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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第41章 イベントの3日目
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第1608話 準備を進めて


 俺らが受け持つ、まだ正体の分からない水関係のフィールドボスに『刻浄石』を試すのは確定。実際にどうなるかは分からないけど、天然のフィールドボスを弱体化させる為のギミックがあるのなら、その一環として成功する可能性は十分ある。何しろ、落下物の中から手に入るんだしね。

 まぁ俺らの方はそれでいいとして……。ゴマタノオロチは、ベスタが担当だけど、もう1体のフィールドボスであるドラゴンは誰が担当するんだろ?


「ケイ、残り1体のドラゴンの相手なんだが……指揮にレナを回したい。構わんか?」

「およ? ドラゴン戦の指揮、わたしなの?」

「あー、レナさんを俺らの方から抜くのか」

「あいにく、今は他に適任がいなくてな。蒼弦や肉食獣辺りに任せたいところなんだが……あの2人は、海岸の方へ行ってるからな」

「そっかー。確かにそれじゃ、任せられないねー」

「……なるほど」


 他にも指揮が出来そうな人はいそうなもんだけど……あー、今この場に来れる人ばっかじゃないのか。灰の群集の明確な弱点として、学生組が指揮系統の上にいるってとこがあるから、その影響が思いっきり出てそうだな。

 指揮が出来そうなオオカミ組の蒼弦さんや、モンスターズ・サバイバルの肉食獣さんは別の件で動いているから、こっちに引っ張ってくるのは難しい……。紅焔さん達でもいけそうだけど、俺らの戦力を入れ替えるのもよくはないか。……そういう意味では、1人で俺らに加わっているレナさんに役目が回ってくるのは仕方ないのかも?


「んー、まぁ状況が状況だし、仕方ないね! ベスタさん、メンバーの選定はわたしがやってもいい?」

「あぁ、そこは任せる。外で待機しているから、レナはそっちへ向かってくれ。そこにダイクもいるからな」

「およ? ダイクがまとめてるのはちょっと意外だね? うん、まぁそれは了解! それじゃケイさん、ここでわたしは離れるねー!」

「ほいよっと! そっち、頼んだぞ!」

「任せといて! さーて、あの風属性のドラゴンが相手なら、風雷コンビに働いてもらおっかなー?」


 そういや、風雷コンビの姿が見えなくなってたけど……どこかのタイミングで外で待機だと言われてたのかもなー。中継班のPTに入ってたっぽいし、今は中継班は俺らに着いてきてないしさ。


<レナ様がPTを脱退しました>


 ベスタも後で抜けるだろうし、俺らの連結PTには2人分の空きは出来るな。……これ、いっそジェイさんと斬雨さんを連結PTに入れておく方が安全なんじゃ?


「あ、ベスタさん! 行く前にちょっと確認! その大量の瘴気珠からの抽出は、もう始めちゃうの?」

「……そうだな。1時間あれば、準備には足りるか?」

「足りるというか、足らすしかないよねー。あんまりのんびりしちゃうと、晩御飯の時間帯に入っちゃうしさ」

「確かに、それはそうだな。ケイ達は、始めても問題ないか?」

「問題なし! 1時間あれば、なんとか対応も出来るはず!」


 地下湖の水を抜くって計画もあったけど、あれを実行するかどうかも考え直す必要があるよなー。黒の異形種達……『百鬼夜行』が戦力に出来るなら、尚更に!


「なら、もう開始しておくぞ。エメラルド、瘴気珠から力の抽出を任せたいが……その前に、最後の確認だ」

『……どのような事だ?』

「抽出が終わった後、お前達の復活に必要なだけの力は残るか? それと、この地の主達を呼び寄せるタイミングは、狙って行えるか?」

『……あまり、復活する余裕は残らんな。タイミングについては、狙って行う事は可能だ。……だが、あまり時間を置くと、予想外の事態が起きかねん』

「……何? 予想外の事態とは、どういう事だ?」

『正直、それだけの力が集まった際に、この地の主達が何をしてくるか分からないのだ。元々は、我らがその前に攻勢を仕掛ける予定だったから、気にしていなかったのだが……』

「……なるほど、何もせず傍観しているとも限らない訳か」


 ちょっ!? それ、任意のタイミングで呼び出せるって言えるのか!? 襲ってくるまでのタイムリミットがあるってように聞こえるんだけど!


