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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第32章 次の1戦に向けて
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第1104話 決勝トーナメントの開始


 風音さんから決勝トーナメントの出場者が決定したという事で、情報共有板からは離脱。海エリアでの対戦の様子とか、他の傭兵の人の様子とかも聞きたかったけど、まぁ時間切れだから仕方ない。

 でも、ザックさんらしき人が赤の群集と青の群集の総力戦へと偵察に行くという情報は貴重だよね。それに、みんなに検証案件を頼めたのも良かった。正直、自分でやれって言われなくてよかったー。まぁそれを言われたら、やったとしても報告する気が無くなりそうだけど。


「……それじゃ行ってくる」

「風音さん、頑張れよ!」

「実況の立場だから贔屓は出来ないけど、応援してるのさー!」

「……うん、頑張る!」


 それからアル、サヤ、ヨッシさん、桜花さん、それにこの場に集まってるみんなに声援受けながら風音さんは樹洞を出て、決勝トーナメントに参加しに向かっていった。多分、開催はエンでかな? 灰のサファリ同盟が主催だし、本部がある森林深部でやるのが自然な流れな気がする。


「情報共有板の方は時間の関係で少し中途半端にはなりましたが、まもなく決勝トーナメントの開催です! 桜花さん、トーナメント表の表示はもう可能でしょうか!?」

「あー、まだ対戦の組み合わせが確定してないから少し待ってく……いや、丁度確定になったな。決勝のトーナメント表を表示するぞ」


 桜花さんのその言葉と共に、トーナメント表が投影されていく。4つのブロックから勝ち抜いてきた人だから、決勝トーナメントの出場者は4人。その中で知っている名前は2人で、紅焔さんと風音さんだな。


「ケイさん、アルさん、本格的に始めるけど、解説とゲストはどっちがいいですか?」

「ん? 今回は魔法Lv10を目指すって趣向なんだし、ケイが解説でいいだろ」

「使うの、Lv10までの魔法じゃないよな!?」

「でも、Lv9くらいまでは上げてきてんじゃねぇか?」

「あー、それはあるかも……」


 全員が魔法Lv10に到達出来る一歩手前まで来てる状態じゃなきゃ参加はしてこないだろうし……って、そう考えたら風音さんもその状態なのか。

 まぁ最低でも補填でスキル強化の種1個は配られてるし、共闘イベントには参加してなかったっぽい風音さんでもスキル強化の種を手に入れる機会はあったのかも? その辺、後で聞いてみよ。トーナメント戦に参加する為に必要な情報ポイントは持ってるみたいだし、俺らの知らない何かがありそうだよね。無所属の要素は知らない事だらけだし。


「それじゃケイさんは解説で、アルさんはゲストでいくのさー!」

「おう!」

「まぁそれでいいかー」


 ぶっちゃけ、ゲストとは言ってももう1人の解説みたいなもんだしな。どっちがどっちでも大差はない気がする。ある意味、1番代わりがいないのが進行役の実況なのかもね。


「さぁ、それではおまたせしました! トーナメント戦『魔法Lv10を目指せ!』の決勝トーナメントの中継を開始していきたいと思います! 実況は私、『グリーズ・リベルテ』所属のリスとクラゲのハーレでお送りします! そして解説とゲストにはこの2人をお招きしています! 自己紹介をお願いしてもよろしいでしょうか!?」

「お招きっていうか、普通に同じ共同体で一緒に来ただけどなー! えーと、解説役を任された『グリーズ・リベルテ』所属というかリーダーのコケとロブスターのケイです。よろしく」

「同じ『グリーズ・リベルテ』所属の木とクジラのアルマースだ! ゲストってなってるが、実質的に解説はやっていくつもりでいる!」

「はい、ありがとうございます! 既にこのトーナメント戦の趣旨は皆さんご存知かと思いますが、ここで改めて振り返っておきましょう! 今回は今日の午前中に判明した魔法Lv10に至った時に手に入る、同属性の魔法を問答無用で吸収するアブソーブ系の所持者を増やそうという目的となっています!」


 あ、その辺の説明は一応やるんだね。みんな多分知ってると思うけど、開始までに少し時間があるからそれまでの繋ぎとしてやってる感じだろうなー。


「そして、予選ブロックを勝ち抜いたのがこちらのトーナメント表に表示されている4名の方となります! 今回は3位決定戦は実施しないようになっていますね! さて、それでは第1回戦の組み合わせを見ていきましょう!」


 なるほど、今回の趣旨としては3位決定戦をやる意味はないから省いてるのか。まぁ32人の参加ではスキル強化の種は優勝した人しか手に入らないんだし、そこは仕方ないな。むしろ、その1戦分の時間を削って次のトーナメント戦を開催した方がいい。


「第1回戦の対戦カードはこちら! 草原ブロックから勝ち抜いてきた富岳選手と、森林ブロックを勝ち抜いてきた紅焔選手という組み合わせになっております!」


 ん? 草原ブロックを勝ち抜いてきた富岳さんって、初めて見る名前な気がするから種族がさっぱり分からん。まぁ知ってる人ばかりになる訳じゃないのは当たり前だけど、解説としてはこの辺はどうなんだ?


