プロローグ 佐々木仁の明神高校への始まり
新作書く前に今書いてる小説完成させろよ。
事は面接の時から始まった。
俺が受けた高校は県立明神高校という高校で偏差値は52のごく普通の普通科高校だ。なんの特徴もないと言ってもらっても差支えないような高校に俺、佐々木仁は進学しようと決めた。別に進学しようと思った理由は普通だからではないが、この高校にはある有名な人が卒業している。
「Black Cherry」というペンネームでライトノベルを書いているラノベ作家さんがいる。その人は現役で小説を書き続け、「魔法少女の大冒険」という小説で大ブレイクした。今はもうそれを完結させて、第2作を検討しているのだそうだ。
その人の卒業した高校がここ、明神高校なのだ。彼女はここで文芸部として活動し、自らの技術を高めてきたらしい。
俺の夢はラノベ作家。その夢をかなえるためにここの文芸部に入部するのだ。絶対合格してやるぜ。
と、意気揚々と受験勉強を進め、筆記試験で大成功をおさめたのはいいが、得意だった面接でトラブルを起こしたのだ。
そのトラブルはかなり根本的なことだった。
朝起きるとすぐにベットから起き上がることができた。いつもなら二度寝は欠かせないのだが、今回それをやって遅刻するわけにもいくまい。
そう、今日は筆記試験を終えた県立明神高校の面接試験がある日なのだ。
気合いをかめるためにもこうやって改めて自覚してみたりする。まあ、正直言って、筆記試験のほうは相当自信はあるし、この学校はあまり面接試験を見ない高校なので、落ちる心配はまったくないのだが。
俺は顔を洗うために階段を下りると、昨日用意した面接試験用に持っていくバックが玄関に用意されていた。
「あ、お兄ちゃん、起きた?」
「わざわざ聞かなくても起きてるだろ。人間という生物は体を起しながら寝たりはしないんだよ。それより朝ご飯は?」
「食パンとか適当なものでいいっしょ。そんなに食うと太るし眠くなるよ。」
「誰も量については触れていないのだが、まあそれはともかく、早く食って早く行きたいからパン焼いてマーガリン塗っといて。あと小百合も起こしてきて。」
「りょーかい!」
2階から下りてくるなり話しかけてきたこの女は俺よりも1つ年下の妹、沙織である。そのほかにもうちの兄妹の次女で現在幼稚園の年中さんの小百合がいる。
俺たちは若いうちに母親を亡くしている。小百合を産んだ後、大量の出血によりショック死したらしい。5年前の話だ。
俺たち兄妹は小百合が1歳になってから、アパートで3人だけの暮らしとなった。父親は単身赴任で関西のほうを回っているらしい。詳しいことは誰も把握していない。いや息子なんだし把握しとけよ、俺。
俺は顔を洗うと、面接の再確認をしてから沙織の焼いたパンを食べ、明神高校へ出発した。
明神高校は自宅がある横浜よりも遠く離れた埼玉県にある。神奈川県民が埼玉県立の高校へ進学するのはなかなかないことだとは分かっている。しかもごく普通のどこにでもありそうな学校だ。そりゃあ、教師からもなんでそんなところに行くのか聞かれるだろう。実際、しつこいほど周りから聞かれたものだ。
だが俺は「昔からあの高校に入るのが夢だったんで」の一点張りでつきとおした。さすがにラノベ作家になるためっていうのは恥ずかしい……。
だから、この高校に一緒に行く友達はいない。っていうか行く生徒がいない。ゆえに俺は毎日ほぼ一人で登校することになる。寂しいなぁ…………。
学校まではおおよそ2時間ぐらいかかる。家からの最寄り駅希望ヶ丘から相鉄線で横浜まで、そこから東海道線で東京まで、そこから上野まで上野東京ライン、そこからさいたま新都心まで高崎線、そこからバスで明神高校といったところか。とにかく遠くてうんざりする。
バスを降りると、目の前にもう学校が見える。校門には「面接はこっちだよ♡」という看板が、なんだよ「♡」って。「♡」の真意について後で面接官に聞いておこう。
例の看板の方向へ歩いて行くと待合室があった。俺は受験番号021なので割とすぐに呼ばれるはずだ。時間がくるまで落ち着くために本を読んでいると周りから声が聞こえた。
「やべぇ、面接まじでやべぇ。あぁ、もう落ちたわ。」
「そんなことないって。毎日練習したじゃん。その成果を出すときだって。」
「でもよぉ……。」
いや、面接の練習毎日やるぐらいだったら、入試の過去問一問多く解けるだろ。この人ここは面接は形だけの高校ってことに気付いてないのでは………?
その人たちの励ましトークは置いといて、右前の生徒をみる。
凛とした立ち姿は和を感じさせ、髪をツインテールに可愛くまとめた少女だった。ここの高校を受けた生徒に間違いないだろう。何やら面接シートのコピーみたいなものをまじまじと見ている。
その少女に見とれていると、
「受験番号020から025まで、ついてきてください。面接をします。」
おお、俺のことやないか。俺は荷物をまとめると、立ち上がった。
先生らしき人が俺たちを連れていく。ってこの高校7階まであんの?登るのだりいな。こういうとこは大抵一年生は最上階教室になる。県二つもまたぐんだから、損ぐらい許せよ。
「君たちの受験番号の下一ケタの番号によって教室が決まる。例えば、020番の人は10組で、021番は1組。それぞれここからは一人で行ってくれ。中から生徒がでてきたら10秒くらいして、ノックをたたいてはいるように。」
「「「「「はい。」」」」」
五人の声がはもった。みんな集中しているのだろう。おれはあまりしてないけど。まああまり手を抜きすぎてもまずいのでそこそこ緊張感を持ってやりはするが。
1組のドアから人が出てきた。おれは十秒数えるとノックして中に入った。
おれの面接が始まった。
中には2人人がいた。
「お願いします。」
「座ってください。」
「はい。」
俺は言われるがままに席に座った。2人とも年配なオジサン系の先生だった。くそ、面接にきれいなお姉さん用意しねえとかこの高校準備がなってねえぞ!
「志望動機は何ですか?」
「はい、この学校の卒業生で尊敬する人がいたからです彼女は文芸部で小説に磨きをかけ、稲妻文庫大賞で新人の最優秀賞を取ってライトノベル作家としてデビューしたと聞いています。私もこの学校の文芸部の入部して、ライトノベル作家としてデビューするために日々まい進していきたいと……」
「…ちょ、ごめんなさい。ちょっといいかな。」
「――?はい、何でしょう?」
話を途中で切っちゃいけないって、学校で習いませんでしたか?と、少し苛立たしげに返答してみると
「今何部に入るっていったかな?」
「え?文芸部ですよ。『Black Cherry』というライトノベル作家さんがですね……」
「うーん……」
其の面接官は考えて考えた末に、隣のもう一人の面接官に聞いた。
「文芸部なんて部活、うちの学校にあったっけ……?」
絶望という言葉の真理を知ることになった。
今書いている小説と交互ぐらいに投稿しようと思っています。今後とも優樹をよろしく。