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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第6章 別の初期エリアへ行こう
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第141話 進化の分岐点


 日曜の朝、特に寝坊することもなく目が覚めた。梅雨だから今日もシトシトと雨が降っていて若干薄暗い。まぁ季節的なものだから仕方ないな。さて、朝飯食って色々片付けたらログインしようかな。


「兄貴、起きろー!」

「……起きてるから、部屋に突撃してくるな!」


 そんな風に寝起きの頭でのんびり考えていたら、いつもの如くノックもなしに晴香が俺の部屋へ突撃してきた。兄妹だって事が分かってから、いつになく躊躇がないな! ……この辺は、空元気で動いてた間の反動か……? まぁ昔からだったような気もするけど。


「サヤとヨッシがもう待ってるから、兄貴早く!」

「ちょっと待て!? もう2人ともやってるのか?」

「アルさんももういるって! 兄貴が一番遅いよ!」

「……マジか」


 現在時刻、朝の8時。……そもそも日曜だし、言うほど遅いか? もう既に俺以外集合済みとはみんな早いこと……。それならさっさとログインするか。だけど……。


「せめて朝飯くらいは食わせてくれ……」

「早くしてね! なんかヨッシが兄貴に確認したい事があるって言ってるし!」

「……俺に? なんだろう?」

「それじゃ先に行って待ってるねー! 場所はいつもの崖下!」

「おう、分かった」


 ヨッシさんが俺に確認したい事がどんな内容なのか気になりつつも、ササッと朝飯を食べて、色々と片付けていく。……多少待たせることにはなるけど、これくらいは勘弁してください。そもそも集合時間決めてなかったんだし、遅刻じゃないもんな。



 ◇ ◇ ◇



 慌ただしくも朝のあれこれを片付け、ゲームへとログインしていく。日曜日なので割と適当ではあるけどね。そしていつものようにログイン場面へとやってきた。いつもの様にいったんがいて、その胴体には『仕様変更により本日からログインボーナスを配布します。受け取りはいったんから!』となっている。なるほど、ログインボーナスの受け取りはいったんからか。


「おはようごさいます〜! 今日もログインありがとね〜」

「おーおはよう」

「あれ? なんか疲れてる……?」

「あーリアルでちょっと急かされてな」

「君も色々あるんだねぇ〜」

「まぁな……」


 まぁ多分いったん程ではないだろう。……流石にメンテナンスが必要な程バグったりする訳はないし。したくもないし、リアルでそんな状態だとゲームしてる場合じゃないだろうけど。


「とりあえず、はいこれ〜。本日分のログインボーナスの『進化ポイントの実:灰の群集』ね〜」

「……ん? 木の実なのか?」


 目の前に現れたのは赤、青、灰と徐々に色を変えていく不思議な木の実が1つ。これがログインボーナスって事なのか? あ、消えていった。


「インベントリに送ったからゲーム内に入ったら今日中にアイテムとして使ってね〜。明日には今日の分は無効になるからね〜」

「あ、そういう事か。ここで直接付与する訳じゃないんだな?」

「仕様上の問題でここでは直接のポイント付与は不可能なんだ〜。課金絡みでセキュリティ固めてるから、下手に突貫ではいじれないってさ」

「あーそういう理由……」


 つまり、単純に大人の都合というヤツらしい。まぁ取り忘れもなくなるし、これくらいなら全然問題ない範囲か。……使用し忘れには気を付けないと。


「そういや、2枠目作ったらそっちの分も貰えるのか?」

「それはもちろんですとも〜」

「2枠目に1枠目の分の実を移す事は?」

「流石にそれは出来ないかな〜」

「そりゃそうか」

「そうですとも〜!」

「それじゃ待たしてるから、そろそろ行くよ」

「はいはい〜。今日も楽しんでいってね〜!」

「おう」


 とりあえず仕様変更になったログインボーナスを受け取り、ゲームへと移っていく。なんだかんでいったんの居るこのログイン場面って凄い重要な場所なんだな。連絡事項に、トラブル窓口、アイテム配布、それに進化と過去イベントの再現とかもか。ゲーム内ではやりにくい事をそのまま詰め込んでる場所がここなんだな。

