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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第33章 競争クエスト、進行中
1163/1633

第1163話 赤の群集の策略


 弥生さんとシュウさんを倒せたのは良かったけど……俺らの今の状況としては最悪過ぎる! くっ、弥生さんが赤の群集の作戦に全面的に協力してた事や、そもそもの標的が俺だったって事を完全に見誤ってた!?

 それを暴露したのは、もう既にやるべき事が終わっているから……? いやいや、まだ最終的な占拠をするのが残って――


「あー!? 群集支援種の『エル』!? え、いつの間に確保してたの!?」

「げっ!? 既に群集支援種を確保済み!?」


 レナさんが驚いた声を出して見ている先には、クジラの人の背の上に乗っているサソリの姿がある。参戦マークの表示のない赤いカーソルって事は、もう占拠が可能な段階になってる!?

 ヤバい、これは非常にヤバい! 意地でもここは阻止しないと、このまま出発させたら、ベスタ達の元へ占拠を実行する役目が揃ってしまう!


「ちっ、それだけは絶対に隠しておけと言ったのに……まぁいい、ここで誰も逃がさなければ済むだけだ! いくら死んでもいいから、殺さずに動きを止めろ!」

「「「「「「おう!」」」」」」

「わっはっはっはっは! 策にハマったな、ケイ! 『エレクトロボール』『エレクトロボール』!」

「次々いくぜー! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」

「状態異常をぶっ放せー! 『エレクトロインパクト』!」

「動きを封じるよ! 『ポイズンクリエイト』!」

「「「「「「『ポイズンクリエイト』!」」」」」」

「間違ってもウォーターフォールにすんなよ! 『アクアクリエイト』!」

「「「「「「『アクアクリエイト』!」」」」」」


 ちょ、待て待て待て! 何重にポイズンミストを発動して……って、考えてる場合か! ダメージをあまり与えないのが目的なら、麻痺毒と神経毒でくるはず! てか、地味にフラムが混ざってたのがうぜぇ!


「全員、俺の元に集めるぞ! 『並列制御』『根の操作』『根の操作』!」

「ヨッシさん、抗毒魔法!」

「了解! 『アンティヴェニン・デュオ』!」

「『小型化』! 電気からの麻痺は私達で防ぎます! カステラ! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」

「うん! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」


 よし、ライルさんとカステラさんが俺らを岩で覆って電気を流す為の海水の遮断は出来たし、既に広がっていた麻痺毒と神経毒の霧はヨッシさんの抗毒魔法で防げた。

 みんなをアルが根の操作で引っ張って、1ヶ所に集めてくれたのも大きいけど……肝心のアルは麻痺毒と神経毒の両方を受けたか。あと紅焔さんと風音さんは連れて来れなかったな……。


 これって全くダメージを受けない訳でもないし、防がない方が良かったのか? いや、そこから拘束されたらどうしようもなくなるし、今の状況はあくまで対応の為の時間稼ぎ!

 もうこの際、俺らが戻って駆けつけられないのは仕方ないけど、ベスタに今の状況を伝えないと! その為にはどうすればいい? 今からここで誰かがフレンドコールで……いや、向こうの様子も分からないし、何より今は周囲から目を離すのは危険過ぎる。


 報告してる最中に書き込む余裕がなくなって途切れるような状況になったら、向こうに混乱を招く事になって最悪だし……何か、何か安全な状況を作り出して報告する手段はないか!?


「……ケイ、俺の手段を使え」

「あっ、そうか!」


 そうか、十六夜さんの暴発なら……いや、十六夜さんには限らないのか! 全員が全員持ってる訳じゃないだろうけど、向こうがダメージを抑え気味にして動きを封じるつもりなら、自分達で自滅していけばいいだけ!

 それで敵の些細なダメージで良いから、それで死んで安全圏に戻ってから連絡をすればいい。ベスタ自身が情報を見れてなくても、常時確認してる人が近くにいるはずだから、伝令は回るはず!


