第1202話 戦力の集結
ヨッシさんの『強化統率』の大雑把な仕様は把握したので、ゾンビな大蛇は手早くみんなで仕留めて終了。
峡谷エリアにいたゾンビなトカゲと大差なくて、同じ手順で簡単に撃破っと。ヨッシさんの『強化統率』の統率個体と、アルから降りたサヤが引き付けてくれたから、遠距離からで楽だったなー。でも……
「あー、あと少しでLv9に上がりそうだったのに……」
今回の1戦でLvが上がるのを期待してたのに、本当にあと少しだけ足りなかった! くっ、でもこれ以上戦闘に行く時間の余裕はないし、流石に諦めるしかないか。
「上がらなかったもんは仕方ないだろ。……本当に微妙なラインで上がってないしな」
「同じくなのさー!」
「あー、みんなも上がってない感じかー。そりゃまぁそうだよな」
経験値がガッツリ入る戦闘は、この土日は本当にみんな揃ってでしかやってないしさ。ズレが生じる要素がないし、一気に上がるLvの上限があるような感じもあったしさ。
あ、そういえば格上のフィールドボスを倒した件って、その辺の報告はしたっけ? えーと、一応軽くまとめを確認っと。あー、Lv上昇の上限設定の可能性についてって項目を見つけたから、内容自体は伝わってるっぽいね。報告したかは自信ないけど。
「まぁLv的には不足はしてないから大丈夫かな!」
「どうも灰の刻印のステータス強化を見た限りでは、成熟体のLv10を過ぎたくらいが最高Lvで想定されてそうだしね」
「……今回は……灰の刻印は……使う?」
「あ、そういえばあれの効果って、再戦エリアだとどうなんだ?」
群集拠点種で刻んでもらえる灰の刻印だけど、新エリアの方では明確に効果があるのは確定だ。でも、再戦エリアではどうなのか……その辺の情報を全然知らない気がする。
あ、さっきの戦闘中までは浮いてたアルも一旦地面に着地したね。地味にもう色んな人が集まってきてる様子だし、見知った顔でもここから見渡してみるか。おっ、ツキノワさんがいるって事は、共同体『三日月』がこっちに――
「灰の刻印は、再戦エリアじゃ効果はないって話だな」
「あ、そうなのか。情報どうも……って、誰!? あ、富岳さんか」
誰が声をかけてきたのかと思えば、カンガルーの富岳さんか。ここにいるって事は、ベスタから声がかかった戦力の1人なんだな。風音さんとのトーナメント戦の決勝でもかなり強かったし、ここにいるのは納得。
でも、存在は割と最近知ったばかりだし、こうやって直接話すのは初めてな気がする。名前の出るチャット越しなら会話した覚えはあるし、半匿名情報共有板によくいるカンガルーの人ってこの富岳さんな気がする。
「チャット越しでは話した事はあっても、こうして会うのは初めてな気はするが、俺の事を知っててくれたのか。ケイさん」
「まぁ風音さんと勝負してたのは見てたし、峡谷での競争クエスト情報板でも名前は見たしなー」
「なるほど、あのトーナメント戦は見てたのか。あぁ、よく考えればあの時の風音さんと一緒に動いてるんだから、不自然でもなんでもないのか」
「はい! それは私が実況してました!」
「あー、なるほどなー。って事は、俺の戦闘スタイルは把握してもらってるって考えてもいいか?」
「あのトーナメント戦で見せたのが全てだとは思わないけど、基本戦術は物理魔法問わずの遠近両用のカンガルー2体での同調だよな?」
「おう、その認識でいいぜ」
地味に遠距離も近距離も物理も魔法もいけるんだよな、富岳さんのカンガルー。小さなカンガルーも運用方法は色々とありそうだし、面白い育て方をしてる人だよな。
「おっ、富岳もこっちに来てんのか!」
「ん? あぁ、ディールか」
「おっと、グリーズ・リベルテも当然いるよなー! おっす!」
「ディールさん、こんにちは」
「富岳さんとディールさんは、知り合いなのか?」
「あぁ、同じ草原エリア出身で、拠点も草原だからな。拠点が同じだと交流は多いもんだろ、アルマースさん。逆に拠点が違うと、途端に知り合いが減ったりはするが……」
「まぁ確かにそういう側面はあるにはあるな」
あー、富岳さんもディールさんも、2人とも草原エリア出身か。ヘビはどこのエリアでもスタート出来るんだから、ある意味凄い種族だよなー。てか、普通にプレイヤーのヘビの人を見ても大丈夫みたいだから、そこはちょっと安心。
それにしても……この2人は知ってはいるけど、他には知らない人が多いっぽい。名前だけは競争クエスト情報板で見た事がある人が何人か。オオカミ組やモンスターズ・サバイバルとかの共同体の人はこっちには来てないみたいだな。
「これ、どういう基準で集められてるのかな?」
「ベスタから見ての実力者だろうなー」
「その割にはいそうな人もいないよね? 紅焔さん達くらいはいそうな気がしたんだけど……」
「よいしょっと! 到着!」
「おわっ!? って、レナさんか!」
いきなり真上から何かが落ちてきたと思ったら、飛び降りてきたレナさんか。少し上を見上げてみれば水のカーペットが見えたからダイクさんが……って、離れていった?
