第1205話 総力戦、開始目前
総指揮よりは負担は少ないけども、今回の連結PTの中でのリーダーを半ば強引に押し付けられる形でやる事になってしまった……。てか、主に首謀者はレナさんとベスタと同じ共同体のメンバーだけど!
まぁ経緯はどうあれ、引き受けると言った以上はしっかりとやるべき事はやっていこう。他にも人が沢山いるとはいえ、今の連結PTのメンバーは今回の作戦での重要な戦力だしね。それはそうとして……。
「えーと、俺ら『グリーズ・リベルテ』はスチームエクスプロージョンで吹っ飛んでいくのでいいとして……他のメンバーはどう考えたらいいんだ? レナさん、その辺は何か知らない?」
「その辺は全体のメンバーの割り振りが終わってからだねー。わたしとか刹那さん辺りはアルマースさんに乗せていってもらっても、森守りさん辺りに投げてもらってもいいし、まぁその辺は順番次第になるかも? 一緒に吹っ飛ぶ人もいるから、その辺の都合もあるしね」
「あー、流石にこの人数を一気に吹っ飛ばすのも厳しいし、人員が確実に揃うとも限らないもんなー。場合によっては、戻ってくるのを待つ必要もあるんだな」
「うん、そういう事。他のとこもPT編成やリーダー決めをやってるから、先にそっちを決めた方がいいかもねー。幸い、リーダーはすぐ決まったし?」
「……なるほど」
言ってる事の理屈は分かるけど、なんだか少し釈然としないこの気持ちはなんだろう? まぁどう考えても、ほぼ問答無用な流れでリーダーに決められた事だろうけど!
でも、普段から指示を出し慣れてるってのは重要な部分でもあるし……迂闊に戦力を把握しようとしてそれを口に出してしまったんだから、そりゃこうもなるか。俺だって自分でなければ推薦してるところだよ! うん、単なる自業自得だし、もう気にしない方向でいこう。
「さてと、そうなるとPTの編成からだけど、どうしたもんか……」
俺ら『グリーズ・リベルテ』と風音さんで6人PTにはなっているけど、バラバラにして役割に応じたPTへと再編成した上で連結PTにした方が……いや、それは手間なだけで、あんまり意味はないか。どっちにしても同じ連結PTになるだけだし、わざわざPT単位で分ける必要もない。
「おし、俺ら『グリーズ・リベルテ』の5人と風音さんで1PT、『三日月』の5人とレナさんで1PT、風雷コンビ、富岳さん、ディールさん、ジンベエさん、刹那さんの6人で1PTにしてくれ! PTリーダーは、俺、ツキノワさん、刹那さんで!」
「おし、了解だ!」
「拙者であるか!? その役目、承知したのである!」
レナさんをPTリーダーにしようかとも思ったけど、ツキノワさん達と一緒なPTにするになら多分レナさんではない方がいい。レナさん自体が駄目という訳ではなく、連携を取る上では普段から一緒にして活動してるメンバー同士の方がいいはず。
残りの1PTに詰め合わせてしまった感じはするけど、草原エリアと海エリアメンバーを固める感じで! こっちのPTにレナさんを入れようかと思ったけど、変に知り合いを分散させない方がいいだろ。
それに風雷コンビの龍がどういう経路で進化してるかは分からないけど、トカゲ経由の可能性は高い。それなら全PTに危機察知を持ってる人が複数人揃えられるし、これでありなはず! ……風雷コンビが他の人に、それを伝えるかが疑問ではあるけども!
「風雷コンビ、変に暴走すんじゃねぇぞ?」
「安心しろ、富岳。我らは普段は喧嘩しようとも、二度と競争クエストでは喧嘩をしないと誓っているからな! なぁ、疾風の!」
「前回はそれが負けに繋がってるから、反省してるんだぜ! なぁ、迅雷の!」
「……え、この2人に反省って概念はあったのか?」
「ディール、気持ちは分かるが……せめてオブラートに包め」
「おわっ!? 思いっきり口に出てたか!?」
「わっはっは! 気にしなくていいぞ、ディールよ! なぁ、疾風の!」
「好き勝手にやってんのは、間違ってねぇしな! なぁ、迅雷の!」
「地味に自覚はあるのに、止めれないし止まらないから、厄介なんだよねー、風雷コンビ……」
呆れた風なレナさんだけど、普段からそうだと本当に厄介だな……。でも、競争クエストでは喧嘩をしないと断言し切ってるのは、戦力としてやりやすいかもね。
「ねぇ、ケイさん? 時々、風雷コンビと一緒になってる事があるみたいだけど、何か特別な抑える手段ってあったりするの? もしあるなら、わたしは知りたいんだけどなー?」
「……そう言われても、特別これといって何も変な事をした覚えはないけどな?」
今までも何度か風雷コンビと一緒のPTになる事はあったけど……あ、そうか! 特別って訳でもないけど、思い返してみれば割と一貫してる内容がある! なるほど、風雷コンビの喧嘩が全くの無自覚ではないのなら、これがある時は暴走しにくいのかも?
