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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第34章 青の群集との対戦

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第1212話 青の群集の狙いは


 強烈なカウンターを仕込んでいたジェイさんと斬雨さんはなんとか退けた。……ジェイさんが不気味なくらいあっさりと死んでいったのが気にはなるけど、だからこそ油断出来ない。

 大人数が絡む総力戦……しかも今の成熟体の移動速度とエリアの広さを考えたらあまり効果は期待は出来ないし、行動値の無駄遣いになる可能性もあるけど……一応、獲物察知を使っておこう。察知出来る事より、妨害されている事に気付くには役立つはず。


<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します>  行動値 115/120(上限値使用:1)


 効果範囲内には……普通に灰の群集の集団と青の群集の集団の戦闘中らしき反応がいくつかあり。青の群集も灰の群集も、それぞれに群集支援種を捜索中っぽい散らばって動く様子もあちこちで見える。ちっ、もう結構な反応が拾えているし、個別の狙いの判別は出来そうもないか。

 近くにも反応はあるけど、何人もいるし、移動も早いし、動いてる方向がバラバラ過ぎる。総力戦とは関係なしにここに来てる人もいるだろうから、余計に無理だな。


 獲物察知でカレンやカトレアの判別は……流石に出来そうにないな。単独で動くのを目安にしようとしても、そんな反応はいくつもあるから絞りようがない。ソロで参戦してる人も結構いる感じだな。


 黒い矢印もいくつかあるけど、再戦エリアでは普通の敵に脅威らしきものがいるとは聞いていないからスルーで。この反応は普段からいる成長体の類のはず。

 エリアに対して必要以上に察知範囲が広いから、この情報だけじゃ役に立たないな。他の目的で動くとこまで一緒に察知してしまうし、情報としてはノイズが多い。警戒すべき妨害されてると思わしき空白部分は……特になしか。


「獲物察知では特に気になる様子はないけど、一気に距離は無視出来る状況だから、その辺は油断なしで!」

「分かっておるわ! なぁ、疾風の!」

「油断せずにいくぞ! なぁ、迅雷の!」


 他のみんなも、それぞれに警戒しつつも頷いてくれている。さーて、青の群集、仕掛けてくるならいつでも仕掛けてこい!



 ◇ ◇ ◇

 


 あちこちから戦闘音が聞こえてきてるし、どういう形でここがまた襲われるかは分からない。3班全てが揃ってた訳じゃないけど、それでもここに結構な戦力のメンバーが揃っているのは斬雨さんが把握しただろう。勝敗に直結する場所を押さえているんだから、決して無視は出来ない状況……のはずだよな!?


「なんで全然攻めてこない!?」

「……分からないかな?」


 斬雨さんを仕留めてからずっと警戒態勢のまま、みんな気を張っている。でも、一向に何も起こる気配がない。……無視は出来ない状況のはずなのに、いまの状況を整理するとどう考えても無視されているよな!? 近場にいた人も全然来る気配がなさ過ぎる!


「ケイ殿、落ち着くであるよ。……それこそが敵の狙いかも知れぬ故!」

「焦らして、焦らして、気が抜けた所を一気に強襲って可能性は否定出来んしな」

「……刹那さん、ジンベエさん……そうだよな!」


 体感的には凄い長い時間が経った気がするけど……いや、実際に10分くらいは既に経ってたよ。いや、でもまだ10分だ。レナさんや刹那さんは魔力集中を使ってたし、その辺の効果時間切れのタイミングを狙ってくるかもしれない!

 くっ、ジェイさんめ! 他では激しい戦闘音も聞こえてきてるのに、これで焦らすとはやってくれる!



 ◇ ◇ ◇



 更に5分ほど経ったけど……いくらなんでも何もなさ過ぎじゃない!? ちょいちょい獲物察知で周囲の確認はしてるけど、ここをあえて避けるような動きすら見えるんだけど!?

