犬の散歩①(8)
私たち家族がヘルパーRに求める最も重要な仕事は散歩だ。特にスタンダーどプードルの むらさき は家の中ではトイレをしないし、何より若い彼女はエネルギーに満ち溢れているので、運動必須だ。彼女が来る前、平日は私が担っていたけれど、歳を取ってゆっくりとしか歩けない あお と、パワフルな むらさき と、その中間ぐらいの ぴんく を1人で散歩させるのがかなりしんどくなってきていた。特に むらさきには申し訳なかったけれど、1日2回なんて行けなかった。
ヘルパーRが来てから、朝は むらさき だけ散歩に連れて行ってもらっている。片道15分くらい歩くと海岸沿いの公園に着く。そこで むらさき の好きなボール遊びを20分程度やって、また15分くらいかけて帰ってくる。夕方の散歩は、私も一緒にヘルパーRと3頭全員車で行って、45分くらい公園に滞在して帰ってくる。ただ、私が仕事の時は、夕方の散歩はヘルパーR1人で行かなければならない。1人で3頭は無理なことが分かっているので、運動量が少ないちびっこたちは家の周りをトイレをさせながら20分くらい歩いてもらい、むらさき は、朝同様に公園に歩いて連れて行ってもらうことにしている。
また、雨の日は散歩に行かない。私はトリマーなので、濡れた犬を乾かすのは難しくはないけれど、スタンダードプードルは大きい。何よりむらさき 本人が雨が降っていると外に出たがらないので、無理に連れて行く必要はないと思っている。年老いた あお もできれば濡らしたくはない。
そんなことで、ヘルパーRは、雨が降ると機嫌が良い!無条件で散歩に行かなくても良いのだから。犬が好きだと言ってはいたが、毎朝1時間歩いて散歩させるのが面倒なのだろう。また、夕方の散歩は、私が車で連れていくので、そこまで嫌ではないのだろう。だが、私が仕事の日は1日2回も公園に歩かなければならない。それがたまらなく嫌なのだろうなーと言うのは、彼女の態度を見ていれば分かる。
ある朝、雨が降っていた時
「Ma `am 雨が降ってます。むらさき の散歩にはいけません。」
「そうだね。今日は行かないでいいよ。」
「Ok ma'am. (にっこり)」
3日ほど連続で雨が降った時に、毎朝この会話があり、4日目に曇りの日がやってきた。
「Ma’am 今日は散歩も散歩に行けないですよね?」
「なんで?雨降ってないじゃない。」
「でも、道路が濡れてます。むらさき の足が濡れてしまいます。」
「は?雨が降ってなければ連れて行く決まりだよね?足が濡れるくらいなんでもないよ」
「Ok, ma'am」
その次の日も曇りで、朝から散歩に行くべきか聞いてくるヘルパーR。なんなら4ヶ月経った今でも、たまに曇っていると質問してくる事があるくらい。ある日、
「今降ってないけど、もうすぐ降りそうです」
と言ってきた日もあって、窓からこんなに燦々と朝日が入ってきてる日になんで?!と思い
「めちゃくちゃ晴れてるよ?」というと、
「でも、天気予報ではこの後雨が降るようです」
とかもぶっ込んできた。もちろん、そんなことを鵜呑みにする私ではない。今晴れてるわけだし、途中で雨が降りそうになったら戻ってくればいい、と行かせた。よっぽど散歩に行きたくなかったのだろうな。これは彼女の行きたい、行きたくないの気分の話ではない。彼女の仕事に私たちが対価を払っているのだ。熱があるとかで体調が悪いならまだ分かるが、こんなんで散歩が免除されるとでも思ったんだろうか。こういうことをぶっ込んでくる神経が分からない。ちょっと私にはない感覚なので本当に理解不能だ。
こう言うことが何度もあった時、私はスマホの翻訳機能を使って散歩のあり方について書き、口頭ではなくメッセージを送った。カタコトの英語でいうから、ちゃんと真意が伝わってないのかもだし、記録にも記憶にも残らないし、その都度こういう会話を繰り返しているのも疲れる。
『もう1度はっきり言っておきます。雨が降っていなれば散歩には絶対に行くこと!あなたを雇う時に、口頭でも言って書類にも書いていた通り、犬の世話があなたにやって欲しい最重要の仕事。雨が降っていなければ曇っていても行けます。少し地面が濡れていたって、散歩の途中で雨が降ってきたって、私はトリマーなので、乾かすのなんて簡単。若くてエネルギーが溢れている むらさき の散歩を休むことの方が問題です。掃除や洗濯は適当でも良いので、犬の散歩を1番に考えてください!』
こうやって書いても、いまだに時々「今日は散歩に行けますかねぇ?」と聞いてくる時もあるが、前に比べるとよっぽど黙って散歩に出かけるようになった。でも午後の散歩は、私が行けるかどうかをすごく気にしている。仕事の日は、その日の予約状況で早く上がれる時は「今日は一緒に行けるよー」と連絡するようにして、なるべく行くように努めている。トリマーの仕事は体力も神経も使う重労働である。ホントなら仕事が早く終わったってゆっくりできるもんなら休みたいが、散歩も大変なのは分かっているので、早く帰れたら行くことにしている。
仕事の日以外でも、私は外出する日はあるわけで、「何時に帰りますか?!午後の散歩にはma'amも行けますよね?!」と必死に聞いてくる。もちろん私自身もできるだけわんこの散歩に行けるように帰宅するけれど、たまに遅くなる予定の時もある。「今日は行けない。1人で行ってね。」と言う、その時のがっかりした顔を見るのがなんだかイラッとする。
私だって、ヘルパーRの負担を少しでも減らしたいと思っているが無理な時だってある。その無理な時にヘルプして欲しいからあなたがいるのだよ!!




