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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第41章 イベントの3日目

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1612/1633

第1612話 それぞれの様子


 俺らの担当の、水属性のコケの撃破は簡単に終わった。まぁ簡単で済んだのは、色々と下準備を済ませていたからであって、それなしで挑んでいれば……。


「……少し、水属性への警戒に意識が行き過ぎてた?」

「まさか、ガッツリと毒を使ってくるとは……。そっちへの警戒、すっかり忘れてた……」


 彼岸花さんの言う通り、水にばかり気を取られていたのはミスだった。コケの弱点として、腐食毒や溶解毒が筆頭に出てもくるから、コケ自身がそれを使うという視点も抜けていたっぽいなー。

 てか、普通に準備せずに相対していたら、相当ヤバかったんじゃない? 水の中にいるから火で燃やしにくいし、毒持ちなら耐性も同時に持ってるから……弱点が弱点としてまともに機能しないって可能性が高かったかも!?


「何をやってるんですか、ケイさん?」

「いやいや、見落としてたのはジェイさんも同じだよな!? ここで、実は気付いてたけど、あえて言わなかったってのは共闘としては逆効果だしさ!?」

「ま、そりゃケイさんの言う通りだわな? ジェイ、弄るにしても、そこは自分にも返ってくるんじゃねぇか?」

「……それもそうですね。まぁ改めて考えてみると……コケの弱点となり得る、火と毒への対策持ちというのは、相当凶悪な構成ですし……運営が用意した個体なら、相当嫌らしいものを用意してくれたものですよ!」

「あー、それは同意! 『百鬼夜行』がいたから、あっさりと終わったけど……真っ向から戦うとなると、ゾッとするわ!」


 『刻浄石』で半覚醒にしても、赤の群集の個体だったしさー。全然、楽になってねぇの! プレイヤー同士だと群集間に敵対感って、システム上の敵味方みたいな区別でしかないけど……NPCの視点からだと、明確な敵対関係なんだよなー。

 あ、今更だけど、黒の異形種達のAIと半覚醒のAIって、質としては近いのかも? 半覚醒と黒の異形種での対話なんてのも発生してたし、演出上で必要になってくるのかもね。


「ふふーん! 何はともあれ、ここは私達の勝ちで終わり! 問題は、他の2ヶ所だよねー!」

「……負けるとは思わないけど、どのくらいかかるかによる?」

「少なくとも、ここよりは時間がかかるだろうな」

「だろうなー」


 ベスタが率いている広間でのゴマタノオロチ戦と、レナさんが率いている縦長の空洞での風属性のドラゴン戦は、今まさに戦闘中のはず。予想通り、湖関係のフィールドボスが地下湖に引き寄せられたんだし、多分どっちも予定通りだとは思うけど……。


「カマクラさん! 他の2ヶ所の情報を教えて下さいなー!」

「あ、はい! ちょっと流れてくる戦況情報が混ざってるので、整理してお伝えしますね!」


 ハーレさんが尋ねた相手が、俺らの担当の地下湖での伝令役をになってくれているペンギンのカマクラさん。氷の操作Lv10持ちで、守りに徹するのには自信があるという話。ただ、戦闘での攻撃には自信がないそうで……折角のLv10のスキルがあっても、運用し切れるかは扱う人次第っぽいねー。

 まぁ必ずしも戦闘に使う必要はないし、雪山支部の人だから、雪山ではかなり便利に使ってるそうだけどなー。まぁこの辺は、人それぞれなとこだよね。


「えっと、とりあえず、どちらも予想通りの場所に『瘴気の転移門』が開いて、広間にはゴマタノオロチが、縦長の空洞には風属性のドラゴンが出現したそうです!」

「おぉ! ちゃんと予定通りなのさー!」

「そこはホッとしたかな?」

「大前提の部分が、間違ってなくてよかったよ」


 それを前提に戦略を組み立ててたから、そこが崩れれば……一気に動きが崩れるもんなー。でも、予想が当たっていたなら、やっぱりここの洞窟は、3体のフィールドボスを引き寄せる為に用意されたギミックだったか。


「あ、こちらの結果は報告しましたよ! それに関して、ベスタさんからの伝言です! 『よくやった!』だそうです!」

「『どういたしまして』って伝えといてくれ!」

「はい! 分かりました!」


 ベスタが負けるとは欠片も思っていないから、急かすような言葉は不要。それに、一応どういう作戦で進めるかは聞いてるし……これがギミック戦ならば、俺らにとって有利な戦場に引っ張り込んだ時点で、そう苦戦もしないはず。