「あのクモは、この地の主達に従っているという話は出ていたと聞いたが……その数を増やす可能性はあるか?」

『主達は、ここの力へと繋がっている。強大化した力を利用して、勢力を増やす可能性は……否定出来ん』

「要は、諸刃の剣になる訳か」


 ふむふむ、この瘴気の塊……というか、この地の大地の脈動がフィールドボスと繋がっているからこそ、引き寄せられるって話だもんな。その経路を通じて、他の黒の暴走種を支配下に置く可能性はあるんだね。


「そうなると、引き寄せられる状態になったら、即座にフィールドボスを呼び寄せないと危険って事か」

「だろうな。それまでに可能な限り、黒の異形種達の安定化の変質進化を進めていくべきか」

「ですよねー! 数、足りそう?」

「今も追加で掻き集めている最中だが、何とも言えん。だが、復活に不安が残るのなら、可能な限り安定化を進めた方がいいだろう。最優先は、逃げ場のない地下湖の中からか」

「あー、確かにその方がいいかも……」


 陸を動けるなら、最悪でも洞窟の外へと撤退させればいい。でも、地下湖の場合はそうもいかない。戦闘中でないなら、水ごと運んでしまえばいいけど……戦闘中にその撤退方法はリスクが大き過ぎる。

 『刻浄石』での半覚醒化が成功する保証もないから、万が一に備えておくのは必須だ。だからこそ、最優先は地下湖の中の黒の異形種達にするべき!


「はいはーい! そういう事なら、地下湖の水を除けるのはなし?」

「まぁ、そうなるなー。黒の異形種達が戦力になるなら、下手に除ける方がマズいし……」

「そういう事なら、了解だよ!」


 この場所自体が、元々有利になるように設定されているなら、変に弄らない方が良い可能性も高くなってきたしね。元々は、俺らにとって有利な状況を作る為の作戦だったけど、偵察に行ってきて正解だったかもなー。


「エメラルド、もう抽出を始めてくれ。俺らは、これから本格的に準備に入る」

『了解だ! では、始めよう!』


 さーて、大量にある瘴気珠から瘴気が抜かれ始めたけど……最終的には、500個の瘴気石が残るんだろうなー。まぁそこから上位変換をして、新たな瘴気珠を作ればいいだけか。


「ベスタ、この瘴気珠って所有者は誰になるんだ?」

「捨てた状態になっているから、誰の物でもないな。下手に誰かの所有物のままだと、この量はややこしいだろう?」

「あー、そりゃそうか」


 普段は捨てる事がないから、全然選ぶことのないインベントリの『捨てる』の項目がこういう時に役立つとはね。って、聞きたいのはそういう事じゃないんだけど……。


「全部、所有者の了承は得ての提供だから、消費する事への心配はいらんぞ?」

「……対価なしで、これだけの量が集まったって事?」

「思った以上に、落下物からの入手があったみたいでな? イベント進行の為の素材として、あっさり手放す奴は多かったぞ。ケイの普段の人柱っぷりが、功を奏した形だな」

「俺の人柱っぷりって、何!?」

「今更、その説明は必要か?」

「……いや、それは別にいらないや」


 うん、そういう言われ方にはビックリしたけど……心当たりはかなりあるもんなー。まぁリーダーであるベスタが呼びかけたってのも大きいはずだし、みんなが出し惜しみせずに動いてくれたのは素直にありがたい話だよね! 理由はどうあれ!


「さて、少し時間の猶予はあるとはいえ、のんびりはしてられん。ラジアータ、そこらに転がしている落下物を運んできてくれ。地下湖の方へ移動する」

「了解だ。あっちに持っていくんだな。『アースクリエイト』『岩の操作』!」

「はいはーい! ベスタさん、1つ提案! その大量の落下物の中に、フィールドボスが封じられてる可能性があるんだよね!? 地下湖まで持っていかず、ここで出るまで開け続けるってのはどう? それが出来るだけの人数、いるよね?」


 あ、そうか。外の湖では危険過ぎたから試さなかった方法だけど、呼び寄せる予定のこの洞窟の中でなら――


「それは俺も考えたが、却下だ」

「えー!? なんでさー!? 1体ずつ、確実に仕留めた方が良くない!? これの場合、『刻浄石』を使って半覚醒への検証もするんだよね!?」


 ベスタの事だから、考えなしに却下しているとは思えないけど……必ずしも、全てのフィールドボスを同時に相手にする必要はないはず。懸念点は……あー、なるほど。


「今、ここには戦闘要員じゃない人も大量に来ているからか?」

「ケイのその意見も1つの要因だが……水に関するフィールドボスだとしても、必ず水中でしか活動出来ないとは限らんからな。この場が有利な状況として働くのは、3体同時に撃破を狙う場合だろう」

「んー? それ、どういう事?」

「簡単な話だぞ、リコリス。有利な場所の3ヶ所は、それぞれ通路で繋がっているが……逆に言えば、プレイヤーが待機していられる場所はその通路しかない。自然とそこが守りの要になってくるから、分断は容易になる」

「ラジアータ、それくらい分かるから! 今も、それと同じように封鎖すればいいだけじゃん!?」

「そう出来ない、何かがあるという話なんだろう?」

「正解だ、ラジアータ。どうにも、翻訳機能を使った上でも、意思疎通が難しい黒の異形種の個体がいるようでな。操作系スキルで封鎖しようにも、侵食で強制的に解除される事がある」