「やっほー、みんな! 飛翔連隊なら、今回はカトレア防衛の指揮の補佐に回ってるよー。大きなとこの共同体をメインの指揮に据えて、小規模な共同体で補佐をしてる感じだね」
「あー、紅焔さん達はそっちか」
「さってと、わたしはちょっとベスタさんから聞いてる人以外は少しの間は離れてもらえるように話をしてくるよ! 富岳さん、ディールさん、風雷コンビの暴走防止はお願いねー!」
「「それは勘弁!?」」
おー、飛び降りてあっという間に駆けていったレナさんだけど……俺らのとこに落ちてくる意味あった? 転移してきたんなら……あー、そもそも転移してきたとは限らないのか。
というか、流れ的に転移してきてた方が変だな。今のは会話が聞こえてたから飛び降りてきた感じ? うん、そんな気がする。
ともかく今回は作戦メンバーに関係ない人が話し合いに混ざるとおかしな事になる可能性もあるし、ここは顔の広いレナさんの出番だな。元々そんなに大人数はいなかったし、レナさんなら変な事にもならないだろ。
「……そうか、今回は風雷コンビと一緒に動くのか」
「あー、それは面倒くせぇ!」
「ん? そんなに風雷コンビと一緒に動くのって面倒?」
はて? レナさんが追いかけ回していた光景は見た事はあるけど、風雷コンビと一緒に戦った時はそんなに問題らしい問題はなかったような? むしろ、凄まじい連携をしてた印象の方が強いんだけど……。
「いやいや、ケイさん、何言ってんの!?」
「あのコンビは強いが、他の人との連携はさっぱりだからな。喧嘩は多いし、あの2人の間での意思疎通は謎なレベルだし……だからこそ、まぁ見世物にもなってはいるが……」
「基本的に、あのコンビって人の話を聞かないからな!」
えーと、富岳さんとディールさんの反応を聞く限りでは……普段の風雷コンビってマイペース過ぎる感じか? あー、でもそう言われてみれば、思い当たらない事もない。
いつかの海エリアで止めるのも待たずに、電気の昇華魔法で魚介類の一網打尽とかをやって怒られてた事があったような気がする。確かアンモナイト戦……あれのリベンジも、そのうちやらないとなー。今回、刹那さんは来てないのかな? うーん、海の種族の人もいるにはいるけど、いるかどうかは分からん!
「……いや、ディール、待て。リーダーがいる時なら、言う事を聞くのかもしれん」
「あ、その可能性があったか!?」
「多分、それはあると思います!」
「あー、確かにいつも大体ベスタも一緒にいたような?」
「まぁ大体、いる事が多かったか……?」
正確には覚えてないけども、風雷コンビと一緒に戦う時にはベスタはいた事は多いはず。あれが何気に抑止力になっていた? 俺の出した指示を明確に無視して攻撃なんて事はなかったはずだし……。
「我らがどうかしたのか? なぁ、疾風の?」
「なんか俺らの話題か? なぁ、迅雷の?」
「おっ、風雷コンビも来たのか」
噂をすればなんとやら。風雷コンビの2人ともが雷属性の龍での登場……って、見た目が一緒だから名前をしっかり見ないとどっちがどっちだか分からん! 成熟体に進化して、立派な龍になってるけどさー。
「……全く……同じ……龍……?」
「そうなるな! なぁ、疾風の!」
「なんか知らんがそうなったな! なぁ、迅雷の!」
「……そう……なの? ……電気も……良い!」
「「おぉ、良さが分かるか!」」
「……魔法は……良い!」
「「そうだろう! そうだろう!」」
「……3rdで……電気魔法を……使いたい……けど……種族が……決まらない」
「それは確かに悩むところだな。なぁ、疾風の?」
「3種族までしか作れねぇから、厳選するしかねぇしな。なぁ、迅雷の?」
「……悩む」
あれ? なんか風音さんと風雷コンビが妙な感じで意気投合し始めた? いや、少し方向性は違うけど、拘りを持っているという意味では風音さんと風雷コンビは似てるのか。
風音さん、光属性で光魔法と氷魔法と電気魔法を持った3rdを作りたいって言ってたもんなー。種族を何にするかで悩んでるとこなのか。うーん、確かにそれは難しいところ……。
って、思いっきり話が脱線してる!? まぁまだ対戦開始ではないんだし、今から盛大に気を張っておく必要もないか。初対面だったり、交流が頻繁にある相手ばっかじゃないんだから、こうやって話しておくのも連携して動いていくには重要だよね。
「さーて、用事は終わり……って、およ? 風雷コンビと風音さんって、変わった組み合わせになってるね?」
「レナさん、お疲れ様です! そういえばダイクさんはー?」
「んー? ダイクなら、こっちの役目は遠慮したいって『浄化の守り』の運送防衛の方に行ったよー。ベスタさんはこっちでも良いって言ってたんだけど、ダイクが辞退しちゃってさ」
「そうなんだ!?」
「まぁそういう事もあるよなー」
ダイクさんは、今回は成長体や未成体の人の護衛側に回るのか。水の操作や水流の操作で、そういう人達を流していくとかも良さそうだよなー。
まぁこの辺は各グループでの個別の作戦になるだろうから、他の部分まで考えるのはやめとこう。今回は総指揮での一元管理じゃないんだし、各役割の指揮責任者が頑張るとこだしね。
「それにしても……総力戦ともなると知らない人が多いもんだなー」
「およ? ケイさん的にはそうなの? わたしはほぼ全員知ってるけど――」
「それはレナさんだからだよな!?」
「えー? 少なくともベスタさんは全員知ってるはずだよ?」
「あー、まぁベスタが声をかけたなら、そういう事になるのか……?」
でも、それはレナさんとベスタの2人が異常なだけであって、他の人に求めて良い水準ではない気がする。なんかデカい浮いてる赤いカメの人とか、空中を漂ってる巨大コンブの人とか、サンゴの塊のサメの人……って、最後のはジンベエさんか。普通に知ってる人がいたよ。
あ、他にも知ってる人がいたというか……こっちに近付いてきてるね。来てそうな予感はしてたけど、やっぱり来てたか!