 妨害されてるような空白地帯もあるにはあるけど、それがこっちに来るような気配もない。……このまま俺らを完全に放置する気か!? いや、でもそれでどうやって勝つ気でいる? 絶対に俺らは排除しなければいけないはずだけど、一気に俺らを攻め落とす為にどこかで戦力を集結させている?

 だー! 警戒を緩められないから下手に連絡も出来なかったけど、ここまで何もなさ過ぎるとそうも言ってられるか!


「レナさん、少しこっちの指揮を頼む! 流石に何も動きがなさ過ぎるし、ちょっとベスタと状況の話し合いをしてくる!」

「あ、うん、それは任せて! この状況は不気味過ぎるし……何度かベスタさんにフレンドコールはしたんだけど、繋がらなかったしさ」

「え、マジか!? あー、ともかく任せた!」


 サヤ、ハーレさん、レナさんの3人がいても、周囲に異常を察知出来ない状況だしな。……ベスタの指示で次の2班がくるタイミングを計ってたはずだけど、レナさんが連絡しても出れないってどういう状況!? いや、ダメ元でも現状の情報を――


「ケイ、危ないかな!? 『強爪撃』!」

「サヤ!? って、今のは危機察知回避の狙撃か!? ナイス対応!」

「銀光は無かったけど、完全に危機察知には反応が無かったのさー!?」


 今のはサヤが竜で一気に飛び上がって叩き落としてくれたから良かったけど、そうでなければ完全に俺に当たってたな。……通常スキルなら即死するような事はないだろうけど、今のはダメージ以外の部分での意味合いが大き過ぎる。

 ちっ、いつでも俺を……俺らを狙えますよってか! 今のはどこから仕掛けてきた? サヤが叩き落としたのが北から飛んできた攻撃だから、北にいる? いや、あの手の手段を使えたのは1人じゃなかったよな。


「……これは、完全に見張られてるね? ケイさん、多分わたし達の声が聞こえる位置に誰かいるよ」

「今のタイミングだと、そうだろうな……」


 俺がベスタへと連絡を取ろうとした瞬間に、それを阻むような形で攻撃を仕掛けてきた。でも、それ以上には大々的に攻撃を仕掛けてくる気はない? 

 そうなると目的は……俺らの完全な孤立か? 応用スキルの『貫通狙撃』ではなく、通常スキルでの『狙撃』だったのは……いつでも狙い撃てるという意思表示?


「ちっ、面倒な……!」


 でも、完全に無視されている訳ではないのは分かった。1つの連結PTくらいなら、この場に封じ込めておく方がいいって判断なのかもね。……ただし、俺らが気を緩められないように、ちょいちょい無視出来ない攻撃は仕掛けてくる気なのかも。

 しかも、会話を聞かれている可能性があるとなると……擬態持ちが死角に隠れている可能性が高いか。そうじゃないと、サヤ達の目を誤魔化せるとも思えない……。


 でも、そうなるとどう対処する? 今は全員が警戒態勢だし、下手に声に出せばすぐに気付かれる。だとすると、競争クエスト情報板を経由して……いや、それでもどうやっても警戒は緩むし、それを見逃すような態勢にしているとも思えない……。

 ふむ……どこまで聞こえるのか、ちょっと試してみるか。それで、ある程度の距離を絞り込んでみよう。とりあえずPT会話はみんなに聞こえてるはずだし、動きは変えずに小声で呼びかけてみるか。


「みんな、警戒態勢は変えずに小声で返事をしてくれ」

「およ? 内緒話? あ、みんな、話してるからって気を緩めて視点を一ヶ所に定めないようにねー! 見てる方向に合わせて目は動くから、そういう部分でバレちゃうからさ」

「了解だ、レナさん。……下手に動けなくなってるが、ケイ、どうすんだ?」

「この状況、相当厄介なのです……」

「その辺を考えようって内緒話。極力小声で話すけど、これで誰に対して反応があるかも見るつもり」

「……監視してる誰かを見つけ出すのかな?」

「せめて方向と距離くらいは掴みたいとこなんだけどな。ハーレさん、狙撃の位置の割り出しは出来るか?」

「何度か攻撃があればある程度は予想出来ると思うけど……あれは弾道を曲げてるから、正確な位置は難しいのです……」


 うーん、ある程度はあの手段をどうやってるかは推測は出来てるけど、明確に再現し切った訳でも、完全な対応策を用意出来た訳でもないもんな。さっきはサヤが叩き落としてくれなかったら当たりかねない状況だったし……。


