第1103話 報告と情報の収集
魔法Lv10を目指すトーナメント戦の決勝トーナメントの開始までに、情報共有板へ色々と報告と、何か情報がないかの確認をしていこう。
イノシシ : 赤の群集と青の群集での総力戦ってどうなってる? 今頃やってるはずだよな?
キツネ : 午前中の流れから考えると、そろそろやっててもおかしくないはずだけど……分からん!
リス : 流石に今は観測が難しいねー。
タヌキ : 下手な探りを入れると、返り討ちになるからなー。かと言って、大規模な人数を投入するのも……。
草花 : おし! それじゃ対象エリアに突っ込んでくるか! その場所って、どこ? 森林深部から向かうならどう行くのが正解だ?
イルカ : 無茶言うね!?
ヘビ : えーと、確か場所は赤の群集の森林深部と、青の群集の森林に接してるカズキの森林だっけな。
木 : 森林深部から行くならニーヴェア雪山を南に超えて、氷樹の森も突っ切ってそのままずっと南下して、川に当たったら川沿いに下っていけばいい。
タコ : 流石に距離はあるぞ? それに、乱入は危険だと思うが……。
キノコ : 抜け出せなくなっても知らんぞ!?
草花 : 死亡上等! リスクを恐れて偵察など出来ん! でも、遠そうだなー! もっと楽なルートってない?
草花2 : 荒野エリアから東に砂漠を突っ切っていくルートもあるよ。でも、楽かと言われると微妙?
なんか赤の群集と青の群集の総力戦の偵察の為に、無茶苦茶な特攻をしようとしてる草花の人がいるー!? それをしそうな人にも心当たりがある!
「この草花の人、ザックさんじゃね?」
「それ、私も思ったのさー!」
「……ザック? ……どんな人?」
「えっと、なんて言ったらいいんだろ? 色々と自滅覚悟でやる、トリカブトの人?」
「……それ、凄い度胸」
風音さん的にはザックさんはそういう評価になるんだな。まぁその評価については俺も同意。あそこまで躊躇なく色々出来るのは大したもんだよね。今だって相当なリスクのある偵察を……ん? そうでもないのか? いや、いまいちその辺はよく分からない?
再戦エリアになってる場合って占有エリアじゃなくなってるし、察知機能はどういう扱いになるんだろ? 意外と今なら普通のエリアと大差ない状態だったりする? その辺を聞いてみるか。
コケ : ちょっと質問! 再戦エリアって、隣接してない群集が入るとどうなるんだ?
サボテン : そこは全くの未知数だな!
クジラ : そうでもないよー! 海の再戦エリアになってるナギの海原に青の群集の新規さんが迷い込んできてた事はあったけど、排除対象として参戦マークが付いてた! ついさっきの話だけど!
イカ : 倒したら対象エリア内でランダムリスポーンにはならず、エリア外へ強制排除になるみたいだぞ。
キノコ : マジか!?
草花 : ふっはっはっはっは! それならば、尚更行くしかない! いざ、偵察へ!
ヘビ : なるほど、強制排除だけなら偵察にも行きやすいか。
キノコ : そういう感じかー。それなら、ミヤ・マサの森林で戦う時もその辺は気を付けないといけないんだな。
リス : 赤の群集や無所属からの横槍に要注意だねー。
あ、そうか。無所属からも乱入してくる可能性は十分あるし、場合によっては黒の統率種になる可能性も考慮しておいた方がいいのか。この辺は、1回目の競争クエストとは大きく違ってくる要素になりそうだね。
リス2 : ところでちょっと報告があるんだけど、その辺は大丈夫ですか!?
タカ : あー、少しだけ待ってくれ。草花の人、そういう事なら俺が送っていこうか? 森の中に投下してやるぞ?
草花 : お、マジか! それなら頼む!
タカ : なら、ハイルング高原側の切り替え地点辺りで合流しよう。そこから飛んでいく。
草花 : おう、了解だぜ!
イルカ : わー、本当にやるんだ。
草花2 : 偵察情報、期待してるぜ!
草花 : おう! それじゃ行ってくるぜ!
無茶な事をしてるとは思うけど、赤の群集や青の群集の動向は確認しておきたい内容だしね。ちょいちょい灰の群集の方にも偵察は潜り込んできてるみたいだし、この辺はお互い様ってとこか。
タヌキ : リス2の人、もういいぞー!
ヘビ : さて、どういう報告だ?
サボテン : コケの人とリス2の人が似たようなタイミングで来たって事は、赤の群集の人と共同検証をしてたって例の件か?
クジラ : え、何それ!?
木 : あー、あれか。アブソーブ系のスキルを使っての『刻瘴石』の生成と、性能検証。
ヘビ : なるほど、検証結果が出たのか。これは期待。
サボテン : 今やってるトーナメント戦の意義にも関わってきそうだしな。
リス2 : まさしくそうなのです! という事で、コケの人にお任せするのさー!
