第1058話 魔法砲撃のアクアクラスター
色々と、本当に色々とあったけども、とりあえずミズキの森林の湖に戻り、中断となってしまっていた魔法の検証の再開である。アルがこの後やる予定の模擬戦機能を使っての検証の為に、桜花さんへと連絡中。
ただ試すだけなら俺とアルだけでも出来るんだけど、みんなも見れるようにしておかないと……今は風音さんが地味に怖い。いや、ほんとあっという間にジェイさんを殺しそうな勢いだったもんな。
「あー、ケイさん。風音さんが待ち切れないみたいだから、出来れば早めにな……?」
「……そうっぽいなー」
ダイクさんに言われて気付いたけど風音さんの落ち着かない感じで、龍の尻尾が思いっきり動きまくってる。うん、これはなんだろう? 貧乏ゆすりみたいな癖っぽい? まぁ俺も変にハサミを動かす癖があるっぽいし、そういうのもあるんだな。
さてと、ちょっとアルの連絡が済むまで待とうかと思ってたんだけど、どうも風音さんが待ち切れそうにないから始めますか!
既に魔法砲撃は発動済みだから、今はアクアクラスターを魔法砲撃にして発動すればいいだけだな。これは俺自身が気になってたのが中断になってた部分だから、どうなるのか楽しみだ!
「よし、それじゃ始めるぞー!」
「……うん!」
なんというか……そういう演出はないんだけど、印象的に風音さんの龍の目がキラキラと輝いてるような気がする。うん、まぁ期待に応えられるような内容だったらいいけど……。
というか、地味に発動したままのアブソープ・アクアが邪魔だなー。劇的に視界を塞ぐって訳でもないんだけど、どうしても鬱陶しい事には違いない。効果は強力だったけど、常用するのは難しそうだし解除しとこ。
<『アブソープ・アクア』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 96/96 → 96/106(上限値使用:1)
そういえばミヤ・マサの森林の競争クエストに参加した直後に昇華魔法を吸収したけど、あれで魔力値の上限を超えて過剰魔力値ってのになってたよな。吸収し過ぎたらあんな感じになるのは分かったけど、吸収し過ぎない場合ならどうなるんだろ?
てか、よく考えたらあの時の2人のカメレオンの人の反応もおかしくね? ジェイさんがアブソープ・アースを使ってきたからには、ああいう事が発生するのは予期出来たはず。……可能性としては少し考えたけど、ジェイさんの狙いは俺が水か土で魔法Lv10になってるかを確認するのが狙いだったとして――
「おーい、ケイさん? 考え込んでどうしたよ?」
「あ、悪い! ちょっと思考が脱線してた!」
ジェイさんの目論見の1つが明確に見えてきた気はするけど、今は検証の方に集中しよう! 少なくともジェイさんは今俺がやってる検証案件は大体済ませてるはずだし、仕切り直しのミヤ・マサの森林での対戦や、ジャングルを筆頭に他のエリアでの競争クエストでも重要になってくる情報のはず!
「それじゃ改めて、今度こそ始めるぞ!」
<行動値10と魔力値30消費して『水魔法Lv10:アクアクラスター』を発動します> 行動値 86/106(上限値使用:1): 魔力値 244/274
という事で、アクアクラスターを魔法砲撃にして発動! えーと、発動基点の指定はこれまでと変わらずっぽいから、とりあえずロブスターの右のハサミを指定。えーと、普段の他の魔法砲撃の発動と大差なくてどうしたら良いのかが分からないだけど……。
「これ、連射なのか? 12発は撃てるっぽいけど……どういう仕様?」
「……どういう……性能になる?」
「とりあえず撃ってみたら良いんじゃないかな?」
「……それしかないか。ヨッシさん、ダイクさん、湖の上に的を用意してくれない?」
「それなら任せて! えっと、12発なら的は私が6個、ダイクさんが6個、それぞれ用意するので良い?」
「おっしゃ、任せとけ! 『並列制御』『アクアクリエイト』『アクアクリエイト』『並列制御』『水の操作』『水の操作』!」
「それじゃそんな感じでやるね。『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷の操作』『氷の操作』!」
「ヨッシ、ダイクさん、的を動かすのです!」
「ちょ!? まだ性質も分かってない試し撃ちの段階なんだけど!?」
「よしきた! おらよっと!」
「え、本当にやるの?」
ちょ、ハーレさんは唐突な意見を出してきたな!? てか、ダイクさんは思いっきり6つの水の的をバラバラに動かしまくってるけど……魔法砲撃でこの動きは当てられるのか?