「ハーレさん、誰がどういう種族かはまだ言わない方がいいか? 知ってる人ばっかじゃないんだけど」

「はい、そうですね! 私も決勝トーナメントへの出場者全員の種族を把握してはいないので、種族に言及するのは実際に対戦が始まってからでいいかと思います!」

「ほいよっと」

「ま、知り合いの方に変な贔屓が入っても駄目だしな」

「そういう事になりますねー! それでは続いて、第2回戦の対戦カードです! 荒野ブロックから勝ち抜いてきたボーリング選手と、森林深部ブロックから勝ち抜いてきた風音選手という組み合わせですね!」


 荒野ブロックのボーリングさんも全然知らない人だね。この人がどういう種族か気にはなるけど、風音さんファイト! 解説という立場上、表立っては応援出来ないけど内心では応援しとくぞ!

 さて、これで決勝トーナメントに出場する人は全員出揃った。紅焔さんと風音さんのドラゴン対決が実現するとすれば、決勝戦になる訳だ。まぁ2人とも勝ったらだけど。


「現在は第1回戦の富岳選手と紅焔選手が、対戦の開始の準備をしているようです! この間に、今回のトーナメント戦の設定についてのおさらいをしていきましょう!」


 おさらいって言っても、俺らは来たばっかだから内容は把握してないけどね! 他の人の出入りはほぼ無かったから、この確認は俺らの為のものだよな。普通に中継画面に表示はされてるけど、待機時間を有効活用するには丁度いいか。


「対戦エリアは海エリアを除く、他のエリアの中からのランダム指定となっております! また、天候や昼夜もランダムとなっていますね! ただし、アイテムの使用は不可! こちらの音声も届かないようになっています! もちろん中継の対象は灰の群集のみ! この辺りはどう見ますか、解説のケイさん、ゲストのアルマースさん?」

「これだけランダム要素にしてるなら、運の要素が大きく絡んでくるだろうなー。火属性メインなのに雨で荒野とか引いたら、結構悲惨だろ」

「俺もそこは同意だ。アイテムの使用を不可にしてるのは、逃げに徹して昇華魔法をぶっ放すって手段をさせない為だろうな」

「はい、ご意見ありがとうございます! 運も実力のうちで、ひたすら逃げて昇華魔法頼りにするのを防ぐという事のようですね。それぞれの対戦で、どのような条件での対戦になるかが勝敗を左右するかもしれません!」


 まさしくその通り。流石に海エリアだけは除外してるけど、地の利を得れたら圧倒的な優位性を得られる可能性はあるから、その辺は本当に運次第。


「そうしている間に富岳選手と紅焔選手の準備が整ったようです! 間もなく、対戦エリアへと転送がされていきますね!」

「どんなエリアになって、どういう種族なのかが楽しみだな」

「さて、どんな勝負になるのか」


 紅焔さんが火属性の魔法と近接攻撃を使う魔法寄りのバランス型の龍なのは知ってるけど、対戦相手の富岳さんについては一切の情報を持っていない。その辺、しっかりと見極めて解説をしていかないとね。


「さぁ、両者の転送が終わり、対戦エリアへと転移してきたー! 富岳選手の種族はカンガルー、紅焔選手は西洋系のドラゴンとなっています! この辺りをどう見ますか!?」

「紅焔さんは見た目通り火属性だろうけど、富岳さんの方は特にこれといった属性らしき様子がないな? カンガルーの拳に白い模様が出ているし、特性に打撃は持ってそう?」

「このトーナメント戦の趣旨からして、高Lvの魔法を持っているのは間違いないだろうがな。富岳さんが、どういう形で魔法を持っているかが重要か」

「共生進化の可能性がありそうだけど、支配進化という可能性も捨てきれないもんな。ただ、それっぽい個体が見当たらないのが気になるけど……」

「はい、ご意見ありがとうございます! 現時点ではまだ断定は出来ないようですし、ここからの戦闘が楽しみですね!」


 ふぅ、どうしても知ってる人と知らない人での対戦だから、事前に知ってる情報の差で公平にってのは難しいな。今の段階では紅焔さんがどう戦うのかは実際に戦う時まで出来る限り伏せるように意識していこう。