コケ : そこでぶん投げてくるんかい! えーと、いくつか報告する内容はあるんだけど、まずは『刻瘴石』絡みの事から報告していくか。
木2 : その言い方、他にも何かあるっぽい!?
タヌキ : 気にはなるけど、順番にだな。
ヘビ : だな。
コケ : まぁ順番に説明していくよ。まずは『刻瘴石』にも生成出来る物の存在が判明したとこから――
という事で、シュウさん達との検証の結果を話していく。『刻瘴石』の他に『刻浄石』というアイテムがあった事、生成の手順の事、その際のデメリットの事、それらの使用をする対象の事、『刻浄石』では半覚醒になる事、元の個体のLvを基準にする可能性がある事、そこから強化の手段は存在しない可能性がある事、フィールドボスになるかどうかは不明な事などなど。そして、競争クエストが終わってから、再度検証を行う確約をしてきた事。
あー、地味に報告する事が多いー。でも、これは報告しておかないと後々になって困るそうだしね。
ヘビ : なるほど、興味深い内容ではあるが、現時点ではLvが足りてない可能性がある訳か。時期尚早って判断は間違ってない気がするな。
木 : 競争クエストの後にはなるとはいえ、次の検証の予定が決まってるのはありがたい。フィールドボスになるかどうかの確認はその時か。
サボテン : 半覚醒にする『刻浄石』の効果ってのも気になるな。灰の群集の半覚醒と出会った時にどうなるのやら。
キノコ : 何かボーナスでもありそうだよな、それ。
リス : それはありそうだねー!
とりあえず、検証関係についての報告はこんなもんか。みんなも時期尚早だという判断はしてくれたみたいで、変に中途半端な検証結果だとか言われなくて良かったよ。
さて、それじゃ次の案件にいきますか。羅刹からの報告よりは、今の報告と少なからず関係があるこっちから話していこう。
コケ : とりあえず検証結果自体はそんな感じ。それで次なんだけど、これはまだ未検証な内容。流石に俺らだけじゃ他にしたい事が出来なくて支障もあるから、実行出来る人が増えてきたら試してくれるとありがたい内容。
イルカ : 実行出来る人が増えるって事は……アブソーブ系のスキル絡みの内容か!
草花2 : あちこちで開催中のトーナメント戦が終われば、多少は増えるもんな。てか、結構スキル強化の種を使わずに温存してた奴って多いんだな。
木3 : そういう意味では、人柱になってくれたコケの人に感謝だな。
イノシシ : それは確かに。
ん? ここで木3の人が初めて出てきたような気がするけど、これってアルか? 確かにやった事はそういう内容ではあったけど、温存してるアルに人柱と言われるのはなんだか釈然としない!
「……ケイ、木3の人は俺じゃねぇぞ?」
「え、マジで?」
って、また声に出てるじゃん! いやまぁそれは別にいいや。声に出てる事はよくはないけど、内容的に問題がある訳じゃない。みんなが躊躇してたところに、スキル強化の種を全部突っ込んで人柱になってたのも間違いじゃないしね。
ここで脱線しても仕方ないから、流れを戻そう。この案件は、出来れば他の人にもやって欲しい事だしね。
コケ : それじゃ内容を説明していくぞー!
木4 : 流石に俺らだけじゃ今日の検証内容が多過ぎるからな。実行可能になった人がいたら頼むぜ。
ドラゴン : ……可能になったら、やる!
クジラ2 : 任せてばっかじゃいられないもんね!
カンガルー: おし、草原エリアのブロックは勝ち抜いて、決勝トーナメントに出場決定だ! もし優勝出来たら試してみるから、内容を教えてくれ!
あ、今度こそ木4の人がアルで、ドラゴンは風音さんか。それにカンガルーの人が決勝トーナメントへ勝ち抜いてきたっぽい。風音さんと戦う可能性がある人だけど、実況と解説を引き受けてるから、出来るだけ風音さんへの贔屓にならないようにしないとな。
コケ : それじゃ内容を説明していくぞー! 試すのは模擬戦機能で! まずアブソーブ系のスキルで瘴気魔法を吸収して瘴気汚染・重度にする。もしくは浄化魔法を吸収して過剰浄化・重度にしてもらいたい。
カンガルー: わざわざデメリットを発生させるのか?
草花2 : それだけの訳がないよな? 何をしようとしてる?
リス : あ、もしかして、そういう事!?
キツネ : あー、模擬戦を使う理由がなんとなく分かった。
サボテン : ん? どういう事なんだ?
コケ : その辺を説明するぞー。それで瘴気汚染・重度の場合は纏浄を、過剰浄化・重度の場合は纏瘴を使ってみてほしい。
サボテン : あ、そういう事か! 瘴気と浄化を、同時に持たせようって狙いなんだな!