「……ベスタさんと……レナさん……どっちが……先に終わる?」

「……聞いている作戦から考えると、レナさんの方が先だろうな。順当に進めばだが……」

「レナさんの方は、風属性のドラゴンを地面に叩き落として、チャージ攻撃で袋叩きの予定ですしね」

「考える事が、地味にエゲツねぇよな、あれ」


 前に海で待ち構えて、海流の中にいる人をぶった斬ってた斬雨さんが言っていい言葉なのかは、ちょっと疑問が残るけども……まぁそこは気にしないでおくか。


「あれ、風雷コンビ頼りなんだよね? 大丈夫なの?」

「……喧嘩が多いと聞くから、少し不安」

「相当な実力はあるとも聞くが……黒の異形種達を『邪魔だ!』の一言で、空洞から追い出したのは、大丈夫なのか?」

「そこは、大丈夫だと思うぞ。外でも、あの風属性のドラゴン相手に2人だけで足止めしてたんだしさ」


 移籍してそれほど経ってない曼珠沙華にとっては、風雷コンビが不安要素になるというのは分からなくもない。でも、あのコンビの連携は……おそらく、モンエボの中でも最上位のもの。

 1人ずつでの戦闘力も高水準だけど、あの2人が真価を発揮するのはコンビで連携して動く時だ。そして、それを活かす為に必要だからこそ、レナさんは風雷コンビの黒の異形種達への『邪魔だ』という発言を受け入れたんだろう。


「その辺は、本当にただの杞憂のようです! 作戦通り、風雷コンビが風属性のドラゴンの両翼を掴んだそうです! これから皮膜を破りに動くようですね」

「わっはっは! やっぱりあのコンビはすげぇな!?」

「風属性のドラゴンを直接、捕らえに行くというのを聞いた時は驚いたけどね……」


 紅焔さん達は驚いているけど……風雷コンビなら、あの縦長の空洞で自由に飛び回るのは、そう難しくはないはず。下手すると、空がメインの戦場にしている飛翔連隊以上の機動力があるんじゃね?

 作戦としては、風雷コンビが風属性のドラゴンを撹乱して背後を取り、それぞれ1人ずつが片翼を脚で掴んで動きを止めさせ、ドラゴン……今回は西洋系の龍だから、皮膜を破って飛行能力を奪うのが狙いなんだよな。


「っ! ドラゴンの両翼の皮膜、破るのに成功です! 風雷コンビが、最上部まで引っ張り上げてから叩きつける準備をしていますね!」

「よし、やっちまえ、風雷コンビ!」

「ねぇ、辛子。僕らで同じ事、出来ると思う?」

「俺らは小回りが効くが……あのドラゴンより遥かに小さいからな。完全に同じ事は難しいだろうよ」

「あの巨体で、あの空洞の中でそれだけ翻弄するのは……あのコンビだからでしょう」


 いやはや、それはまさしくライルさんの言う通り! 風雷コンビ……それもドラゴン2体だからこそ、出来る事!


「この後、Lv2以上のチャージ攻撃を叩き込みまくる予定だよね?」

「変に狂わなければ、その予定かな!」

「今のところ、順調なのさー!」


 まぁ相手も格上のフィールドボスだ。そのままあっさりと仕留めれるとも思わないけど、風雷コンビが捉えられるのなら、問題はないはず。気になるのは……こっちだな。


「カマクラさん、ベスタの方はどうなってる?」

「リーダー……ベスタさんの方も順調です! 予想通り、ゴマタノオロチは小さくなっていますし、毒攻撃を続ける事で『癒』属性に固定させるのには、成功しているようです!」

「あれ、上手くいってるのか!」


 フィールドボスだから、毒が効かない可能性もあるかと考えてたんだけど……意外とそうでもなかったっぽいね。『癒』属性って基本的に自己回復がメインらしいから、人気ないんだよなー。PT単位で動くのが基本だしさ。

 まぁプレイヤーからの人気はともかく……1つの頭に固定出来ているのは大きいはず。


「毒自体は入ってないそうですけど、毒を防ぐ為に『癒』属性にして弾いているみたいです! 他の頭がメインだった時には、毒が入ってたそうなので!」

「あー、そういう感じか」


 ふむふむ、毒持ちの耐性とは違って、ゴマタノオロチ自体には耐性がない? いや、『癒』属性の頭になってない時は、その属性の真価が発揮出来てないって可能性はありそうだな。

 5つある頭の特徴を全身に広げるのがゴマタノオロチの大きな要素だから、やっぱりどれかの頭に固定化するのは有力な作戦だったか。毒自体が効かないのは、この場合は特に問題ないしなー。重要なのは、変化させない事だからね。


「空洞の方で浮いた『百鬼夜行』の空中戦力が、思った以上にゴマタノオロチのHPを削ってもいるそうです! 『癒』属性での自己回復の回復量を上回る攻撃になっているので、優勢ですね!」

「おぉ!? それはナイスなのさー!」

「そこは、風雷コンビの思わぬ誤算かな?」

「いや、案外誤算でもないかもしれんぞ? あの空洞は、大勢で空中戦をするには決して広いとは言えないからな」

「アルさん、それって……元々、空洞の黒の異形種達は、他へ移すのが正解だったって事?」

「あくまで、可能性の1つではあるけどな」

「言われてみれば、確かに筋は通りそうな話かな?」


 あー、まぁあの空洞にも結構な数の黒の異形種がいたもんなー。風雷コンビが飛びやすくするように、広間の方へと移動させたけど……その行動が上手く噛み合ってる状態になってるんだね。