「あー、レナさん。今心当たりに思い至った」
「え、ほんと!?」
「まぁなー。根本的に、俺が一緒にいた時って明確な目的がある時だったんだよ。風雷コンビの間で目的が完全に一致してる時って、全然喧嘩しないんじゃないか?」
「およ? ……そう聞くと、すごく当たり前な話なような? 風雷コンビ、その辺はどうなの?」
「何を変な事を聞いているのだ? 目的が同じなら、そもそも喧嘩になる理由がないではないか。なぁ、疾風の?」
「意見が食い違った時だからこそ、喧嘩になるだけだからな。なぁ、迅雷の?」
「およ!? あっさりと肯定されたんだけど!?」
あー、なんか地味にレナさんが頭を抱えてるんだけど……内容がシンプル過ぎて逆に気にしてなかった内容なのか? いや、止めに入るのは喧嘩が始まってからだろうから、そっちの印象が強過ぎるっていうのもあるのかも。
「富岳……なんだか当たり前の話なのに、すげぇ納得いかねぇんだが?」
「……ディール、気持ちは分かるが、今は飲み込んどけ」
「なんだか草原エリアの人達は苦労してそうであるな!」
「ま、俺らの海エリアにも、無自覚な暴走癖持ちのクジラがいるから多少は気持ちは分かるがな」
「それもそうであるな!」
海エリアで無自覚な暴走癖のあるクジラって……もしかしてシアンさんの事か? 最近はどういう状況なのかはよく知らないけど、思い当たる内容はチラホラと……なんだかそこに触れるとブーメランが飛んできそうだから、これ以上は考えるのはやめとこ。
「まぁその辺の話はここまでで! とりあえずサクッと連結PTにしてしまうぞー!」
「……それもそだねー。ツキノワさん、PTをお願い」
「ほれ、レナさん」
「ありがとー」
「拙者達もPTを組んでいくのであるよ!」
「てか、俺が今リーダーじゃねぇか。ほれ、刹那」
「おぉ、ジンベエ殿、かたじけない! 皆のもの、受け取れぃ!」
「大暴れしようではないか! なぁ、疾風の!」
「おうともよ! なぁ、迅雷の!」
「あー、まぁ風雷コンビと一緒に動く不安も多少は薄れたし、頑張るとするか!」
「ま、なるようにしかならねぇか」
なんかみんな色んな反応をしてるけど……って、PTリーダーは今は俺じゃなかった!? 今は……アルがPTリーダーに――
「ほれ、ケイ! PTリーダーの権限は必要だろ?」
「サンキュー、アル!」
これがないと、連結PTに出来ないからなー! 別にアルにやってもらっても問題はないんだけど、ここは自分でやっていきたいところ。既にみんなの方もPTを組んではいけてるから、手早く連結PTにしてしまおう。
「ツキノワさん、刹那さん! 連結を頼む!」
「おう!」
「承知である!」
<ツキノワ様のPTと連結しました>
<刹那様のPTと連結しました>
よし、これで今回の俺らの連結PTの結成は完了! どうやって浄化の要所まで吹っ飛んでいくかは、他の連結PTの様子を見る限りではもう少し後でになりそう。チラホラと誰がリーダーをやるかの話が聞こえてきてるからなー。
「さて、今のうちに実際の戦闘中の動き方を決めとくかー!」
「賛成なのさー!」
「誰がどういう風に動くのかは、連携する上で大事かな!」
「人数が多いなら、尚更にだよね」
「そだねー! 実際にその通りに動けるかは分からないけど心構えは大事だし、どういう方針でやるかはリーダーのケイさんに任せましょう!」
言い出したのは俺だけど、俺が役割を決めていく流れになってるんだけどー!? まぁその辺は指揮を取る人の役目ではあるもんな。当然と言えば当然ですよねー。
それじゃ戦闘メインで動く時や、休憩中の行動方針とかを決めていきますか! 基本方針としては3つの連結PTが交代で休憩をしながら、戦っていく事になるんだよな。それを踏まえた上で……ちょっとベスタにこれを確認しとこ。
「ベスタ、確認したい事があるんだけど、少しいいか?」
「ん? あぁ、構わんぞ」
「3つの連結PTで交代しながらって言ってたけど、回復するPTは回復のみか? 立ち位置の入れ替えとかは?」
「あぁ、その件か。そこはガチガチに固めておくと余裕がなくなる部分だから、その都度で俺が指示を出す予定にしている。だが、まぁ軽めに方針を言うなら、回復に回る方も全員が完全に手を緩める事は無いと考えておいてくれて構わん。連結PT内で、交代して休めるタイミングを作れるように考慮しておいてくれ」
「あー、そういう感じか! 了解っと!」
ふむふむ、連結PTでの交代がどの程度になるかは、もう臨機応変に対応するって前提か。だからこそ、それぞれの連結PTにリーダーを立てて、その中で細かい対応をしていけって感じになるんだな。
