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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第31章 2回目の競争クエスト
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第1057話 荒ぶる風音


 レナさんを背中に乗せた風音さんの黒い龍がやってきたけど、ジェイさん相手にブチ切れて襲いかかっている状態。どうすれば良いのか分からないけど、なんだか面識があるみたいだし、放っておいても大丈夫? そうであって欲しいなー。

 てか、ブラックホールって並列制御で2つ発動したら共生進化を強引に引き剥がすような真似も出来るんだ。というか、そもそも同時に発動は出来たんだな。それも驚きなんだけど、弥生さんやスミが使っていたのとは比べ物にならないくらい吸い込む力が強いっぽい……。魔力の高さで吸い込む力が変わってくるのか。


「風音さん、ストップ! ストーップ!」

「……レナ……邪魔……しないで!」

「風音さん、何故私が襲われているのか、その理由をお聞きしても?」

「……ジェイは黙って。……青の群集は……可能な限り……潰す!」

「これは何か逆鱗に触れてしまいましたか……」


 うん、まぁ魔法の検証をワクワクしながら見ていたのを中断させられたからブチ切れてるとは思わないよな。いやー、本当に風音さんって怒ると怖い……。


「ダメ元でお聞きしますが……もしや、魔法の検証をしていましたか?」

「……青の群集が……その……邪魔をした!」

「ジェイさん、答える必要はなくなったぽいけど……」

「……なるほど、それでこの有り様ですか。厄介な方を怒らせて……おや、流石に限界ですね」


 あ、コケとカニが完全に引き千切られて、カニの方がブラックホールに飲み込まれてポリゴンとなって砕け散っていった。流石に共生進化を引き千切られるとログイン側でなければ一気に死ぬな。

 コケの方は……なんか圧縮されて小さくなってるー!? あ、でもそれじゃ死なないのか。


「……さっさと死ね! 『並列制御』『アースインパクト』『アースインパクト』!」

「……後々が怖いですし、ここは仕方ないですね。『アブソープ・アース』!」


 ちょ、風音さんが左右から押し潰そうと発動した衝撃魔法を、周囲に砂が散らばってそこから吸収していった!? ジェイさんはLv10の魔法を持ってる気はしてたけど、やっぱり持ってたか!

 てか、ジェイさんと風音さんって面識がある上に、ここでそういう選択肢を取るって事は風音さんの魔法好きも知ってる!? しかも、機嫌を取る為にそこでアブソープ・アースを使うとは……。


「っ!? ……魔法が消えた!? ……今の……何?」

「それでは失礼しますよ。『群体化』『群体内移動』!」


 最後にとんでもないものを見せてジェイさんは逃げていった。やばいな、ジェイさんが土魔法Lv10持ちって、俺の岩の操作でのコケ潰しが封じられるじゃん。


「……ジェイ!」

「風音さん、今度こそストーップ!」

「あぁ、止まってもらおうか。流石にこの状況での追撃は許容出来ん」

「……邪魔する気?」

「灰の群集に入ったからといって、何もかもを止める気はない。だが、今は待て」

「……退いて。……ジェイを……殺せない!」

「交渉相手を今ここで潰されるのは困る。機会は作るから――」

「……そんなのは……知らない!」

「なんでこうなってるかなー? 風音さん、とりあえず落ち着いてってば!」

「……レナも……邪魔!」


 ちょ、なんかレナとベスタが風音さんを抑えようとしてるけど、全然聞く耳を持ってないっぽい。というか、完全に俺らは蚊帳の外……。さて、どうしたものか。よし、とりあえずみんなに相談しようっと。


 ケイ    : さてと、今の状況をどうにかする方法に心当たりがある人ー!

 アルマース : ……割と無茶を言うな、ケイ。

 ケイ    : いや、だってベスタとレナさんが手を出しかねてるんだし、俺らじゃ無理だろ。


 ジェイさんが切り札とも言える『アブソープ・アース』を使った上で、この反応だもんよ。あれに食いついて……って、ちょっと待った。なんで魔法に興味がある風音さんがあれに食いつかない? 


