犬の薬(7)
我が家の ミニピン あお は、18歳。1年ちょっと前から心臓の薬を朝夕2回服用している。その薬を飲み忘れたりしたら発作が起こるとか、死に至ると言うことはない。恐らく歳を取って心臓のポンプ機能が落ちてきているので、何かの拍子に血中酸素濃度が下がったりして、発作みたいになるのを防ぐような目的のもの。血流を良くするようなものらしい。1日2回、食事の1時間前に飲ませなければならないので、少々面倒ではあるのだが、仕方ないこと。
同じくミニピン ぴんく 12歳は、3年ほど前に、悪性リンパ腫と診断された。わんこの悪性リンパ腫といえば非常に厄介で、診断されてから数ヶ月以内に亡くなるような怖い病気である。悪性の癌に対して有効なのは免疫力を上げることだと思い、お高いサプリを試したのがよかったのか、寛解・完治の宣言はされていないが、ステロイドを3日に1度、朝だけ服用している。本来ならとっくに虹の橋を渡っているはずが、健康そのものに見える。獣医も「奇跡の子」と言ってくれているので、もう薬はいらないんじゃないかと尋ねた事もあるのだが、薬のおかげで今の現状があると考えた方がいいと提案されて、現在に至る。
始めは私が薬をあげていた。1回飲ませ忘れたからと言ってすぐ何かあるという薬ではないが、自分で与えないと心配だった。でも、うちに来て4、5日後ヘルパーRは自分がやる、と言った。まぁ、単純な作業だし、もし私が日本に一時帰国などすることがあれば彼女にやってもらわないといけないことでもあるのだし、慣れてもらった方がいいのかもしれないと思い、任せることにした。あお の薬は食事の1時間前ということさえ守っていれば、特に絶対に決まった時間に!ということはしていなかったが、ヘルパーRに任せるにあたり、時間を決めた。朝夕6時に薬、朝夕7時にご飯、という風に。ぴんく の薬は3日に1度、朝だけ与える。私自身が忘れないようにと、与える日をカレンダーに赤いスタンプを押していたので、冷蔵庫にぶら下げているカレンダーをチラッと見さえすれば一目瞭然にしてあった。
初めは私も彼女が本当に薬を与えたか注意していた。数日様子を見ていると、「薬あげた?」と私が言って初めて「Ahhiiii! 今すぐにあげます!」という日があった。あお の薬は、その後1時間経過しないとご飯をあげられないので、忘れるとご飯の時間が遅くなり、犬たちのブーイングがすごい。誰だって忘れることはある。習慣付いてもいないのだし仕方ない。私も「気をつけてね」くらいは言うし、これだけ犬たちのブーイングが激しいのだから、彼女もそのプレッシャーを感じるだろう。
問題は ぴんく の薬。3日に1度なので、忘れやすい。こちらも何度も忘れて私から指摘されてから与えている。彼女は忘れっぽいのだということがはっきりわかった。
毎日の犬たちの食事も彼女の仕事になったのだが、毎回決まった分量を図って与える。彼女は自ら誰に何gのフードをメモっていたし、ぴんく には粉末のサプリがあるので、それも決まったスプーンですり切り2杯入れるのもきちんとメモっていた。それなのに、実際にフードを測る時になって「Ma'am, あお は、何グラムでしたっけ?」と聞いてきたり、ぴんくのサプリをスプーン1杯しか入れなかったりしているのを私から指摘されて「Ahhiiii!」なんて言いながらもう1杯足していることも何度かあった。「自分で書いたノート見ろよ!!」と何度心の中で叫んだかわからない。もちろん、口に出しても何度も言ったけれども。
なんなら、薬の箱やジッパーバックにも与える回数などをヘルパーR自身で書き込んでいた。それでも、なかなか覚えられない。
ここでやっぱり私がやる!と言うのは簡単だけれど、これから何度か私が一時帰国して彼女に全てを任せなければいけない時がやってくるのが分かっているので、やはり覚えてもらわないといけない。イライラを募らせながらも彼女に任せることとした。
ちなみに、忘れっぽいのはわんこのことだけじゃないわけで、少しずつジワジワと私のココロは荒れていく。