そうなると、さっきベスタが言ってたようにPTごとに回復するタイミングを作っていくのがいいか。なんだかんだで物理と魔法がバランス良く散らばってはいるし、攻撃時よりも休憩時の作戦を重点的に考えておいた方がいいね。だとすると……。
「おし! 攻撃の役割の時は基本的にPTごとに対応方向を変えて、各自の判断で攻撃しつつ、状況を見ながら俺の方で指示を出す感じでいくぞ! ツキノワさん、刹那さん、俺が指示を出してない時や間に合いそうにない時は、2人の判断で各PTに指示をよろしく。俺の指揮が崩れそうになったら、代理をレナさんに任せてもいいか?」
「あ、わたしが代理なんだね。うん、それは了解!」
「ま、全方位は1人じゃ対応し切れんからな。その為の個別のリーダーって事だし、万が一の代理をレナさんに指定しておくのも混乱しなくて済むか」
「ケイ殿が見ていない方向を、拙者達でカバーであるな!」
「そういう事! どこのPTがどの方向を担当するかは、その時次第だから今は具体的には決めておかないからなー!」
「うん、それは了解かな!」
「今から決めておける部分じゃないのです!」
「その辺は臨機応変にだね」
「状況次第では、俺に乗って全員突っ込むって事もありか」
「まぁアルに乗って、そういう可能性もありと言えばありだな」
とはいえ、それは実際に戦うまで確定出来る部分でもない。ベスタが明確に行動指示を出していなかったのは、事前に決めたせいで逆に選択肢を狭めるのを防ぐ為だろうね。
全ての状況に対処出来るパターンを全員で共有出来ないのであれば、作戦からズレた時に大きな隙が生まれるからなー。そう考えると、ジェイさんはよくそういうパターンで作戦立案をやってくるもんだよ。
まぁ地味に詰めが甘いとこがあるからこそ、今まで勝ててきてるんだろうけど……毎回、必ず用意された作戦を突破出来るという前提では考えない方がいいな。それは単なる油断で、それこそ負けに直結しかねない。相手が強くならないという前提は捨て去ってしまえ!
ともかく攻撃時の基本方針は今のでいい。細かいとこは実際の戦闘中に微調整するとして、休憩時の動きの基本方針を決めていこうか。
「次は回復中の行動方針だけど……これもPT単位で回復していくつもりで! ただ、全部のPTをそれなりに回復させないといけないから、基本的には魔法での防御を優先! 昇華魔法とかの対応はベスタが言ってた通りに!」
「およ? 昇華魔法とかはそれでいいけど、他の防御は魔法メイン?」
「一応、基本的にはなー。まぁ対応出来る場合は、物理攻撃での相殺を狙っていく感じで! 位置関係次第だから、絶対にこれでって訳にもいかないけどさ」
「あ、別に相殺してもいいんだね。うん、それなら了解!」
「それと、消耗し過ぎた人がいる場合はアルや風音さん、風雷コンビ……あとジンベエさんもいけるか? その辺のメンバーが消耗した人を乗せて、上空に退避で!」
「はい! 上空を抑えられてたら、その場合はどうしますか!?」
「その場合はそもそも逃げ道がないから、その場で耐えるしかないな……。まぁ状況次第になるから、あくまで基本方針って事で!」
「了解です!」
ハーレさんの杞憂は分かるけど、そこも実際の戦闘にならなきゃ分からない部分だからなー。ぶっちゃけ、全てにおいてそれが言えるけど……あくまで、今やってるのは連携が混乱しないようにする為の共通認識の作成。
いつも一緒に動いてるメンバーだけなら、その辺は普段から形成されてる部分だから必要ないんだけどね。たまに一緒になる程度とか、そもそも一緒に戦うのが初めてとかになると、その辺は甘く見てはいられない。
あぁ、そうか。ジェイさんの作戦って、その手の事前の連携訓練も含めてやってるから成立してるのか。この辺は勝手な推測でしかないけど『青の野菜畑』の人達はスクショコンテストの際にスキルのタイミングを合わせる特訓とかしてたしなー。
灰の群集にはそういう明確な指揮系統が存在せずに自由に動いてるけど……その辺が今は弱みになってきてる? いや、でもそういう事は強要するものでもないし、自発的にやってこそのものか。
「……赤の群集も、青の群集も、強くなってきた経緯が違うんだよなー」
「ん? ケイ、どうした?」
「あー、いや、ちょっと群集による違いってのを実感してたとこ」
「まぁそりゃあって当然の部分だしな」
アルも言ってるけど、違いはあって当然か。主導権争いが発生した青の群集や、一度は壊滅的にボロボロになって赤のサファリ同盟が支えて再建が完了した赤の群集、そのどちらも発生していない灰の群集。
戦い方に明確な違いが出てくる事には、何の疑問の余地もない。ただ、違いがある事を忘れずに、対処をやっていかないとね。
さて、あとは他の連結PTの方の準備が済めば、最後の全体的な整理をしてから、現地入りの待機に入って、それから青の群集との総力戦が開始だな!