 ヨッシ   : ねぇ、みんな? 風音さんって『アブソープ・アクア』の内容って知ってたっけ?

 サヤ    : え? それなら知って……あれ、ちょっと待ってかな!? 風音さんが来たタイミングって、私達が聞いた後なんじゃ?

 ハーレ   : はっ!? 風音さんが検証に加わったのはLv8のアクアディヒュースをぶつけた時だから、説明してないはずなのさー!

 アルマース : さっき灰の群集に加入したばかりだから、情報共有板も見てないはずだな。

 ケイ    : そういやそうなるのか!


 という事は、風音さんはジェイさんが置き土産として発動していった『アブソープ・アース』の意味を知らない? もしかして、ただの魔法吸収か、砂の操作辺りで相殺されたと思ってる? だったら、これで収まるかもしれない!


「風音さん! ちょっとこっちを見てくれ!」

「……何?」


 うぉ!? 低い声で思いっきり機嫌が悪そうにしてるけど、とりあえずはこっちを見てくれた。見てさえくれれば、何とかなるはず! しっかりと音声操作で発動していくぞ。


<行動値上限を10使用して『アブソープ・アクア』を発動します>  行動値 95/106 → 95/96(上限値使用:11)


 競争クエストに参戦した直後に襲われて使った時のように、俺の周囲を包むように水の膜が生成されていく。


「……『アブソープ・アクア』? ……そういえば……ジェイも……似たようなのを……言ってた? ……まさか……魔法吸収じゃなく……それって魔法!?」

「おわっ!? 風音さん、説明するから少し落ち着いてくれ!」

「……ごめん」


 ふぅ、魔法に関連していると分かった途端、急激に迫ってビックリしたよ。真っ黒な大きな龍なんだから、迫力が凄いわ!


「およ? それが『アブソープ・アクア』なの? そういえばエリア切り替えのとこにいた人から昇華魔法が変になってたって報告が上がってたね」

「異常にデカいアクアウォールの目撃情報も上がってたな。ケイ、それはどういう性質のものだ?」

「それは説明するけど、とりあえずミズキの森林にでも移動しない? 青の群集にもLv10の魔法持ちがいるのは確定だけど、ここでする話じゃないからさ」

「……今すぐ戻る! ……それで……検証の再開!」

「ちょ!? 速!?」


 もうジェイさんを仕留めに行くのはやめたみたいで、あっという間に森林エリアの方へ向かって飛び去っていった。このマイペース感ってどことなく既視感があるような……あ、ルストさんか! テンションが上がってる時のルストさんのマイペースさによく似てる! ちょっと方向性は風音の方が怖い気もするけど……。


「……ケイさん、助かったよー! 風音さん、ああなったら興味がある事以外、全然聞いてくれなくなるからさー」

「そんな感じはしたけど、そこまで無茶苦茶なのか?」

「もの凄く強いんだけど、その辺に相当クセがある人だよ。逆に興味がない事にはとことん興味がないから、他の人との交流も少ないんだよねー」

「……だから、俺でも全然知らない訳か」

「うん、ベスタさんでもそうなると思うよー。だから、ジェイさんと面識があったみたいなのは、正直意外だったかも?」

「そこは気になるところだな。ケイ、青の群集との交渉は俺の方で進めておくから、そっちは任せるぞ」

「ほいよっと」


 どう考えても今の風音さんの機嫌を取る事が出来るのは俺しかいなさそうだもんな。あ、でも少しでも風音さんの事を知ってるレナさんが一緒にいれば――


「レナは悪いが、招集の撤回を広めてくれ」

「あ、それもそだねー! 多分、色々と伝わっていってるとは思うけど、そこはキチンとやっとかないと!」

「え、レナさんは来ないのか!?」

「いやー、行けるなら行きたいけど、状況的に仕方ないからねー。通達が落ち着いたら合流するから、それまではよろしくねー!」

「……そうなるかー」


 まぁ攻め込んで来た青の群集に対抗する為に人手を集めていたのを、一気にひっくり返して双方撤退にして、前回の総力戦みたいな形にするようになったんだもんな。その辺の急激な変化の調整は必須か。


