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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第34章 青の群集との対戦
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第1207話 開始前の騒動


<『群雄の密林・灰の群集の安全圏』から『始まりの森林:灰の群集エリア1』に移動しました>


 俺ら1班の吹き飛ばす手順は確定したので、他の班より先に移動完了! ジンベエさんのサンゴをアルのクジラの真下にくっつけて移動するのは目立つから、それは集合場所に辿り着いてからという事で。

 それにしても、まだ時間的には20分ほどあるけども……人が多いな!? でも、混雑してまともに進めないって程でもないのか。


「おっしゃ、競争クエストも終盤だ! 総力戦、やってやるぜ!」

「中々、時間帯が決まらなかったからどうなるものかと思ったわー」

「残り2戦、頑張らないとね!」

「そういや無所属で怪しい動きがあるんだってな? なんか共闘しようって事になったんだろ?」

「明日のはそうみたいだねー」

「……無所属が集団で動いてるってのも、変な話だよな」

「そういえば、フレンド登録をしたっきり交流がない人の何人かが群集を抜けてたって事もあったな? 関係あんのかね?」

「あ、それは俺も経験あるわ。なんか今の群集に不満があるみたいな事を言ってたけど、まさかな……?」

「はいはい、そんなのはよく聞く話! それで他の群集に移籍していった人とか結構いるんだから、気にしても仕方ないよ。それより、今は集まるのが先! 大人数なんだから、無秩序に動くと大変だよ」

「そりゃそうだ。混雑しないように、灰のサファリ同盟で調整してくれてるんだしな」


 ちょっ!? なんか地味に気になる会話が聞こえてきたけど……あれ? 今の会話をしてた人達はどの人達だ? 人が多いし、立ち止まってる人は少ないから分からん!

 ザッと見た感じ、ミヤ・マサの森林の方向へと動いている人の流れみたいなのは明確に出来ているね。ちょいちょい転移してきてる人がいるけど、ある程度スペースを空けて次の人が来るようになってる?


 ここに止まってる人は、根本的に群集拠点種に用事がある人達みたいっぽいね。もうミヤ・マサの森林での総力戦までそんなに時間はないから、大々的に開始場所に集合を始めてるのか。


「あ、レナさん! それにみんなも、丁度良いところにいた!」

「およ? どしたの、ラックさん?」


 ん? 群集拠点種のすぐ近くにラックさん……というか、灰のサファリ同盟のメンバーが何人かいるみたいだね。大人数がいる訳じゃないけど、混雑しないように誘導役をしてるっぽい。


「えっと、見ての通り開始場所への誘導をしてるんだけど、ベスタさんが来るのはもう少しかかりそう? 青の群集の開始合図係の人がもう来てるんだけど……」

「およ? それはちょっと気が早い気がするけど……そっちの対応は誰がしてるの?」

「流石に放ったらかしって訳にもいかないから今は肉食獣さんが対応してくれてるんだけど、あんまりベスタさんがギリギリまでいない状況を見せたくないのと、肉食獣さんが身動きが取れないのはちょっと困っちゃって……」

「んー、まぁベスタさんがログイン自体はしてるのは分かってるだろうし、何か作戦を練ってるのはバレバレだろうけど、わざわざ教えたくはないよねー。うん、肉食獣さんは動けた方がいいだろうし、一時的にだけどわたしが対応にいくよ。ラックさんもそのつもりで声をかけたでしょ?」

「うん、そのつもり! という事で、レナさん、お願いします!」

「任せなさーい! 今ならわたしは自由に動けるし、ベスタさんが来るまでね! みんな、そういう事だから、先に行ってるよー!」

「ほいよっと! 後で合流って事で!」

「それじゃ行ってくるね! 『自己強化』!」


 レナさんは森の木々の枝を飛び移りながら、あっという間に姿が見えなくなった。地面を進んでいっても他の人達の間をすり抜けていけそうだけど、レナさんの場合はあの方が早いか。

 それにしても、もう開始の合図役の人が来てるとはね……? 余裕を持って多少は早めに来てもおかしくはないけど、流石に20分前は早過ぎない? 今はそんなに移動に時間はかからないのに……。


「ラック、なんでもう合図役の人が来てるのー!?」

「うーん、それがどうも分かんなくてさー。混雑する前に来ておきたかったとは言ってるんだけど……今回の総力戦は、前回と違って急遽決まって即座に開催って訳じゃないじゃない? 混雑自体はするとは思うけど、それなりに対策は出来るはずだと思うんだけど……」

「確かにそれはそうなのさー!?」

「実際、こっち側で合図に行ってくれるソラさんはまだ待機中だし、空から行くならそんなに時間はかからないはずなんだけど……」


 今回も俺らの方の合図役はソラさんか。成熟体へと進化している今の段階でなら、それこそ22時になってから合図役に出発してもそこまで遅れは出ないはず。

 空を飛べる種族の人なら、混雑してたとしても……20分も前に来る必要はない。なんか不自然な状況だな、これ。


「……そいつ、本当に正式な合図役か?」

「え、アルマースさん、それってどういう意味?」

「そのままの意味だ。合図役を騙った偽物じゃねぇか?」

「……それはいくらなんでも、堂々過ぎない?」

「こういうのは、逆に堂々としてる方が気付かれなかったりするもんなんだよ。その反応だと、青の群集に確認は取ってないな?」

「……そういう疑い方はしてなかったから、私は特にはしてないね。あ、もしかすると不思議に思っても、私が普通に対応しちゃったから大丈夫だとみんなが思っちゃったのかも!?」

