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クイズSHOW

作者: 子鉄

今週も始まりました、クイズゲッターチャンス。

早速出場者のご紹介。

青の田中さん。お母さんにやってもらったのでしょう、なんと、ジーパンにアイロンで折り目を入れての登場です。

観客席ではお母さんが元気に手を振っております。

続いて赤の吉本さん。素敵なお嬢さんです。

個人的には優勝していただきたい。

そして、緑は・・・・・・



さて第一問。DVDとは何の略?    

――ピンポン        


私はコンドルが獲物を捕らえるような、凄まじい瞬発力でボタンを叩く。

思えばこの日の為に、このゲッターチャンスの為に今までやってきたんだ。


「では、青の方どうぞ」


「えー、デ、デザイン、デザイン・・・バ、バ、バック、あれだ、あのぅ、あと一個、ここまででてんだけど」        


スタジオに緊張感が走り、たった数秒の時が永遠の様に流れる。


――ブー


「残念。

あと一個て言うか全部ダメでした。

色んな意味で残念です」


「んだよ、ケチ野郎。ぺっ」


「青の方っ、生放送でツバはやめてくださいね。殴っちゃいますよ」


「えへへ」


「では次の問題どうぞ」


第二問、織田信長に支えた武将で、猿と呼ばれた大阪城の城主はだれ?          


――ピンポンっ!


「またしても青の方!」


「はいっ!お、オダ、織田、あー、あれだわあれ、母ちゃん?」       


そう言い客席に目をやる。

言い知れぬ緊張感と張り詰めた空気が観客席とお茶の間を包む。


「守ちゃん、信長だよっ!」


「はっ!あれか?・・・信長?」         


――ブー


「残念。親子揃って残念ですね。お母さん、完全に間違ってるけど、答え言っちゃだめですよ」


「あっ、あいすみません。お腹を痛めて産んだ子ですので」


「分かればいいんですよ。頭も痛めたみたいですね。では、次の問題。次は現代社会から、どうぞ」


第3問

ODAとはなんの略でしょうか?


――ピンポン!


(・・・・・・あいつ、もうボタン押すなよ)

「はぁっ、はい、またしつこく青のおまえ」


「はいっ!あの、あれです」


チラ


「あー、あれ」


チラ,チラ


「青の方、お母さんをちらちら見ちゃってるよ。二分前に注意したのに」


チラ,チラ、チラチラチラチラ


「もう凝視しちゃってるわ」


「守ちゃん、O、D、A」


「えっ?」


「えっ?て言っちゃってるね」


「守ちゃん、オー、ディー、エー」


(ODA?・・・・・・!オダ、織田?・・・・・・はっ!)

「信長っ!」


「うーん残念っ!本当に死、し、CMいきます」


――はい、CM入りました


「おい、山下くん、青とその母ちゃんドツいて摘み出して。ドツくの忘れないでね。うん、ボディはダメだよ顔にしな」       


パンっパンっ!                 

バシッバシッ!


――CM終わります。3.2.1.はい!         


「というわけでございましてですね、なんと、青の田中さんが気分が悪いということで帰っちゃったよ。帰っちゃったんだよ、うん。では赤の可愛いお嬢さんにあの野郎の百点をあげちゃいつつ、大事な大事なゲッターチャンス」                  


こうして、私達の挑戦はあっけなく終わってしまった。

私達がこれまでやってきたことは何だったのか、これから母一人、子一人、どうして暮らしていけばいいのか。路頭に迷い死ねというのか、干からびた状態で押し入れから発見されろと言うのか。

ちなみに父は3年前に出ていったきりだった。

(単身赴任です、はい)


「お母ちゃんがいけないんだよっ。どうすんの、今月あと一万円しかないよ」           


「守ちゃん、お母ちゃんね、あの一万円で美容院に行ったんだよ」


「なんでっ!主役は僕だよ」


「お、お母ちゃん、TVに映るから、映りたかったから。ううっ」                 


「うん、そう言うことなら仕方ないよ。さ、この巾着で涙を拭いて」               


「ううっ、守ちゃんありがとう。お母ちゃん17時からエステに行くね」


「気を付けてね」

(・・・・・・あいつ金持ってるわな。)


私達親子は一事が万事いつもこの調子である。

だから、だから父さんも出ていってしまったんだ。

(単身赴任です、はい)

思えばあの母親のせいでどれだけ苦労してきたことか。思い出すのもためらわれることばかりだった。


私は番組宛てに手紙をしたためた。


拝啓


いつも楽しく番組を拝見しております。

そちら様に対して少々辛辣な事を書きますので匿名で失礼いたします。言いたいことは主に三つございます。

まず第一にあの司会者の方の乱暴な言動が目立ちすぎます。

あの方はヤクザか何かでしょうか?

だとしたら謝ります。

あいすみません。

第二に前回放送の青の田中さんの扱いがひどすぎます。

優勝は明らかに田中さんではないでしょうか?

違っていたら謝ります。 

あいすみません。

私が言いたいのはこの三つです。

乱筆乱文ご乱心失礼いたします。

では皆様お体に気を付けて、戸締まりはお忘れなく。


Sincerely Yours

Mamoru Tanaka


私は手紙を書き終えると、ふうっと一息つき、窓の外を眺めた。

外では秋の景色が無限に広がっていて、散りゆくいちょうの葉が辺り一面を黄色に染めている。

ホットミルクをすすると、色んな事を考えた。

今までのこと、これからのこと、母さんのこと、そして、なにより大好きだった司会の緑川さんのこと。

そうだ、私はいつだってミドさんの事を見てきたんだ。

軽快なトークをするミドさん。

赤の方が白の五番に飛び込んだ時のミドさん。

シャワーを浴びるミドさん。

いつだって見てきた。


考えると自然に涙が溢れてきて、とてもやるせない気持ちになった。

自分はなんてバカだったんだ。

人を外見や体つき、胸の谷間などでしか判断できない大バカ者だ。

たわけだ。

うつけだ。

なにもかもがおかしかったんだ。





――あれから三年の月日が流れた。

私は相変わらずお母さんと二人で暮らしている。


「守ちゃん、お母さん美容院行ってくるからね」


「え?先週も行ったよね?」


「お、お母さん、お母さん女だからっ」


「うんうん、いいんだよ」


こうして、春になろうが、秋になろうがうちはこんな感じで暮らしていく。


追伸

父さんが帰ってきた。あれ以来、母さんは週一回いや、ひどいときは三日に一回美容院に行っている。私はむしろ虎の刺繍の入ったシャツを替えるべきだと思うのだが、それは胸にしまっておこう。   


「守ちゃん、美容院に行ってくるからね」


「さっき行ったわな」


敬具

お母さんを大事にしましょう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりに拝読しましたが いやぁ〜笑うって すんばらしいですゎ また笑わせて下さい ありがとうございました
2007/12/18 23:59 宮薗 きりと
[一言] クイズ番組を題材にされたところが新しいアイディアだと思いました。 出題の進行と共にすいすいと読ませてくれます。手紙の文面は、子鉄先生の小説のいつものお約束のように感じられ、待ってましたと心の…
[一言] なんでしょう、めちゃめちゃ笑ってしまいました。 なんでだろう… 面白かったです。理由は無い。面白いと私の鶏脳が言っているんですもの。
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