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Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜  作者: 加部川ツトシ
第30章 成熟体への進化

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第1037話 大苦戦の果てに


 弥生さんを地面に叩きつけるつもりが、逆に俺が地面に叩きつけられてしまって朦朧になってしまっている。しかも無差別ダメージも受けてしまった為、もうロブスターの残りHPが2割ほどで危険水準。


「さーて、2人目は誰かなー?」

「ハーレ、今は逃げに徹しよう! 『高速飛翔』!」

「了解です! 『逃げ足』!」

「あはははははははは! ヨッシさん、ハーレさん、逃がさないよ!」

「させないかな! 『連強衝打』! あっ、不発!?」

「2人目はサヤさんだねー! あはははははは!」

「……あっ、みんな、ごめんかな」

「「「サヤ!?」」」


 くっそ! サヤの攻撃が不発になってしまって、その隙に弥生さんの強弱のある銀光を放つスキルが一気にサヤのHPを全て削り取り、ポリゴンとなって砕け散っていった。今に弥生さんの攻撃は重爪刃・連舞だった気がするけど、それが分かっても今の状態じゃどうしようもない!


「それじゃ3人目はケイさんだー!」

「……くっそ、ここまでかよ!」

「あはははははははは!」

「ケイさんはやらせないのです! 『連投擲』!」

「あはははは! ハーレさんが先がお望みみたいだねぇー!」

「あぅ!? 当たらないのです!? 『連投擲』!」

「ハーレ! 『神経毒生成』『毒針』!」

「あははははははは! これで3人目!」

「あぅ!?」

「ハーレ!?」

「ハーレさん!?」


 弥生さんにあっさりと回避された投擲は、ジャングルの木に当たって花粉をばら撒いていた。一か八かで花粉の弾で弥生さんの動きを止めるつもりだったみたいだけど……その甲斐はなく、ハーレさんは噛み砕かれてHPが全て無くなりポリゴンとなって砕けちっていった。

 ダメだ、弥生さんのプレイヤースキルが高くて強過ぎる。圧倒的に不利な状況から始まったとはいえ、5対1でこれは予想以上にヤバい。しかも的確にログイン側を狙ってるぞ、これ。


「『麻痺毒生成』『棘乱射』!」

「あはははは! 当たらないよ! それでこれで4人目!」

「ケイさん……回復までの時間稼ぎが出来なくて、ごめん」

「ヨッシさん!?」


 俺が動けないまま、ヨッシさんは爪で斬り刻まれてHPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていった。……残ったのは俺1人かよ。

 

「さーて、残りはケイさんだよねー! あははははははは! これで終わり!」


 まだ朦朧が回復してないから、逃げようとしてもどうにもならない。って、ちょっと待った!? 銀光を放ってないし、1撃辺りの威力は低めなのに、風の追撃がある攻撃を連発!?


<『同調激強ロブスター』のHPが全損しました。『同調激魔ゴケ』が大幅に弱体化します>


 だー! 今ので何となく分かった! 発声が無いから絶対とは言えないけど、弥生さんは爪撃Lv10で行動値の回復性能を持ってる可能性が高いぞ! そうでなければ、今の状況でスキルを使った理由が分からない!

 ははっ! 嫌な情報ではあるけど、それを持ってるという事実は競争クエストで勝とうとするなら重要になってくる。……ほんと、弥生さんの継戦能力が高まってる可能性とかヤバい情報過ぎるわ!


「あ、そっか。コケはこうじゃないと無理だよねー! あははははは!」


<群体が全滅しました>

<安全圏への強制リスポーンを実行します>


 ちょ、待って!? この弱体化した状態のコケって、弥生さんが生成した石で潰されたくらいでも死ぬくらいに弱体化するんかい! しかも、リスポーン位置は選べず強制リスポーンなのか!?

