終末オールスター
俺が少し重たいカメラの操作に慣れた頃、父親は画面内にはいなかった。
小さな額の中から俺を見下ろしていた。
数えきれないほどの放送局の中から、俺は選択肢を与えられる事もなくここに配属になった。後悔する事も喜ぶ事もなくただただカメラを廻す日々。基本的には全て生放送。たまに俺が休んでる時に編集しておいた映像を流しておく。
スポンサーはしょっちゅう変わった。俺が撮る絵はつまらない、合わない、無責任、見限られ、たまには俺から見限ったり。
昔は一週間の番組表なんか作ったりしてたった一人の視聴者を楽しませていたな。夢を追う難しさ、好きな人を抱ける悦び、狭いロケ地なりに結構幅のある映像は撮れてた。
いつからだろうな。
明日の番組表すら決まらず、ただカメラを担いで外に出るようになったのは。探せばその時期の絵はあるかもしれないけど、最近は映像を整理すらしちゃいない。多分消したかもな。
今日は久しぶりに編集でもして仕事を終わらそう。帰って誰が待ってるわけじゃないが、たまにはいいだろ。
……これは。初めて撮った映像か。懐かしい気がしないのは俺がしょっちゅう番組で使っているからかもな。
高く感じた天井。左右には原型が分からないクレヨンをなぞった作品達。遠くに見える玄関。照明がついた廊下。
古い映像だからか音がない。後に続く映像もない。多分、興奮してこの瞬間だけ録画のボタンを押したんだろうな。
次の映像は……。なんだっけこれ。給食かな。パンの耳だからおやつかな。あぁ、思い出した。パンの耳をバターで炒めただけのおやつなのに異常に美味しかったやつだ。自分で真似ても美味しくならないのは、マーガリンだからかな。
なんか腹減ってきた。
次のやつは……カレーかい。しかも色んなとこのカレー特集。たしかあまりにもカレーばっかりの絵で当時のスポンサーに呆れられたんだっけ。しかも最後の締めが自作のカレー。これはスポンサーの気持ちも分かるわ。
お次はっと。
おっ、これは学校かな。カメラワークが酷すぎて使い物にならねぇな。喋ってるやつの顔も撮らねぇし、ずっと定点映像のやつもあるし、まるっきりだめだな。こんときの自分に言ってやりてぇなぁ。チャンスは二度もないんだぞって。
次は……。おっ、これは男女入り乱れた合同懇親会。なんだよ、さっきから一人の女性にしかカメラ向けてねぇじゃねぃか。だめだよ、それじゃあ。甲子園の応援席リポートじゃないんだから、もっと全体を撮らないと。もっと引きで。
あっ、ほらぁ。単独インタビューに失敗したじゃん。がっつき過ぎなんだよ。もっとカメラは公正じゃないと。
ん、次のは。なんだこれは。画面の中に画面。顔も合わせずアポ取りか。しかも着信があった後は音声のみ。かぁ〜、カメラの意味がねぇじゃねぇか。ここはがっつくとこなのに。昔の俺はタイミングがわかってねぇな。
だめだな。編集できる素材が少なすぎる。めんどくせぇけど今からロケ行ってくるか。
う〜ん。
スポンサーがいねぇから金もねぇ。撮りたい絵もねぇから目的地も定まらねぇ。どうしたもんかな。
とりあえず外に出るか。そっから悩も。