「……ちっ、嫌な予感がしやがる。出発を急げ! それと早く岩を壊せ!」

「おうよ! 『並列制御』『ウィンドクリエイト』『ウィンドクリエイト』!」

「ライルさん、カステラさん、耐え切れるか!?」

「流石に昇華魔法相手では保ちませんよ! 単独発動のようなので、少しはマシですが!」

「なんとか耐えてる間に、対策をよろしく!」

「そこは任せとけ! 手段はあるからな!」


 十六夜さんでなくても良いとは考えたけど、大急ぎでどうにかするなら使い慣れている十六夜さんに任せるのが手っ取り早い!

 可能であれば、今防いでいるストームを利用してしまいたいとこだな。てか、風で音が掻き消されてるっぽいから、そこは地味にありがたい!


「レナさん! 悪いけど、先に戻ってベスタへ連絡を入れてくれ! そこからなんとかこの状況の対処を頼む!」

「……間に合うか分からないけど、任されたよ! 十六夜さん、お願い!」

「……あぁ、任せておけ! ……『暴発』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』『鋏衝打』」

「ぐっ! うっ! わっ! ぐっ!」


 十六夜さんのヤドカリのハサミで何度も殴られ、暴発の効果で無差別ダメージになった時にレナさんのHPがどんどん削られていく。よし、この調子なら残りHP 1まで削れるはず!

 なんかレナさんを一方的に殴りつけている光景は心苦しいんだけど、そこはすみません! いや、もう本当に手段がない!


「もう長くは保ちません!」

「ケイ、私達はどうしたら良いのかな!?」

「そこは俺が引き継ぐ! あー、暴発を持ってる人は十六夜さんと一緒に頼む!」

「私、持ってないかな!?」

「今はともかく大急ぎなのさー! 『暴発』『狙撃』『狙撃』『狙撃』!」

「この状況じゃ仕方ねぇか! 『暴発』『顎連斬』『顎連斬』『顎連斬』!」


 生成した岩は慌てて生成したものだから、隙間があるのは仕方ない。でも、まだ中で俺らが何をしているかまでは把握し切れてないはず。レナさんのHPが尽きる寸前までは、今やってる事は隠し通さないと!

 今は並列制御で完全に守りつつ狙いは誤魔化して……って、並列制御にするには残り行動値が足りない!? 風音さんなら……ブラックホールを結構使ってたから余裕があるとも思えないし、そもそも風音さんと紅焔さんは、俺らの間近には来れてないまま!


「ライルさん、カステラさん、再発動は!?」

「私は無理です!」

「僕はなんとかギリギリ!」

「よし、それじゃカステラさんは上部に再発動を頼む! 俺は周りを囲むから!」

「分かった!」


 その間に俺は何をやってるかを隠す為に、俺は俺のするべき事をやっていこう! 急がないと、ライルさんとカステラさんの今の岩の操作が保たない!

 てか、俺らを殺さない為に、わざと威力を抑えてるよなー!? そうじゃなきゃ、もう数の暴力で突破されてるはず。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 26/111(上限値使用:10): 魔力値 130/302

<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します>  行動値 7/111(上限値使用:10)


 あー、もう残り行動値に全然余裕がない! 魔力値もかなり減ってるし、ポイズンミストの水成分だけ吸収して……いや、抗毒魔法の効果範囲外に出るのはダメか。それにもう岩の操作を発動したから、今更遅過ぎる。


「なんとか保ちましたか!」

「再発動をいくよ! 『アースクリエイト』『岩の操作』!」


 よし、これでストーム自体は凌げそう。でも、不意に解除したら変に勘繰られそうだし、ここは念には念を入れておくか。


「風音さん、紅焔さん、なんでもいい! 気を逸らしてくれ!

「……それなら爆風で……毒を吹き飛ばす! ……『共生指示:登録2』!」

「おっしゃ、任せとけ! 『ファイアクリエイト』!」


 風音さん、ナイス! あくまで爆風で毒の霧の排除を目的としてると宣言してくれたね! それにあっさり引っかかってくれるかは分からないけど、警戒してくれれば今はそれで十分!