 ……弄りすぎていったんが本格的に壊れたら運営もプレイヤーも困りそうだ。って言っても俺は掲示板は見てるだけだから、なんとも言えないけど。



 ◇ ◇ ◇



 ログイン場面の事をあれこれと考えながらもゲーム内へとやってきた。

 今日は昼の日で雨も降っていないようなのでエンの枝の隙間から差している木漏れ日が良い感じである。昼間に見上げるエンも中々に雄大で神秘的なものがあるな。夜の光って神秘的なのもいいけど、昼は昼でじっくりと見ていれば良い感じの雰囲気だ。


 景色も堪能したし、忘れないうちにログインボーナスを取得しておこう。インベントリからさっき貰ったヤツを取り出してっと。お、灰色が強くなって実が砕けていくね。


<『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>


 そして砕け散った実から灰色の光が溢れてコケの中に取り込まれていく。ほうほう、こういうエフェクトありですか。これで今までの毎日取得分相当のポイントゲット! うん、これは楽でいい。2枠目を作るとなれば今まで忘れやすかったものを更にもう1キャラ分やる必要があったって事だし、これは良い仕様変更な気がする。


 さてとそれじゃみんなと合流だけど、ついでに発光のLv上げをしながら行きますかー! 移動は……土の操作の応用パターンでいこう。まだこれはアルには見せてなかったはず! 魔法産の小石でも出来るか試してみよう。


<行動値上限を3使用して『発光Lv3』を発動します>  行動値 45/45 → 42/42(上限値使用:3)

<行動値1と魔力値4消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 41/42(上限値使用:3) : 魔力値 72/76

<行動値を2消費して『増殖Lv2』を発動します>  行動値 39/42(上限値使用:3)

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『増殖Lv2』が『増殖Lv3』になりました>


 お、増殖のレベルが上がった。って、喜んでる場合じゃない。魔法産の小石に増殖は有効なのは分かったけど、操作しなきゃしばらくしたら消滅してしまう。


<行動値を4消費して『土の操作Lv3』を発動します>  行動値 35/42(上限値使用:3)


 よし、これで問題なし。操作感は土の操作の方が水の操作よりLvが低いから、少し滑らかさが足りないけど、充分実用範囲だな。……こっちなら地味に体当たり攻撃とか向いてるんじゃないか……? 

 ……やっぱり同時発動を可能にするスキルが欲しいなぁ。確か昨日の戦いでルアーが襲撃してきた時に明らかに連続ではなくて同時発動してるっぽい攻撃もしてた気もする。それに『並列制御』とか言うのも聞いた気が……。未成体に進化すればあるんだろうか。

 まぁいいや、とりあえずみんなと合流しようっと。



 そして宙に浮かぶ小石を使って移動していく。流石に植物系のプレイヤー達が同様の移動方法を使っているのが増えてきた為、驚かれる事はなくなってきているね。アルの馬車的な移動方法も広まっているようで、似たようなのが時々結構な勢いで通っていく様子も見られる。根の辺りが白っぽいので滑るために纏氷を使っているみたいだ。

 そして初めは道なき道だった場所も少しずつ踏み固められて道になっている気もする。動物系のプレイヤーは歩きやすいように設定されてる場所を通るから、こうやって時間と共に少しずつ変わっていくのかもしれないな。


 そんな風に変わってきている森林深部を通り、いつもの崖下へと辿り着く。ハーレさんが言ってたようにみんな勢揃いしていた。……そしてみんな泥だらけである。……なぜ?


「おーい、お待たせ!」

「あ、ケイ。おはよう」

「……なんか見るたびに移動手段が違うのは気のせいか……?」

「アルさん、そこは事実だよ! あれは水が小石に変わっただけだよ!」

「あ、草花系のプレイヤーの移動手段の方か。土魔法と土の操作があるんだからそりゃ出来るか」

「まぁそういう事だ。どっちが良いかを試してるとこ」

「なるほどな」


 使い勝手は水球移動と比べれば一長一短だな。同時操作数がまだ土の操作の方は2個だから、水の操作には手数で負ける。だけどこっちなら直接体当たりをして土の操作を切っても、魔法産の小石が消える前に増殖を使えば攻撃には移りやすい。……レベルが同じになったら土の操作の方が良くないか?


 まぁその辺は後々でいいか。みんな一体何時からやってるんだろうか?


