ヘルパーRのこと①(3)
ヘルパーR自身は50歳。子供は4人いて長男は30代。長女は20代で航空会社のCAをしているそうだで、たぶんフィリピンではとても高収入のエリートの部類だろう。来年結婚するそうで、結婚式には1年分の有給を全部使って帰国させて欲しいと雇う時点でお願いされていた。その下は19歳の男女の双子で、まだ学生。夫とは3年前に離婚しており、双子はフィリピンの親戚の家で暮らしているそう。上2人はもう自立しているけど、双子の学費などを稼がなくては!と笑いながら言っていた。双子は大学生ということなのだろう。フィリピンの進学率や平均年収などを考えるとヘルパーRはフィリピンの中ではどちらかというと裕福な家庭になり、子供達は優秀なのかもしれない。また、長男にはもう子供が3人いるそうだ。ということは、ヘルパーRには50歳にして3人の孫がいる!若くして結婚、出産することは、フィリピンの人たちにとってはそんなに珍しくはなく、逆に結構年齢を重ねてからも子供を産むという人も多い気がする。一番上の子と一番下の子の年の差が大きいというか。
あまり根掘り葉掘りプライベートのことを聞くのはどうかと思うし、この程度の情報でもどんな背景があって生きている人なのかを知ることはできるので、私は彼女の履歴書に書かれている程度に家族構成を知っているだけで十分だった。というか、正直に言って、彼女についてそれ以上のことを知らなくても良いし、もっと言えば、そこまでの興味もなかったと思う。
だがある日、他愛のない世間話をしていた時に、突然語り始めた。
「私は離婚していますが、その理由は元夫のDVでした。私は長い間我慢してきましたが、3年前に耐えきれなくなって離婚を決意しました。元夫とは私が16歳の時に結婚しました。でも、結婚式の1ヶ月前に、私は知らない年上の男にレイプされたんです。その後元夫と予定通り結婚しましたが、最初は優しい人でしたが、長男が生まれた後から夫が私に暴力を振るうようになりました。酒を飲んで私をいつも殴りました。怖くて悲しかったです。でも、私は我慢しました。双子の子供達が生まれて、少し大きくなった時に、私は海外でヘルパーになることを選びました。暴力に耐えられなかったし、子供達のために働かなくてはならなかったからです。ヘルパーになってから年に1度フィリピンに帰った時も、いつも酒を飲んで私を殴りました。今は、離婚して殴られなくなったし、子供達も私を愛してくれているので、とても幸せです。」
とにっこり笑った。
重い。。。なんて重い話。にっこり笑って話しているけれど、こんな笑顔で話せるまで、今までどれほど傷ついてきたのだろう。どれほど我慢してきたんだろう。ここからは私の想像だが、結婚直前にレイプされ、結婚、出産後にDVが始まったということは、長男くんを出産したしたタイミンングも関係しているのではないだろうか。どのタイミングで生まれたかは分からないけど、元夫からしてみれば、長男はレイプ犯の子かもしれない!という思いがあってDVが始まったのは想像するに易しい。いかなる理由でも暴力は容認できないが、もしそうだとしたら、元夫の苦しみもちょっぴりではあるが理解できる。でも、ヘルパーRは被害者なのだ。16歳なんてまだ子供だ。見ず知らずの大人の男にレイプされるなんて、本当に怖いことだったと思う。ヘルパーRも本当は元夫も悪くない。元男の怒りの矛先はレイプ犯に向かうべきところだが、ヘルパーRに向いてしまったのかもしれないな。こんな映画やドラマのような話って現実にあるのか、しかもうちに来たヘルパーに。
私は23年も住んでいながら英語が今でもカタコトなので、彼女の話の内容は理解は出来たが、英語が気の利いた言葉が出てこず(情けない!)
「悲しい話だね。でも、今ハッピーなら本当に良かった」
としか言ってあげられなかった。




