省会も行います!」

「……そうしてくれ」

「あの手の見下しは、俺も好きじゃねぇからな。ベスタさん、この『グレイ・コンテスタント』への加入基準は、俺らで決めていいのか? 無条件で受け入れろ……って訳でもねぇよな?」

「あぁ、それは結成メンバーで相談して決めてくれ。もちろん、無条件で入れるのでも構わんがな」

「了解だ」


 ふむふむ、その辺の裁量は結成メンバーに委ねられるんだね。まぁギンなら無責任に誰でも加入可能にはしないだろうし、レナさんもアイルさんを結成メンバーから外すのも検討してたくらいなんだから、無条件はまずあり得ない。

 レナさんとギンがいるなら、その辺は心配要らなさそうだね。まぁそれで逆上するようなのが出たら、俺らが実力行使で排除すればいい訳だ。


 あー、赤の群集でウィルさんがリーダーとして出向しているのは、その辺に理由があるのかも? 赤の群集は過去に荒れた経験があるんだから、変に荒れる要素は排除したいはず。だから、加入条件を設けて、選定するつもりでいるのかもなー。


「スケ、お前は黙ってろよ?」

「……仕方ない。今回は、ギンの指示に従おう」

「……おい、不気味なくらいに素直に言うことを聞くな!?」

「僕も、少し反省したのさ。自身よりも遥か高みにいる、師事したくなるような相手と出会った事でね。僕はまだまだ甘い。それを痛感したからこそ、初心を思い出そうと思ってね」

「あー、そうかよ。……ベスタさん、なんかうちのアホに気に入られたみたいなんだが……大丈夫か?」

「別に問題さえ起こさないなら、特に俺からは何も言わん。灰の群集は、基本は自由が方針だからな。だが、『自由』と『好き勝手』を履き違えるなよ?」

「あぁ、了解だとも! 僕らが、無秩序にならないようにまとめ上げてみせよう!」

「……この名前で自信満々に宣言されても、不安しかねぇ……」


 あー、うん。そのギンの気持ち、よく分かる! スケって略して呼んでるけど……略して呼ぶ事自体は、そう珍しくはないけど、元が『スケコマシ』だもんな。いやまぁ、ネタ的な名前の人もいるし、その一種だと思えばまだセーフか? 食べ物の名前の人だっているんだし、セーフなラインだと考えよう!


「たっだいまー! 例のサイト、公開してきたよ。それと、事前に頼んでおいた伝手で、もう拡散も始めてもらってるから!」

「よくやった、レナ」

「レナさん、その伝手って何!?」

「『ナチュラルポート』のものをちょちょいとねー。自分で言うのもあれだけど、最盛期ほどではないけど、今でも『ナチュラルポート』にもアクセスは結構あるからさ! それと、その時に繋がりが出来て、今オンライン版をやってる人達に協力してもらって、一気に拡散をねー? あ、『モンエボの絶景景色百選』の方からも拡散してもらってるから!」

「とんでもないな、それ!?」


 オフライン版でのトップクラスのアクセス数を持っていたファンサイトの2つが、今回の件で制作と情報の拡散を担当してるって、異常な事だよな!? ライブラリが作ったあの怪しいサイトの影響力を、塗り潰すには十分な効果は出そうだ!


「……ギン、今のは何がどう凄いのか聞いてもいいかい?」

「あー、格ゲーでも初心者入門のサイトとか、上級者向けの交流サイトとかあるだろ? それのモンエボ版のトップ2つのサイトが、今挙がった2つだ。その片方の管理人が、レナさんだな。上級者向けの方な」

「っ!? なるほど、レナさんからも学べる事は多そうだ。色々とご教授下さい、リスの師よ!」

「なんか様子は変わったけど、このノリも別の意味で嫌なんだけどー!?」


 レナさん、ご苦労様です! いやー、本当にスケって変な人だね。でも、変な方向性は少し変わったみたいだし、こういう感じなら害にはならなさそうだね。



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