幼女ラミアは満腹になりたいっ!~撫でるなら優しくしてね?~
ツイッターでわたがし先生と話していてこんなのも書いてみたいなあという欲望のままに。
続くかどうかは運命次第!です。
「おいしいいいいい!!!!」
「わ、馬鹿っ」
予想通りと言えば予想通りに、ごくんと口の中の物を飲み込んだ後、ミアが大きく叫び……周囲の注目を浴びた。咄嗟に伸ばした手も宙を切り、彼女の声を抑えることが出来なかったのだ。不幸中の幸いというべきか、この店は大衆食堂。周囲も常に騒がしく、ミアの叫びに集まった視線もすぐに散っていった。
「何よ馬鹿って。私、馬鹿じゃないわよ?」
「叫ぶ間に次が食べれるだろう?」
価値観というか、考えが俺と少し違うミアに正面から騒ぐなって言ってもあまり意味がない。だから俺は攻め方を変えてみる。すると……あっさりとそれもそうね、と頷かれる。うん、ちょろいな。
さっそく実践とばかりに俺の向かいで出された料理……肉を細かく砕き、上手いとこ焼き上げたはんばぁぐとかいう新料理らしい、を食べるミア。誰が考えたか知らないが、安肉でもそこそこ以上に美味しくなるってことであちこちの店で出され始めたのを聞きつけたミアが食べたいとわがままを言ったのだ。
「どうだ、満足したか?」
「ぷふー……うん、お腹いっぱいだわ。これだけ食べて銀貨2枚! 安いわね」
一人でそれだけ食べるのはどうなんだという言葉はぐっと飲みこんだ。俺一人では今回の仕事はこなせなかったのも確かだし、食費はかかるけどミアがいることで俺の冒険者としての活動範囲もぐぐっと広がったのは間違いないのだ。
「おっと、ミア。下にタレが落ちてるぞ」
「え? あ、本当だ。アルス。拭いてくれない? ここ、届かないの……」
女は生まれながらに役者だって誰が言ったんだっただろうか? その言葉通り、ミアは潤んだ瞳で俺を見上げ、手にした布を差し出してくる。まったく、見た目は子供で胸もあまりなく、幼女でしかないのに自分の活かし方を知ってるんだからな……。
俺は席を立ち、ミアへと歩みより……そのつるりとした下半身についたタレをふき取った。対して力を入れてないのにびくんと一瞬震えるのは俺が怖いのか、それとも……。
「ねえ、アルス」
「なんだ?」
嫌な予感がしつつもこう聞くしかない。聞きながら彼女の顔を見ると……やっぱりか。熱い物をたくさん食べた後のように汗の滲み始めた顔。まるで今から愛の告白でもしますと言わんばかりに潤んだ瞳、他の状況も合わせて全部が全部、1つのことを示している。彼女が我慢できそうにない状態になっていると。
「宿まで我慢しろよ」
「うう、がんばるぅ」
周囲の他の客が気が付く前にとお勘定を済ませ、抱きかかえるようにしてミアを連れ出す。その際にミアの下半身……つるりとした蛇のような部分が俺の腰に巻き付くのはちょっと驚いたがいつものことだった。
「まったく。子供のくせにこんなに抱き付いてきて」
「ミアは子供じゃないよぉ……ちゃんとした独り立ちしたラミアなんだからぁ……」
独り立ちすることと子供であることは矛盾しないはずだとだけ言って、俺はミアの顔を他の奴らに見せないように気を付けながら宿に飛び込んだ。こんな、男を誘うような顔をしたミアをそのまま宿に連れ込んだら何を言われるかわかったもんじゃない。……もう無駄かもしれないという考えは横に置いておこう。
「きゃっ。もう、レディは優しく扱いなさいよっ」
「レディはおしとやかで人に迷惑はかけないもんだ」
部屋に2つあるベッドにミアを投げるようにして転がすと、人間の姿の上半身は仰向けのまま、下半身は白いシーツに自分の匂いを染みつけるのだと言わんばかりに動いていた。いや、今はそういう理由ではないのだろう。脱げそうで脱げなくて、ちょっとかゆいんだと思う。だけどそれじゃ脱げない……いや、剥けないんだ。
「アルス、お願いしていい?」
「そのままだと辛いんだろう? しょうがないさ」
吐息にまで熱がこもってきたのを感じながら、ミアに請われるままに彼女と同じベッドに乗り込み、そっと腰のあたりに手をやった。少し触れただけでもその火照った様子がわかるほどだった。
「んっ」
「悪い。痛かったか?」
急にミアが動くものだから、目測を誤って指先が引っかかってしまった。だから痛みがあったかと思ったがそうではないようだった。そのことに安堵のため息をつきながら、改めて彼女の体に指を這わす。
すべすべとした場所、つるりとした場所、少ししっとりとした場所……ここだ。
「行くぞ」
「うん……優しくして?」
見た目は幼女だが、ラミアという種族のミアに言われるとわかっていても一瞬頭がくらくらする俺がいた。手を止めないようになんとか動かし……少しずつ目的を果たす。指先がミアの肌に沈んだ。
「ふんっ……ふぅっ……」
「痛かったら言えよ」
ゆっくりと、確実に指を動かす。痛かったらとは言うが、俺はやめるつもりはなかった。途中、彼女の細い腕がやめてとばかりに俺の腕に乗ってくるが半ば無視して最後まで俺は動きを止めなかった。
「うう、アルスのいじわる」
「ミアのためだろ?」
疲労困憊とばかりにあおむけに寝たままのミア。激しい運動をした後のように汗だくで……綺麗だった。本人には言わないけどな。そのまま気持ちを誤魔化すようにして、それを摘み取る。
「よし、しっかり剥けたぞ」
「なんだかアルスが言うとえっち……」
つぶやくミアに失敬な、とだけ言って俺は手にしたそれをミアにもしっかりと見せた。まだ1つ、大人の階段を上がった証と言われるそれ……ラミアの脱皮した皮をだ。
「よかった。今回は前よりも早く脱げそうだったから心配したの」
「食べ過ぎなんじゃないか? いくら……美味い物を食べると脱皮しやすくなるからって……」
そう、このラミアであるミアは……生き物を襲ったりして魔力を得て成長し、脱皮をするはずのラミアだというのに! 美味い食事を食べるとその喜びやらなんやらで脱皮する体質を持っているのだ!
「だって……何かを襲ったらかわいそうじゃない」
「まあ、俺としても幼女なお前に何かを殺してほしくはないけどさ……」
ミアはいつも独り立ちしたと言っているが、この体質のせいで追い出されたんだろうとは口が裂けても言えやしない。幸いにも、人の言葉を理解するラミアは多少気にはされるけど迫害までは受けていない。本人達も人間を襲うことを辞めて久しいらしいからそのせいもあるだろうな。
「また明日から、別の街に行ってみような」
「はい! 私おまんじゅうといかいうの食べてみたい!」
どこでどう話を仕入れて来たのか。そんなことを叫ぶミアにデコピンをかましつつ、俺は笑う。どこまででも連れて行ってあげようじゃないか。あの日……俺はミアに腹いっぱい美味いもんを食べさせてやるって言ってしまったんだからな。
これはしがない騎士の家系の次男坊で自由気ままに冒険者になった俺と、悲しい体質のせいで独り立ちしないといけなくなった幼いラミアのミアとのお気楽な食道楽のお話である。