「シュウさん、クジラを守ってくれ! ハッタリの可能性が――」

「いや、これは全然狙いがこっちじゃないね。それに確実に威力不足だけど……なんの悪足掻きだろうね?」


 2人での発動にしては控えめだけど爆音が響いたし、岩への衝撃が少なからずあった。これなら毒の霧は排除出来たか? でも、ストームの発動は止まっていない? へぇ、上手い感じに発動が止まらないように調整してくれたか!


「ちょっと待て、防御してるのにストームをなぜ止めない!? 一体この状況で何をする気だ? これだから、危険なんだよ、ケイさんは! 出発、急げ!」

「固定が完了したから、もう出発が出来る!」

「それならすぐに出発だ。ルアー、そっちの指揮は任せたぞ!」

「分かっている! スチームエクスプロージョンを発動しろ!」

「おう! 『魔法砲撃』『並列制御』『アクアクリエイト』『ファイアクリエイト』!」


 なんかウィルさんの戸惑ってる声が色んな音に混ざって聞こえてたけど、クジラはもう出発した!? いや、でも一瞬で着く訳じゃないし、気を逸らすのには成功したし、こっちも準備は完了だ!


「ケイさん、準備完了だよ!」

「ベスタへの連絡はレナさんに任せた!」

「任せて! それじゃ行ってくるね!」

「ほいよっと!」


 操作してる岩をズラせば、そこから出たレナさんが発動が終わりそうなストームの中に飛び込んでいった。今のレナさんの残りHPは1だし、終わりかけの昇華魔法の威力でも死ぬには十分!


「っ!? 攻撃を止めろ!」

「もう遅いよ! それじゃねー!」

「ちっ! やってくれたな!」


 いやいや、それは俺らが言いたい事だから! ともかく、レナさんを死なせて安全圏へと戻す事には成功だ! 俺らは、多分もうどうやっても間に合わない。レナさんも間に合うかは……時間との勝負だな。

 あー、みんな……すまん! 弥生さんとシュウさんを1回倒す事には成功したけど、結果的には完全に弥生さんとシュウさんを抑え切る事が出来なかった。失敗じゃん、今回の俺らの役目……。


「……ケイ、気にすんなよ。正直、今回はウィルさんにしてやられただけだ。むしろ、俺らが警戒されているのを分かってたのに、俺らの抑えに弥生さんとシュウさんが出てくる事を想定してなかったのが失策だ」

「……アル」

「俺らは俺らで出来る事をやった。後は、みんなに任そうじゃねぇか」

「アルの言う通りかな! あの弥生さんとシュウさんを倒したんだから、そこは誇っても良いとこだと思うよ?」

「……サヤ」

「あー、気持ちは分かるんだが……まだここの状況は終わってねぇぜ? どうすんだ、ここから?」

「……ここからかー」


 アルとサヤが励ましてくれたし、そこは気にし過ぎない方が良い気はしてきた。それはそうなんだけど……今をどうするかという紅焔さんの意見はもっともだよなー。

 とはいえ、ある意味ではお互いの作戦が終わって、残りは占拠する場所での攻防戦の結果次第。……何か出来る事ってあるのか? 残ってる魔力値を使って昇華魔法でも適当にぶっ放す? いや、それよりもみんなでお互いに暴発で削り合う方が――


「……ウィル……随分と変わった」

「風音さん、久しぶりだな。移籍が可能になった後から行方知れずになってたと聞いてたが……灰の群集にいたのか」

「……少し前まで……無所属だった。……あの件……黒幕がいたのは聞いた」

「そうか……。悪かったな、あの時は色々と不快な思いをさせちまって……」

「……もう過ぎた事……それに……良い出会いもあった」

「そうか、そりゃ良かったよ」


 えーと、地味に昔話みたいな状況になったんだけど……ウィルさんと風音さんって面識があったんだな。まぁ赤の群集での騒動の件で嫌になって飛び出てきた風音さんと、その問題の発端側にいたウィルさんだし、何かしらの因縁があってもおかしくはないか。