「っ! 空洞、ドラゴンが地面に叩き落とされました! かなり、HPを削れたようです!」

「おっし! 風雷コンビ、よくやった!」

「……状況が見れないのが、少し惜しいな」

「……中継は……出来てないから……仕方ない」


 十六夜さんの気持ちは分かる! 分かるけど、待機スペースがそう多くないのと、『百鬼夜行』を戦力に組み込んでの作戦だから、不用意に人を増やせられなかったんだよな。

 だから、伝達役のカマクラさん達以外で、今の洞窟の中にいるには、各場所に連結PTが1つずつ。それ以上は邪魔になると、ベスタもレナさんも……もちろん俺も判断したからなー。


 『百鬼夜行』がいなかったのなら、もっと人数を増やしてもよかったんだけど……まぁ今回は、安定化した黒の異形種達がどれだけの戦力になり得るかって確認でもあるからね。予想以上に、かなりの戦力になってるっぽいなー。ただ、地形に合わせて配置は重要になってきそう? 空洞の状況を聞く限り、単純に多ければいいって話でもないし……。

 一応、万が一にでも読みが外れ過ぎた場合、立て直しの為の予備戦力として、それぞれに1つの連結PTが通路で待機はしてるけど、そこの出番はなさそうか。それくらい順調過ぎるほど、順調だね!


「空洞、チャージでの一斉攻撃が始まります! 残りHP……6割……5割……4割! どんどん削れています!」

「ふふーん! どんどん削っちゃえー!」

「……チャージ系応用スキル、Lv2以上の威力は凶悪!」

「白の刻印で威力強化もしているんだろう? 流石に格上のフィールドボスだろうが、その連続攻撃は痛いだろうよ」

「だろうなー!」


 チャージを妨害されず、風属性のドラゴンを飛べなくして、確実に当てられる状況を作るのが必須条件だけど……それはどうやら上手くいったか。ははっ! レナさんはLv3の重脚撃を持ってるし、そっちは更にエゲツない威力をしてるだろうなー!


「レナさんのトドメが入りました! 風属性のドラゴン、撃破完了です!」

「おし! レナさん、ナイス! あと、残るはゴマタノオロチ1体だな!」

「そうなりますね! ゴマタノオロチは少し長期戦になりそうですが……っ!? リーダーが動きました! これは、氷属性の纏属進化!?」

「ちょ!? え、それ、もしかして純結晶の方を使ってる!?」

「……見た目が普通の纏氷と違うようなので、どうやらそのようです! 大型化もして、『氷爪凍連舞』を発動してゴマタノオロチの頭を氷漬けにして回って……あ、朦朧と凍結が入ったみたいです! どんどん動きが鈍って、一気にHPの減りが早くなったそうです!」

「あー、頭が多い分だけ、そこは弱点にもなるのか……」


 頭を冷やした挙句、その衝撃で朦朧にもして、回復そのものを鈍らせたか。いや、待て。そんなの、『癒』属性があるのに――


「……『癒』属性で……防げ……なかった?」

「いえ、ベスタさんが動く直前に、毒攻撃の停止指示が出ていたそうです! それで、ゴマタノオロチが『突撃』に切り替わった瞬間を狙ったみたいですね!」

「……ベスタさん……やるね」

「わざと、切り替えるタイミングを作ってたかー!」


 そういう動きをするって事は、何に切り替えたかによって追撃方法を色々と考えてた可能性があるな。『樹』に変わってたら火とか海水、『土』に変わってたら風、『牙撃』なら……この場合は今のと同じかな?


「昇華魔法、連発がきます!」


 カマクラさんのその発言と同時に、爆発音が響いてきた!? これ、スチームエクスプロージョンか!? いや、爆音ならエクスプロードでもあり得……って、もう一発も爆音がした!? 連発って言ってたし、このまま仕留め切るつもり……って、また1発!?


<命名クエスト『命名せよ:名も無き未開の山岳』を開始します>

<本クエストは現在該当エリアに滞在中のプレイヤーが対象になります>

<以下の選択肢より、30分以内に好きなものを選んでください。一番多かった選択肢が新しいエリア名となります>


【命名候補】

 1:リムネー山岳

 2:スルス山岳

 3:ソルジェンテ

 4:大河の水栓


 あ、命名クエストが始まった……って事は、山岳エリアの天然産のフィールドボスの撃破は完了か! おっし、案外あっさりと片付い――


「ケイ、やったかな! 命名クエスト、発生だよ!」

「だなー! これで、このエリアは俺らの勝ちだ!」


 命名クエストが始まったんだから、もうこの山岳エリアは簒奪クエストで奪う事は出来なくなったはず! なんとかここは守り切ったぞ!

 あー、実際のフィールドボス戦自体はあっけなく終わったけど、下準備が疲れたー! これ、簒奪クエストが進んでいる限り、まだ何度かする必要があるんだよな……。


 

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