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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第41章 イベントの3日目

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第1601話 洞窟の外へ


 黒の異形種達が俺達の移動に合わせて、後ろへ続々と着いてきて、どんどん数が増えている。……これ、ハーレさんが何気なく言った百鬼夜行って、あながち間違った表現じゃなくなってきてるよなー。


「ふふーん! 広間、到着! ササっと瘴気珠で、瘴気の塊を補充しちゃおう!」

「だなー。エメラルド、これって……用が済めば、フィールドボスを呼び寄せるのにも使える?」

『あぁ、それは可能だ。密度が違う物もあったが、あれも内包している力を引き出す事は可能だろう。私が抽出していくから、そこへ置いていってくれ』

「なら、あるだけ提供していきますかねー」


 今、集めている最中の瘴気珠500個は、あくまでここでのフィールドボスの呼び寄せに使う為のものだけど……他の場所でも同様の条件が出てくるはず。だから、余ったとしても問題ないっぽいね。

 流石に+17の瘴気珠の提供は、勿体ない気もしてくるけど……ここで俺が躊躇してたら、進みにくくもなるしね! という事で、瘴気の塊の前に+17の瘴気珠を置いていく! 他にも何個か持ってたから、それも含めて!


「……凄まじい量だな」

「……みんな……結構……拾ってた」


 みんなの手によって、次々と手持ちの瘴気珠が置いていかれている。……誰がどれだけ手に入れたかは覚えてないけど、落下物から結構手に入ってたもんなー。強化済みのもいくつかあるし、この量ならそれなりに補充出来るんじゃね?


『これだけの量を……ははっ、凄まじいな! では、抽出を始めよう!』


 エメラルドのその宣言と同時に、ズラッと地面に置かれた瘴気珠が浮かび上がり……瘴気の塊を中心にして、円状に並んでいく。ほほう? まさか浮くとは思わなかったな。


「おー! 瘴気珠から、瘴気の塊に、瘴気が移っていってるのさー!」

「まさか、瘴気の塊を消すんじゃなくて、強化する日が来るとは思わなかったかな?」

「あはは、確かにそれはそうだよね。今まで消してきてたのにね」


 サヤやヨッシさんの意見に俺も同意。イブキから情報を聞き出す目的で試してみた件が、こんな形で実現するとはなー。

 この強化へのデメリットが少し気になるとこではあるけど……中立の黒の異形種達の管理下にあるなら、リスクは低くはなるか? いや、安定化させた後なら、消滅させても問題はない? ……この辺は、まだなんとも言い難いか。


「およ? 瘴気が抜けたのが、地面に落ちていってるけど……完全に無くなりきってはないね? というか、思いっきり見覚えがある状態だよ?」

「……なるほど、瘴気珠が瘴気石へとグレードダウンするのか」

「……そう……みたい?」

『完全に全てを抽出するのは、出来ないのだ。いや、したくないというのが正しいか。それは、その存在を消し去る事になる』

「あー、そういう理由か」


 なるほどなー。自分達が消滅するのを恐れているくらいだし、何かを完全に消滅させる事への忌避感はあるんだね。瘴気そのものが、他のものを駄目にする性質を持ってるのに、皮肉なもんだな……。


「……そもそもの話なんだけど、エメラルド達はなんで存在出来てるんだ? 瘴気は、命を奪うだろ?」

『……それは、見方を誤っている。これは、ただの【陰】の力に過ぎん。だが、急激な【陰】へのバランスの変動は、大きく存在の安定を崩し……その身を自壊させる。我らは元より【陰】が多く……不安定な中ではあるが、一定の形を得た。それが我らだ』

「……へ?」


 ちょ!? なんか予想外の説明が出てきたんだけど、瘴気はただの『陰』の力!? でも、今の説明だと……これまで滅んできたのって、急激なバランスの変動が原因!?


『命は、全てが【陰】の力も【陽】の力も内包する。【陽】の安定した核を得た私には、それがよく分かる。我らが元の存在は、【陽】のみの存在。……それこそ、生命ではない。だからこそ、【陰】を内包する身体を欲するのだろう』


 これ、精神生命体の事を言ってるんだろうな。【陽】のみの存在……浄化の力そのものって話もあったし、普通の生命を超越した……それこそ、神と呼んでもいい存在なんだろうね。まぁこの辺は前々から、そんな感じの話はあったけどさ。


『さて、抽出はこれで完了だ。今で、この地の縄張りの主を呼び寄せるのに必要な量の5分の1といったところか』


<規定条件を達成しましたので、緊急クエスト【謎の飛行物の落とし物】が進行します>

<『黒の異形種の集会所』にて、瘴気の塊の強化が可能になりました>

<『黒の異形種の集会所』ごとに強化具合は異なりますので、ご注意下さい>


 ちょ!? ここで、クエストの進行のアナウンスが出るんかい! てか、イブキから吸い出した分は、これにはカウントされないんだね。


「ふむ、このアナウンスが今出るという事は……他ではまだ、この段階まで進行していないのですね」

「あー、まぁそうなるのか。ジェイさん、青の群集は他の場所で進めてる訳じゃないんだよな?」

「今は準備を進めている段階ですからね。むしろ、赤の群集が先に進めている可能性もあると思っていたのですが……ここが一番乗りですか」

「多分、そうなんだろうなー」


 黒の異形種の溜まり場……あー、正確な名称は『黒の異形種の集会所』か。まぁその場所ごとに個別にアナウンスが出るのなら、場所ごとに強化具合が別物だって表記は必要ないもんな。

