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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第31章 2回目の競争クエスト

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第1055話 赤の群集を巻き込んで


 ミヤ・マサの森林に来て早々に盛大に襲われた。襲い掛かってきたのは青いカメレオンの人と茶色いカメレオンの人だったけど、とりあえずこの場にいたみんなで袋叩きになって仕留められていく。

 ふー、戦闘状態はひとまず落ち着いたから、周囲を警戒しつつ、なんか盛大に強化されたアクアウォールは解除しとこ。それにしてもとんでもないな、過剰魔力値を使用しての水魔法。


「ケイさん、今のアクアウォールって何がどうなったの? それにデブリスフロウも変になってたよね?」

「あれがアブソープ・アクアの効果っぽい。……まさか、昇華魔法の水属性要素を吸収して、吸収し過ぎたら魔法の強化に使えるとは思わなかった」


 いやー、昇華魔法を防ぐ為にぶっつけ本番で使ってみたけど、今の俺って水属性魔法に対して相当な優位性を手に入れてない? 吸収した後に解除にはなってたけど、ロブスターの周りに吸収する為の水の膜が形成されてたし、飛行鎧で飛びながらでも出来そうだよな。


「ケイさんの魔法も気になるけど、今の襲撃は流石にいきなり過ぎな気がします!」

「……何か、今のは思惑がある気がするな」

「確かにそんな気はする……」


 エリア切り替えはボスさえ倒していれば別に隣接してるエリアのどこからでも問題はないけど、群集拠点種から一直線に進んできたら人が集まってくる場所はそれなりに偏ってくる。だから、そこに増援で人が集まってるタイミングを狙ってきた?

 軽く周りを見た限りだと、成長体から成熟体まで色々と混ざってるけど競争クエストへの参戦マークがある人ばかり。狙っていたのはマークが無い人がいなくなるタイミング? 増援に来た人達を一気に仕留めて、散らばせて指揮系統を混乱させるのが狙い? いや、どうも違和感があるな。


「この人数を2人で倒そうなんてのは無茶が過ぎないかな? 成長体の人や未成体の人を倒すのが狙い?」

「多分、さっきのカメレオンの人達はどっちも成熟体だったけど、それでも無茶があるのさー!」

「それに……ピンポイントで私達の真上だったよね」

「……攻撃のタイミングと対象を考えたら、俺らをピンポイントで狙ってた可能性は無視出来ないか」


 でも、それだと殺される可能性が非常に高い状態の場所へ、俺らに奇襲する為だけにカメレオンの人を2人送り込んできた事になる。そうなると今度はデブリスフロウを使ってきたのが謎なんだよな。

 俺らを仕留めたいのなら、それこそエクスプロードやスチームエクスプロージョンとか他の昇華魔法や、場合によっては毒性と範囲を強化したポイズンミストで狙った方が良かったはず。正直、自分達だけなら回避に動いても良かった状態……。仕掛けてきた昇華魔法の発動の組み合わせが、俺の持ってる属性と同じだったのは偶然か? 偶然でないとしたら……。


「あー、アブソープ・アクアをさっき使ったのは失敗だったかも……」

「ケイさん、どういう事ですか!?」

「……俺が水属性か土属性か、どっちの魔法Lv10を持ってるかの確認をされた気がする」

「え、それってマズくないですか!?」

「だから失敗って事。もしそうなら、少なくとも魔法Lv10まで上げた際に何があるかを把握してる可能性があるからな……」


 あくまで推測でしかないけども、ジェイさんは近接は得意じゃなくて魔法特化型だったんだし、可能性としては否定出来ない。いや、必ずしもジェイさんがとは限らないけどさ。

 少なくとも青の群集は俺らを警戒しているのは間違いない。それについてはジャングルで奇襲された上で罠まで用意されてたんだから、疑う余地はないだろう。……ことごとく先手を打たれまくって、きっついなー!


