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第十話 紬さんの秘密のお仕事 1

紬さんがお店に出ないときがあるんです。そんな時の紬さんの様子がわかります。

「おはようございます。あれ?紬さんは?」

「奥さんは、今日は秘密のお仕事だよ」

ランチからのシフトの裕貴君が父さんに聞いている。常連からバイトになったとはいえ、母さんのあの仕事はまだ知らない様だ。

「ふうん、そうなんですか」

「今週は紬さんが来ないから、状況によっては中でのお仕事もあるから頑張って」

「はい」

裕貴君はいい返事をしてから、ロッカーのあるエリアに潜って行った。

梅雨入りして、少々寒さが増したこの季節は、ランチのグラタンとビーフシチューがよく売れる為、厨房は熱気が籠ってしまう為かなりきつめのクーラーが掛かっている。

「おはよう、次郎君。学校は?」

「午前中が休講だから実質的に休みなだけ。サボっていないぞ」

「だよね。紬さんの秘密のお仕事って何?」

「ああ。お前は知らないよな。俺達は知っているけど」

そういうとランチに来ていた毅さんはニヤニヤしている。

「勉さん。紬さんに頼んでいたの出来上がっているかな?」

「ああ、出来ているぞ。いつ引き取りに来るのかしらって言っていたぞ」

「本当?それじゃあ、一度銀行に寄ってから紬さんの家に行けばいいですか?」

「ああ、いつもの作業部屋にいるから。紬のランチボックス作っておくからもう一度店に顔を出してくれないか」

「いいですよ。それじゃあ一度〆て貰おうかな」

毅さんは俺に会計なって言って伝票を渡してくれる。本当に弁護士さんになってからの方が忙しそうだ。

「休みあります?」

「あるけど、勉強だな。そういう仕事だからいいんだ。じゃあ、勉さんに後で寄るって言っておいて」

「はーい、行ってらっしゃい」

そう言って毅さんは手をヒラヒラさせて出かけて行った。


「毅さんは紬さんに何を頼んだの?」

「ああ、そのうちお前も貰えるぜ。裕貴」

「克幸さん、意味が分かりません」

ランチがひと段落ついたみたいで、克幸さんはカウンターに腰掛ける。克幸さんはオープンからのシフトだから今日はこれで仕事は終了だ。俺はアイスコーヒーを差し出した。

「ありがとな。裕貴、そのシャツは誰が作ったんだ?」

「紬さん」

バイトの白いシャツは母さんの手作り。各自のサイズに合わせて作っているから凄く着やすい。

襟もバイトに合わせて変えてあるのだが、そこまで気がつかないだろう。

タグにはバイトの名前と糸巻きの刺繍がされている。糸巻きは母さんのトレードマーク。

元服飾業界だった母さんは、折角の技術が鈍る事を嫌がって、シャツとかスラックスは家族の分を作ってくれる。

母さんが店にいるときに着ているエプロンドレスも自分で作ったものだ。

それだけじゃなくて、変わり目になるとバイト全員に何らかの現物支給があるんだ。

社員はボーナスがあるけど、バイトには金一封だけというのはどうよ?って思った母さんが思いつきで始めた事。

店を始めた当時はバイト君も数人だったけど、今になると大人数。月に一度の店の休みと母さんの休みに合わせて今ではコツコツと作っている。楽しそうに作っているので止めてくれとは思わないが、偶に暴走するんだ。

皆に執事服作る!!ってのもコツコツ作っている。あの調子だと11月の連休でイベント開催の予定だろう。


毅さんの服っていうのは、毅さんが夏用のスーツを就職祝いに作って貰ったものだろう。

母さんは依頼があればスーツも仕立てる。けど、プロじゃないから材料費のみ貰っている。

今作っているのは、黒猫の制服。細身でスタイリッシュなデザインの制服だ。夏になるから、冬用の生地から夏用の生地に変更した方がいいと急に思い立って作り始めているのだ。白いシャツは半袖と長袖。長袖の方は、たまには遊び心があってもいいわよねって言っていたから何かのアレンジを加える様だ。

で、この黒猫の制服が出来たきっかけが……例によって母の暴走である事を。


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