いや、動く相手に全然当てられないんじゃ意味がない。魔法砲撃は狙いが分かりやすいのが欠点とはいえ、この12連発がどう作用するかが分からないもんな。
「……それで……やってみよう? ……動かない的じゃ……普通の狙い方でいいのか……分からない。……比較対象で……ヨッシさんは動かさずにで……どう?」
「あー、それは確かにありか。ヨッシさん、ダイクさん、そういう事でいいか?」
「俺はこのまま動かし続けるぜ!」
「了解! 私は止めておけばいいんだね」
なんかダイクさんの水は動きが激しくなって、ヨッシさんは6個の氷をバラけさせて固定してくれたね。
「おっ、これからってとこか。ケイ、とりあえず桜花さんはこの後で中継するのは問題ないってよ」
「おし、それじゃこれが終わり次第、移動だな」
「おうよ! って事で、どういう性能か見させてもらうぜ」
さて、どうやら次の準備も問題なさそうだし、今の本命の実験開始! さて、これでどうなるか……とりあえず1発目を発射! 標的は、止まっているヨッシさんの氷の的の一番左端のやつ!
「……はい? え、小さな水滴!?」
「……どういう事?」
かなり速く勢いよく撃ち出されたのは……小さな、今までのどれよりも小さな水滴。それが、的にした氷に当たったらその周囲を漂いだした。小さいし、数は1つだけど、なんか付与魔法を味方に使って漂う水球に似てる?
「ケイさん、とりあえず撃てるだけ撃っちまえ! そこまでやらないと分からない気がするぞ!」
「……ダイクさんの言う通りだな。よし、それじゃ今度は動いてる水の方を狙う!」
という事で、今度の標的はダイクさんが動かしてる水球の1つ! 結構な速度で動いてるから動きを先読みして……ここだ! って、急に真逆の方向に動いた!? くっ、ダイクさんめ、当てさせる気がないな!?
「おっと、危ねぇ!」
「くっそ、外した! って、あれ? 狙った位置辺りで漂い始めた?」
「……当てる必要は……ない?」
なんだが妙な挙動をしてるな、この魔法砲撃にしたアクアクラスター。よく見たら発動の猶予時間は存在してないし、これって12発を全部撃ち尽くすまで発動が終わらない? あ、発動のキャンセル自体は出来るのか。いや、今はキャンセルしないけど。
かといって、撃ち出した水滴自体に効果があるようにも見えない。なんなんだ、この撃ち出した水滴は? まるで何かの目印を付けてるかのように……って、目印!? いや、これは最後まで撃ってみないと結論を出すには早過ぎる。
「ダイクさん、次は無理に避けないでやってみてくれるか?」
「おう、了解だ! それにしても変な魔法だな?」
「……何か……思い当たった?」
「なんとなくだけどなー。とりあえず細かい水滴の挙動を見ていきたいから、その確認をさせてくれ」
「……分かった」
「それじゃいくぞ、ダイクさん!」
「咄嗟に避けはしないけど、動かしてはいるからなー!」
「それで十分!」
さっきはダイクさんに思いっきり躱された感じだけど、今度はそれはない。ザッと見たところ、同じルートをぐるぐると回して動かしてるだけみたいだから、ピンポイントで避けられさえしなければ当てられるはず。……よし、そこだ!
「おー! なんか変化があったのさー!」
「ケイさん、ナイス狙いだぜ! それにしても動いてる水球に当たれば、漂ってる水滴は追従して動くのか?」
「そうっぽいけど、ヨッシさんの水滴が漂ってる氷の的を動かしてみてもらえるか?」
「うん、分かったよ。えっと、こんな感じで……あ、追いかけて動いてくるね」
ふむふむ、やっぱりそういう感じで水滴が動くのか。最後がどんな風になるのかはまだ何とも言えないけど、なんとなく性質の予想がついてきた。
「ヨッシさん、ダイクさん、的の間隔を出来るだけ広げてもらえるか? 湖の全体に散らばす感じで」
「よし、きた! えっと、こんな感じか? てか、振り払えねぇな、この水滴」
「ケイさん、こんな感じでいい?」
「2人とも問題なし!」
さて、これで湖全体に12個の的が散らばった。ここからはちょっと推測に合わせて水滴を漂わせる状況を変えていこう。まずは既に水滴が漂ってるヨッシさんの氷の的の1つにもう1発、水滴を撃ち込んでみる。へぇ、こうなるのか。
「え、水滴は2つでも漂うんだ?」
「……ケイ、これってもしかしてロックオンの為の目印か?」
「そんな気はしてる。最終的にどういう風に撃ち出すかは分からないけど……」
「まぁそこは見てみるしかないか。あぁ、だから散らばせたんだな」
「そういう事。とりあえず、他の氷の的に1発だけのも漂わせとく」
という事で、これで5発目の水滴の発射。2つの水滴が漂ってる氷の的とは一番遠い場所の氷の的に当てておく。それから、全く関係ない湖面に3発ほど適当に撃っておこう。
「どうも狙った部分で勝手に止まるっぽいなー。具体的に何か対象があれば、それに追従するようになる感じか」
「はい! それならケイさん、私にも1発下さいなー! 味方にはダメージはないよね!?」
「あー、『水の刻印』が使えるかも確かめとかないとな。ほいよっと!」
「おぉ、水滴が漂い出したのさー!」
「……それなら……わたしも……受けてみたい」
「あー、それなら残りは味方へ使ってみるか。風音さん、2発でも良いか?」
「……問題ない……むしろ望むところ!」
「ほいよっと。それじゃ2発なー!」
という事で、風音さんの龍には水滴を2発撃ち込んだ。これで『水の刻印』の重ねがけが出来るかどうかの検証にもなる。てか、残り1発だけど、これはどうしよう?