「ケイ、ここからどう動く?」

「とりあえず予定通りリークでいこう。どこかで向こうのペースを乱さないと、一方的にやられたままになるし……」

「それじゃ私はこれだね。腐食毒と溶解毒にして『アンティヴェニン・デュオ』!」

「俺も防御を固めとくか。守勢付与の『アクアエンチャント』! あとは『移動操作制御Ⅰ』!」

「2人ともサンキュー!」


 俺の周りに水球が3つ漂い始めて自動防御が働くし、アルの移動操作制御で作った水の膜と、ヨッシさんの抗毒魔法も展開された。これで遠距離からの狙撃や毒対策にはなるはず。


「グリーズ・リベルテに続け! まずは群集支援種のカトレアを探し出していくぞ!」

「「「「おう!」」」」

「それと、まだエリア入りしていない人達へ通達だ! 出来るだけ固まらず散らばって入ってくるようにと!」

「それはもう報告を上げたっす!」

「よし、ならいい!」


 ん? 聞き覚えがある声がすると思ったら、蒼弦さんとオオカミ組の面々か。ついさっきはいなかった気もするけど、今来たところかな?

 まぁオオカミ組がここでの指揮を取ってくれるなら心強いもんだ。……いつもより人数が少ない気がするのは、時間帯の問題なんだろうね。


「リーダーからの作戦指示に従って、各自散開! PTで動くところは誰か1人は『競争クエスト情報板』での戦況確認を怠るな! ペナルティは無いから死んでも構わん! だから出来るだけ相手に痛手を与えていけ!」

「「「「おう!」」」」

「よーし、頑張ってやっていこー!」

「襲ってきたのは返り討ちにしてやろうじゃねぇか!」

「成熟体には進化出来てないけど、頑張るぞー!」

「へぇ、これが競争クエストなんだね。とりあえずは指示に従って動こうっと」


 蒼弦さんの声に応じている人達の中で、なんか聞き覚えのある……アイルさんっぽい声が聞こえてきたけど……とりあえず今はスルーの方向で。アイルさんの件は水には流したけども、信頼していくかは別問題だし……。


「サヤ、ベスタへの合図を頼む。ついでに青の群集は魔法Lv10まで情報を持ってる可能性も伝えておいてくれ」

「うん、分かったかな!」

「アル、少しだけここから先に進んどこう。流石にエリア切り替えに近過ぎるとこは邪魔になるし、まだ狙ってきてる奴がいたら面倒だしさ」

「……移動先が安全とも限らんが、大人数を巻き込む状況よりはマシか」

「そういう事だなー」


 という事で、少しだけさっきの場所から離れた森の上空へと移動。あー、とりあえず防御は固めてハーレさんがあちこちを見渡しながら周囲の確認をしてくれているけど、今のミヤ・マサの森林に安全な場所はなさそうだもんな。

 これからフレンドコールをするのを妨害してくる可能性も想定してるけど、今回は青の群集は用意周到だ。正直、真正面から相手をするのがしんどそうなくらいに……。


「さてと、それじゃルアーにリークをしていきますか」

「頼むぜ、ケイ」

「ほいよっと」


 とはいえ、確実に上手くいく保証はないんだよなー。それこそベスタも言ってたけど、既に青の群集が赤の群集へ根回し済みって可能性はあるからね。

 まぁ実行に移す前から確定事項として扱っても仕方ないし、今はとにかくルアーへとフレンドコールだ。……頼むから出てくれよ! あ、意外とあっさり出てくれた。


「よう、ケイさん。競争クエストの真っ最中に、ケイさんからフレンドコールがくるとはな。……読み通りか」

「やっぱり青の群集から接触してきてたか!?」

「その可能性を考慮した上での、このフレンドコールって事か。回りくどいのはなしでいくぜ、ケイさん。赤の群集は、青の群集が灰の群集を攻撃してる最中には群集としては動かねぇ。理由は想像出来るだろうよ?」

「あー、総力戦だろ。多分、昼からくらい?」

「さてな? そこまでは答えられないぜ」

「だろうなー。その時間を言ったら、ジャングルの方が圧倒的に不利になるもんな?」


 赤の群集と青の群集が総力戦をするというのであれば、その間はジャングルに戦力を割く余裕は無くなるはず。この辺のデメリットは呑み込んだ上で交渉はしてるだろうけど、赤の群集の動きを探る一手にはなる。

