第1230話 リアルの人間関係
色々と予定外の事でバタバタしつつも、なんとかいったんのいるログイン場面までやってきた。えーと、今日の胴体部分の内容は『競争クエスト、残るは1戦! 勝敗が決まった時、何かが起こる!?』って、何が起きるんだ?
競争クエストが終わった時って、再戦エリアでなければ勝った側に命名クエストが発生するけど……それとは別の何かか?
あー、次の共闘イベントの予告編でも始まるのかもなー。前回もそんな感じだったけど……そういや、共闘イベントって全ての群集に対して共通の問題に対応する為に共闘するんだよな?
前回の敵は惑星浄化機構のクオーツの動きに対処する為の内容だったけど、次の敵はなんだ? ……もしかして、黒の統率種に発生してるっていうクエストに関係してる? 異形の敵に意志が発生してるような設定があったような……。
「いったん、競争クエストが終わったら何が起こるのか……って、聞いても教えてくれる訳がないよなー」
「流石に教えられない内容なので、そこはごめんね〜」
「まぁその辺は仕方ないか……。これだけは確認しときたいんだけど、即座に始まったりする?」
「それも答えられません〜」
「……なるほど」
んー、即座に始まるかどうかくらいは知りたかったんだけど、この程度でも教えてもらえないか……。いや、もし黒の統率種が絡むのなら、前兆のイベントはもう開始済みなのか?
答えてくれないのじゃなくて、今の段階では答えられないのだとすると……黒の統率種に発生しているクエストの達成条件にどこかのエリアの占拠という可能性もある? それによって展開自体が変わって……あー、そうか!
「……しまったな、この可能性は全然考えてなかったぞ……」
「何か納得してるみたいだけど、とりあえずログインボーナスを渡しちゃうよ〜」
「あ、サンキュー!」
いったんが今日のログインボーナスを渡してくれたし、手早くログインして今思いついた可能性を本格的に考えてみよう。根本的な所で今回の無所属集団の動機を見誤ってる可能性があるぞ、これ!
「それじゃコケの方でログインを頼む!」
「はいはい〜。それじゃ今日も楽しんできてね〜」
「ほいよっと!」
いつものようにいったんに見送られながらログイン開始! とりあえずみんなと合流……って、晴香のログインはどうなるんだ? あー、時間的に今日の夕方は全員揃わない可能性もあるかもしれないなー。
◇ ◇ ◇
昨日は青の群集との総力戦が決着した後にそのままログアウトしたから、ログインしたのはミヤ・マサの森林! このエリアの由来となったミヤビとマサキはジャングルへと移動してしまったけど、エリア名は残り続けるんだね。
そういえば破壊の痕跡がほとんど残ってないような? あー、昨日の演出の中で再生しようとはしてたっけ。ジャングルの時の破壊の痕跡はそのまま開拓に回してたけど、ここではそこまでの事をする必要もないよな。
今日は昼の日だし、木漏れ日や爽やか風に揺れる木の葉の音とか、そういうものはちゃんとある方がいいよな、この場所にはさ。
「さてと、まずは合流を考えないと……」
まずはサヤとヨッシがログインしてるかどうかを確認して……うん、2人ともログインしていて、いる場所は森林深部だな。何をしてるか分からないけど、とりあえず共同体のチャットを使うか。あれなら即座に対応出来る状況じゃなくても反応はしやすいはず。
ハーレさんは……まぁ予想通りというか、まだログインはしてない状態。アルバイトの件、サヤとヨッシさんには伝えてるんだろうか? ログインが遅れる可能性があるなら、普通に伝えてるだろうなー。俺は伝える手段がなかったから、今伝えるしかない!
ケイ : ちょっと色々あって、ログインが遅くなった!
さて、すぐに反応が返ってくればいいけど……返事がないね。何か作業中で手が離せないのかも? まぁそれならそれで、今のうちに森林深部まで移動しとくかー。
いつまでもカトレアの近くにいても邪魔になりそうだし、昨日の戦闘の痕跡として砕けた岩が大量に残ってはいるもんな。その撤去作業中みたいだから、邪魔にならないうちに離れようっと!
◇ ◇ ◇
<『始まりの森林・灰の群集エリア1』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
カトレアから森林エリアに転移して、そこから更に森林深部へ転移完了! あ、そういえばログインボーナスを受け取り忘れてる!? また忘れないうちにさっさと貰っとこ。
<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>
<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>
よし、これで問題なし! あ、そうしてる間に共同体のチャットの項目が光ってるし、内容を確認していこう!
サヤ : アルバイトの面接、お疲れ様かな!