「あれ、どうやったら防げると思う? 誰か、案がある人っていない?」

「んー、ケイさんならアクアディヒュースで強引に落とせそうではあるけど……貫通狙撃になったら怪しいよね?」

「わたし的には、今の状況で貫通狙撃は警戒しなくていいと思うよ?」

「俺もレナさんの意見に賛成だな」

「レナさん、ツキノワさん、それはどういう理由でだ?」

「んー、まぁ明確な理由ってほどでもないんだけど……ジンベエさんなら、動くなって牽制をしてる時に思いっきり目立つ攻撃を仕掛ける?」

「それにどうしても銀光で目立つからな。闇の操作で偽装も含めると手間がかかるし、狙撃の為にも今は隠れ潜んでいるはずだ。位置を知られたくないなら尚更に必要以上の事はしないだろう」

「……なるほど、目立つ事は避ける状況か」


 俺らだけが相手なら、おそらく盛大に他の人が攻撃を仕掛けて、その合間を狙ってくる事はあり得る。でも、お互いの群集があちこちで動いている状況で、下手にそれらと接触する状況は避けるはず……か。

 そもそも青の群集は、俺らをここから動かないようにしてどうする気だ? 最終的には俺らの排除を狙うのは間違いないけど、それをどう実行する気なのかが問題だ。……カレンの浄化の守りを最大まで強化して、強行突破でも狙ってる? 戦力を集中させて、それを狙ってる可能性は十分あるな。


 てか、ベスタは今どういう判断を下してるんだ? タイミングを見計らって2班、3班と来るはずなのに、それが一向に来る気配もないんだけど!? ……もしかして、向こうも何か動けない状況にされている?

 不審がられないようにしてベスタと連絡を……せめて最新の情報が欲しい。青の群集の動きや、ベスタの判断意図が少しでも分かればこっちでも何か出来る事があるはず! 少なくとも、無意にこの緩められない警戒状態をどうにかする手段を見つけたい。


「ケイ殿、誰かが目立って動いて誘き出すのはどうであるか?」

「多分、その狙いはすぐに読まれて、何か仕掛けてくるぞ?」

「……それは、そうであるな。中々、厄介な状況を作られたのであるよ……」


 もう本当にね! 開幕早々にジェイさんと斬雨さんとの戦闘になって、そのまま激戦に続く激戦になるかと思ったのに、まさかのこの状況……。

 こうして警戒を解けない状況を維持して俺らを精神的に疲弊させるのが今回の狙いか? もしそうなら、完全に相手の手の平の上……。


「読まれるのは承知の上で、そこから何かを用意してやるのはどうよ?」

「ディール、簡単に言うが何か案はあるのか?」

「いや、何にも? 富岳こそ、何か案はねぇの? ぶっちゃけ、この警戒をずっと続けてんのが地味にしんどい……」

「……すまんが、俺にもこれといって案はないな」


 全員で警戒してしまったが故に、何か動きを少しでも見せればバレバレな状態。でも、流石にこの神経を張り詰めた状況を長く続けるのは厳しいのも事実なんだよな……。

 ともかくこの状況からの打開策を考えないと、終盤まで警戒し続けるだけで疲弊し切ってる可能性があるぞ、これ!


 もういっそ、強引に動いて周囲でも吹っ飛ばしてやろうか! それで監視してる奴を仕留めて、多少の無茶を承知で危機察知回避の攻撃を凌ぐ……手段としては強引だし、その動きを青の群集が待ってる可能性もあるか。

 うーん、強引に動くならせめてその後に増援が欲しい。今の小声での話し合いには反応がないし、ベスタへ小声でフレンドコールをかけてみるか?