「さて、大急ぎで戻るぞ、ケイ」

「ほいよー」


 あんまり変に待たせると後が怖い気もするし、とりあえず急いでミズキの森林まで戻ろう! それにしても青の群集からの強襲に対抗する為に動いた筈が、両方が撤退になるとは思わなかった。うん、実際に動いてみるまで、本当にどうなるか分からないもんだね。



 ◇ ◇ ◇



 という事で、ミズキの森林の湖の畔まで戻ってきた! 戻ってきたはいいけど……風音さんの龍の口に咥えられてる、マンドレイクに進化したダイクさんがいたー!? 何がどうしてそうなってんの!?


「ちょ、なんで風音さんが灰の群集にいんの!?」

「…………勢いで?」

「そんな理由!? え、それだけ!?」

「………………青の群集……倒す為」

「なんでまた!?」

「……邪魔は……許さない!」

「あー、そういう……で、なんでログイン早々に俺は捕まってんの?」

「……同じ群集……清水魔法、見せて?」

「そういう内容なら普通に声をかけて言ってくれない!? いや、同じ群集になったなら別に良いけどさ!」

「……つい?」

「そんな理由で噛みつかれたくないんだけど!? てか、離せー!」


 なんだかレナさんに追いかけ回されているいつものダイクさんとあんまり変わらない理由っぽいなー。うーん、どういう関係性だ、これ? 思いっきりダイクさんは嫌がるように暴れてるし、何とか助けるべき?


「……あ、来た」

「おっ、ケイさん達じゃん! 競争クエストって、今どんな感じ?」

「あー、ミヤ・マサの森林に青の群集から強襲を受けて――」

「ちょ、マジか!? それ、すぐ参戦しないとマズいやつじゃん!?」

「いや、話はまだ途中。そこから色々あって、双方撤退で仕切り直しの協議中ってとこ」

「はい!? え、何がどうしたらそうなんの!?」

「……それは……どうでもいい……検証の再開!」

「ちょ!? 余計に事態が分からなくなったんだけど!?」


 うん、まぁログインしてきたばっかの人に簡単に説明したら混乱するよな。俺だって、いきなりこんな説明をされたら混乱すると思うよ。


「てか、ケイさんのその姿ってなんだ? 水の操作で覆ってんの?」

「あー、これ? 水魔法Lv10になった時の称号『水魔法を極めしモノ』と一緒に手に入る『アブソープ・アクア』ってスキルの発動状態」

「水魔法Lv10!? ケイさん、思い切っ……うわっ!?」

「それが、魔法を極めた時に手に入るスキル!?」


 あ、咥えられてたダイクさんが放り投げられて、チャポンと水音を立てて湖の中へと落ちていった。なんかダイクさんへの扱いが雑!?


「風音さん、俺の扱い酷くねぇ!?」

「……レナと……同じ扱いだけど?」

「同じにしないでくれない!? いや、マジで!」

「……ダメなの?」

「あれはレナさんだから良いんであって……って、何を言わせる!?」

「……なら、やめる……嫌がらせたい……訳じゃない」

「……そうしてくれると助かる」


 あ、なんかダイクさんの葉っぱの部分が項垂れてるなー。ふむ、前にもあった気はするけど、ダイクさんが乱暴な扱いを許容してるのはレナさんだけか。

 レナさんとダイクさんは明確にリアルでの繋がりがあるっぽいし、その辺は具体的にはどうなんだろうね。まぁ野暮なツッコミは無しでいこうか。


「……それより……『アブソープ・アクア』の効果は……水魔法を……吸収? ……ジェイは……土魔法Lv10?」

「ジェイさんは確実に土魔法Lv10は持ってるな。ちなみにこれは、吸収したのを自分の魔力値に変換出来る。ついでに言えば、昇華魔法も吸収出来るし、上限を超えても吸収出来て、超えた分は次に発動する水魔法を盛大に強化するっぽい?」

「……ただの吸収じゃない!? それ、見たい!」


 うぉ!? またテンションが上がった風音さんが、俺の方まで突っ込んできた!? どうしてこう妙に凄い拘りがある人は、興味がある事にはここまで一気に距離を詰めて……って、サヤが割り込んできた!?