ヨッシ : 兄妹で同じアルバイト先になったんだね。あそこのスーパー、よく行ってたんだよねー。
ちょい待った、まだ俺はハーレさんの方の結果を聞いてないんだけど……もう2人共が把握している!? いや、俺のは面接だったかはちょっと怪しいけど……。
ヨッシさんがあそこのスーパーを利用してたのは……まぁ不思議でもなんでもないか。ハーレさんと幼馴染なんだから近所に住んでた訳だし、利用してる店が同じなのは自然な流れだなー。それはそうとして……。
ケイ : えーと、ハーレさんから既に色々と聞いてる感じ?
サヤ : さっき返事はいらないって形でメッセージが届いてたかな。
ヨッシ : ケイさんに声をかけるのを頼まれてたのに、先に決まってて驚いたって書いてたね。ハーレ自身は既に決まってたようなもんだから、すぐに終わってこれから帰るって。
ケイ : なるほど、そういう流れか。って事は、もう少しすればログインしてくるんだな?
サヤ : うん、そうなるかな。
ふむふむ、とりあえずの状況は把握。……もう1つの件がどうなってるのかがさっぱりだけど、アルバイト自体は問題なしか。まさか晴香と同じアルバイト先になるとは思ってなかったけど、まぁ俺は品出しがメインで晴香は接客の方がメインだろうなー。
さてと……俺からアイルさんの事を切り出す気にはなれないし、その辺はどうしたもんか。別にリアル事情を全て話さないといけない訳じゃないけど……サヤの警戒っぷりを考えるとどうするのがいいんだろ?
ヨッシ : アルバイト繋がりでの話だけど、私も夏休みにやるのが決まったよ。サヤと一緒に漁港で色々とお手伝いで、朝が少し早めだけど午前中で終わる感じのやつ。
サヤ : 私の親戚の人のとこかな!
ケイ : あー、そういやそんな事も言ってたな。となると、夏休みは地味に全員がアルバイトをやる感じかー。
ヨッシ : ケイさんとハーレは、人が足りてない時の穴埋めって聞いたけど、時間は安定しない感じ?
ケイ : 具体的な時間の相談はこれからになるけど、まぁそうなるな。とはいえ、足りてないのは普段は学校に行ってる時間帯だって言ってたし、いつもと同じ感覚でいいと思うぞー。
サヤ : まぁアルがいないし、フルダイブの時間制限にも引っかかるし、それでよさそうかな?
ヨッシ : そだね。全員の空き時間が重なった時に、ちょっとやるくらいで良いのかも?
もし可能なら夏休みはずっとゲームをしていたい気分ではあるけど、フルダイブの制限の都合でそれは無理。……制限がなければ嬉しいんだけど、色々と健康問題が理由になってるらしいしね。
確か業務用の認証だと、フルダイブ時間の制限は伸びるけど、その分だけリアルでの運動が必須だとかなってた気がする。医療用でも別条件で制限の緩和はあるらしいけど、こっちの条件は知らん! あー、でも風音さんがその手の……いや、リアルの情報なんだし、興味本位で聞く事でもないか。
さてと、とりあえずアルバイト絡みの話は……アイルさんの件を除けば、ひとまずは問題なさそうだ。てか、共同体のチャットへの反応が遅かったのはなんでだろ?
ケイ : そういやサヤとヨッシは何かしてたのか? なんか少し反応に間があった気がするけど。
ヨッシ : あの時、サヤと模擬戦をやってた最中だったんだよ。
サヤ : 気付きはしたんだけど、ちょっと手が離せなかったかな。
ケイ : おっ、マジか!
ほほう、興味深い内容じゃん。サヤとヨッシさんが模擬戦で対決かー。普通に見たかった気もするけど、2人だけしかいないと分かってたからこその対決だろうな。
ケイ : ちなみに勝敗は?
ヨッシ : 2戦やって1勝1敗だね。……サヤ相手には、状態異常が入らないとさっぱりだよ。
サヤ : 少しでも状態異常が入ったら、逆にヨッシ相手は攻め切れないかな!?
ケイ : なるほど、状態異常が入るかどうかが勝敗の分かれ目になってるのか。
流石は状態異常特化のヨッシさんと言うべきか、状態異常さえ入らなければ倒し切れるサヤが流石と言うべきか、どっちか悩むとこだな。回避が上手いサヤに、如何にヨッシさんが状態異常を叩き込むかが重要な部分なのかも。
ハーレ : サヤとヨッシが戦ってたの!? それ、見たかったのさー!
ケイ : お、ハーレさん、来たか。
サヤ : ハーレ、おかえりかな!
ヨッシ : おかえり、ハーレ!
ハーレ : ただいまー! ケイさん、アルバイトの件は聞きましたか!?
ケイ : 聞いたけど、別に俺に直接メッセージを送ってもよくね?
ハーレ : はっ!? その手があったのです!?