 いや、でも向こうの状況が分からないから、下手に邪魔になっても困る。誰かしらに連絡が取れる方法となれば、競争クエスト情報板くらいなもんだけど……この状況はそれを許してくれそうにない。


「……何人かで……周囲を……適当に……攻撃する?」

「もしかすれば、監視している者を炙り出せるかもしれんな! なぁ、疾風の!」

「もう警戒しっぱなしも飽きてきたし、暴れるのもいいかもな! なぁ、迅雷の!」

「風雷コンビ、もっと声量は落として! 小声で!」


 レナさんが小声で怒鳴るという器用な事をしてるけど……今の風雷コンビに対しての動きは特になしか? ふむ、風雷コンビなら静かにしてないのが普通だと思われてても不思議ではないけど……少なからず意識がそっちに向かうはず。これは、風雷コンビが陽動に使えるか?

 でも、それだけじゃ大きな隙を作るまでには至らない。その出来た少しの隙で出来る事……流石にそんな短時間じゃ競争クエスト情報板で書き込みと内容チェックは無理だ。


 こんな時にベスタみたいに、色んな情報を見ながら戦闘が出来るなんて真似が……って、あれ? ちょっと待て。

 俺はおそらく最大限まで警戒されてるだろうから、厳しい可能性が高いけど……富岳さんのカンガルーならいけるんじゃね? ……ちょっとした賭けだな、これ。


「富岳さん、ちょっと無茶を頼みたいんだけどいいか?」

「……俺を名指し? どういう内容か、聞こうじゃねぇか」

「その腹の袋の中にいる小さなカンガルーの方で、競争クエスト情報板のチェックと書き込みは可能? 遠隔同調で大きなカンガルーで警戒をしながらになるけど……」

「なるほど、そうきたか。ケイさんが自分で……だと、警戒され過ぎてて危険だし、俺の方が隠しやすいってのもあるか」

「……他の人じゃ……ダメなの?」

「んー、普段ならそれでもいいけど……今は駄目だね。動物系種族で目があれば、チャットの表示でも視線が動いちゃうからこの状況だとバレちゃうよ。ケイさんのコケとアルマースさんの木なら、メイン操作をそっちに切り替えれば誤魔化せる可能性もあるけど……2人とも警戒レベルが他の人よりも高いだろうしね。実はログインしてない側の目の動きは不自然にならない程度に自動でパターン化されてるから、ログイン側を見極めるコツだったりするけど……今はそういう話じゃないからスルーで!」

「……そうなんだ?」

「遠隔同調なら両方の種族の目がそれぞれ見てる状態で動く仕様だったはずだから、この状況ならありな手段だね」


 あー、そういう風に本体がどっちかっていうのを見極める事も出来るのか。そこまで細かく考えてた訳じゃないけど、富岳さんの小さなカンガルーでの遠隔同調なら、状況的に他の人から見破られにくいと思った部分ではある。

 思った以上に有効な手段だという事は、レナさんからの保証が出たから間違いない! 後は富岳さん次第だけど……。


「……責任重大だが、やってやろうじゃねぇか。でも、大きなカンガルーの方の警戒度合いはどうしても下がるぞ?」

「それは分かってるから、風雷コンビにも出番だ。もう我慢し切れないって感じで、周囲に攻撃しまくってくれ。俺らは周囲を警戒しながら、それを止める感じで!」

「これ以上、我慢し切れんな! なぁ、疾風の!」

「大暴れのつもりが、警戒ばっかでイライラしてるんだよ! なぁ、迅雷の!」

「およ!?」


 さっきよりは声を抑えてはいるけど、それでも風雷コンビは声が出てるから!? いや、素で我慢し切れなくなってきたのなら、もう演技でもなんでもないから丁度いいや!

 結果的には同じような事をする羽目になってたっぽいけど、それを情報収集の誤魔化しに使えるなら十分過ぎる! さーて、それじゃこの状況の打破を始めようか!


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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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[一言] 疾風迅雷コンビ大暴れ?
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