「風音さん、ストップかな!」

「……サヤさん、何?」

「魔法に興味があるのは分かるけど、ケイに無意味に迫るのに意味はあるのかな?」

「……特にない? ……ただの……癖」

「それなら、その癖は何とか抑えてもらえないかな? ビックリして話が止まる分だけ、先に進まなくなるよ?」

「……確かに……それはサヤさんの……言う通り」

「うん、お願いかな」

「……気を付ける。……ケイさん……ごめん」

「あー、次からそうならないでくれれば、それでいいよ」


 風音さんが迫ってくる癖をサヤが抑えこんでくれるとは思わなかった! 実際に癖があっさり抜けるかどうかは分からないけど、それでも意識的に抑えるようにしてくれるのは助かる。


「サヤ、ナイス!」

「あはは、ルストさんの事を思い出してね。キャラの動き自体はルストさんほどじゃないかな?」

「あー!? サヤもルストさんの事を連想してたのです!?」

「まぁあの感じはそうなるよね」

「確かにな。俺も思ったとこだ」

「みんなも思ってたんかい!」


 考える事はみんな一緒かー。まぁルストさんより動く速度は遅い感じは……俺的にはしないけど、サヤから見れば割り込めるだけの余裕はあるんだな。あ、そうか。成熟体への進化の影響も考えたら、単純比較も出来ないのかも。


「……中断させた……ごめん」

「まぁそれは良いんだけど『アブソープ・アクア』はまだ色々と把握し切れてなくてさ。アル、模擬戦で試したいんだけどいいか?」

「おう、それは問題ないぜ。桜花さんがいたら、灰の群集だけで中継してもらうか? いなけりゃ他の不動種の人に頼むのでも良いけどな」

「そこは要確認かー」


 馴染みの桜花さんがいれば頼めばいいし、そうでなくてもこの検証の中継を引き受けてくれる人はいくらでもいるだろ。


「……桜花……また出てきた? ……やっぱり……ここに?」


 ん? なんかボソッと小さな声で風音さんが呟いてたけど、桜花さんがどうかしたのか? うーん、ポロッと漏れ出た言葉って感じで俺らに向かって言った訳じゃないみたいだけど、どうしたものか……。


「……中継は後がいい……先に中断させられたの……見たい」

「あー、魔法砲撃にしたアクアクラスターを先にか」


 何事もなかったみたいに普通に話を戻してきたし、変に突っ込まない方がよさそうだな。まぁ何か桜花さんに用事があるなら、後で一緒に行けば良い話か。


「えーと、競争クエストは結局、今すぐに参戦しに行かなくても大丈夫な感じか? そういう認識で問題無し?」

「ダイクさんのその認識で問題ないのさー!」

「おぉ、それなら良かったぜ」


 あー、ダイクさんは混乱したままで、今の状況を把握し切れてなかったんだな。まぁ今すぐ動く必要性は無くなったから、魔法絡みの検証を終わらせてジャングルの方へと探索に行きたいところだね。


「よし、それじゃアクアクラスターの魔法砲撃からやってくか!」

「……楽しみ!」

「ケイ、それをやってる間に中継の交渉はしとくぞ」

「そこはアルに任せた!」

「どんな風になるんだろうね?」

「想像が出来ないから、楽しみかな!」

「期待なのさー!」


 俺も気になってるけど、みんなも魔法砲撃でどう変わるかが気になってるみたいだし、とにかく実際に使ってみよう! どんな効果の変化が出るんだろう?


コロナのワクチン2回目をしてきたので、場合によっては数日はダウンしている可能性ありです。

その為、感想への反応が遅れる可能性がありますが、そこはご了承下さい。

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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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― 新着の感想 ―
[一言] ルストさんよりは風音さんの方が話を聞く可能性があるかな~
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