 そういう表記が出たのなら、一律で全体に出たアナウンスだと思っていいんだろうけど……何も知らず、これだけ見たら意味不明だろうね。これだけじゃ、経緯がさっぱり分からん! まぁ追憶の実に、演出として追加されるんだろうけどさ。


「なぁ、ジェイ? このアナウンス、無所属の奴には届いてんのか?」

「……なんとも言えませんね。今回の緊急クエスト自体は、群集の縛りはありませんし……」


 うーん、斬雨さんが気になる理由も分かるけど、それこそ無所属の人に聞くしか確認のしようが……あ、今のイブキになら聞けるか! ……いや、知りたいのは、乱入クエストや簒奪クエストを積極的に進めてる人達の状態の方だから、イブキに聞いても意味はないか。


「ベスタ、その辺の情報は仕入れられない? ほら、オオカミ組の人のリアル知り合いの人経由でさ」

「タイミングがあれば確認はしてもらうが、流石にすぐの確認は無理だからな? 下手に動いて、勘繰られる方がマズい」

「……そりゃそうか」

「それよりも、瘴気の塊の補充が終わったなら、早めに偵察へ向かってくれ。情報を手に入れるなら、早い方がいいからな」

「ですよねー!」


 どうしてもエメラルドが瘴気を抽出するのに時間が必要だったから、決して無駄な時間だった訳じゃない。でも、それが片付いたんだから、いつまでものんびりしている訳にもいかないな。


「それじゃ洞窟の外に出るけど……エメラルド、黒の異形種達で、ここへ入るのを邪魔してるクモの排除は可能?」

『……あの、忌々しい奴か。いいだろう、その役目は引き受けた。我らの新たな門出だ。我らを閉じ込めようとしたものを、打ち破るぞ!』

『オォォォ!』


 黒の異形種達の声、まともな声になってないから、こうも大量に重なると不気味なんだけど……気合いが入ってるのは分かるんだよなー。まぁこういう風に任せられるのなら、任せてしまおう!


「さて、行きますか!」


 改めて、みんなを見てみれば、同意するように頷いている。まぁそれはいいんだけど……また、黒の異形種の数が増えてるなー。これ、一体何体いるんだか?



 ◇ ◇ ◇



<『黒の異形種の集会所』から『名も無き未開の山岳』に移動しました>


 エメラルド達、一部の黒の異形種達を引き連れて洞窟から脱出。俺らの方は、グリーズ・リベルテ、飛翔連隊、曼珠沙華、レナさん、風音さん、十六夜さんが戦力メンバー。おまけで、中継部隊とその護衛に風雷コンビ。

 ベスタは戦力の編成の為に残って、ジェイさんと斬雨さんは外の防衛戦力のところまで一緒の予定。ジェイさん、自分の身は自分の身で守るとか言いながら着いてきそうな予感がしてたんだけど、そこで留まるのはちょっと意外……。何か企んでたりしてない?


 そして、出てきたここのすぐ目の前には、閉じ込めるように生成された岩がある。これを退けないと、先に進めないな。

 俺らは外から入ってきたから、あのクモの仕業だと知ってるけど……何も知らなきゃ、単なる行き止まりだと勘違いしそうだな、これ。


『我らが力、見せてやれ!』

『オォ!』


 そのエメラルドの言葉に応じて、前に出たのは……骨のキツネか。ん? 瘴気が溢れ出して、肉体を形成……って、これは『侵食』か!?


「おぉ!? キツネが触れたとこから、瘴気が岩をどんどん侵食していってるのさー!?」

「これ、操作破りかな!?」

「前に、ケイさんが受けてたヤツだよね?」

「……だろうなー。これ、厄介なヤツ!」

「だが、今は味方だからな。岩の封鎖、破れるぞ!」


 あっという間に、クモが作り上げていた岩が崩れ去り、外の光が差し込んでくる。ははっ、アルも言ってるけど、これが味方とは……頼もしい!

 操作対象を強引に奪っていくから、Lv10の俺の水の操作でも対処が難しかったんだ。急にこんなものを仕掛けられたら、どうしようもないだろ。


 あ、あのクモ、岩の中から出てきた? ……なるほど、外と中、どっちに対しても岩壁を用意してて、その中に隠れていたのか。これ、外から見ただけじゃ分からんね。

 サヤは……うん、顔を背けている。まぁクモが苦手なんだから、ここからは無理に見る必要もないだろ。その為に、エメラルドに任せられるか聞いてみたんだしさ。


『やるぞ、皆の者!』

『オォォォ!』


 そのエメラルドの号令に合わせて、黒の異形種達……色々な種族がクモへ向かって迫っていく。それらが小型なリスやネズミ、蝶や小鳥……元が何かもわからない草花とかになるのは、まぁ単純に狭いからだろうなー。