 くっそ、結構粘ったとは思うけど全滅で、今回の強行偵察はここまでか……。


<『未開のジャングル』から『未開のジャングル・灰の群集の安全圏』に移動しました>


 そうして強制的に安全圏へとリスポーンになった。だー! 次に会った時は、弥生さんには絶対にやり返す! どうやってするかはこれから作戦を考え無いといけないけど……。

 あー、今回のリスポーンだと行動値も魔力値も全快している。でもスキルは全部解除になってて、夜空の天の川がよく見える。ふむ、スタート地点の安全圏に戻されてるから、すぐに元の戦場復帰は無理って事だからかも?


「おう、ケイも戻ったか。ヤバいな、弥生さん」

「だなー。てか、アルは速攻狙われてたな……」

「まぁ俺でもそこは狙うしな。今更言っても仕方ないが、小型化で回避するんだったぜ……」

「あー、その手があったか」


 流石にあのタイミングで弥生さんとシュウさん……シュウさんは全然戦ってないから、実質弥生さんのみ。サヤが完全にではないけど、それなりに抑えられてはいたから弥生さんのみなら連携して抑え込めばなんとかいけるか?

 おっと、その前にみんなは……うん、全員揃って……ない!? 羅刹がいないけど、そういや羅刹はどうなった!?


「お、ケイさんも殺られて戻ったみたいだな。流石に戦闘中は気が散るだろうから黙ってたが、これで少し話が出来るか」

「あ、羅刹! これ、地味に話はしやすくなったんだな」


 弥生さんに負けて安全圏へと送り返された訳だけど、結果としては周りに味方しかいない状態にはなった訳だ。俺らが出発した時よりも人は増えてるみたいだけど、まぁそこは今は気にしなくていい。


「さて、話はとりあえず少し移動してからにするぞ。『空中浮遊』『根の操作』!」

「みんなの邪魔にならない位置に移動なのさー!」

「細かい話はそれからかな!」

「うん、その方がいいよね」

「少し待っておくから、準備が済んだら言ってくれ」

「ほいよっと」


 俺らがリスポーンしてきた位置は森林エリアから転移してきた位置とはズレてるみたいだけど、それでも他にリスポーンしてくる人がいないとも限らない。重ならないように多少は位置は自動でズレるだろうけど、その辺を気にしないで良い状況にしておく方がいいもんな。

 という事で、アルの根で作られた足場を登ってクジラの背の上に到着。空中なら邪魔にはなりにくいはず。


「羅刹、もういいぞー!」

「……俺が本気で裏切ったとか、疑いはしないんだな?」

「伏兵がいるって合図しといて、裏切ってるとは思うかよ!」

「そうなのさー! 甘く見てもらったら困るのです!」

「ははっ! まぁPT会話で聞こえてはいたが……迫真の演技だったぜ、ハーレさん。報告を受けるジェイ辺りがどう判断するかは分からんが、少なくともあの場にいた連中は俺が裏切ったもんだと思ってるようだな」

「でも、それってバレないかな? 羅刹さんが本当に裏切ったのなら、承諾が破棄されて参戦不能になるよね?」

「あぁ、青の群集はそう思うだろうな。これで俺は好き勝手に暴れて、もう競争クエストには参戦出来ない馬鹿野郎って認識になる訳だ」

「……もういるはずがない敵が、実は残ってるって事になるんだね」

「ま、そういう事だな」


 この状況、羅刹が意図的に作り出したものになるんだな。確かに参戦権を失うような事をした傭兵が実は平然と残っていましたという状況は、上手く使えば伏兵として機能する。

 それが実力者の羅刹なら、結構な優位性だ。だけど、それは実際に伏兵として動く時まで羅刹が目撃される事がなければの話。……レナさんが試そうとしていた件の結果がどうなっているか、そこが重要になってきそうだな。


「羅刹、今はどこにいる? イブキみたいにどこかに飛ばされたか?」

「あぁ、飛ばされたぜ。ただし『未開の峡谷』って場所でな……。一応すぐに俺の現在地は分からないように設定はしておいたから、俺を経由して知られる事はないはずだ」

「『未開のジャングル』じゃなかったのさー!?」

「どこへ飛ばされるかはランダムなのか」

「そうみたいだぜ、アルマースさん。グランドキャニオンをイメージしてくれと言えば分かるか?」

「あ、そういう感じの峡谷なんだね」


 なるほど、3つ目の競争クエストの対戦エリアはそんな感じなのか。グランドキャニオンって有名だけど、ひたすら岩で出来てる峡谷で緑が全然ないってイメージよなー。

 ぶっちゃけ、競争クエストの戦場としては戦いにくそう! あ、でも今のジャングルが戦いやすいかといえば、それも怪しい?