ケイ : なんで直通の連絡手段を忘れてるんだよ!
ハーレ : 色々と予定外で慌ててたからなのさー! 先に決まってるとは思ってなかったんだもん!
ケイ : あー、まぁそりゃそうか……。
俺が自分でアルバイト募集の情報を見て行ってただけだし、その事をハーレさんには伝えてなかったもんな。まぁ今日学校に行ってから思い出したから、伝えるタイミングはなかったけど……。
まぁアルバイト関係の話はもういいや。とりあえずいったんの所で思い至った可能性について、みんなの意見を――
ハーレ : あ、サヤ! 今日、アイルさんにリアルで会いました! それにフラムさんも!
サヤ : ……そうなのかな?
ヨッシ : え、どういう流れでそうなったの?
ちょ、これからその話をする!? あー、でも俺から言うとややこしい事にもなりそうだし、ハーレさんなりに何か納得してるみたいだったし、どうにか落ち着くとこに落ち着くのかも。よし、ここは任せたぞ、ハーレさん!
ハーレ : アイルさんが同じアルバイトへ応募してきてたのです! ちょっと話してみたけど、小学校から同じで何度か同じクラスだったのに全くケイさんに認知されてなかったそうなのさー!
ケイ : え、マジで!?
同じ中学校出身かもとは思ったりもしたけど、小学校から同じで、同じクラスだった事もあった!? えーと、待て、待て、待て。それって俺は結構失礼な事をしてないか?
相沢……相沢……いかん、全然思い出せん! てか、小学校からずっと同じ学校の奴って割といるんだけど!? 単純に家から近いんだから、成績が足りてる奴なら結構選んでくる高校だぞ!
特に親しくしてなかったなら、覚えてない相手がいても仕方なくね!? ……中学時代に仲良かった奴らは、全員バラバラの高校に行ったのが微妙に寂しいとこだけど。
サヤ : ケイ、流石にそれはどうなのかな?
ヨッシ : サヤ、待って。私達が通ってた小中学校って、人数は結構いたから特別親しくしてた訳じゃないなら仕方ないよ。私も同じクラスになった人全員を覚えてるかって言われると怪しいしさ?
ハーレ : 同じくなのです!
サヤ : え、そうなのかな!?
ヨッシ : サヤの通ってた小学校よりは、結構大きいよ?
サヤ : そうなんだ?
ハーレ : ただ、アイルさんの方は知られてるものと思って気軽に勧誘したとこもあるそうなのさー! その結果、覚えられてなくて地味にショックだったそうです!
ケイ : ……なんか、すみません。
サヤ : ……なんだか私も悪い事をした気がするかな。てっきり、完全に面識がない人が一方的に迷惑をかけてきたのかと……。
本当に、そういう事情だったならすみませんでしたとしか言いようがない! そうならそうと言ってくれれば……って、言える訳ないよねー!?
むしろ、スーパーで遭遇した時に名乗ってきた時に気遣わせてたくらいじゃね!? うっわ、本気で悪い事をしてしまった気がしてきた……。
ハーレ : とにかくケイさん的には覚えてないほど眼中に無かった相手だし、アイルさん的にも微妙な心境だそうです!
ケイ : ちょ!? 言い方!?
内容的に否定は出来ないけど、その言い方には思いっきり棘があるから!? なんでハーレさん、そんなに棘があるんだよ!?
ハーレ : ちなみに私達と同い年の弟がいるそうだけど……ヨッシ、それはアイツなのさー! 小学校の頃からずっとヨッシに嫌がらせをしてきてたヤツ!
ヨッシ : ……え? 私が引っ越すってなった時に……急に態度を変えて告白してきた、あの?
ハーレ : そうなのさー! という事で、私としてはアイルさんに対しては極端に距離は取らないけど、必要以上に近付きたくはないです! アルバイトはちゃんとするけど!
サヤ : それ、聞いたかな!? なんかややこしい人間関係になってない!?
ヨッシ : ……あはは、そうみたい? ……私としても面倒だね、その状況。
ここでそういう風に繋がってくるんかい! あー、ヨッシさんも色々と大変な事はあったんだな。いるよな、好きな相手に嫌がらせをして興味を惹こうとする奴。
ハーレさんが警戒してた理由は、どこかにそのヨッシさんへ好意を嫌がらせという形でしか示せていなかったアイルさんの弟を連想する何かを、アイルさんから感じてたからなのかもなー。……アイルさん自身が悪い訳じゃないけど、ハーレさんとヨッシさんの気持ちを考えれば避けたくもなるか。
それにしてもサヤも言ってるけど本当に身近での人間関係、ややこしいな!? その弟とやらが、このゲームをやってない事を祈ろうっと。