 あー、とことん今回は青の群集が本気過ぎるな。……だったら、ちょっとハッタリも含めて盛大にかき乱してやるか。全ての前提をひっくり返してやる。


「……ったく、嫌な部分を突いてきやがる」

「俺らの方は、最悪ミヤ・マサの森林は手放しても他の占有エリアがあるからな。青の群集を元気なままで勝たせて、赤の群集と青の群集が潰しあってる間にジャングルは取らせてもらうぞ」

「……ちっ、そうきたか」


 まだジャングルの方の攻略条件が不明だからかなりハッタリも入っているし、灰の群集のみんなに確認を取ってない独断で言ってるけど、実行が不可能かと言えばそうでもない。

 冗談抜きでみんなを説得して、ミヤ・マサの森林での勝ちは放棄して、ジャングルの方に全力を注ぐという選択肢はありだ。総力戦を計画してる以上、赤の群集も青の群集もジャングルの方に戦力を大量投入は出来ないはず。

 何よりも、これなら青の群集のミヤ・マサの森林での作戦は全て無駄な労力になる。目的は俺ら灰の群集を出し抜いた上での勝利だろうから、そもそも相手にしないという対応は……一番嫌がる展開だろうなー。

 

 ん? なんか共同体のチャットが光ってる? 何か伝えたい事があるみたいだけど、書き込む余裕は――


「ケイ、反応はしなくて良いから、見るだけ見ておいてかな」


 なるほど、変に声で話しかけたら意識が逸れるから、見るだけで確認しろって話か。そういう事なら何か重要な進展があると考えても良さそうだね。


「さて、自分で言うのもなんだけど、俺らは冗談抜きで灰の群集の中では相当な影響力は持っている。実行出来ないと思うなら、そのままスルーしてくれても構わないぞ。それ相応に動き方を変えるだけだからさ」

「…………」


 うーん、リークして協力を頼むつもりが、脅し的な内容になってきた。まぁ先手を打たれ続けている状況を覆す為には、これくらいの強行策くらいは使わないと無理だしなー。

 さて、ルアーが答えかねている今のうちに共同体のチャットを見ておこう。どういう動きがあった?


 サヤ    : ベスタさんから伝言。今、ケイがハッタリで脅している内容で青の群集には敵わないって形で煽るって。総力戦が撤回になって赤の群集が戦闘になっても、ミヤ・マサの森林を放棄する事になっても、どっちでも構わないから好きにやれとも言ってるよ。一応ハッタリではあるけど、どうなった場合でもみんなもベスタさんの意向に従うって。


 おっ、俺のその場の思いつきでのハッタリも、場合によっては本当に実行に移すって事か。よし、名実ともに灰の群集のリーダーになってるベスタからその言葉を貰えるのはありがたい!

 不満がある人もいるだろうに、それでもそれで話が進むのはベスタへの信頼があってこそか。そのベスタの撹乱の内容、ジェイさんが聞いたら怒って飛んできそう。まぁその前に俺はルアーさんへだな。


「ルアーさん、どうする? 新エリアのジャングルで勝つ可能性を手放しながら、全然疲弊してない青の群集とガチで総力戦をして占有エリアを手に入れられない可能性がある戦いをする? あぁ、それとも疲弊した青の群集を叩き潰して楽に占有エリアを手に入れたい?」

「……随分と煽るじゃねぇか、ケイさん」

「こっちは後手に回り過ぎてて、手段は選んでられないからなー。あぁ、青の群集が色々と仕込みまくってるのが無駄にさせる事にもなるし、八つ当たりがそっちに行かなきゃいいけど……」

「そんな心配をするくらいなら……今重要な話をしてる最中なんだが、なんの報告だ? 青の群集から連絡ってなんだよ? ……なに? 灰の群集がミヤ・マサの森林での勝負を放棄すると吹聴している!?」


 おー、これはベスタが仕掛けてる撹乱作戦だな。ふっはっはっは! 赤の群集へと連絡が行ってるって事は、青の群集の方に少なからず混乱は生じているっぽい!