「羅刹さん、質問だ」

「おう、アルマースさん、なんだ?」

「植物や水は一切ない感じか?」

「いや、全くないって事はねぇな。まだ少しだけにはなるが探索はしてみたが、谷の下には水量は多くはないが川も流れてはいるし、植物も多くはないが存在はしているぞ。……だが、低い場所ほど瘴気が多いようだ」

「……なるほど、そういう特徴のエリアか」


 ふむふむ、既に羅刹は少しの間でも調査はしてくれていたっぽい。低い位置ほど瘴気があるって事は、高い位置を移動すれば瘴気が集まってから出てくる無所属の乱入や、あの骨のトカゲのような敵は避けられる?


「とりあえず、俺はしばらくここからそっちに戻る手段を探ってみるつもりだ。まだ青の群集のプレイヤーとは遭遇する事はないだろうし、身を隠すのにも丁度良いだろう」

「確かにそうなのです!? あ、でも青の群集の傭兵の人と遭遇した場合はどうするのー?」

「あー、そりゃそうなってみないと何とも言えねぇぞ」

「……その辺は青の群集がどう動くか次第だしなー」


 羅刹が戦力外となったと判断されれば無用な情報でしかないから全体に通達はしない可能性はある。逆に羅刹の参戦が生きているとして警戒しているなら、重要情報として通達されるはず。青の群集に付いた傭兵の人次第ではあるけど、今はまだ色々と断定は出来ないか。


「どっちに転んでも、青の群集の警戒度合いは分かりそうだね」

「あはは、完全に心理戦になってるかな!」

「というか、ハーレさんも羅刹さんも仕掛け過ぎだろ」

「ふっふっふ、警戒すべきはケイさんだけではないのです!」

「俺としては力をつけて油断してるとこを、ひっくり返してやりてぇんだよな!」

「ハーレさんはともかく、羅刹はそんな理由かい!」

「おう、そんな理由だぜ。青の群集で伸びてきてる奴の一部には、灰の群集との差が埋まって調子に乗ってるのもいるからな」

「え、マジで?」


 うわー、そんな人もいるのかー。確かに学生組がテスト期間で離脱中に、群集間の力の差は埋まっているとは聞いている。聞いているけど、まさかそこで調子に乗ってる人がいるとはなー。

 まぁあのベスタが複数人相手だったらしいけど、倒された事もあると言ってたもんな。俺らが奇襲で受けた……って、その話も大事なんだった! ちょっと俺の考えてる案はあるんだけど、みんなに意見を聞いてみようっと。


「ちょっと話は変わるんだけど、あの長距離からの危機察知に反応しなかった攻撃についての推測をしてみたんだけど、みんなの意見を聞いてもいい?」

「……おい、ケイ。そんなに時間は経ってないというか、考える余力もなかったのに、もう推測してるのかよ」

「へぇ、興味深いじゃねぇか」

「とりあえず、内容を聞かせてかな?」

「ほいよっと」


 アルの言う通り、時間や余裕はなかったけども、それでも思いつきはしたんだからいいじゃん。まぁ絶対にそうだとも言えないからこそ、みんなの意見が欲しいんだけど。


「とりあえず考えてるのを言っていくぞー。まず、大前提として1人ではやってなくて、使った投擲スキルは『貫通狙撃』か、それより上位の未知のスキルだな」

「……闇の操作を別で使ってる人はいそうだもんね」

「でも、貫通投擲なら危機察知に反応すると思うのです!」

「普通ならそうだろうな。でも、危機察知に反応しないパターンもあるだろ?」

「……えっと、あ、流れ弾かな!?」

「そう、それ! ハーレさんが曲がったように見えたって言ってたのは、流れ弾に変える為だ」


 あくまで今の段階では推測でしかないけども、可能性としては充分ある。でもこの可能性が本当に可能なら、ちょっと無茶をしてでも追撃をして闇の操作を破って正体を見た甲斐はあるはず。