イタチ : あれ? でも、瘴気汚染・重度って纏瘴の反動以外でもなる方法って無かったっけ?
木3 : それは『瘴気耐性Ⅰ』を持っていない奴が瘴気魔法を受けた場合だ。まぁ頻繁にある例じゃない。
イタチ : あ、そうなんだ! それは失礼しましたー!
地味に知らなかったよ、その要素! そっか、『瘴気耐性Ⅰ』って重度になるのを防ぐ効果もあったんだ。まぁ耐性っていうくらいだし、そういう性能があってもおかしくないよな。
ヘビ : 意図は分かったけど、ただ打ち消し合うだけって可能性もありそうだな。
イノシシ : ぶっちゃけ、それでもメリットはある気がするけどな。
キツネ : だなー。でも、期待したいのは両方の要素を併せ持つ事が出来た場合の変化!
タケノコ : 新たな進化形態が出ちゃう!?
コケ : 俺としては、そこに期待してるんだよなー。ただ他にも色々したい事があるから、今回は他に出来る人がいたら託す!
リス : まぁそれもいいよね。コケの人、午前中から頑張りっぱなしだもんね。
タコ : ここらで一旦のんびり休憩しとけー!
ヒトデ : 今回の競争クエスト、異常に進行が早いのである!
木 : 下手すりゃ、この土日で全部終わりかねないんじゃねぇか?
草花3 : 無いとは言えなさそうなんだよなー。
確かに今の時点で8ヶ所ある戦場の中で、2ヶ所は勝敗が決まった。ザックさんと思わしき草花の人が偵察に行ったけど、赤の群集と青の群集の総力戦が今行われてる可能性は高い。シュウさんは参戦しないって言ってたから、開催されてる可能性は非常に高い。
まぁ少なくとも明日の12時まではミヤ・マサの森林での対戦は発生しないけど、そこまでにどういう動きがあるかは分からない。特に今日の夜はなー。
それこそ、経路が確立になった峡谷エリアで衝突の可能性もある。まぁ事前調査だけで終わる可能性もあるけど、それは実際にやってみないとなんとも言えないしね。正直、今日の午前中にジャングルが終わるとは思ってなかったし。
コケ : 頼みたい検証の件はそんな感じ! それで、経路が確立したばっかの『未開の峡谷』にいる傭兵からの連絡事項と黒の統率種についての見解!
タヌキ : 報告内容、多いな!?
ヘビ : とりあえず内容を聞こう。
コケ : それじゃまずは目撃情報から――
という事で、羅刹から聞いた内容をみんなに説明していく。瘴気の渦を通る事で黒く染まっていく事、それが傭兵にも適応されて黒の統率種になる可能性、そして……灰の群集の傭兵にそれが誕生している可能性。
ジャングルでの黒の統率種との遭遇した際の説明も含めて、その辺りの報告は終了! ちなみにジャングルでの戦いは、結構な範囲がオオカミ組や灰のサファリ同盟の方で戦況のまとめはされてたとの事。うーん、相変わらず頼もしい。
木 : まさか、黒の統率種が灰の群集の中にいる可能性があるとはな。
イノシシ : そうなってくると、無所属や他の群集の傭兵が厄介か。本格的に下手に倒せば良いって相手じゃなくなってきたな。
キツネ : 黒の統率種じゃ意思疎通も出来ないし、傭兵でも無所属でも区別のしようがないもんなー。
草花2 : だが、考え方によっては意図して生み出す事も出来るんじゃないか? 纏瘴を使って瘴気収束で瘴気の渦は生み出せる。
カンガルー: あ、そうか! それなら、意図的に黒く染める事も出来るな。
ほほう、その視点は無かった! 今は無所属だとしても、共闘イベントが終わった後に群集を抜けた人なら『瘴気の凝晶』を持っている可能性は十分ある。そういう人が無所属のままか、傭兵になってからか、どっちかは分からないけど瘴気の渦を生み出して転々と移動をしていれば、そういう状況を狙って作り出せるか。
リス : んー、気になるのはサクヤの進化を誘発したってとこだねー。何か、群集所属の人には分からない要素がある?
タヌキ : そうなると、誰か傭兵の人に実際に試してもらうか?
キツネ : その前に、もしそのタコの黒の統率種が灰の群集の傭兵なのだとしたら、承認した奴が何人かいるはずだよな!? その辺、心当たりがある人はいないのか!?
あ、そういや確かにそれはあるはず。もしそこに心当たりがある人がいれば、あのタコの人の正体も――
「……ケイさん、時間切れ。……決勝トーナメントの出場者……全員出揃った」
「あ、マジか! あー、気になるとこだけど、そっちが優先だよなー」
すぐに心当たりがある人が出てくるとは限らないし、みんなに頼んだ検証を進めていくには決勝トーナメントを進めていく方がいいもんな。それじゃ軽く離れるとだけ伝えておいて、決勝トーナメントを開始していきますか!