 ん? なんか少し離れたところから徐々に近付いてきて、大声で何かを話してるベスタがいるな。なるほど、これはその吹聴をしている最中か。


「繰り返す! 青の群集が赤の群集との総力戦を昼から予定しているのは把握している! 今回の用意周到さには参ったし、赤の群集と手を組まれては俺らの勝ち目は薄い。その件で灰の群集は撤退を検討している!」

「……え? これで終わり……?」

「これからじゃん!? これじゃ色んな作戦を立てた意味がない!」

「おい、ちょっと待て、灰のボス!? そんな拍子抜けな決着があるか!?」

「ふざけんな! 真っ当に勝負しやがれ、灰の群集!」


 わー、どこに隠れてたのか、ネズミの人やヨモギの人やイタチの人とかが出てきて文句の声を上げてるよ。まぁ色々と事前に根回しや作戦の立案をしてきたみたいだけど、それが無駄に終わりましたじゃ納得はいかないだろうねー。


「何を言っている? 勝ちが欲しくての作戦だろう? 実行に移さなくとも効果が出る事に何の不満がある?」

「……それは」

「くっそ! こんな決着の仕方なんか望んでねぇぞ!」

「赤の群集との総力戦が裏目に出た!?」


 おー、おー、戸惑ってる、戸惑ってる。いやー、効果抜群ですな、この作戦。このままいけば灰の群集と青の群集との対戦という構図は完全に崩れ去る。

 ミヤ・マサの森林を手放す事になるのは……正直、メインの活動場所にしてる人達には悪い気はするんだけどね。でも、冗談抜きでこの後手に回り過ぎてる状態で、赤の群集まで青の群集の味方に回った状態は厳し過ぎるのは事実。これが灰の群集に対しても総力戦をしようって提案があったなら良かったんだけどね。


「ケイさん、赤の群集を盛大に利用したな!?」

「元々は、同時に戦って青の群集の戦力を分散させようって提案のつもりだったんだぞ? でも、灰の群集を攻める間には先に手を出さないって話がついてるなら……遠慮はいらないよな?」

「……くそっ! いくらなんでも手放すなんて手段は……ちっ、盛大に見誤ったか!」


 あ、悔しそうな言葉を最後にルアーからのフレンドコールが切れた。いやー、どっちにしてもリークで巻き込むつもりだったとはいえ、実際には先に巻き込んだのは青の群集だしね。そこの決断については責任は取りかねるよなー。


 さて、ここからどうしたもんか。実際の戦闘はほぼ無しでこのまま青の群集との対戦が終わるは不完全燃焼ではあるけど、実行する手段としては本当にあり。

 でも、今はベスタの意向に従うって話にはなってるとはいえ、ログインする人が増えてきたら灰の群集の中からも反発が出る可能性はあるから、出来ればハッタリを続けつつ、青の群集からの提案での仕切り直しが理想では――


「……え? 何かが左側に落ちたかな?」

「はっ!? みんな、例のやつです!」

「しがみつけ! 『旋回』!」

「おわっ!?」

「きゃっ!?」

「ヨッシ、大丈夫かな!?」


 うっわ、アルの移動操作制御での水の膜に飛んできた銀光が直撃して強制解除になった。でも、その前にサヤとハーレさんが違和感に気付いてアルの緊急回避が間に合った。

 左側面の森の中から急に現れた銀光だったけど、サヤが先に見た落ちたものってのが滑らせる為の同族同調中のコケなのかもな。というか、このタイミングで仕掛けてくるか!? 俺らが戦うしかない状態にして、強引にでも戦闘に引き摺り出す気でいるのかも?

 

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大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
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― 新着の感想 ―
[一言] あ~ 曲がる砲弾かぁ
[一言] 2つの勢力で口裏合わせといて真っ当に勝負しろは草しか生えない。 真っ当に勝負して欲しいなら自分たちも真っ当な手段で挑むべきだと思う。
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