「それにしてもみんな早くないか?」

「ごめんね、ケイさん。私は普通にケイさんが起きてログインするまで待ってるから別にいいって言ったんだけど、ハーレが止まらなくてね……?」

「あー、別にいいよ。ちょうど起きた直後だったしな。ちなみに何時からやってるんだ?」

「私とヨッシは6時くらいかな?」

「そうだね。そんなとこ」

「……随分早いんだな」


 まさかサヤとヨッシさんが朝6時から既にやっていたとは思わなかった。いや、別に何時からやってても問題はないんだけど、予想外の時間帯ではある。……え、サヤとヨッシさんってそんな時間に待ち合わせしてやってたのか?


「あ、私は昨日からサヤの家に泊まりに行ってるからね。普段は流石に6時からはやらないよ」

「それで今朝は私もヨッシも妙に早く目が覚めちゃって、寝直すのも勿体無いからそのままやろうって事になった感じかな」

「早かったのはそういう理由か」

「うー! 私もそのお泊り会、参加したかった!」

「ハーレさん、距離的に無理な事を言うのはやめとけー」


 不思議に思ってたらヨッシさんが説明してくれた。なるほど、そういう理由で2人とも早くに目が覚めて寝直すのが勿体無いって事なら納得だ。って事は昨日の時点でヨッシさんはサヤの家からログインしてた訳か。まぁホームサーバーのゲスト機能を使えばそれでも接続出来るもんな。

 あとハーレさん、夏休みみたいな長期休暇なら可能かもしれないけど、流石に普通の土日では東北地方と四国地方では遠いから無茶な事を言わないように。


「んで、アルとハーレさんは?」

「俺もハーレさんも大体7時くらいだな」

「少し前まで池作りしながら雑談してたんだよー!」

「あー、だからみんな泥だらけなのか。……ん? 操作スキルを使ってなんで泥だらけ?」

「あ、それは俺が水分吸収でケイみたいにインベントリに水を保管出来るようになったからだな。今はハーレさんの泥団子をみんなで量産してたとこだ。池作りは俺が『地形を弄るモノ』を取得した時点で中断したからな」

「あーなるほどね。え、でも量産ってどうやるの?」

「こうやるの。アルさん!」

「ほいよ! 1回水を少しかけて土を柔らかくしてから『根の操作』! そんでもって、抉り出したら更に大量の水をぶっかける!」


 アルが岩の少なそうな地面に根を突っ込み、少し水分を含ませて柔らかくした土の塊を抉り出し、更に水分を追加して柔らかい泥にしていく。ただし、形が崩れない程度の固さは保持している。そういやアルも『水分貯蔵Ⅰ』ってスキルで俺と同じ事が出来るようになったんだっけ。そうか、こういう使い方もありか。


「次は私かな。まず大雑把に形を整えてから、『魔力集中』『爪連撃』!」


 そして大雑把に歪な直方体となった土の塊をサヤが一気に左右に爪の斬撃を走らせ、切り離す。何段にも切り分けられた土の塊が落ちることなく、その場に残る。だるま落としか!? ……いや、それはなんか違うか。


「それで私が『斬針』で小分けに切り分けていくんだよね」

「そして、それを私が丸めて完成させていくんだよ! 時々混ざってる小石もそのままインベントリ行き!」

「土が乾いてきたら、水の追加もしながらやると尚いい感じだな」

「何という分業体制……」


 そしてそれを1番上の段から上下左右にヨッシさんが切り分けていき、それをハーレさんとサヤが1つずつ丸めていく。確かにこれならハーレさんが1人でちまちま作るよりは遥かに効率が良いだろう。


「あ、ちなみに『地形を弄るモノ』と同時に『水を扱うモノ』も取得したぜ?」

「なんですと!? ……俺とアルって魔法がかなり被ってない?」

「……それは俺も思ったけど、ポイント取得じゃないんだから大目に見てくれ」


 ポッカリと土を抉った分だけ穴が空いてるし、確かにあれならば地形は変わっているだろう。さっきの手段だと土の操作より穴掘るの早いなー。もうあちこち穴だらけ。……あ、穴同士が繋がってない理由は岩が邪魔だからか。となればここは俺の役割のところだな。