「えぇ!? そんな事、してくるの!?」

「……それは厄介」

「確かに、それは面倒な状況だな」


 マジかー。てっきりここの黒の異形種達とは完全な和解が成立してるものだと思ったけど……あー、もしかしてエメラルドを連れ出していたのが原因だったりする? 多分、試したのって大半の黒の異形種を連れ出した時だろうし……。


「それ、エメラルドがいれば、どうにかなったりは……?」

「おそらく、無駄だろう。そういう個体が残って妨害するように、運営が意図的に設定しているように感じるからな」

「……ですよねー」

「だから、準備の最優先は黒の異形種達の安定化を狙い、変質進化を行っていく事だ。これを一定数進めることで、妨害が減る可能性は高い」

「あー、なるほど」


 運営が用意している妨害ギミックなら、それを解除する為の方法も用意されていると考えるのが当然の流れだもんな。意思疎通が正しく出来ていないのが問題なら、それを解決していけばなんとかなるという狙いか!


「はい! 妨害がなくなれば、先に水関係のフィールドボスを先にやる事は可能ですか!?」

「条件的には、大丈夫になりそうかな?」

「確かに、それなら不安要素は無くなるよね」

「そこは正直、時間との勝負だな。1時間以内に、どれだけ黒の異形種達の変質進化を進められるかにかかっている」

「あぅ!? やっぱり、そういう流れになるんだ!?」


 ハーレさんの狙いも分かるけども、それが実際可能かどうかは……時間との勝負か。どこまでやれば妨害行為がなくなるのかが分からない以上、実際にやってみる以外の選択肢はない。

 せめて、水関係のフィールドボスがどういう個体か分かれば、対策の取りようもあったんだけど……肝心のそこが不明なままだしなー。水中以外でもどうとでも戦えるような個体なら、地下湖から出られる方が厄介なんて可能性も……あるのか?


「あー、ちょい質問。水属性持ちで、陸で厄介なフィールドボスなんて存在する……?」

「何を言っている? その代表例は、ケイのコケだろう?」

「……へ? え、俺!?」

「それに関しちゃ、ベスタさんに同意だな」

「間違いなく、そうなのさー!」

「これ以上ない、説得力かな!」

「確かにケイさんは、そうだよね」


 ちょ!? みんな、どんどん納得して頷かないでくれない!? 俺、どういう風に思われてんの!?


「……もしくは、リコリス?」

「水中も陸地も、平気で行き来するという意味では、確かにそうだな」

「え、私もなの!? ケイさんのコケよりは、よっぽど倒されやすいはずだけど!?」


 あのー、リコリスさん、俺を見ながらビックリしないでもらえませんかねー? いやまぁ、言いたい事は分かったけどさ! ロブスター込みじゃなく、コケそのものが危険って事か。


「ベスタは、水棲のコケがフィールドボスの可能性があると睨んでるんだな?」

「あくまで、可能性の1つとしてだがな。一応、あの湖には水草や水棲のコケなんかが多くあるという目撃情報はあるんだが……ラジアータから報告を聞いた限り、それが無かったのが気になっていてな」

「はい!? え、そんな目撃情報があったのか!?」

「出てきたのは、ケイ達が戻ってくる寸前だったがな。その差異、無視する訳にもいかんだろう?」

「……確かに、その情報は無視出来ないなー」


 水棲のコケ……全くフィールドボスの候補としては考えてなかったけど、種族として存在するのは俺自身が知っている。問題は、活動範囲が水中のみに限られるのか、陸上でも活動出来るのか……。

 下手すると、湖から出られて増殖しまくって、手に負えなくなるなんて可能性すらあるのか! いや、でも焼き尽くすなり、溶解毒で溶かすなり……って、それは『百鬼夜行』がいるからやりにくいのか!?


「……って、あれ? もしかしてだけど、水中に留めておけば、『百鬼夜行』達に食わせて撃破なんて可能性もあり得る?」

「その可能性は、かなりあるだろうな。そういう可能性も含めて、地下湖が最優先だ」

「あー、なるほど!」


 そりゃ、思いっきり納得な話だね! 地下湖の中のいる黒の異形種は、魚やエビとかの水棲生物が元になっている個体ばかりなんだしさ。


「それに、飛翔連隊も万が一の時には対応がしやすいだろう?」

「わっはっは! いざって時は、俺らに焼き払えって話か! いいぜ、その時は全力だ! なぁ、ソラ!」

「それはいいけど……勢い余って、『百鬼夜行』まで燃やさないようにね。風音さんも、その時は力を貸してくれるかい?」

「……もちろん!」


 水棲の植物相手に、どこまで火が通じるかは分からないけども……まぁ全く燃えないって事はないはず。仮に種族がコケだとしても、そのコケが陸地由来なら、普通よりは多少燃えにくくても、燃えるだろうしさ。


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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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