「皆の者、緊急クエスト以来であるよ!」
「刹那さん、こんばんはかな!」
「おぉ!? なんかヒトデの一部が、タチウオを侵食してるのです!?」
「今の拙者は支配進化である! 目指すは同調であるが!」
「刹那さん、支配進化になったのか!」
「同調狙いって事は、遠隔同調を使う気か?」
「そういう事なのであるよ、アルマース殿! ケイ殿にも、今の拙者の実力を見せておきたいであるな!」
「そりゃいいんだが、先にすっ飛んでいってんじゃねぇよ、刹那」
「やや! ジンベエ殿、これは失礼致した!」
俺らに気付いて、すぐに慌てて近寄ってきたって感じだったもんな、刹那さん。近寄ってきたというよりは、風魔法辺りで吹っ飛んできたって言った方が正しいような気もするけど。
「ジンベエさんと刹那さんがこっちに参戦か。海エリアからもそれなりには来てるのか?」
「こっちのグループには海エリアの奴はそんなに多くは……いや、割合的にはそうでもねぇか? まぁとりあえずは、俺らは海水対策のメンバーだな」
「なるほど、海水魔法への警戒か」
「そういう事だ。アルマースさんやケイさんなら平気なんだろうが、海水で包み込まれると危険な事も多いからな」
あー、そうか。地味に考えてなかったけど、大人数で海水を生成して森を満たすって方法もあるよ。ここに来ている人達はすぐに海水へ適応出来る手段は何かしら持ってるだろうけど、それでも大きな隙が出来るのは確実だしなー。
ジェイさんも斬雨さんは海も陸も平気なんだし、総力戦の主力を海のプレイヤーにするって方法も考えられる。もしそうなった時の対処方法として、海エリアの有力なプレイヤーの参戦か。
他にもチラホラと海の種族の人もいるし、ゾウだったり、キリンだったり、ライオンだったり、ヒョウだったり、普段はあまり見かけない種族の人も結構いる。ははっ、これでこそ総力戦って感じだなー!
「ケイさん! ケイさん!」
「ん? どうした、ハーレさん?」
「なんかわくわくしてきたのさー!」
「あー、まぁその気持ちはなんとなく分かる」
「知らない人も多いけど、どんな戦い方をするのかな?」
「どうなんだろうね? 意外と似たような戦い方の人もいそうな気はするけど……」
「その辺は、実際にやってみないとなんとも言えないが……ある程度は把握してる人がいるだろ。ほら、そこにレナさんとか」
「あー、確かにそりゃそうだ!」
レナさんは全員知ってるって言ってたし、ベスタも把握してる相手だからこそ声をかけて集めたメンバーだろうしな。もう少しで集合時間の21時だし、ベスタが来てから割り振りをしてもらうのを待つ方が――
「およ? まぁそうなんだけど……ケイさん達って、自分達が関与してない時ってあんまり中継は見てない?」
「……そういう言い方をするって事は、もしかしてここに集まってる人達って割と中継に出てたりする? 例えばトーナメント戦とか?」
「全員が全員じゃないけど、結構な割合でそうだねー。というか、そういう意味ではケイさん達もあんまり例外じゃないよ?」
「確かにそれはそうなのです!?」
「ですよねー!?」
ちょいちょい俺らも模擬戦の中継ありで戦闘してたりするんだから、どう考えても例外じゃなかった! あー、そう考えたら何かしらのトーナメント戦で勝ち抜いてる人達が集まってたりしてそうだ。
連携して動けるかどうかという部分は別基準が必要にはなるんだろうけど、トーナメント戦は強い人を見極めるには良い手段か! 最近はスキル強化の種狙いでのトーナメント戦が多く行われてたとこだしなー!