 それにしてもアルも水魔法と土魔法持ちになったのか。属性が被ったらいけない訳じゃないけど、それでもなんか複雑……。進化したらまた何かが違ったりしてくるんだろうか? あ、そういえば呼ばれてた肝心の理由を聞かないと。


「そういやヨッシさん、俺に確認したい事って何?」

「あ、そうだったね。ケイさんって今の進化の候補はどうなってる?」

「あー進化の候補か。そういや確認してなかったっけ。……確認したい事って進化絡み?」

「うん、進化絡み。ちょっとケイさんの今の進化先を教えて貰えない?」

「なんか気になる事があるんだな? よし、ちょっと待っててくれ。すぐに確認する」

「お願いね」


 確認しようと思ってたら命名クエストが始まって、ルアーを筆頭に赤の群集の集団がやってきてそれどころじゃなくなってたっけ。……昨日いったんから説明を聞いた限りではまだ共生進化は不可能だろうから、通常の強化版でも出た程度だとは思うけど。えーと、とりあえず進化項目を開いてっと。



【進化】


 増強進化ポイント 127P 

 融合進化ポイント 127P 

 生存進化ポイント 130P 



《変異進化》


 『操りゴケ』

 進化階位:未成体

 進化条件:成長体Lv20、操作系スキルを3つ以上取得、増強進化ポイント20、融合進化ポイント20

 魔法適正は下がるが、その代わりに他のモノを操る事に長けたコケ。自身が戦う事はなく、戦うのは操られたモノである。その力が及ぶのは果たしてどこまでか。



《転生進化》


 『泥魔ゴケ』 

 進化階位:未成体

 進化条件:成長体Lv20、『水魔法』と『土魔法』の2つを取得、増強進化ポイント10、融合進化ポイント20、生存進化ポイント10

 水と土に強い親和性を持ち、なおかつ魔法適正が極めて高いコケ。ただし、土は多く水分を含むものに限られる。乾燥には非常に弱いが、それが可能なのであればすればいい。



 『強魔ゴケ』

 進化階位:未成体

 進化条件:成長体Lv20、増強進化ポイント10、融合進化ポイント10、生存進化ポイント10

 魔法適性の非常に高いコケ。これといった得意属性を持ってはいないが、その代わり不得意属性も少ない。純粋魔力強化型の進化系統。



《複合進化》


 【共生進化】


 2枠目のキャラクターが存在しません。


 【合成進化】


 『樹コケ玉』

 進化階位:成長体

 進化条件:成長体、『複合進化』の開放、『進化の輝石・樹』を消費、融合進化ポイント20

 『進化の輝石・樹』を消費して、一時的な『纏属進化・纏樹』ではなく恒久的に属性を定着させたコケの新たな姿。



 なるほどね。『強魔ゴケ』は大体想像通りで単純な強化型の進化だな。ヨッシさんが確認したかったっていう情報は合成進化の方かな。進化の輝石を消費する進化とはまた新しい進化が出たもんだ。


「聞きたいのは合成進化?」

「うん、そう。やっぱりケイさんにも出てたんだ」

「って事はヨッシさんもか。これは進化の輝石を持ってるかどうかが条件だな」

「ケイさん、この進化はどう思う?」

「……状況次第だな。俺の場合は無しだけど」


 纏樹は状況次第では便利だけど、あれを通常時にする気はない。コケのHPがないという折角の特殊仕様を殺す事になるしな。……あれを固定化するなら2枠目で草花系を選んだ方が良い気がする。


「私はちょっと気になってるんだよね。でも王毒バチも気になっててね」

「あー、合成進化した後に更に転生進化が可能か悩んでる感じか」

「うん、そうなんだ」

「みんなはどう思う? っていうか、みんなは複合進化の説明はいったんから聞いた?」

「俺以外はな。だけど俺はまだLv20になってないが、課金アイテムがあるってとこまでハーレさんから聞いたわ」

「えっへん! ちゃんと説明はしましたとも!」


 なるほど、俺が寝ている間にその辺の情報は共有済みか。……となれば、手段は1つか。運営に完全に乗せられる形にはなるけど、これが最善策だろう。


「ヨッシさんはいざって時に500円は出す気ある?」


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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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― 新着の感想 ―
[一言] ヨッシさんはいざと言う時に五百円は出す気がある?[お試し進化をしてみませんか]←意訳(笑)
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