「さて、今回のエリアは岩山エリアで天候は晴れ、時間帯は夜のようですね! 初期位置は比較的、平坦で岩が多い部分となっています! この辺の条件はどう考えますか!?」


 ふむふむ、極端にややこしい部分は少ないエリアか。森なら火を使える紅焔さんが有利だったかもしれないけど、燃えるものの少ない岩山ではその辺は活かせられない。とはいえ、まだ戦法や使う魔法の属性の分からない富岳さんにとって有利な状況が何かは分からない。

 その上で解説として話すならこれくらいかー。正直、まだ情報が足りなさ過ぎて解説しようにもしにくい段階なんだけどな。


「まだ戦法が分からないからはっきりとは言えないけえど、この辺は飛べる紅焔さんの方が有利かもなー」

「いや、切り立った岩場の方に進めば魔法の射線が切れるから、そうとも言えんぞ?」

「あー、それは確かに。そうなると、今回のエリアはどっちが有利とも言い切れないとこか」

「それぞれの実力が、その辺りに直接現れてくるという事ですね!」


 ここから先は、実際に戦闘が始まってみないと分からないか。少なくとも紅焔さんが遠距離戦しか出来ない訳じゃないし、富岳さんの方も近距離戦に十分対応出来るようにも思える。どの距離で戦っていくか、その辺が楽しみだね。


「紅焔さんが相手か。相手にとって不足はない」

「ん? 俺のこと、知ってんの?」

「色々と有名だしな。それに……直接会うのは初めてだが、会話は初って訳じゃねぇぜ?」

「あー、もしかしてよく情報共有板でいる人か!?」


 ほほう、情報共有板を見たときに結構な頻度で見かけるカンガルーの人がこの富岳さんなのか! 普段から情報共有板にいる人なら結構な実力者っぽい予感。てか、ここまで勝ち抜いてきてる時点で弱い訳がない!


「当たりだぜ、紅焔さん」

「なるほど、あの半匿名だとそういう事もあるんだな」

「そういう事だ。ただ、紅焔さんの方は色々と目立つからな。火魔法Lv8の報告を上げて、それを群集拠点種の前で披露してたらバレバレだぜ?」

「それで良いんだよ、別に隠す気はねぇからな!」


 まぁ名前が出ずに種族名だけしか出てないからね、情報共有板。俺とかベスタとか、今の紅焔さんもか。一部の人は半匿名が全然匿名になってなくて、個人が特定されてる事もあるけどさ。てか、紅焔さんはバレバレでも全然気にしてないんだなー。


「どうやらお互いに直接会うのは初めてのようですが、会話自体は今まで普通にあったようですね! これも何かの因果なのかー!?」

「いや、それは単なる情報共有板の仕様の問題だと思うぞ?」

「お互いの名前を知らないだけで、話した事はあるって相手は結構いるだろうしな」

「確かにそれもそうですねー! それを言ってしまえば、私もおそらく富岳さんとは会った事はありませんが、話した事はあるはずですし!」


 そりゃごもっとも。でも、富岳さんと会ったことはないはずなんだけど、声にどことなく聞き覚えがあるんだよな? どこかですれ違った事でも……って、思い出した! 昼からログインして移動してる途中で立ち寄った森林エリアで、海エリアでの勝敗を伝えてた人か! あの時、名前までは見てなかったもんな。

 ん? そういえばあの時、カンガルーの腹にある袋……呼び名なんだっけ? 確かカンガルー固有のものだったと思うけど、あそこが動いてたりしてたはず。……もしかして、あれに秘密がある? まぁ何かあるなら、対戦が始まれば分かるだろ。


「もう開始のカウントダウンは始まったが、紅焔さん、開始位置はどうする?」

「別にこのままでもいいだろ。さーて、この後の対戦の約束もあるし、勝たせてもらうぜ!」

「その約束は果たせないかもな?」

「いーや、俺が勝つ!」

「その言葉、そっくりそのまま返させてもらおうか!」


 おー、見えはしないけど、火花が散ってるような光景だ。紅焔さんも富岳さんも、自分が負けるとは思ってない意気込みだなー。まぁ負ける気でトーナメント戦に参加してる訳もないか。それこそ決勝トーナメントまで勝ち進んでいるなら尚更に。


「開始前から既にお互いに気合が入っているー! さぁ、間もなく決勝トーナメント第1戦、開始となります! カウントダウンをいきますよー! 5……4……3……2……1……試合開始!」


 ハーレさんのカウントダウンの終了と共に、富岳さんと紅焔さんの対戦が始まった。さて、どんな1戦になっていくかが楽しみだね。それじゃ解説もしっかりとやっていきますか!


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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
ケイ以外の視点での外伝も収録!

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― 新着の感想 ―
[一言] カンガルーの人が富岳さんだったぁ~(//▽//)
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