犬の散歩② (9)
ヘルパーRは犬が好きであり、老犬の世話もしたことがある、ということだったけれども、それはと結構話を盛っていた、と言うことは、もう次の日の我が家での初めての散歩で判明したもの同然だった。唯一本当だろうと思えたところは、犬が好きだろうと言うこと。
彼女の話では、前の雇い主のところではコーギーを飼っていた。そしてその犬の介護をしていた。その犬が亡くなってから、保護犬のハスキーを迎えたが、手に負えなくなって手放した。他にはウサギとカメの世話をしていた。以上である。
我が家に来て最初の散歩の時、その日は朝から全員を車に乗せて散歩に出かけたのだが、年老いたコーギーの世話が得意なのであれば、うちの あお の世話などお手の物だろうし、散歩だってうまいもんだろうと思って、駐車場に着くと何の躊躇もなく彼女に あお と ぴんく のリードを渡した。すると「Ahhiiii! 」と言いながら、ちょろちょろするちびっこ2頭のリードが簡単に絡まって、制御不能のようになっていた。また、あお は、目がほとんど見えなくなってしまって階段が危険だ。駐車場は2階建で、1階部分はゴルフ場を利用する人専用なので、我が家のようにゴルフをしない人たちは2階に駐車しないといけない。階段を降りる時、必ず抱っこすることにしているので、そのように言うと、かなりのへっぴり腰で怖いものを触る時の感じでそーっと持ち上げた。(え?)抱っこの仕方も、とても犬の世話に慣れているふうではなかった。コーギーよりは小さいし、犬が好きで慣れているならばこんなふうにこわごわ抱っこしないだろうな。階段から下ろすと、犬をうまく制御すると言う感じはなく、犬の行きたい方についていくと言う感じで、当然ながら2頭別々の方に歩き出してしまい「Ahhiii!,Ahhiyaaa!」などと奇声をを発している。(あー、ダメだ)と思いつつ、いくら犬が好きでも初めての犬たちだから、こんなもんなのか?と思いつつ、私は私で むらさき にボールを投げてやりながらチラチラ様子を見ていた。豪快にボールを追いかけて、咥えて戻ってくるを繰り返しつつ、ヘルパーRにもちびっこ2頭にも目を配らなければならなかった。あお がとてもマイペースに歩くので、私と むらさき について行かねば!と必死のヘルパーRである。もう完全に あお を引きずり出したので、これはいかん!と思って「交代しよう!」とリードを取り上げた。すると、(助かった!)と言う心の声が聞こえるようだった。ヘルパーRは、私がやっていたように むらさき にボールを投げ、私は あお と ぴんく のリードが絡まぬよう、そして彼らの歩く速さに合わせつつ、危ない段差や、拾わずに放置された犬の糞などを踏まないように制御し、どんどん先に行く むらさき についていこうともせず、彼らの歩くペース最優先で散歩続行である。このように初日の散歩は終わった。
あお が危険なことを避けるようには言ったけれど、犬の散歩の仕方をカタコト英語の私が懇切丁寧に説明するのは厳しかったので、口頭では何も説明しなかった。だが、ヘルパーRは、さすがプロヘルパーである。私が彼女の様子を見ていたように、彼女もまた私のちびっこたちの散歩をきちんとチラ見していてたようで、次の日は、見違えるように改善されていた。私がしていたように犬たちのスピードに合わせて歩くように気をつけているのが分かる。段差や他の犬の糞を踏んだり舐めたりしないように目を配っているのもわかった。素晴らしい!その後は日に日に散歩がうまくなったし、ヘルパーRも犬たちもお互いに慣れていったと思う。ただ、ヘルパーRはせっかちなので、慣れてくると犬に合わせるのではなく自分のペースに合わせようと引きずるように歩くのが普通になってきた。このぐらいなら引きずっても怪我したりしない、と言うポイントもわかってきたからだろう。なので結局私がちびっこたちを担当するようにした。腕が痛くてボール投げるの辛いから交換しよ〜なテイで。なんて優しい雇い主だ、私!と自画自賛しながら(笑)。
その他にも、何につけて、ビクッとしながら犬と接する気はしていた。特に歯磨きについては、「Ahhiiii! あお と ぴんくは口が小さいので噛まれそうな気がしますー」などと言っていまだに埒が明かないし、犬のことについて詳しい感じも全くないし、私たちに雇ってもらおうと思って、犬の世話が得意だと言ったのは明らかだった。そして、全く悪びれた様子もなくある日得意気に「私はずっとウサギの世話をしていました。前の雇い主が全くウサギの世話をしなかったので。歳をとって立てなくなって、餌も自力で食べられなくなったので、私がシリンジで液状の餌をあげていました。私がウサギを看取ったんです」と言い出した。おいおい、何をドヤ顔で言ってるんだ?老犬コーギーの話はどこいった?!世話をしてたのは老犬じゃなくて老ウサギじゃないか!前の雇い主がコーギーを飼っていて、その後ハスキーを迎えた話は、その後も時々出てくるので全くのウソではないのかもしれないが、いまだにコーギーの世話をした話はもちろん、散歩に連れていった話すらヘルパーRの口から聞けたことはない。そういえば、カメはどこ行った?




