第1174話 ゾンビなトカゲ
移動妨害のボスを倒す為に、前のPTの戦闘の様子を見ながら待っていた。そして、順番がやってきたので実際に討伐をやっていこう! まぁ再出現するまで少し待たないといけないけどね。
いやー、それにしても他の人が倒してるのを見れば参考になりますなー。さっきのを見てた感じでは、スキルの構成次第ではソロ討伐は厳しそう? というか、物理攻撃だけじゃ仕留め切れなさそうな気がする。
「ふっふっふ、私達の番なのです!」
「まずはバラバラにするかな!」
「サヤ、そこはよろしくね。あ、ケイさん、識別はどうするの?」
「あー、どうしよう? 不明な部分も多いだろうし、なくても問題なし?」
「……いや、そうでもないんじゃねぇか? 特性で何の耐性持ちかは確認しておいた方がいいだろ。前に見た骨のトカゲも色々と新しい特性は持ってたよな?」
「あ、そういやそうだった!?」
「……そうなの?」
「あぁ、そうだぞ」
不明な属性とか種族とかの方に意識が行きまくって忘れてたけど、言われてみたら特性で色々とあったんだった! 何気にゾンビ系のと戦うのは初めてだし、その辺の確認はしておいた方がいいのかも?
「よし、それじゃ識別をしてから、ハーレさんと俺の連携の実験をやっていく感じで!」
「はーい! 識別は誰がやりますか!?」
「それなら俺がやっておくから、その間にケイとハーレさんは準備をしとけ。耐性があろうが、なかろうが、やるつもりだろ?」
「まぁそりゃな!」
「もちろんなのさー!」
正直、想定している内容がもし上手く出来ても、ここのゾンビには効きが良い気はしないんだよなー。でも、試すのに丁度いい相手もいないし、止める気はない!
まぁさっきのを見た感じでは、ゾンビなトカゲは完全に倒し切るのが少し手順が必要で面倒なだけで、決して強い訳ではなさそうだしね。それくらいの実験の対象には都合がいい!
おっと、そうしてる間に瘴気の霧が発生してその中からゾンビなトカゲが再出現してきたね。……他の今までのボスだったらプレイヤーがリスポーンした時みたいな出現だったけど、今回のは瘴気の霧での演出か。
「おし、それじゃ戦闘開始!」
「ケイさん、やるのさー! 『魔力集中』!」
「俺はこれだな! 『識別』!」
今回は集まった時からアルのクジラの上には乗ってなかったし、みんな地面に降りている状況からボス戦をスタートだ! てか、そもそもどのくらいのLvなんだろ? その点でもやっぱり識別は必要だったかも。
「私達は少し待機かな? あ、拘束くらいしておくのがいいかな?」
「ただ巻き付いただけじゃ意味がなさそうだし、ここは私がやるよ。冷気で動きを鈍らせるのなら拘束とは関係ないよね。『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
「……トカゲには……氷が有効。……でも……効いてなさそう?」
「え、あれ? なんでだろ?」
「……ゾンビだから?」
ヨッシさんが冷気で動きを鈍らせようとしてるけど、効果が出てない? てか、ゾンビに体温ってあるのか? これは普通の敵と同じとは考えない方がよさそうかも。
「あー、識別情報を伝えるぞ。名前は『不全オオトカゲ』で成熟体のLv4。属性は『瘴気』と不明な何か別の属性だな。特性は『打撃』『突撃』『大型』『復元』『刺突耐性』『氷属性耐性』『毒属性耐性』か。冷気で動きが鈍らないのは、『氷属性耐性』が原因だろうな」
「その特性ならそうだよね? なんというか全体的に私と相性が悪い気がするよ……」
「……そういう事も……ある。……代わりに……捕まえる! ……『ブラックホール』」
「吸い込まれ過ぎない程度には押さえるくらいは出来るよね? 『アイスクリエイト』『氷塊の操作』! あ、これならいけそう!」
「ヨッシさん、風音さん、ナイス!」
ヨッシさんとは本当に色々と相性が悪い感じだけど、風音さんがブラックホールで真上に吸い込んでいくのを防ぐように生成した格子状の氷の塊は上手く機能している。氷属性としての効果には耐性があっても、物理的な存在としては耐性は関係ないっぽい!
さて、良い具合に空中に浮いてるし、俺は俺でやっていきますか。これからやる事で実際に効果が出るか、そこが重要だしね!
