第2話 佐々木仁の仮入部の始まり
「じゃあその机、縛り付けて!やり方は先輩から教えてもらってください!」
部活というのは、ある意味労働だ。自分のためにならないことをただひたすらにやらされているのは過剰労働まである。一番の問題としてあげられるのは給料がないことで、さらに年会費(部費)まで取らされるというとてもブラックな団体だと俺は思う。
そんなものに好き好んで行くやつほど、真の社畜にふさわしいとも俺は思う。つまり帰宅部以外はみんな社畜なのだ。そうなりたくなければみなさん、プレミアムフライデーはしっかり早く帰宅して下さいね。
「誰に話してるんですか......。」
「世界に対する問いかけをしていたんだよ。てかお前誰だよ?」
「私は通りすがりの女子高生です!先輩方がワイワイしていたので来てみました!」
「ワイワイしているのは目の錯覚だぜ。こんなのは上の者の為に働いているだけなのだ。」
「まだそんなこと言って……。なら部活なんて入らなければいいじゃないですか。」
「それは、だな………」
俺は今文芸部を作る活動ではなく、軽音部で机をセロハンでくっ付けてステージを作り、そこで新歓ライブをするという、全く何が一年生のためになるかもわからないことをやらされている。
なぜ文芸部の活動をしていないかというと、あちらにはまだ時間に余裕があるからだ。
あちらに関しては、いつでも部活を作ることができなくもないが、万が一、軽音部でバンド活動をしたい場合はここでバンドを組んでおかないとぼっちになってしまうため、先に仮入部させてもらっているのである。
黒山先生には諦め早っ!と言われたのだが、別に俺は諦めたわけではない。いろいろやりたいことを試しているだけなのだ。
「先輩はほんとに軽音部やりたいんですか?」
「なんでそんなこと聞くんだよ?まあ仕事はやりたくないけど、音楽は、やりたいし。」
「でももっとやりたいことがあるんじゃないんですか?知らないけど。」
なんなのだろう。こいつにはいろいろ見通されてる気がする。
だいたい、この少女に俺は見覚えを感じていた。
昔にあってた、なんてことはおとぎ話みたいだが、どこかで会っていたのかもしれない。
あと何か、物凄く重要な違和感を感じる。場違いな雰囲気やオーラを、彼女は放っていた。具体的にそれがなんなのか、説明し難いのだが、何かがおかしかった。
「最悪、兼部もできるからな。それでなんとかするよ。文芸部の為にこの高校に来たのに入らないわけねえよ。」
「なら良かったです。」
そういうと、彼女はスカートを翻して、視聴覚室の出口へ向かった。
「おい!」
「?」
俺はつい、彼女を呼び止めてしまった。何かが聞きたかったわけではない。でも、手放すべきではないと思ってしまったのだろうか。
「名前はなんていうんだ?」
「名前ですか……、私は大和舞って言います。どうぞお見知り置きを。あなたは?」
「俺は、佐々木仁だ。よろしくな。」
「また、すぐ会えるといいですね。文芸部、作る気になりましたら、私も入りますよ。協力してあげます。」
「え、いいのか?お前こそちゃんとやりたいことやった方がいいんじゃないのか?」
「私のやりたいことは、それですから。」
即答だった。舞は俺が文芸部をやると、本当に知っていたのかもしれない。それがやりたいことだから、俺に声をかけてやらせようとしているのか。それだと物凄く傲慢な風に聞こえるが、彼女の声かけは俺のモチベーションに変わった。
「じゃあ、また。」
「おう、頑張れよ。俺も頑張るから。」
舞は頷くと今度こそ部屋を後にした。
そう言えば、なんで俺一年生なのに先輩って言われてんだ?
朝ちょっとした時間に書いたんで、めっちゃ短くてすみませんm(_ _)m