「あ、ここからは普通に戦うのか」

「それでも、物量が違い過ぎるのさー!?」

「そういえば、この黒の異形種達はLvはいくらだ? 『識別』! このキツネは、Lv6か」

「こっちのイノシシはどうだろ? 『識別』! Lv12……結構バラツキはありそうね」

「みたいだなー」


 そんな流れでみんなで続々と識別をしていってるけど、上がってくる内容はLv1〜18の範囲。全部が全部、識別出来た訳じゃないけど……あっ、もうクモが倒された。


『我らの、勝利だ!』

『オォォォ!』


 危なげな様子もなく、あっという間の蹂躙劇が終わり、黒の異形種達は勝鬨を上げている。……この声、勝鬨でいいんだよな? うーん、全個体が言葉が分かる訳じゃないから、この辺は微妙!


「よーし、戦闘終了! 湖はこの滝を上がって、川沿いに進めば辿り着くけど……一応、わたしが先導するから、着いてきてねー!」

「ほいよっと! みんな、レナさんに続け!」

「ふふーん! 湖、行っくぞー!」

「リコリス、先行し過ぎるな。何が起こるか分からないだから、固まっておけ」

「……その方が、安全」

「大丈夫、大丈夫! ここはまだ、青の群集が展開してる防壁の中なんだから、何も起きないって!」

「……本当に、平穏に済むものか?」

「……状況……次第?」

「わっはっは! なんでも来いやー!」

「いやいや、紅焔、何でもは困るから! ソラもいるのに、他のプレイヤーに来られたらどうすんのさ!?」

「その時は、その時だな!」

「その場合、僕は離脱するからね」


 それぞれに自由な返事があるけど……俺らはアルに乗って移動開始! うっわ、洞窟の外に出て浮いてみて、黒の異形種達が凄い光景になってんなー。

 滝の上に登る為に岩の足場を作ってたりするし……こりゃ、思った以上に戦力になりそうだね。何気に、黒の異形種って結構良いAIを積んで動かしてたりする?


 なんとなくだけど、隣に陣取ってる金属のコウモリのエメラルドとの会話って、いったんとの会話のスムーズさみたいなのを感じるだよなー。

 この辺、重要なNPCのどれにも感じる事だけど、こっちの言葉に応じたちゃんとした会話が成立するんだよね。間違いなく、定型文でしか返せない単純なAIではないか。

 あ、そうだ。これ、気になってたから聞いてみよ。いったんと会話してても、たまに重要情報が漏れ出てくるんだから、意外と答えが聞けるかもしれないし。


「エメラルド、ちょっと気になるんだけど……翻訳が出来ている相手と、そうじゃない相手の違いって分かる?」

『……おそらくだが、それは我らの不安定さが問題なのだろう。意思を発するのが苦手な者が、一定数、存在しているのだ』

「それって……黒の異形種同士でも、対話が難しいって事?」

『いや、意思疎通は出来るのだが……言語化が難しいと表現すべきか? 意思そのものは、頭の中に流れ込んでくるのだ。いや、頭ではなく、魂に直接とでの言うべきか……』

「魂に直接……ねぇ?」


 いまいちピンと来ない表現だけど……そもそもエメラルドも、今でこそ言葉を直接話しているけど、元々は頭の中に響くような内容だったっけ。


『我らと、そなたらでは本質的にコミュニケーションの取り方が違うのだろうな。だからこそ、この補われた身で、この言葉を扱えるのは大きいが……私からも少し聞きたい。この力は……一体何だ? これは、そなたらの【陽】の力ともまるで違うもの。【陰】の力を使って動いているようだが……本質は【無】に近いぞ?』

「あー、何かと言われると……ほら、あれ。空から降りてきてるあれらの素材?」

『っ!? 確かにあれらもまた何も感じぬ【無】だが……いや、だからこそ、反発せずに馴染むのか』


 なんだか急に出てきた『無』という要素だけど……それって機械の事なのか? まぁ機械だから、生命もなのもあったもんじゃないし……生命には魂が必要だって話もあったっけ。要は、あのUFOは魂の『無い』空っぽな物って事か?


「あー、ちなみにだけど……クオーツも、元はあれらと同じ機械だぞ?」

『なんと!? 守護者もなのか!?』

「まぁ今、降りてきてるのとは、完全に敵対関係になってるけどなー」

『……なるほどな。となれば、我らにとっても敵となり得る訳か! 我らと同じ【陰】の力を操る者として、意思を感じれば接触も考えていたが……それはやめておいて正解か』

「はい!? え、あれらと接触するのも考えてたのか!?」

『我らが意思を示す為に……な。だが、あやつらの意思がどこにも見えないから、危険視はしていた。捕まってもいたからな』

「……なるほど」


 サラッと出てきたけど、黒の異形種と機械人のUFOが接触するってパターンもあったんかい! いやいや、そのセットはちょっと色々とヤバい気がするんだけど……実は、乱入勢以外で、そんな展開が進んでる場所とか出てたりしないよね!? ……現状では確認する手段がないし、ちょっと不安になってきた。



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