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第九話 商品開発は楽しいの♪うきうきな孝子とその周りの人々 1

白い黒猫様作、希望が丘駅前商店街~黒猫のスキャット~とのコラボです。

該当は3話と4話ですが、今回はその前のイカ様スイーツから始まります。

「紬さん、イカ様フェア―ってスイーツ作ってもいいよね?」

「そうね、コーヒーお供のクッキーなんていいんじゃない?それとイカの形に型抜いたチョコレートもいいわね」

「それならすぐには作れるけど、イカの絵なんて私書けないよ」

「とりあえず、試作品としてプレーン生地とイカスミをイメージしたコーヒー味をまずは作ってくれない?チョコレートの方はミルクチョコにコーヒーを加えてみて貰えないかしら?」

「分かった。まずは作って見るね」

孝子はそう言うと、いそいそと厨房に向かっていく。

「紬さん……平気ですか?」

浩輔は不安げに指示を出した紬さんに聞いている。

「今回は大丈夫よ。まあ、君達が揃っている時はどうしてもアレの洗礼を受けがちだけども、今回は私もちょっとは考えているのよ。まずは、普通のものを作ってくるのを待ちましょう」

「そうなってくれるといいですね。はい、それじゃあ食器を洗いますね。

ランチタイムが終わって球形から戻って来た浩輔は俺と一緒に食器を洗ってくれるそうだ。

「で、次郎はどう思う訳?」

「どうって?」

「今回の孝子スイーツ。まともなものが出てくると思うか?」

「母さんが言ったことにはあいつは忠実だからさ。今回は安心していいよ。アレでもまだまともになったんだぜ?」

俺は少しだけ孝子スイーツの数々を思い出す。一番酷かったのは、おかずホットケーキなんて言ってアレを混ぜ込んだホットケーキだろうか?」

「そうなんだ。では、次郎的にありえないってものはなんだ?」

「おかずホットケーキ。イン……イカの塩辛だな」

「それは隠し味でも何でもないよな?よく食べたな」

「皆で一口ずつでも辛かった。アレ」

浩輔は想像しているみたいで表情がどんどん険しくなる。

「流石にイカ様フェア―スイーツでもそれはないと思うよ。あの時は凄く怒られたんだから」

「そっか。それじゃあ今回の試食は問題ないよな」

「だと思うよ。多分母さんの事だから……スイーツ開発の日を選んでいると思うよ」

「選んでいる?」

浩輔は分かっていない様だけども、最近の孝子の新作スイーツの開発は安住君がいる時に行われている。

バイトを生贄にすることを避けて安住君を毒見役にすると決めた様だ。

「俺達が生贄じゃないよな?」

「うん。たまにアレな時はあるけど、俺達が食べたものに比べたら全然な。ソース味の肉じゃがもかなりものんだったからな」

「ソース味……ねえな」

「だろう?母さんが絡んでいる限りは大丈夫さ。作業を終わらせようゼ」

僕らはそう言いながらのんびりと皿を洗い続けた。


「紬さーん、出来たよ」

「あらっ、いいんじゃない?皆ちょっといらっしゃい」

無事に孝子スイーツが出来上がったようで、手の空いたバイトからその試作品を紬さんから手渡された。

見た目はどう見ても普通のスクエアクッキーだ。プレーンな生地とコーヒーの香りがほんのりとする生地の

2通りだ。それとコーヒーを少し混ぜて固めたチョコレートを小皿に盛ってある。

「さあ、どうぞ?」

皆恐る恐るとその試作品を一口食べ始める。なんて事のない、普通のクッキーだ。

「これはいいんじゃない?」

「本当?でもイカの形……」

「大丈夫よ。後で澄さんがイカ様ハットの型紙から縮小コピーしてクッキー方にしたらどう?」

「そうですね。これからずっと使うのなら、型抜きを作ってもいいと思います」

「そうね。うちだけじゃなくて、他のお店も使えるわね。分かった。その件はもう少しだけ待っていてね。それと、完全な新作イカ様スイーツはまだ開発しちゃだめよ。皆と方向性を決めるのはいいけれども」