「それは大変なのさー!?」

「……青の……群集! ……卑怯!」

「風音さん、落ち着いて? ほら、まだ群集としての狙いかは分からないしさ?」

「……群集として……なら……絶対に……許さない!」


 うわー、風音さんがキレてますがな。……不自然なくらいに早めに訪れている青の群集からの合図役だけど、誰かが対応した後なら変に疑問も持ちにくいし、言い出しにくいよなー。後から来た俺らだからこそ、口を出せる内容だっただろうし……。

 俺ら灰の群集に、今みたいな対応をさせる事で少なからず混乱させるっていう青の群集の狙いもあり得るけど……そうでない可能性は無視すべきじゃないな。


 青の群集としての妨害行為なら糾弾するべきだし、そうじゃないなら青の群集に知らせた上で即座に排除した方がいい。どっちだろうが、総力戦の開始時刻を決めているんだから、それよりかなり早く来ましたで済ませていい内容じゃない。

 前者の妨害行為なら、総力戦の前提が狂ってくるからな。いくらなんでも開始時刻を決めているのに、それより前の妨害行為は……容認出来ない。


「ラックさん、その合図役として来た人の名前を教えてくれ。早過ぎるって苦情を入れつつ、その辺をジェイさんから探ってみる」

「……なんだか変な流れになってきたけど、その方がいいかも? 私じゃジェイさん相手だと丸め込まれそうだし、ケイさんにお願いするね。名前はカタカナで『ガゲツ』さんで、フクロウの人!」

「ほいよっと。さてとジェイさんの苦情を入れるとして……レナさん、場合によっては――」

「即座に排除だね? そこは任せて!」

「よろしく! あー、俺らは移動は少し待った方がいい?」


 本当ならすぐに移動した方がいいんだろうけど、そうとも言えない状況になってきたもんな。状況が確認出来るまでは、下手にここを動かない方がいいか?


「えっと、それはどうしよ? 分散して集まってもらいたいけど、私達は変にスパイが紛れ込んでないかの監視も兼ねてるから動けないし……」

「あ、灰のサファリ同盟の人がこの辺に何人か集まってるのはそういう理由かな!?」

「……コソコソしてたら怪しまれるけど、アルさんの言う通り……堂々となら怪しまれにくいんだね」

「なんだか面目ありません!」

「あ、ケイさん! その辺の事情が分かれば、わたしの方で現地の対処するよー! だから、予定通り移動しちゃって! あと、これをラックさんにも伝言お願いねー!」

「レナさん、了解っと! ラックさん、現地での対応はレナさんの方でするってさ」

「あ、それは助かるよ! なんか開始前に、変なバタバタに巻き込んでごめんね……」

「それはラックのせいじゃないから、気にしないでいいのです! ケイさんは確認をお願いなのさー!」

「俺らは予定通り、移動開始だな!」

「アル、任せた! さーて、ジェイさんに連絡だな」


 なんというか、風音さんが怒ってた以外では他のみんなは大人しめだったな。あ、でも声にこそ出してないけど、仕草から苛立ってる感じが伝わってくる。

 総力戦をするって事で集まってるメンバーなんだし、それを台無しにするような行為を聞いて何も思わない訳ではないか。即座に排除しに動くような短絡的な行動を取るタイプでもないんだろうけどさ。


 まぁその辺はしっかりと白黒はっきりさせよう! 場合によっては、誰がどういう意図でこの状況を作り出しているのかも考えないといけないしな。

 怪しいのは例の無所属の集団だろうけど……まぁ今は事実確認が先か。みんな移動を始めたし、俺はジェイさんにフレンドコールをしていきますか! あ、割とすぐに出た。


「……開催直前の準備の真っ最中にフレンドコールをしてくるとは喧嘩を売っているのですか、ケイさん!」

「いや、その言葉そっくり返すからな! なんでもう青の群集から、開始の合図役が来てるんだよ!?」

「…………それは何の話ですか? まだこちらは送り出して……っ!? このフレンドコールはそういう用件ですか!?」

「その反応だと……狙って仕掛けてきた訳じゃないと思っていいんだよな、ジェイさん?」

「えぇ、そのような卑怯な真似はしないと、私の信念に賭けて誓いましょう。それで……出たのですね、青の群集の合図役を騙る偽者が……」

「まぁなー。フクロウの『ガゲツ』って奴らしいけど、心当たりは?」

「……『ガゲツ』? 知らない名前ですね……」


 ふむ、ここで嘘を吐くとも思えないから、心当たりがないというのは本当なのかも。まぁ同じ群集のプレイヤーを全員把握しておくなんてのは無茶な話だし、流石にそれは仕方ない――