「羅刹、2人いたサルの人の片方の体表にコケがあったのは見たか?」

「あぁ、それなら見たが……それが関係してるのか?」

「まぁ推測だけどなー。多分、あのサルの人はコケとの同調だ。それで遠隔同調を使って、コケを俺らの近くに忍ばせていた。場合によっては『群体塊』にして、近くまで投げ飛ばしてたかもな」

「はっ!? あれだけのジャングルの中なら、木の影に隠れられたら分からないのです!?」

「……確かに、それはあるかもしれないかな」


 あぁ、やっぱりサヤとハーレさんでも、そこで見つけられるという絶対の自信はないんだな。それなら冗談抜きでこれは可能性として高まってきた。


「あの時は俺の獲物察知も妨害されてただろ? 多分、あれはそのコケを隠す為だ」

「それは分かったが……コケでどうやって流れ弾に変えるんだ?」

「ぶっちゃけ、そこは後で試してみようかと思うんだけど……手段は『スリップ』か『グリース』のどっちか。滑らせて方向を変えられるようにしておいて、遠隔同調の両方の視点を同時に使って狙いをつけて、『貫通狙撃』を流れ弾にして狙撃するって方法だと思う。ハーレさん、どう思う?」

「やってみないと何とも言えないけど、絶対に無理だとは言えない気がします! 貫通狙撃はLvが上がれば射程も伸びるし、射程延長の特性があれば更に伸びるはずなのさー!」

「よし、今はそれだけ分かれば十分だ!」


 投擲をメインで使うハーレさんから可能性はあるという判断が出るなら、試してみる価値はある。危機察知に反応しない弾道が変わる超遠距離からの攻撃の手段がこれで合ってればいいんだけどな。


「後はチャージ中の銀光はあの黒いリス……スミって人が闇の操作で隠していて、万が一の時の為にもう1人のサルの人が護衛としていたんだと思うぞ」

「……確かにそれなら筋は通るかな?」

「ケイさん、サヤが見つけた移動操作制御の闇については?」

「あれは遠隔同調のコケだと思わせない為の偽装だと思う。コケならあんな隠し方をしなくても見失わせるのは簡単だしな」

「あ、そっか。確かにそうだよね。それならあの近くで闇の操作と獲物察知を妨害してる別の人もいる感じになりそう」


 ああやって露骨に闇だけが動いていたらその中に何かを隠してる風に見えるもんな。でも実際はその中身はいなかったし、この可能性は高いはず。あくまで推測に推測を重ねてるだけだし、もしかしたら投擲の弾道を変えるスキルなんてものがある可能性もある。


「そこまで推測が出来てるなら、ケイとハーレさんで少し試してみるか」

「そのつもりだっての! ハーレさん、良いよな?」

「もちろんなのさー!」

「対策を練る為にもやるしかないかな!」

「そうだよね!」

「ちっ、それが見れねぇのは残念か……」


 少し残念そうな羅刹だけど、他のエリアに飛ばされていてどうしようもないからなー。ともかくこの攻撃手段への対抗策を考えないといけないから、まずは今の手順で再現出来るかどうかからやっていこう!


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自力での電子書籍版もありますので、よろしければこちらもどうぞ。
大きな流れ自体は同じですが、それ以外はほぼ別物!
ケイ以外の視点での外伝も収録!

最新巻はこちら!
電子書籍版『Monsters Evolve Online 〜生存の鍵は進化にあり〜』第20巻

これまでの第1巻〜第19巻はこちらから。
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― 新着の感想 ―
[一言] 羅刹さん、イブキをいたぶり(笑)に行こうとしたら別のところに行ってしまった……(笑) 誰もいないところであちこち探索~(//▽//) イブキは何をしてるんだろう?
[一言] 今分かってる各群衆の方針 灰:囮を兼ねた強行偵察だオラー! 青:スニーキング。隙あらば不意打ち。 赤(個人):サーチ&デストロイ!サーチ&デストロイ!! こんなイメージ
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