「ケイ、1発は自分に撃ってみたらどうかな?」
「あー、確かにそれもありか。よし、やってみよう……って、無理じゃね!?」
「ケイさん、その辺に適当に漂わせといて、自分がそこに移動するってのはどうよ?」
「おっ、それはナイスアイデア! よし、それでいこう!」
ダイクさんの案を採用して、目の前の少し先の部分に向けて水滴を撃ち出して、止まって漂い始めてから、その場に移動。さて、自分にも効果があるのかどうか、それは重要……重要か?
あれ、俺ってアブソープ・アクアがあるんだから、水属性への耐性強化って要らなくね? うーん、まぁ今はそこはいいや! って、12発の水滴を撃ち終わったら、発動制限の時間が出てる!? ここからどうすれば発動になる!?
「あ、最後にもう1発撃てばいいのか!」
どこを狙ってもいいみたいではあるけど、ここは通常発動のアクアクラスターが上空に展開されていたのに合わせて、上空に撃ち出そう。それじゃ、最後の13発目を発射!
「うぉ!? デカい水球が撃ち出された!?」
「あ、分裂していってるかな!?」
「多弾の追尾ありのミサイルランチャーってか!」
「ふっふっふ、当たらずに逃げ切れるかやってみるのです! 『自己強化』! 逃げろー!」
「逃げるんかい!」
いや、振り切れるかどうかを試してもらった方が良いからそれでもいいけどさ。さてと、分裂した水球が……やっぱり水滴に向かって凄い勢いで迫っている。2つの水滴が漂ってるとこには2発、落ちていってるな。
木に登って逃げ出したハーレさんを追いかけていく水球もあるし、氷や水の的に当たって炸裂している水球もある。空中に漂ってる水滴の部分は素通りして下まで行くんじゃなくて、その場で霧散するんだな。
そして、もちろん俺の場所にもやってきたけど……無傷な上に、『水の刻印』の効果はなさそうだ……。
「俺には効果無しなのは残念か……。風音さんは無事に『水の刻印』は得られた?」
「……もちろん! ……でも……重ねがけは……無理みたい」
「あー、そういう仕様か」
風音さんの龍は、中断になる前にレナさんに発生してた『水の刻印』で水滴のマークと全身から青い光を放っている。重ねがけは無理でも、『水の刻印』自体は刻めるらしい。
他には当たった水と氷の的は消滅したけど、味方のものでも魔法同士は干渉するからここは仕方ないね。湖面に適当に3発撃ってた部分は……うん、地面に撃ってたらクレーターが出来てそうなくらいの威力で叩きつけられてたっぽい。
「わっー!?」
「「ハーレ!?」」
「どうした、ハーレさん!? って、木が折れてる!?」
その上、折れた木に押し潰されてるんだけど、どうしてそうなった? あ、木に水球が当たって折れて、それに潰されたのか? ふむふむ、当たった対象によってやっぱり効果は変わるみたいだな。
「あぅ……撒こうとして、木を盾にしたら思いっきり折れて潰されたのです……。えいや!」
倒れた木に押し潰されたハーレさんだけど、木を掴んで押し退けてあっさりと脱出してきたね。小型なリスとはいえ、成熟体に進化してる物理型のハーレさんならそこらの木に潰されても問題はないか。
「とりあえず、効果は分かった! 魔法砲撃にすれば標的を手動で設定出来る様になる訳だ!」
「……少し手間はかかるけど……色々出来そう?」
「だなー!」
毎回12発の指定は必須な感じだけど、それを全て1体の敵に集中させる事も出来そうだし、あちこちに散らばせてみんなと連携して追い込んでもいいし、味方への『水の刻印』を刻むのに使ってもいい。
それらを全て混ぜて使う事も出来そうだから、かなり出来る事の幅が広いぞ! ただ、正確な狙いが必要だから使う状況はしっかり選ばないと危険だな。余裕がない乱戦とかだと、通常発動で即座に撃ち込むのが良い場合もありそうだ。