「はあーい」

「そう言う訳だから、皆で孝子スイーツのアイデアを考えてあげてね」

紬さんはそう言うと、お出かけしてくる~♪とドアを開けて出かけて行った。

「行っちゃいました。紬さん……どこに行くんだろう?」

現実にいち早く気がついた裕貴は防戦と呟いた。

「さあな。言えることは、孝子ちゃんが暴走しない様にしないといけないって事か」

「次郎が押さえつけていればいいだけじゃね?」

「智昭よ。それが機能していたら……俺達は生贄になっていないはずだが?」

えっと、皆は俺にストッパーになれと言いたい訳か。

俺はノートパソコンを立ち上げて、今まで孝子が開発して失敗した数々のそれの一覧表を画面に呼び出す。

「とりあえず、今までの失敗作はケーキがメインだ。って事は、今度はドリンクとかムース……これから暑い季節になるからその方向で皆で考えてみたらどうだ?」

俺は、助け船を孝子達に出す。その間にやって来たお客さんの対応は俺がする事にした。

「あれ?皆さんは?」

「紬さんに言われて、孝子の新作スイーツのお手伝い。今日のメンバーはお菓子が好きだからね」

「大丈夫なの?また狼煙が上がるんじゃないの?アイスコーヒーとケーキセット。今日のお勧めは?」

「アイスコーヒーなので、さっぱりとレアチーズケーキはどうですか?ラズベリーは自家製ソースですよ」

「えっ?それって大丈夫」

「作ったのは太郎だから、安心して」

皆がカウンターで考えている間に僕はそうやって淡々と接客をこなす。


「お疲れさん。あれ?次郎が接客?」

そう言ってのんびりとやって来たのは、彰さん。

「母さんの業務命令で新製品開発のアイデアを出す様にって……ちょっと彰さん?」

俺が全部言い終わる前に彰さんはカウンターに進んでいく。

「孝子?」

「あい?」

孝子はのんびりと自分が焼いたクッキーを咥えたまま返事をしている。

「お前……変なものだけはこいつらには食わせるなよ」

「大丈夫。安住君がいるもん」

「あはは……そういうことか。なら俺は何も言わない。まともなものを作れよ」

声のトーンが一気に下がって、彰さんは厨房の奥に消えて行った。今日の遅番は彰さん達だ。それにしては来る時間が早いのでは?やがて着替えた彰さんは、俺の側に近付いてきた。

「で、孝子が食べているのは?」

「イカ様フェア―様のクッキーとチョコレート。黒いのはコーヒーが入っているからです」

「成程な。ちゃんと食えるじゃないか。孝子もやれば出来る子だな」

そう言って、カウンター越しに孝子の頭をくしゃくしゃと撫でていた。

「髪の毛がぐしゃぐしゃになります」

「でも、もう暫くしたらまた厨房だろ?だったら別に問題ないだろ」

そんな事を言って彰さんはからかっている。この光景は店の中ではよくある光景だ。

「そう言えば紬さんは?」

「お出かけ中。彰さんは会いませんでしたか?」

「俺は本屋で本の予約をしていたから会っていないぞ。で、どんなものを開発しているんだ?」

「ひんやり系がいいだろうってジロちゃんが言うからそっちの方向でね」

皆で考えていたのは、アイスチョコレートドリンクとアイスクリームとチョコレートムース。

「普通のレシピなら作れるだろう?材料は多分……あるよな?作ってみろよ?」

「でも……イカの代わりになりそうなのって何?」

「そんなのアロエかナタデココだろうが」

彰さんが皆が悩んでいた事を呆気なく食材の名前を出して話が前に進みだした。

「でも……今日はそれがないよ」

「そんなの、今日はなしでいいだろう?ナタデココもアロエも味は然程しないんだから」

「分かった。イカ抜きで作って見るね」

「ああ。作って来い。待っているから」

ぱあっと明るい表情になった孝子は再び厨房に戻って行った。


「彰さん……平気ですか?」

「俺はイカに見立てたものを入れるなって言っただろ?孝子は忠実に普通のものを作るよ」

そう言うと、彰さんはいつもの様に接客に戻って行く。残された俺達は今回の試作品は問題なく出来上がる様にと願うのだった。


「できたよ~。イカ抜きだけど」

一時間半程すると、孝子が試作品を持って戻って来た。

「いや、イカはいいから。アイスの横にあるのは……寒天か?」

「うん、ちょうどあったから牛乳寒天にしてみたの。それでチョコレートシロップを書けるのはどうかな?」

「成程。イカチョコ風スイーツだな。これはありだな。アイスの方は?」

「美味しいぞ。でも普段は仕入れているから、そこからビターチョコのアイスを仕入れればいい」

「ジロちゃんなら言うと思った」

アイスはメーカーから仕入れた製品の方がおいしいと思ったから素直に思った事を口にした。

「それじゃあ、俺はムース……これなら通常でも出せるな、マーブルにしてもいいのでは?」

白と黒の2層のムースだったので、マーブルはどうだろうと言うのは、浩史の意見。

「チョコレートドリンクは……タピオカ入りでもいいと思うけどなあ」

最初にチョコレートドリンクを飲んでいる浩輔の意見。孝子は皆のアドバイスをメモに書き込んだ。

「この味をベースに今度はアロエがいいかナタデココがいいか入れない方がいいか決めるね。ありがとう」

最初の新商品開発は何事もなく無事に進んでいった。


ここまではまともなのです。今回はイカなしで作っていますから。次回阿鼻叫喚の修羅場が訪れます。

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