<行動値を5消費して『白の刻印:守護』を発動します> 行動値 115/120(上限値使用:1)
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 114/120(上限値使用:1): 魔力値 299/302
えーと、とりあえず俺自身の方に白い六角形のマークは出て、生成した水から白光も出てるし、効果自体は出てるっぽい? でも、このままだと魔法産の水はすぐに消えるから大急ぎでこっちだ!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を3消費して『水の操作Lv7』は並列発動の待機になります> 行動値 111/120(上限値使用:1)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『水の操作Lv7』は並列発動の待機になります> 行動値 105/120(上限値使用:1)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
これで同時に8つの水を……って、しまった!? 分割して操作出来るのは、操作を指定してから……いや、待て? 弥生さんを相手にした時に、これって実行出来たよな? その辺って、どうなってる……?
あ、1つの生成した水を強引に2つの水の操作で細かく指定出来るっぽい!? 前はこんな事って出来なかった気がするけど、地味に水の操作Lv7になった事での精度強化か! ともかく落下し切る前に大急ぎで指定して……よし、いけた!
「こりゃ良い仕様を発見だな!」
「え、ケイ? 何か新発見でもあったのかな?」
「ちょっと水の操作Lv7で出来る事が増えてた内容に気付いてなー! いやー、改めてやってみるもんだ!」
無意識の内に何気なくやってた内容ではある。でも、これは普段通りの使い方をしてたら見落としてた内容かもね。……弥生さんと戦ってた時は妙な集中力だったけど、これでいけるとよく思って動いたな、俺!
よし、ともかくこれで白光を放つ水を8分割にする事に成功! そして、水を反発力を強めた板状にして、ゾンビなトカゲの上部に4枚、下部に4枚ほど設置! 出来るだけ隙間を減らすように、更に追加生成もしておこう。
「地味に生成した水が1つだけなのに、なんで2つの水の操作の対象に出来てるのか、不思議な状態だと思ったが……そういう事か!」
「……地味に……便利?」
「あくまで多分だけどなー!」
アブソーブアクアや水属性強化Ⅱとかの効果の可能性もあるけど、なんとなくそれは違う気がする。まぁその辺の詳しい検証は後だ、後!
「それじゃやっていくのさー! 『散弾投擲』!」
「って、それでやるんかい!?」
思いっきり振りかぶって投げたハーレさんだけど、まさかの散弾投擲だったよ! ここは普通の投擲から試していくかと思ったけど、いくらなんでもそれは……あ、やっぱりそうなるか。
「……あぅ、半分以上がそもそも外側で弾かれたのです……」
「そりゃそうだろ! あー、でも中に入ったのは跳ねまくってるな。トカゲに当たれば止まってるみたいだけど」
「これはなんとも微妙な結果なのさー!?」
「ケイさん、魔法の破壊は大丈夫そう?」
「んー、操作の時間の削れ方だけを見たら大丈夫っぽいけど……今のだと根本的に破壊出来るだけの威力になってたかが怪しいぞ? ヨッシさんの氷も平気っぽいしさ」
「あはは、まぁそうなんだけどね」
操作時間の削れ方自体が微々たるもんだしなー。ハーレさんの狙い自体は分かるけど、流石に投げる位置が悪かったとしか言いようがない。それをするのであれば――
「だったら、こうなのさー! サヤ、一緒に近くまで来てー!」
「あ、ハーレ!? 待ってかな!」
「『略:傘展開』『略:ウィンドボール』! えいや!」
ちょ!? トカゲの近くまでクラゲの傘の中に風魔法を撃ち込んで飛び上がっていく!? そのまま突っ込むとハーレさん自身を弾き飛ばす可能性があるから、当たりそうな部分を大急ぎで広げて――
「ケイさん、ナイスなのさー! 『白の刻印:増加』『並列制御』『拡散投擲』『略:触手伸長』!」
「わっ!? ハーレ、ビックリするかな!?」
「先に言ってたら、面白みに欠けるのさー!」
「だからってこれはどうかと思うんだけど!? これ、氷が保たない!」
「わわっ!? なんか、予想以上に凄い事になってるのです!」
ハーレさんが一瞬だけ俺の水の囲いの中に入って、すぐに近くまで追いかけてきていたサヤのとこまでクラゲの触手を伸ばして戻ったから塞ぎなおしたけど……こりゃ確かに凄まじい。
俺の水の操作の時間はガンガン減ってるけど、どんどん強まる複数の銀光と白光を放つ弾で生成した水自体は破壊されそうにないね。あ、ヨッシさんの方の氷塊は破壊されたか。
「おぉ! 凄い威力になってるのさー!」
「……あはは、もう捕まえておけないけどね。これ、地味に凶悪なコンボかも?」
「これは確かに……そうかな」
「どうも、ケイの魔法の水が破壊される様子もないしな。白の刻印:守護はスキルの相殺防止にも使える訳か」
「みたいだなー! つっても、この威力は水の操作の方がそんなに保たない!」
拡散投擲自体がそもそも全弾当てる事を想定してない仕様っぽいから、外れた弾まで俺の水で全て跳ね返っていく状況だと凄まじい強化になっていってる。
いや、強化自体は上限に達してる感じだけど、上限に達した状態の弾が跳ね返る事で加速して、そこでダメージの上乗せになってるっぽい。
そして無駄弾が出てないから、その分だけゾンビなトカゲにダメージが入っていってる。……ただ、威力の割にダメージが少ないな?