「っ!? 斬雨、それは本当ですか!?」

「ん? ジェイさん、どうした?」

「……私には心当たりがなかったのですが、斬雨にはどうやら心当たりがあるようでして。確認ですが、その『ガゲツ』という方の表記はどのようなもので? 漢字でしょうか? それともカタカナかひらがなでしょうか?」

「えーと、カタカナで『ガゲツ』だな」

「……なるほど、それであれば斬雨の心当たりで間違いなさそうです」

「ほほう? それで、具体的にはどういう人?」

「元赤の群集の、陸から仲間の呼び声で海に移動してきていたプレイヤーだそうです。……赤の群集が荒れていた頃の話ですね」

「……なるほど」


 タチウオで海エリア出身の斬雨さんだから知っていたって事か? でも、そんな人がなんで……って、なんでも何もないか。

 赤の群集から抜けているのは確定だし、その上でこういう事を起こしたなら……青の群集にも不満を持っているって事か。総力戦を潰そうとしたのなら……例の無所属集団の動きが出始めて、それは群集内部にも関係者がいる可能性が高まったな。


 何か動きがある可能性は考えてたけど、こういう動き方をしてきたか。妨害工作をしてくるとは思わなかったけど、これはどういう意図での行為だ? ただの嫌がらせな訳がないよなー。そうなると……考えられるのは、嫌な可能性……。


「ジェイさん、とりあえずこっちで対処しとくけど、それは問題ないよな?」

「……それは構いませんが、その対処を任せても大丈夫なのですか? 受注マークがないと今回は立ち入れませんから、PK判定を受けかねませんよ? 今回の総力戦は、合図の都合で事前には立ち入らないという事になってますし……」

「あー、まぁその辺はこっちでなんとかするから、大丈夫だ。どっちにしても青の群集の方では倒そうとしても無理だろ」

「それも……そうですね」


 そういや、今回の再戦エリアは受注マークが無ければそもそも対象エリアには入ってこれないんだった。てっきり再戦エリア内で集合だと思ってたけど、その手前で集合か。

 それはいいとして、対処は……ペナルティとしては多少黒く染まる程度だろうし、この手のスパイ行為だと判明していれば、PKのペナルティも受けなかったりするしね。そもそも発覚するのを前提に考えてるような気がするし、大丈夫なはず。


「……ケイさん、この行為の狙いはなんだと思います?」

「多分だけど……例の無所属集団からの宣戦布告じゃね? 細かい意図までは流石に情報が足りないから読み取り切れないけど……」

「やはり、同じような結論になりますか」


 でも、少なくとも明確に全群集に敵対してきた事だけは間違いない。そうじゃないと、灰の群集と青の群集に喧嘩を売るのに、元赤の群集の人を使う理由が分からない。

 全ての群集を敵に回す事を前提に、誰かしら心当たりがあるような人を選定してきたってとこだよな。やっぱりバレる事が前提になってるな、これ。


「……まぁ無所属に対して共闘を行うと大々的に広めたのですし、これくらいはあってもおかしくはない反応ですか。ですが、危険度は相当上がりましたね」

「だなー。でも、今はそれより先にやる事があるからな」

「えぇ、そうですね。今回は負けませんよ、ケイさん!」

「そりゃこっちの台詞だ! 横取りしてきた分だけ、盛大にやり返してやるからな!」


 お互いに勝ちは譲る気はないけども、今回は完全に勝たせてもらうまで! さて、必要な事は伝えたからフレンドコールは終了で――


「あ、もうエリアの切り替えまで辿り着いてたのか! って、レナさん!?」

「おわっ!?」

「はーい、大人しくしてもらうよ、偽者さん?」

「レナさん!?」

「え、いきなり何事!?」


 思いっきりフクロウの『ガゲツ』を踏みつけて押さえ込んでるレナさんの姿があったよ。あー、まぁ今のジェイさんと俺の会話で明確に黒と判定が出たし、それを聞いて確保に動いたとこか。


「ケイさん、お疲れ様ー! さーて、このフクロウはどうしてくれようかなー?」

「ははっ! 気付くのに思った以上に時間がかかってんじゃねぇか、灰の群集! 『暴発』!」

「およ!? これは……みんな、下がって! って、そんなスペースの余裕は無いね!?」

「え、何!? これって、どういう事!?」

「暴発での無差別ダメージ!?」

「なんだ、この状況!? おわっ!?」

「はっ! 青の群集とも、これでおさらばだ! 今日のところは大人しくしといてやるから、明日は覚悟しとけ!」


 無差別ダメージで自分のHPを削って、最後は近くにいた人の爪にぶつかっていって死んでいった? 捨て台詞を残していったし、やっぱり元々そういう狙いで仕掛けてきてたか!

 それにしても……まさか、自分で自分のHPを削ってその後死んでいくとは思わなかった。これは、想定していた最悪のパターンを考えておいた方がいいのかも……。


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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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― 新着の感想 ―
[一言] うわ~ 他の群集にまで、スパイを入れてるんだ
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