 というか、周囲の攻勢が収まった? これ以上ここで戦っても意味はない状態だし、ウィルさんと風音さんの会話を気にしてるっぽい? うーん、まぁここからなら拘束されたところでどうにもならないし、どうしたもんか。


「みんな、もう交戦状態ではなくなったみたいだし、岩の操作を解除してもいいか?」

「……もう行動値がないから、これ以上はどうしようもないかな」

「私も同じだね。後は結果を見守るだけでいいんじゃない?」

「ヘトヘトなのです……」

「俺も同意だな。風音さんとウィルさんの話も気になるとこだし」


 ライル達も頷いてるし、全員の同意を得られたって事で良さそうだね。という事で、岩の操作を解除! ……毒の霧も消えてるか。


「なんだ、ケイさん? もう悪足掻きは終わりなのか?」

「もうここまで来たら、お互いに待つのみだろ?」

「……違いねぇな。全員、戦闘態勢は解除だ! 勝敗が決まるまで、もうそう時間はかからんだろうしな」


 そのウィルさんの言葉を聞いて、赤の群集の人達も完全に戦闘を止めていく。ここにいる誰もが、今ここで戦う意味はない事は分かってたか。

 悪足掻きをしてもいいけど……現状では暴れない方が意味がある。向こうが俺を抑えておきたいなら、今はここで大人しくしておいて、増援戦力をこれ以上移動させない今の状況の方がいいはず。多分、それは向こうも分かった上での戦闘態勢の解除だろうな。


「……本当に変わったね」

「あぁ、変わった。一度、どん底まで落ちた信頼を、なんとか取り戻せたからな」

「……それもだけど……今回は……ちゃんとした勝負になった」

「ははっ、そう言ってくれるとありがたいもんだな」


 ちゃんとした勝負か。そうだよな、赤の群集は第1回の競争クエストではちゃんとした勝負になってなかったエリアが多かったんだし、今回はそれが出来た事になるんだよね。


 俺らの戦いは真っ正面からの衝突じゃないけど、作戦の出し抜き合いって形で競い合った。弥生さんやシュウさんという突出した戦力を十全に活かす為の作戦も、それを潰す為の作戦も、集団での対人戦なら真っ向勝負だ。

 流石に個人での対人戦だと微妙なところだけど、集団戦なら連携を取る為に作戦があるには当然の事。……そういう意味では、昨日の青の群集の奇襲も真っ向勝負ではあるだけどね。


「……まだ終わってないけど……今回は楽しかったよ」

「ははっ! 負けた後に、同じ事が言えるのか?」

「……自信満々だね」

「そりゃ、味方を信じなくてどうするってんだ?」

「……それもそうだね。……悔しい思いをするのは……ウィルになる?」

「さぁ、そこはどうだかな?」


 なんだか他の人が会話に加われる状況じゃないけど、今はこれでいいのかもね。一時期は酷い事になってた赤の群集の面影はもうどこにもないんだな。……多分、最後に霧の森が残りそうではあるけど、そこでももう1度戦う事にはなりそう。

 その時は、今回の件の反省を活かしていかないとなー。もう今の灰の群集は、一時の一強状況ではなくなった事をしっかり認識しておこう!


 さて、このまま勝敗が決まるまで一気に動くのか、それとも凌ぎ切って次の一手が必要になるのか……どっちに転ぶ? その辺の状況次第では、また大暴れを開始だな。

 

 

更新お休みのお知らせ


まだこっちには少し予定には日数があるんですか、もう1本のオフライン版の方が間もなくなので一応こちらでも。

第33章が終わった時点で更新お休みになります。

詳細については、活動報告にて!

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自力での電子書籍版もありますので、よろしければこちらもどうぞ。
大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
ケイ以外の視点での外伝も収録!

最新巻はこちら!
電子書籍版『Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜』第20巻

これまでの第1巻〜第19巻はこちらから。
電子書籍版『Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜』シリーズ
― 新着の感想 ―
[一言] あれ~ |ω・*)イブキ来ない…………←期待してた?
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