投擲への耐性は無かったけど、弾が小さければ刺突扱いになるのか? 弾が大きければ打撃になりそうだし、その辺はありそうな……いや、そこは後で考えよう!
「もう水の操作の時間切れだ! 多分、周囲に残った弾が散らばるけど、ダメージは無くても要注意で!」
「この勢いだと、私やヨッシなら軽く吹っ飛ばされそうなのです!」
「だろうな! おらよ! 『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」
アルが根の操作で可能な範囲で、俺の水の操作とみんなとの間に根を張り巡らせてくれたね! これなら操作時間は削られても、味方の攻撃で根が千切れる事は無いから大丈夫……って、そうでもなかったー!?
どうしても根だから、隙間から普通に飛んできてロブスターの頭に直撃して朦朧が入ったんだけど……。そういや、ダメージはなくても味方の攻撃でも朦朧にはなるんだった!
「ケイ、大丈夫かな!?」
「少し経てば治るだろうから、それは問題なし。その間に、トカゲの方を頼んだ!」
「任せてかな! 風音さん!」
「……ブラックホールの……キャンセル?」
「うん! お願い出来るかな!」
「……任せて」
「ありがと! みんな、倒す為にまずはバラバラにするかな! 『爪刃乱舞』!」
「おう、任せとけ! 要は切り刻めば良いだけだ! 『並列制御』『リーフスライサー』『リーフスライサー』!」
「氷塊の操作でさっきのがいけたなら、これでもいけるよね! 『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷の操作』『氷の操作』!」
「わー!? 私は地味に何も出来る事がない気がするのです!? はっ!? 風音さん、ファイアインパクトを下さいな! 『魔法弾』!」
「……分かった。……『ファイアインパクト』」
「これで切り離されたのは焼却処分なのです! 『連投擲』!」
「まだまだいくかな! 『爪刃乱舞』『爪刃乱舞』!」
朦朧でまともに操作が出来てない状態だけど、その間に続々とゾンビなトカゲがバラバラにされていく。うーん、グロ表現は控えめで出血とか、切断の断面とかはしっかりとは表現されてないけど、それでも苦手な人は苦手っぽい光景だなー。
それにしても、切り離した部分がくっ付こうと動いているのが不気味ではある。これが『復元』の特性なのか? 不全トカゲって名前だったけど、不完全な姿に修復していく状態なのかも。
うーん、こうなるとゾンビと言っていいのか微妙な気分になってくる。ゾンビって、破損部位が治るもんじゃないよな? 正式な名称が確定するまで、便宜上でゾンビって言い方をしてるだけか?
あ、そうしてる間に朦朧は回復したかー。もうトカゲは相当バラバラになってるし、HP自体はあっという間に尽きていた。となれば、後は復元出来ないように消し炭にするのみ!
「さて、これだけバラせば十分だろ! ケイ、朦朧はもう治ったか?」
「バッチリだ! 風音さん、ラヴァフロウで仕留めるぞ!」
「……うん! ……『ファイアクリエイト』」
倒し方のコツさえ分かっていれば、どうって事もない相手だなー。という事で、トドメといきますか!
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 108/120(上限値使用:1): 魔力値 299/302
朦朧になってる間に、少しだけど行動値も魔力値も回復してたんだな。まぁそれはいいとして、風音さんの生成した火に重ねるように土を生成!
<『昇華魔法:ラヴァフロウ』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/302
風音さんと2人での発動だから、結構な規模と威力だなー! 生成した溶岩にバラバラになったゾンビなトカゲの残骸が呑まれていくし、これで多分倒せるはず!
<ケイが異形のモノを討伐しました>
<『刻印石』を1個獲得しました>
<ケイ2ndが異形のモノを討伐しました>
<『刻印石』を1個獲得しました>
おし、とりあえず刻印石は手に入ったけど……討伐報酬では進化ポイントは手に入らないっぽい? もしかして討伐報酬が貰えるようになるのは、正式に名前が決まってからか? それとも、そもそも貰えない仕様?
うーん、そう考えるとなんとも味気ない結果。まぁ刻印石が手に入っただけ、よしとするかー!
更新頻度の変更のお知らせ
連載再開時にお知らせはしましたが、来週の更新からは隔日連載へと変更になります。
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また、カクヨムの方で二週間分ほど先行させる予定なので、早めに読みたい方はそちらへどうぞ。




